ばうえもんのネタ供養 作:ばうえもん
「何だ? 気温が…室内で霧…チッ 霧の癖に火だと!!」
通路を進む
「ガスクラウドの類か? 代われ!!」
納刀した剣士は両手で印を切り入れ替わり前に出る。
剣士の指先より放たれるは閃光!! 遅れて大気を切り裂く音の後には焼き尽くされた霧魔が苦痛に歪む顔を描き怨嗟の咆哮を上げ消滅する。
「クソっ、地の底じゃ雷撃は威力が出ないな。風の方も思い通りにならんときたもんだ」
「道教系? 貴様大陸の者なのか」
「あっちこっちのいただき流だよ、節操無しの日本人らしいだろ ―
思った程の術の威力が出せない事に苛立った剣士だが、先程の霧魔の断末魔に呼び寄せられた新手の霧魔の群れを
剣士にとっての本来の系統と違い、侍の精神修行の末に開眼した七階位の呪文は力を損なうことなく機能する。元より迷宮で抑制される
遅れて現れた巨大サソリの群れに対峙するロダンと十六夜京也を押し留めたバンダナの男と円谷一佐は時間の無駄とばかりに携行していた光学兵器で次々と大サソリを処理していく、遅れてハンドガンを抜いた剣士も加わるが、軽快な射撃音に対して結果は散々な物であった。
「昆虫系もこのサイズだと装甲車を相手するようなもんか? せっかく闇市で買ったCz75の出番だと思ったのに」
「いい趣味だな。だが魔界都市で使うならせめて特殊弾頭ぐらい準備しておかないとな」
円谷一佐のアドバイスに単なる趣味だししゃーねーかとボヤいた剣士だったのだが、ふと何か思いついたのか弾倉を交換するなり突然ガンスピンを始める!?
銃を廻す腕の軌道で五芒星を描きつつ各頂点で何らかの所作を行うのかガッガガッと金属音を響かせた後、描いた五芒星の中心目掛けて銃を構えて発砲した。
「発想は悪く無いが、この程度の相手にその手間は割に合わんな」
魔法陣を通過した弾丸は見事大サソリを爆散させたのだが、一発撃つのに1秒以上の時間が掛かる上に魔法陣を描く為にその場を動けないのは実戦に置いて致命的な隙となる。小技が増えたのはいいが剣士のスタイルとはいまいち噛み合わない。弾丸か銃に細工する方が現実的だろう。
「そういえば口径は合わんが昔イギリスの退魔組織とやり合った時に拠点でガメた法儀式された水銀弾頭とかあったっけ? いやオカG時代に拝借しておいた精霊石弾頭なら……」
「よくわからんが後にしたまえ、今度は鳥のようだぞ」
「シルエットは鶏だがサイズが異常だな。まあ新宿ではよくある事だ」
通路の先から現れたのは鳥と爬虫類の中間のような巨大な生物、姿を見た十六夜京也はそう見取ったが
「…いや、遺伝子組み換えの紛い物じゃない。本物の神話生物、コカトリスが2体…くるぞ!! 石化持ちだから攻撃を食らうなよ!!」
バンダナキャップの剣士はそう返す。
現れる障害に異変が生じている。明らかに新宿にもメソポタミアにも縁が薄い存在が混じり始めたのだ。
召喚の書で呼ばれたのならばまだいい、最悪なのは悪霊の王として顕現した物がそれを足掛かりにして封印された本体から干渉始めた可能性が有るという事だ。
死闘 ―裡宮巴比倫―
「他に何を警戒すればいい?」
「奴の石化は接触とガスブレスだ。ガス系は基本暫らくはその場に停滞するから密度が下がって無害化するまでは気をつけろ」
「生物と言ったな、ならば殺せば死ぬのだな?」
「まあな、そういう形で生み出された怪物だから多少タフだが殺せる相手だよ」
散開しながら銃を創造する円谷一佐が問えば剣士は返し、巨体を挟んで反対側からは僧衣の袖から短刀を取り出したロダンの声が響く。異常な生物相手に的確な判断が出来るのは新宿の住人故か
「ふっ!!」
「けやああ!!」
機を見て跳躍したロダンは倒れて暴れるコカトリスの頭部目掛けて落下し体重を込めた一撃を眼窩にねじ込み息の根を止めた。
まるで
剣士は十六夜京也の剣を見取って真似してはみたのだが、チャクラの稼働により圧力が増した氣の制御にしくじり侍にあるまじき剣を振るってしまった。剣士はどうしたものかと考える。
