ばうえもんのネタ供養 作:ばうえもん
何しろ原作が昔の物なので地理に疑問があります。図書館の建物はおそらく今のエコギャラリー新宿だろうと思うのですが、そうすると侵入経路次第では直ぐに着くんですよね。もしかしたら正規の出入り口からは遠いのかもしれませんが。
それとも公園周辺も含めて結構な範囲が
“Beware that, when fighting monsters, you yourself do not become a monster… for when you gaze long into the abyss. The abyss gazes also into you.”
[新宿西口中央公園 ―― 図書館]
廃墟に佇む一人の老人
否、それは人の悪意に晒され続け狂った神の姿
「大勢きた……四人……二人……一人……そして少し離れてもう一人……」
「だが 何人が選ばれる!?」
神であったからこそ、人を観察し続ける行為は致命的になったのであろうか
「おまえたちはどうだぁ?
しんどいぞ わしに近づくのは………………」
だがこの街の行く末は……神ですらも予測不可能
「……潜む一人……二人は……知らんぞ 識らんぞ しらんぞ!?」
ここは魔界都市、
余所者が大きな顔をするのを許すほど、住人も、そして街も優しくはない……
異邦人 ―裡宮巴比倫―
男達が魔界都市を訪れる数日前、新宿中央公園内に積み重なる空中庭園の残骸跡で爆発が起きた。僅かな観測データから推測されたそれは放射能を発しない原子爆発と思われる。中央公園の情報の一つとして崩壊した空中庭園の事を話してくれた情報屋はそのエネルギー施設の物と考えていたようだったのだが、それは二人にして見れば魔導士への手掛かりと関連付けるには十分な物であった。考えたくはないが7階位の魔術呪文の行使、それが可能な存在の召喚に成功したという事だ。幸いにも推測された威力から魔界都市の妖気が迷宮と同じように力場として働いて威力を抑え込んでいるようだが、
斯くして神の思惑も困惑も知らないバンダナを巻いた二人は意を決して公園に侵入して、早々に死霊に追われていた。
彼らは何時もの様に気配を、気を、霊波を"絶"っていた。だが生者を仲間に引き入れようとする死霊達の目にとって、彼らの強すぎる魂の光は真昼の太陽のように眩しすぎた。
『にくい~~~ 生きているやつがにくい~~~』
「クソッ、
「おま!? なんで事前に確かめてねーんだよ!!」
力有る一人は、人間だった頃の除霊の様にその物理干渉すら可能な高出力の霊波刀で死霊を軽く薙いだ
手応えはあった、違う意味で。まるで人間だった頃に魔族に切り掛かった時の様に硬すぎて切れない。物理干渉は働いているのか実体部は破壊できたのだが、肝心の霊体に通らないのだ!!
「普段使わねーからしょーがねーだろ!!」
「そもそも感応系や借力系は相手が居なけりゃどうにもならんだろうが!! これだから文珠に制限無い奴は……桜花ッ一閃!!」
「何だその小汚い刀は!? そういうお前の陰陽道はどうなんだっ 伸びろっぉぉおお!!」
「さっき拾った、外ならともかく
「知ってたんなら事前に言っとけぇええ!! そして拾うな!! 呪われてたらどーすんだよ。そんで侍魔法はいけるんかっよっと、見様見真似手(刀)斬鉄閃」
「自己完結するタイプなら大体使用可能だ、テメーが自信満々だったから知ってるもんだと思ってたよ!! それと侍魔法ちゃうわ」
「クソっ、ソーサーも霊波刀も削る程度とか上級魔族並かよ…まさか今更悪霊に後れを取るなんて…、しかし何故文珠は普通に効く?」
幸いにも奥の手だけは普段に近い威力が出た。もう一人の方*1は多少威力は落ちるが霊撃も効果があり、それ以外の魔術や逃走中に手に入れたこの公園の被害者の物であろう刀の攻撃は通用していた。
少し離れた場所から近代兵器が使用された火薬の炸裂音が数度続き、そして稲光が見えた。何者かの能力で場が変化したことを感じた剣士はこの場を乗り切る為に切り札を切る。
「あんたの霊波刀で切られても消滅しないとか
「そこは雷撃よりも不死特攻だろ う …ちょっ、お前それ!?その魔法剣技は禁じっ「誰かが雷を呼んだ今しかないんだよ!! 天撃斬改め――」撤退ぃぃいいいい!!!」
普段荒んだ顔をするバンダナ男が半泣きになりながらドタバタと死霊の群れから逃げ出すのをしり目に、雷を纏ったバンダナキャップの剣士が、男ごと死霊の群れを打ち据える
「あー死ぬかと思った…じゃねーよ!!
