2095:逢魔再臨 作:常磐ソウゴ推進派Quartzer
2095:オーマ・リバース
カチ、カチ、カチという時計の秒針の音が部屋に響く。部屋の中には白髪の壮年の男性とストールを首に巻く青年の二人のみ。
ここは『クジゴジ堂』という時計の修理を専門としていた店だ。店内にはいくつもの時計が正確な時間を刻んでいる。
現在は前店主が他界した為に修理ではなく買い取りをしている。
『………』
「我が魔王、遂に2068年が終わりを告げようとしているようだ」
『この時間軸はどの世界にも繋がらなかったか』
「やはり、1999年のテロを防いだ超能力者の出現に伴う魔法の技術化や2030年の寒冷化が原因かと」
『私がスウォルツやQuartzerの野望を防ぐだけでは駄目なのだな』
「いえ、貴方は最善の最高の未来の『一つ』を造り出した。ここまで『一人』で…」
『我が忠臣『ウォズ』よ。よくここまで、私に付き添ってくれた』
「いえ、我が魔王に尽くすことこそ我が喜び。私の心は今も昔もこれからも変わらず」
『そうか…なら一つ王の戯言を聞いてくれ。久々に夢を見た』
「!…それは予知夢ですか?」
『ああ…恐らくそうだ。2095年、仮面ライダーという存在も過去の物となり都市伝説として語られる時代にアナザーライダーが現れる』
「……あり得ません。タイムジャッカー無き今、アナザーライダーの現れる可能性は…」
『それは私の死後もか?ライダーの歴史を継承するものが居なくなれば、可能性はある』
「………それで我が魔王はどのように?」
『ライダーの力が悪用されているのなら見過ごすことは出来ない』
「しかし、タイムマジーンのないこの時間軸では…」
『ウォズよ、時を統べる私には不可能はない』
壮年の男性が手を前へ掲げると空間が歪み、未来の『クジゴジ堂』へ繋がる。
「我が魔王…何故そこまでして未来へ?」
『それがライダーの歴史を継承した我が役目。例え未来であろうと民を守るのは王の責務だ』
「……やはり、貴方は変わらない」
『……これでも変わったつもりなのだが…』
「それでは我が魔王、未来でまた」
ウォズはストールで全身を包むと姿が見えなくなった。相も変わらず、不思議な男だと壮年の男性は思う。
『2095年か…』
男性が空間の歪みを越えるとその歪みも『クジゴジ堂』もまるで元から存在していなかったかのように消え去った。
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「ククク…思いしれ、俺を利用していた魔法師ども…」
男を中心に魔方陣が展開され、周囲に火炎が拡がる。スプリンクラーが熱を感知し、鎮火するために水を撒くが魔法で展開された火が消えるはずもない。火炎はスプリンクラーも破壊し、拡がり続けるのだった。
『飛電インテリジェンスは新商品として新たな…』
「皆さん、避難誘導に従って速やかに移動してください!」
「押さないでください!」
「現在、一階で火災が発生してます。皆さん、冷静に避難してください!」
休日のショッピングを楽しむ人達も多いビルでの火災。多くの人々は我先にと逃げるのに対して一人の少女は冷静に状況を見据えていた。
「(おかしいです。ただの火災なら耐火性のスプリンクラーがここまで速く壊れるはずは…やはり魔法師の仕業…)」
「おい!君もはやく避難を!」
「私は大丈夫です。貴方ははやく避難を」
そういうと少女、司波深雪は火災の発生する前に感じた。強力な魔法の行使されたであろう場所へ向かう。
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「はははは!燃えろ!燃えろ!全て消えてしまえ!これがお前たちが馬鹿にした力だぁ!」
深雪が魔法の発生源に向かうと黒いフードを被った男が魔法で火災を起こしている犯人を発見した。
「(なんて狂気じみた…気分が悪いわね。でも、今はそんなことよりもあの魔法を止めるのが最優先ね)」
「座標を確認…魔法発動…」
深雪の魔法は現実の事象を書き換え、ホールに拡がる火炎を消し去った。
「馬鹿なぁ!一体何が……誰だ!」
自身の魔法が阻害された驚き、周囲を見渡すと深雪の姿を発見した。
「お前か!何のつもりだ!」
「貴方こそ、こんな事件を起こして何のつもりですか!魔法を使った犯罪を行うなど許されません」
「誰が許さないんだ!国か?軍か?それとも俺を見下したした協会の奴らか?!」
「分からないのですか?魔法師なら理解できる筈です。魔法を行使した犯罪の重さが…」
「ガキの癖に生意気なぁ!俺を見下すなぁ!!」
男は拳銃型のCADを取り出すと深雪へ向ける。そして、もう一度行使しようと
「………何故、魔法が発動しない!まさか、領域干渉か!」
「……これで終わりですか?」
「くっ!?何処か、何処かカバー出来ていない領域が!」
四方八方へCADを向けて魔法を発動するが深雪の領域干渉によって起動することは無かった。
「惜しいですね…これほどの力を手にしておきながら犯罪に走るなんて。最早手遅れですが自首してください」
「(惜しいとはなんだ?まるで既に処理済みの物を見るよう目で俺を見るな!せめて、こいつだけでも道連れに?!)」
男が懐からナイフを取り出し深雪へ駆け寄ると…
「俺の妹に何をする」
「お兄様!」
深雪の兄である達也が飛び出しナイフを素手で掴むと握り潰す。
「ひぃ?!」
その光景に男が驚き隙を晒すと達也は体術で叩き伏せた。
「死んでいませんよね?」
「気を失わせただけだ。後遺症も残らないような箇所を狙ったから大丈夫だろう。それよりも急ぐぞ、深雪。緊急時とはいえ魔法師協会支部の付近で騒ぎ過ぎた」
「はっ、はい!」