魔導士を追う最中に出会った退魔士は米軍の特殊部隊相手に「その土地にはその土地のやり方が有る」と啖呵を切った。その挙句、すったもんだの末に自分達と特殊部隊と共闘しエイリアン相手に大立ち回りをするというそれはそれは濃い一日だった。所属も国籍も違う男共を率いる退魔士の姿はなかなか様になっており、気風が良い女だった。なおその最中に顎で使われ「こんな扱いが落ち着く俺って…」と珍しくぼやくバンダナが居たのだが。
偶々自分に近い剣術を見れたので、新宿のやり方に習ってはみたが練度の関係でどうにも巧くはいかない。だがストライプがこの地では十全に力を振るえない以上は自分が主体となる必要がある。退魔剣術が不完全なのは自身の氣がこの世界に合っていないからだ。だから今使用しているのは咸卦の氣、「自分で足りなければ他から持ってくればいい」とは誰の言葉だったろうか。本命の元にたどり着く前に咸卦の氣で侍の剣術を扱えるようにしなければならない。
その後も幾度かの戦闘を経て、そろそろ終着点かと思われる所まで来た一行は大広間に踏み込む。広間を埋め尽くす
「木乃伊取りがなんとやらか、どうやら奴らの仲間入りをしたようだな」
「アレが君達が追っていた魔導士の成れの果てという事か? 死んだのなら何故この現象が続いているのだ?」
「普通は召喚者が死ねば召喚を維持出来ない物だが…、何しろ呼び出そうとしたのが悪霊の王だからな。召喚者を殺して逆に傀儡にして自身を留める為の楔代わりにしたんだろ」
魔導士の木乃伊への道を塞ぐ
大小二体の異形のシルエットは大まかには昆虫の様だが頭部と胸部は人骨の形だった。上体には巨大な鎌状の腕が二対生え、胴体はムカデのような多足。それは人骨で構築された蟷螂と百足の間の子ような姿をしていたのだ。
その冒瀆的な髑髏の巨体を眼にした二人の反応は早かった。バンダナの男は背を低くしその身を闇へと沈め、剣士は先手を取るべく前に出る。だが周囲を埋め尽くす
「スペルじゃなくてブレスだと? 墓所で遭遇した個体と別物じゃないか!」
ここが死者の世界だからだろうか? その異形の髑髏はバンダナの男達が前に居た世界で遭遇した個体より巨大で存在の密度からして違っていた。幸いにも
『
核撃の本来の威力を発揮すれば街一つを灰燼と化す。それは太古の世界であれば正に神罰と言い表すべき破壊の力、迷宮内では威力を抑制されるがそれでも一撃でマスタークラスの冒険者パーティを壊滅させる威力を持つ。よって迷宮の冒険者達は高位呪文を操る怪物を優先して撃破する。
そう、動けないのはこちらだけでなく、詠唱中の
姿を消していたバンダナの男が詠唱中の巨体を背後から強襲し竜の気配がする蒼く輝く短刀で
同族を狩られたもう一体の異形の怪物はその鎌を振るい襲いかかるが、バンダナの男は軽い動きで身を躱し再びその姿を闇に沈める。
バンダナの男が使用したのは後の世で迷宮で活動する斥候職の必須の技能となる隠行の技である。視界以外にも匂いや音といった探知手段を持つ様々な魔物からその身を隠し、高位の使い手ならば魔王にすら気付かれる事なく接近出来るのだ。
「クソッ、
バンダナの男の奇襲により死のブレスは中断したものの、周囲を舞う
精彩に欠けるその動きを疑問に思った剣士がバンダナの男を見れば酷く消耗していた。
「…少し掠めただけで魄を削られた。
「ああ、アレ効果あるんだ…じゃなくて珠の防御貫通したのか!?」
「個別に対応すれば数回は防げる、手を抜いて汎用で済ませたから貫通した。俺にも効くレベルだからドレインと精神攻撃は特にヤベーぞ」
ここにきて襲い来る異界の者の中にバンダナの男達が識るモノよりも強力な力を有する個体が混ざり始めた。このタイミングで脅威判定を誤ったバンダナの男はダメージを受け一時的に動きを止める事となる。
「すまんが雑魚をなんとかしてくれ!! 不死者相手の切り札を使う!!」
「ええい、仕切るな!!」
「守って貰ったんだからそう言うなって。 往くぞ、十六夜念法――空震」
十六夜京也が眼前に立てた愛刀・阿修羅の刀身を叩くと音叉の様に音を発し空気を振動させた。個人用の小型とはいえヘリの集団を制御不能にして墜落させてしまう程の振動波を受けた
