「......それは、どういう意味ですか?」
なんだろうか、このフレーズは。ネット小説で読んだような読んでいない気もする。
言わば、王道的召喚...なフレーズである。
王道的召喚。俺はてっきりトラックに引かれるのか、巷で話題になっている殺人犯に出くわし、大切な友人、幼馴染みや家族を守るために死んでしまったが目を覚ますとそこは......なんて思っていたのだが。
ドッキリと言う可能性が高いので、文句は言えないんだけどね。こんな素敵な体験をさせて貰えた奇跡に感謝。
「色々と込み合った事情があります故、ご理解する言い方ですと、勇者様達を古の儀式で召喚させていただきました」
「召喚......」
うん、古の儀式とかもっともそれらしい。
埃の積もったような、テンプレート物語。だが、それ故に人々(オタク)は憧れ、そこに恋をする。
うん...。何言ってるんだろう、俺。
現代社会、サブカルチャー文化に浸かりすぎだな。
「この世界は今、存亡の危機に立たされているのです。勇者様方、どうかお力をお貸しください」
四聖武器書...?に合わせると、次元の亀裂がどうたらこうたら。凶悪な魔物が大量に這い出ているとか。
“――メルロマロクに発生した次元の亀裂、厄災の波から凶悪な魔物達が人々を襲い、とある亜人が住まう集落が文字通り壊滅した”
“文字通り”に壊滅と、ここを強調し、過去形であった事は気になるが。
ドッキリであるかも知れないが、それでもここまで頭を下げてまでして俺達に世界を救って欲しいとローブを着た彼ら願っているのだ。
少しくらいは話を聞いて、ドッキリならドッキリで...。
「まぁ、話くらい――」
「嫌だな」
「そうですね」
「で、元の世界に帰れるんだろうな?話はそれからだ」
俺が話そうとした時、他の三人に言葉を遮られた。
......はい?
ドッキリかもしれないとは言え、相手が本気で頭を下げてくれているんだぞ?
何お前らは話も聞かずに結論だけ述べようとしてんだよ。せめて話くらいは聞いてから、その後で結論を述べればいいだろ......?
俺が無言の圧力で睨むと、妙にニヤニヤした顔で見つめ返された。
......なんで半笑いなんだよ。
実は嬉しいんだろお前ら?確かにさー異世界に召喚されるなんて夢のような話が叶ったかもしれないんだ。
お前らもツンデレだなー。でも、槍の奴、お前はツンデレだと需用ありすぎて困るんだよ。
......何故か嫉妬心が疼いた。
「人の同意なしでいきなり呼んだ事に対する罪悪感をお前らは持ってんのか?」
剣を持った奴、パッと見だと高校生くらいの奴がローブを着た男に剣を向ける。
まぁ、なんともたくましい行動だな。
「仮に、世界が平和になったらポイッと元の世界に戻されてはタダ働きですしね」
弓を持った奴も同意してローブの男達を睨みつける。
「こっちの意見をどれだけ汲み取ってくれるんだ?話によっちゃ俺達が世界の敵に回るかもしれないんだから、覚悟して置けよ...」
これあれだ。
異世界での自分の立場と、権利の主張だわ。まったく、どれだけコイツらはたくましいのか。
なんだか負けた気分だ。
俺の中での奴らの好感度を下げて置くか。
「ま、まずは王様と謁見して頂きたい。報酬の相談はその場でお願いします...」
ローブを着た男の代表が重苦しい扉を開けさせ、俺達に道を示した。
......俺の中で段々とドッキリと言う可能性が薄れてきた。こんなにもリアルな情景を作り出すにはいったいどれ程のお金額がかかるのか。
例えドッキリであるとしても、相当なほど大掛かりなセットに違いない。
まったく、もう少しは楽しむ事が出来そうだ。
「……しょうがないな」
「ですね...」
「ま、どいつを相手にしても話はかわらねえけどな」
たくましい奴らはそう言いながら付いて行く。俺も置いて行かれないように後を追った。
それから俺達は暗い部屋を抜けて石造りの廊下を歩く。
もしドッキリであるとするならば、経費削減の為......なのかな。いや、それだとしても凄い設備である。
ここは本当の異世界......なんてな。
……なんだろう。空気が美味しいと表現するだけしか出来ないのは俺の語彙が貧弱だからだろうか。
ネットでならもう少しリアルな表現で感想を言えたのかもしれないが。生憎とここにはネットがない。
窓から覗く光景に俺達は息を呑む。
どこまでも空が高く、そして中世ヨーロッパのような町並みが其処にはあった。
凄い、本物みたいだ......いや、本当にここは異世界なのかもしれない。
そんな事をさっきからずっと思っている。
異世界なら色々と納得が行くし、なにせよこれからの冒険が楽しみである。不謹慎かもしれないが。
だとすれば、彼らには俺からの好感度をこれ以上下げて欲しくはない物である。
冒険で同じパーティーを組むかもしれないのだから。
だが町並みに長く目を向ける暇は無く、俺達は廊下を歩き、謁見の間に辿りついた。
「ほう、こやつ等が古の勇者達か」
謁見の間の玉座に腰掛ける偉そうな爺さんが俺達を値踏みして呟いた。
なんとなく印象が良くないなぁ……。
人を舐めるように見る奴を俺はどうも好きになれない。
「ワシがこの国の王、オルトクレイ=メルロマルク32世だ。勇者共よ顔を上げい!」
顔を下げていないのだが、と言う突っ込みを必死に抑えながら、俺は王様を見つめた...。
盾の精霊「どっきりじゃないよ」