刀で範囲攻撃してんじゃねーよ!! このなんちゃってサムライ!!」
「うっせ、アンタだって本場のニンジャがドン引きするくらい手刀で切りまくってたじゃねーか!このエセニンジャめ。囲まれる前にさっさと移動するぞ」
「つーか、禁じ手は"斬"の剣技じゃないのか?」
「基本押さえてりゃ下位の剣技に落とし込むくらいできるだろ?」
「オリジナルかよ、まあ停滞よりは発展させた方が健全なんだろうが」
死霊を撃退して人心地ついたのか悪態を吐く男達は周囲を見回す。
「一度外に出て仕切り直したいんだが……逃げ回ってる間に奥にきちまったのか?」
「霧のせいで遠くが見えんから方向が判らん!! なんで俺ら公園で遭難しそうになってんだよ!?」
「アンタGSとかいうこの道のプロだろ。落ち着けよ
しかし困った、地脈も汚染されているから迂闊にマップを接続したら汚染が怖いし……文珠でフィルタリングして拾得は…よし、(位/置)(情/報)に絞ればなんとかなるか? あかん、欺瞞入ってそうで情報自体が信用出来んわ」
「いやお前何を見た!? 地脈から妖気を取り込んで精神汚染とか勘弁しろよな!!」
「座標しか見てないよ。こういう空間異常が有りそうな場所で下手に三次元マップとか作ったら負荷でSAN値直葬しそうだし……」
「産地直送? よくわからんがフリじゃないからな。ん?……流石魔界都市、地面から人が生えてるぞ」
「向こうにゃ煙噴く戦車に反対側にゃ上下に分かれた神父か、こりゃ流石に助からんだろうな、なんまんだぶ、なんまんだぶ。
さっきの騒ぎは
「六字名号って、一応は神父だぞ。んでこっちは肺に穴開いてっけど出血はそうでもないしショック死か?蘇生は間に合うな、しかしこの材質でどうやりゃ綺麗に埋まるんだ?……あそっか、そういや昔似たような事やったな(柔)(化)っと」
「おお、材質をそのままで柔らかくするのか、こりゃ普通の土行の術じゃできん芸当だな。参考になる」
「蘇生できたし、(石/化)っと「なんでやねん!?」
地面に埋まった軍服めいた姿の男性を引き上げたバンダナ男は、何らかの処置を行い心臓が動き出したの確認後、やおら石化の呪いをかけた。当然意識が無い死に掛けの男に抵抗する術はなく、あっさりと石像と化す。助けた人間を石化する相方にバンダナキャップは驚き食って掛かる。
「落ち着け、こうすれば仮死状態で肉体を維持できるしストレージに入るんだよ」
「ああっ! 解呪するまでは死なないのか。まさか呪いをそんなふうに使うとは…」
「ホウライの寺院があるだろ、あそこに収容されていた被害者見てて考え付いたんだよ。それでだ、爆発地点まで行きたかったんだが…無理そうだな」
「なんか飲み込まれたらヤバそうだな」
「このタイミングで闇が沸いてきたのはおそらくこいつら関係、つまり闇と逆の方に進めばいずれは外に出るだろう」
二人の視線の先に広がるのは"闇"、光を吸い込むのか中の様子が伺えない暗黒の大気は妖樹の森を、森から這い出てきた魔性の生物を、彷徨う死霊すらも飲み込む。
顔を見合わせ頷き合った二人は、全力の身体強化を行使して一目散に逃げ出した。
数刻後、二人の姿は拠点としているホテルの中にあった。
拾った防衛庁のエージェントは新宿一の名医が居るというメフィスト病院とやらに放りこんできた。何かトラブルがあったのかロビーが混乱していたのをこれ幸いとドサクサに紛れて侵入、同じく入院していた仲間らしい男の隣に寝かせて置いたのでその内気が付くだろう。なんか凄い名医らしいから石化の呪いくらいどうにでもなるだろうとそのままである。
「
「そんなにダサイか?