群がる髑髏たちの対処を相方に任せた剣士は刀を床に突き立て軽く両手を広げ詠唱に入る。
異界の者達は特殊な障壁を持ちいて呪文を無効化する。威力の減衰ではなく攻撃呪文その物を一定の確率で無効化してしまうのだ。無論確率なので当たらないわけではないのだが、高位の存在はかなりの高確率で無効化してしまう為に呪文は効かないと思って行動する必要がある。唯一の対抗策は自身の格と引き換えに人の限界を超えた力を呼び起こす「変異」「大変異」という呪文で障壁を剥ぎ取るしかないのだ。
だが、
「悪いが対策済みだ!! (無/効)(貫/通)!!(必/中)!! 俺の取って置きの確殺コンボを食らって死ね!!」
限定的とはいえ神の領域に手を掛けたこの男には人為的に奇跡を呼び起こす力がある
「―
突き出した両手より発せられた退魔の光は剣士の異能により強化され、射線上に居た
「このコンボなら確実に通る!! ………なん……… ………だと………」
「っ 呆けるな!!」
必殺の呪文を受けてなお健在な
続けて
「ナイスフォロー!! 神鳴流小太刀二刀術 斬岩剣ッ――硬ぁあ!?――九連・咬」
岩をも断つ一撃をいれようとしたが、未だダメージから回復していない為か精彩を欠いた短剣の一撃は鎌で受けられる。だが続いて抜刀した中華風の拵えの小剣を振るい二刀で連撃を撃ち込み鎌腕を叩き折った。
「こいつ全然別物だが、ちゃんと
遅れて周囲から爆発音がした。先ほど群れを抜けながら抜け目なく爆発物をばら撒いていたようだ。
鎌腕を一本失い開いた空間に刀を下段に構えた剣士が踏み出す。十六夜京也の目には剣士の正中線に眩しく輝く七つの光が見えた。出会った直後に見た悪霊を切り裂いた花散る剣技、念法ではないようだがそれに近い技を修めているのは解る。ならば自分は次に備えて念を練る。
元は天使族や悪魔族といった外来精神寄生種に対抗する為に生み出された神殺しの剣術、だが人はそれを戦の道具にしてしまった。
「鳳龍――」
振り下ろされた鎌を剣士は氣を込めた逆袈裟で打ち据え破壊する!!
剣士は己の剣戟に確かな手応えを感じた。彼は知らぬ事だが武器破壊という人同士の戦の過程で生まれたであろう歪んだ技が、開祖・スサの意思に沿い異界の者を相手に正しく振るわれたのだ!! だが…この異形を斬るには未だ足りない
鎌を一つ破壊こそしたが剣士は振り切った体勢で胴ががら空きになる
「十六夜念法―― 一文字!!」
だが
「鳳龍――」
異界の者にはホウライの侍の剣技を。だが異界の理で浸食されつつあるが同時にここは新宿、脳裏に過るのはシガ王国で出会ったジィ・ゲイン流の侍の姿。彼は魔力とスキルで剣を振るう彼の地でただただ剣術の基礎と魔力操作を突き詰めて基本の切り下ろしを必殺剣へと昇華して見せた。
ホウライの地で侍へと転職した直後の事だ。訓練場でひたすらに型稽古を繰り返す彼の姿に教官達は奇異の目を向けた。氣のコントロールを主体とする侍の剣技と元々彼の中にあった体術を突き詰めた一刀流の太刀筋が噛み合わずにいた為に転職仕立てとはいえ無様な素振りだったからだ。故に彼は一刀流を封印して氣のコントロールを主体とする剣術に切り替えた。
だが今彼の中にある一刀流の理はこの日ノ本の地にて不思議と合致した。ただ速く、ただ強く、ただ斬るだけの日ノ本の剣術で――、斬る事を突き詰めた鳳龍の技を放つ!!
「お見事!」
十六夜京也の場違いとも思える称賛の声が響く、一歩の踏み込みから――否、体全体を使い全ての運動エネルギーを一刀へと注ぐ。京也の目をしても完璧と思える切り下ろしに彼は剣士の勝利を疑わなかった。
剛剣の摂理で加速した鳳龍の技に――異形の髑髏は反撃する間もなく真向から割られたのだった。
「なんの、さっきは助かっ…た…」
剣士は死闘の果てに何かを掴んだのか、以前何処かで見たような顔をしていた
彼等が強敵を相手の勝利に安堵するなか、振動と供に広間の奥からドンと鈍い音がした
戦闘描写を色々と考え実際に書いて見るが書きたい物と何かが違うとしかわからない
スゴいね、剣豪小説。(マホメド・アライ並感)