・キュルルが、海に落ちてない。
・かばんさんが、3人をいいチームだと言ってない。
・キュルルの本名が、作者のオリジナル。
いつも、何かが足りない気がしていた。ヒトと一緒に冒険していた記憶がある。それかな?分かんないけど、キュルルちゃんという子のおうちを探そうと持ち掛けたのも失った何かを探すいい機会だという下心もあったのかもしれない。
ジャングルに行ったとき、ビーストという
「セルリアンに食べられたフレンズは、記憶をなくしてしまうのです」
「それは、寂しいね」
「そうだね」
難しいことは分からない。私にできることは、元気にはしゃぐことだけだ。でも、キュルルちゃんを例のふたりにさらわれたときは、頑張って頭を使ってカラカルにアドバイスした。ケンカぐらいでキュルルちゃんを見限られたら、私はどうやってあの子から離れればいいのか分からなくなる。
「もし、僕のおうちなんて本当は無かったら僕はどこに行けばいいんだろう?」
「大丈夫。なかったら探せないよ。でも探してるんだから、きっと見つかるよ」
「サーバルと話してたら分かんなくなっちゃったよ」
去っていくキュルルちゃんの背中を見ながら、私はある決心を固めていた。
「僕のおうちは、見つかったよ。思ってたのとは違うけど、いいんだ。温かくて優しくて――そんな素敵な皆がいるここが、僕のおうちだったんだ」
キュルルちゃんのおうちが見つかったら、私はキュルルちゃんのもとを去ろうという決意を。
「サーバル、ここにいたんだね。ちょっと聞きたいんだけど、ビーストがどこに行ったか知らない?」
キュルルちゃんにどう別れを切り出そうか考えていると、かばんがやって来た。いいタイミングなのか悪いそれなのか分からないなあ。――え?ビースト。
「一番最後に、ホテルを出たのはサーバルだよね。あの子を見てない?」
「がれきの向こうに消えたけど、逃げたかどうかは分からない」
「そう……。じゃあ、一緒に来てくれないかな。もし、ビーストが埋まっていたらガレキを持ち上げてもらいたいんだ」
「うん、わかったよ」
確かにあの子は色んな所で暴れてたけど、あの重そうな石の下でつぶされてるかもしれないのはさすがに可哀そうだ。
またあのボートに乗り、大量のセルリアンとの戦いで壊れたホテルの上で鼻を鳴らす。潮風が邪魔だけど、血の匂いは独特だ。間違いない。彼女は、ここにいる。
「やっぱり、あの子は死を選んだのね」
かばんの視線の先には、大量の血が流れている。きっと、あの子の血だ。大きな板を持ち上げようとするも重すぎて、博士と助手と私だけじゃ少しだけ持ち上げるのがやっとでどかせない。
「ちゃんと人数分あるから、これを入れてこの棒の端を下に押してみて。それで、このヘリポートは持ち上がるはずだから」
かばんは、丸い玉を下のがれきと棒の間に挟んでそう言った。よく分からないけど、これで持ち上がるなら試してみよう。
「じゃあ。せーので、持ち上げるよ。……せーの!!」
4人同時に棒を下に下げるとヘリポートというらしい大きな板に挟んでいた向こう端が大きく上がり、ヘリポートは斜めになって半分近くが海に沈んだのだった。
「ビースト!!」
日の光を浴びたからか、ビーストはホッとしたような笑顔を見せたかと思うとサンドスターを大量にはじき出して虎の死体になったのだった。
「この子は、アムールトラだね。今、海には大量のサンドスターが入っているから海に投げればフレンズになれるかもしれないよ」
ラッキービーストは、そんなことを言った。この子なりに、ビーストの死を悼んでいるのかもしれない。
「ごめんなさい。私……」
「サーバル。ビーストは、あなたに助けを求めていたのかな?」
私は、かばんの問いに首を横に振る。あのときビーストは、この子は、振り向くことすらしなかった。
もしかして、こうなることを望んでいたの?ビースト。かばんは、この子を海にビーストを流そうと言った。この子は、本当はみんなと仲良くしたかったかもしれない。そうであってほしいだけかもしれないけどねと自分に言い聞かせている姿が私に何かを思い起こさせた。
かばんが……かばんちゃんが……昔、私と旅をしていたフレンズなのかもしれない。
「いいよ。でもその代わり、かばんのことをかばんちゃんって呼んでもいい?」
「え?……ええ!?」
「私のことも、サーバルちゃんって呼んで欲しいな」
「――サーバル……ちゃん」
泣きそうな、嬉しそうな笑顔でそう言ってくれた。何だ、この可愛い生き物。思わずかばんちゃんに抱き着こうとしたその時、ビービーとラッキービーストが変な鳴き声を上げた。
「危険!危険!人間に、危機が迫っています!水難事故!水難事故を感知」
このラッキービースト、私がかばんちゃんを食べると思ってない?でも、スイナンジコって……?