「これが頭昭和ってヤツか、演歌番組でなにかと故人を持ち上げ続けて何一つ新しい事をせずに平成が終わったTV局と同じだな!!」
「一緒にすんな、張っ倒すぞ」
雑談をしつつ遅めの昼食を取る。なんにせよ体が資本だと経験から叩き込まれている二人はエネルギー補給は欠かさないのだ。
「そういやその刀持ってきちまったのか。大丈夫か?刀剣類の呪いは厄介らしいぞ…」
「ふ~ん、それってGSの知識か?」
「ああ、うん、今にして思えばちょこちょこ大事な事を教えてくれてはいたな」
「向こうの師匠の話なんか? そういやその手の話を聞くのは初めてだな」
昔語りを始める荒んだ表情の男、気のせいか少し表情から険が取れているようだ。
「まあなんつーか、久しぶりに素人時代並みの下手打っちまったからついな。
あの人は師匠っていうか雇い主だな。普段からちゃんと勉強しなかった俺の方にも問題はあったけど……向こうもちゃんと育てる気も無かったようだから師匠呼びは無いな」
「どれ、鞘とか傷んでる癖に刀身は綺麗だな。
益々怪しいが……"梵我一如"…ねぇ、悪霊斬れた時点で明らかに普通じゃないんだが……全く判らんとか自信無くすぜ」
「妙にしっくりくるからこのまま使いたいんだが、何より加減したとはいえ禁じ手を使える刀を手放すのは惜しい」
「まあいいんじゃね、ホウライでもお前の方が上手くやれてたし。
おまけに
「しかし外見はなんとかしたいな。兼光の拵で補修出来ないかな」
「別の刀の鞘が…ああ、文珠で変形させればいいのか。妙に手際いいな」
「転職すると専用装備の扱いを覚えるんだよ」
「なにそれズルイ!? 俺なんて基本職にすら就けなかったのに!!」
「……よし出来た、この鋭さはキリジュツ未収得でも*2
休息を取り、額にバンダナを巻いた男は一端思考をリセットするつもりだったが……これだけは早めに解決しておきたいと考え込む。
「しかし何故文珠だけは通じたんだ?」
「多分だけど、表面上は元の世界と同じように見えたから深くは考えてなかったけど、実は別世界って事なんだろうな」
「そこまでは解る。だが何故お前は通じる?」
バンダナキャップの男は考えを整理する為か少し黙り込む。
元々神秘が存在しない世界で生まれた彼にとってこの手の話はサブカルチャーの話題の延長である。頭の中ではレベルアップで無駄に高いINT値*3を駆使して漫画やアニメ、ゲームやラノベ等で使い古された設定からそれらしい仮説を構築していく。こういう事態においては昭和脳よりもガキの頃から異世界転移や転生物が溢れていた頭平成が強いのだ。
「平行世界についてはどれくらい知っている? 特に分岐についてだが」
「枝分かれしていくやつか?」
「まあそんな感じだな。俺も木で考えるが、最初始まり種から生えた幹が枝別れするよう分岐していくが…根本まで辿れば一つになる。つまり元は同じ世界だから構成要素の差は無いわけだ」
「アンタが俺に会う前の世界間移動は多分隣の枝に移る程度だったんだろう。だから一見違う世界でも同じ木から生える枝、平行世界移動だからアンタの能力も問題無く使えたんだろう」
「そして俺に出会った世界ではアンタは元の世界へ戻れなくなっていたよな。その時の移動はそれまでと違ったんじゃないか?」
「虚数空間を経由したから…つまり今の俺達の移動は違う木へ渡り歩いている、つまり異世界への移動なのか!?」
「多分そうだろう。俺は最初から虚数空間経由の移動しか経験していないから想像だけどな」
バンダナの男は考える、不本意ながら自分は亜神の域にまで到達している。
だからこそ本来の世界を離れるほど世界のバックアップが無くなり結果的に弱体化しているのだろうか?
