あの後、いかにも王様らしい王様が終末の予言、と言う例の本通りの内容を話してきた。
"――曰く、この世界には終末の予言と言うものが存在する。いずれ世界を破滅へ導く幾重にも重なる波が訪れる。その波が振りまく災害を撥ね退けなければ世界は滅ぶと明記されていた。
その予言の年が今年であり、予言の通り、古から存在する龍刻の砂時計という道具の砂が落ちだした。"
いかにもファンタジーでありそうな展開だ。
当時は余り気にしていなかったが、これがドッキリで無いと仮定するならば。
もしかすると、この世界の起源に関わっているのかもしれないな。とは言え、フロム脳で考えたただのありきたりな考察にしか過ぎないのだけども。
"――龍刻の砂時計は波を予測し、一ヶ月前から警告すると明記されている。伝承では一つの波が終わる毎に一ヶ月の猶予が生まれる。
当初、この国の住民は予言を蔑ろにしていた。しかし、予言の通り龍刻の砂時計の砂が一度落ちきったとき、災厄が世界に舞い降りた。
次元の亀裂がこの国、メルロマルクに発生し、凶悪な魔物が大量に亀裂から這い出てくる。
波と魔物は辛うじて国の騎士と冒険者が退治することが出来たのだが、次に来る波は更に強力なものとなると記されている。国民と女王は危惧した。
このままでは災厄を阻止することが出来ないと......。"
そこで国の重鎮達は伝承に則り、勇者召喚を行った。
というのが俺達が召喚された理由らしい。
ちなみに言葉が分かるのは俺達が持っている伝説の武器にそんな能力があるそうだ。
・・・それはそうと、何故か先程から俺の脳内に終末の予言。図書館で見た内容と同じ物が浮かんでいるのだけれども。ドッキリかドッキリでないかの確認の為にも、そろそろ良い頃合いだろう。
「ん?貴方・・・いったい何を?」
周囲に居る奴等の事も忘れ、ソワソワとしながら俺は空間をなぞってみる。
すると、目の前にステータス画面が投影された。
岩谷尚文
職業 盾の勇者 Lv1
装備 スモールシールド(伝説武器)
異世界の服
スキル 無し
魔法 無し
「――異世界万々歳!!」
軽くステップを踏みながらステータスを確認する。
仕方がない。普段神視点でしか見ることの出来ないステータス魔法。それをまさかリアルで見れるなんて思ってもいない事であった。
「へぇ、ステータス画面か。流石異世界だな」
「この程度VRMMOで見れるだろ...異世界に召喚されて嬉しいのは分かるが...」
VR......?聞き間違いだろうか。
それはそうと、先程から他の勇者からの白い目で目線を向けられているのだけれども......。
――この頃、違和感の正体に気付けていたらどれ程良かった事なのか。...当然の事ではあるのだが、岩谷尚文はまだ知ることが出来ない。
それとも、何か不備でも......?
そんな事を呟こうとした時、後方に居たローブを被った男が控え目な声で言った。
「ゆ、勇者様方...自己紹介を願いたいのですが...」
そう言えば、まだ話していなかったな。
――そう他人事のように俺は呟いた。
尚文君のキャラ崩壊が進んでる・・・?
後で堕ちるから多少は大丈夫なはずさ。(震え声)