「うぱ!?ぶふっ!?誰か……タス!?」
ここから浜辺に近い少し離れた場所で、誰かが溺れてるのが見えた。
「サーバル……ちゃん!助けに行こう!」
「うん!!」
船に乗って虎の死体をふたりで海へと投げると、かばんちゃんが長い棒に捕まらせて私がその子を持ち上げた。その子は、ぱっと見た感じキュルルちゃんの様に見える。でも、あの子とは違って前髪が長いし毛皮の模様も違う。誰だろう。
浜辺に挙がり、キュルルちゃんにこの子のことを知らないか聞いても知らないとのこと。でも、キュルルちゃんと同じ帽子をかぶってるよね、この子。
「こいつ、キュルルと同じ帽子をかぶってるけど……あんたは、帽子どうしたの?」
「風で飛ばされちゃって……」
それを聞いてか、キュルルちゃんみたいな子は帽子を脱ぐとそれをぎゅっと絞った。海の水がぼたぼたと垂れていく。
「これ、あなたのじゃないんですか?」
「私もそう思う。多分、キュルルの帽子に付いていた髪の毛がサンドスターに触れてこの子になったんだよ。ガレキより浜辺に近いところにヒトがいたら、私が気づくはずだし」
「キュルルちゃんのフレンズってこと?」
帽子を外したキュルルちゃんのフレンズは、帽子の裏側を見てから「はい。トモエユウキさん」とキュルルちゃんにそれを渡し、キュルルちゃんは「え?」という表情をしてそれの裏側を見ると「ああ!!」と声を上げた。
「本当だ!!マジックで、トモエユウキって書いてある!!」
「ええ!?なんで、確認しなかったのよ?」
「ああ。そう言えば、キュルルぐらいの子の持ち物なら自分の名前が書いてあるよね」
かばんちゃん、気づこうよ。
「じゃあ。これからキュルルのことは、トモエとかユウキって呼べばいいのかな?」
「はんたーい。今更変えられても、違和感しかないわよ。ねえ、サーバル」
「――キュルルちゃんは、どうしたいの?」
キュルルちゃんは、「あなたは何ていう名前なんですか?」とキュルルちゃんのフレンズに聞くと、「分かりません」と返ってきた。当然だ。かばんちゃんの予想通りなら、この子は生まれたばかりのフレンズなんだから。
「じゃあ。君が、トモエユウキの名前を使ってよ。僕はキュルルという名前と一緒にサーバルやカラカルと旅をして、皆と仲良くなったんだ。だから、僕はキュルルがいい」
そっか。キュルルちゃんは、そこまでのことを考えられるようになったんだ。じゃあ、私がキュルルちゃんに別れを告げる言葉はあれしかないよね。
「かばん。そろそろ、空が暗くなってきたのです。今日の所はみんなをイエイヌが管理しているおうちで休ませて、日が昇ったらそれぞれの縄張りに帰すのです。あそこなら、夜露も防げるので」
「そうだね。あ、でもキュルルは二度と来ないでくれってイエイヌに伝言を預かってるんだよね」
博士とかばんちゃんの会話に、キュルルちゃんは「ええ!?」と驚きの声を上げたが、カラカルは「ああやっぱり」と声にこそ出してはいないけど、納得しているように見える。
「じゃあ。私たちは、別の場所に移動することにするわ。行きましょう。キュルル、サーバル」
「ちょっと待ってよ。意味が分からないよ」
そうだよね。キュルルちゃんは、言われた通りにしただけだもんね。
「かばんちゃん。私、かばんちゃんと一緒に暮らしたい。いいかな?」
「え?」
『ええーっ!!』
私の言葉を聞いて、浜辺にいたフレンズたちが一斉に驚きの声を上げた。
「サーバル!!お前、記憶が戻ったのですか!?」
「博士。記憶……は分からないけど、かばんちゃんと一緒にいれば何か私に足りないものが分かるかなあって」
「お前、ヒトの手下ちゃうんか!?いや、かばんもヒトやけど……」
「クロヒョウ。私は、手下じゃないよ」
「分かったぞ!!お前だけ、絵に描かれなかったんだな!?あれ、地味に凹むんだよ」
「描かれなかったんだ、ロードランナー。……でも、違うよ。キュルルちゃんがおうちを見つけたらお別れしようって、決めてたんだ」
「本気……なの?」
「うん。だから、かばんちゃん。私、かばんちゃんと一緒にいてもいい?」
かばんちゃんは、涙を流しながら私を抱きしめると「いいよ。それがサーバルちゃんの選択なら……ううん、違う。ぼくも、サーバルちゃんと一緒にいたい」と言ってくれた。
そのぬくもりが、匂いが、声が……なんだかすごく懐かしくて。私も、知らず知らずに涙を流していた。
「サーバル。僕のおうち……まだ、見つかってないよ。僕にとってのおうちは、サーバルとカラカルの3人で旅をすることだから」
「それって、私だけじゃ物足りないってこと?」
「違うよ!僕は……」
ああ、やっぱり言わないとダメか。
「キュルルちゃん。もう決めたことだから。キュルルちゃんよりかばんちゃんといたいって、わかっちゃったから……。大丈夫、同じ島にいるんだから会いたくなったらいつだって会えるよ。だから、今は言ってくれないかな?……おうちにお帰りって」
キュルルちゃんは、はっと息をのんだ。今なら、イエイヌの気持ちが分かる。この言葉は、お互いに踏ん切りをつけるための言葉だったんだ。
「おうちに、お帰り」
キュルルちゃんはそう言うと、一目散にどこかへと走っていった。
「サーバル。本気なのね」
「うん。キュルルちゃんを、よろしくね」
招き猫ぐーをする私の顔をじっと見ていたカラカルはふっとため息を吐くと、「分かった」と招き猫ぐーを返してキュルルを追いかけていった。
「わたくしも、キュルルさんを追いかけますわ。仲間、ですから」
リョコウバトも、キュルルちゃんを飛びながら追いかけていった。うん。あれなら、きっと大丈夫。キュルルちゃんは、強い子だもん。きっと、わかってくれるよ。
この後、皆でイエイヌのおうちに行き「何ですか!?このフレン
「茶葉を分けるので、お前も日が昇ったら研究所に来るのです」
「その辺の葉っぱには、毒があるものもあるので危険なのです」
「じゃあ、私と一緒にお茶の勉強しようよ。イエイヌさん」
「ありがとうございます。トモエユウキさん」
私たちは出会いと別れを繰り返し、今日を生きていくのだろう。私とかばんちゃんは、窓の向こうにある空に浮かぶ月を見ていた。