最初の世界間移動、あそこでは十全に力を行使出来た。何故だ? そういえば簡単に勇者召喚やら転生やらが行われていた。つまり世界間のハブのような場所だとしたら、敢えてそんな仕様なのかもしれない……そして出入りし易い場所だから虚数空間に落ちた俺やコイツが出現したのか? ある程度の辻褄は合う
「世界が変わったから力が通用しないとして、じゃあなんでお前は通用するんだよ」
「俺の力の源である魔神人は何処に居ると思う? 何の集合体だと説明したか覚えているか?」
「俺もさっきまで勘違いしていたんだけどな、平行世界ではなくて異世界の同位体が融合していたとすればだ、俺はそれらの居た世界でならそれなりに力を発揮出来るわけだ。魔神人の居場所が虚数空間ってのも仮説の補強になる」
「つまり俺は元の世界から離れたから制限を受けるが、お前にはそれが無いって事か? ズルくねぇ!?」
「全ての要素が稼働するわけじゃないからそうでもないぞ。一応違う幹でも木の種類が同じならある程度は同じなんだろうな、アンタの様子から今回は外れの部類って事だろうさ」
「だったら何故文珠だけが…っそうか、俺が奴らに通用するように念じたから文珠がこの世界の流儀に合わせたのか。その分のロスはあっても十分な効果は有ったのか」
「よし、だったらお前を参考に文珠で霊力を変調させれば行けそうだな」
自身の不調に対する仮説から、世界の秘密に当たりを付けたバンダナ男はこの世界に来てから初めて確かな手応えらしき物を感じていた。
だがバンダナキャップの方は未だ説明出来ない不安を感じている。以前の二つの世界と強さの質が何処か違うのだ。
確かな事は一つ、中央公園の死霊がそうであったように相手を侮ると不覚を取りかねないという事だ。
(どうにも
日本神話では神も死ぬ
ましてやここは魔界都市、亜神の域にいる横島忠夫も例外足り得ない。だったらどこまでも人でしかない自分は……
新宿西口中央公園を覆っていた"闇"は消失した。
人死にが出たそれを幸運と呼ぶのは些か不謹慎ではあったが、騒動のお陰か死霊の数も減り今度は小競り合いを回避する事に成功した二人は穴の前に居た。
爆発後に出現した地下へと続く大穴、空間異常の為かあきらかに公園の面積に匹敵するその大穴の中、逆しまに築かれたそれはバビロニアの空中 否、地下宮殿への道
「根堅洲の……いや、裡宮か?…海底じゃないだけましか。日本で
「なんだそりゃ?」
「ああ、いや、こっちこそがオリジナルで空中庭園はそれを模した物かなって」
「そりゃまた大胆な仮説だな」
「土地柄を考えてもおそらくは悪霊の王様だろうよ。しかしホントなら山から降りてくるハズなのに地の底へ押し込められるとか皮肉なもんだな」
こうして二人の男は地の底へと足を踏み入れた。
悪霊も死霊も消え失せた新宿中央公園の一画、そこに生じた大穴は未だ妖気と空間異常により抑え込まれ隠されていた
これを書くにあたってハンターを読み直したのですが、キャラクターをギャグシーンで丸っこく崩して描く手法がまんま80年代のエロ漫画でした。