二人がその場を去ろうとすると背後から男が立ち上がる気配を感じ、達也は振り返り深雪を庇うように自身の後ろへ隠す。
「(確かに意識を奪った筈だ。こんな短時間で回復するのか…)」
「もうお止めなさい。貴方ももう限界の筈です!」
「ふざけやがって!俺の力はこんなものじゃない!」
深雪の忠告を無視した男は懐から何かを取り出すとスイッチを押す。
『あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!』
男は苦しむようにして蹲ると徐々に体が変化していく。赤い宝石を嵌め込んだ指輪のような頭部に腰には骸骨の掌の意匠があるベルト。
それは正しく化け物と呼ぶべき姿である。この瞬間、2095年にアナザーライダーが誕生した。
『はっはっはぁ!』
アナザーウィザード・フレイムは深雪の領域干渉を無視した魔法を発動して周囲を火の海に変えた。
「その姿は……」
『この力があれば俺を道具のように扱いやがった奴等に復讐出来る!』
「残念だが、その力を使った時点でお前の望みは叶わない…」
達也と深雪との間をアナザーウィザードを挟んだ反対側に青年が現れた。姿格好はごく普通だが言葉は落ち着きの有るものだった。
『貴様はなんなんだ!』
「仮面ライダージオウ……」
青年が腰に機械を腰へ当てるととそれはベルトの様に巻き付く。
「お前にはその力をどのようにして入手したのか訊きたいのだが?」
『この力は俺のものだ!誰にも渡さん!』
「そうか…なら、実力行使といこうか」
青年は男が化け物へ変化する際に使用した物に似た物を手に取るとスイッチを押した。
それを腰の機械へ取り付け構える。すると、背後には時計のような魔方陣?が展開された。
「変身…」
青年は腰の機械にある正面のユニットを回転させた。
魔方陣?に包まれた青年の姿は瞬く間に鎧を纏ったかのように変化した。
「祝え!全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え、過去と未来をしろしめす時の王者。その名も仮面ライダージオウ。再臨の瞬間である」
『ウォズ……』
鎧を纏った青年の視線の先には先程大声を出していたもう一人の男性の姿がある。いつの間に居たのか、気配を感じることのできなかった達也は警戒した。
「さあ、我が魔王!この『逢魔再臨暦』に新たな一頁を!」
『はぁ!』
『ぐあぁ?!』
ジオウに斬り付けられたアナザー・ウィザードの体から火花が散る。
『俺はぁ!この力でぇ!』
展開された魔方陣からは火山弾のようなものが降り注ぐ。ジオウはその魔法を剣で切り払い、凌いでいる。
『……お前の悔しさは理解しよう。しかし、ライダーの力を復讐の為に利用させはしない』
剣を変形させ、銃にすると降り注ぐ魔法を撃ち落とし隙だらけのアナザーウィザードへも攻撃を行う。
『ぐぅ………』
攻撃を受けたアナザー・ウィザードは地面を転がる。ジオウは『ウィザード・ライドウォッチ』を取り出すとベルトの空いている方へ装着する。
『ウィザードにはウィザードだ』
ウィザード・ライドウォッチのスターターを押すとベルトの正面ユニット『ジクウサーキュラー』を回転させる。
赤い魔方陣がジオウの頭上に現れ、それが足下まで降りるとジオウの姿が変化した。
『さあ、ショータイムだ』
「祝え!全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え、過去と未来をしろしめす時の王者。その名も仮面ライダージオウ・ウィザードアーマー。ライダーの力を再び継承した瞬間である」
『ウォズ、満足したか?』
「ええ、我が魔王。ご自由に…」
『ならば、早々に決めさせて貰おう』
ジオウとウィザードのライドウォッチのスターターを押すと再び『ジクウサーキュラー』を回転させる。
『ふっ!はぁ!!』
ジオウは助走を付け、アクロバティックに側転やバク転をすると高くジャンプする。
高さの限界点に到達すると急降下キックをアナザー・ウィザードへ放つ。
『ストライク・ブレイクキック!』
『ぐあぁ……』
必殺技を食らったアナザー・ウィザードは暴散し、それを背後にジオウはポーズを決めた。
放火魔法師の体からアナザーウォッチが排出されると粉々に砕け散った。それを見届けるとジオウは肩の緊張を解いた。
『ふぃー…』
「お疲れのようだね?我が魔王」
『そうだな…この時代で初の買い物に来たというのに…。また日を改めるとしよう』
腕のライドウォッチ・ホルダーからバイク・ライドウォッチを取り外し、地面へ放る。すると、ライドウォッチはジオウの専用バイク『ライドストライカー』へ変化した。
『ウォズ、後ろへ乗れ』
「仰せのままに…」
そのまま去ろうとするとする二人へ達也が声を掛ける。
「待ってくれ。貴方達には聞きたいことがある…」
『残念だが、私達には無い。今回の事は悪い夢だとでも思って忘れてくれ』
四人の間に緊迫した空気が流れる。達也も深雪も目の前の二人との戦闘を仮定して魔法式を起動できるように構える。
『我々は君達と敵対するつもりはないのだが……』
ジオウが達也達へ手を向ける。達也も魔法を発動しようとCADを素早く構えるが体が『動かない』。まるで『時が止まった』ようだった。
「(動けない?!これは一体…)」
『先程言ったように君達に危害を加えるつもりはない。我々が去れば、拘束も解ける。では、また何処かで会おう』
そう言うとジオウとウォズの二人は達也達の前から去っていった。二人の姿が見えなくなってから数秒後に二人の拘束も解除され、自由に動けるようになった。
「……お兄様、あの二人は…」
「分からない、戦闘に使われていた魔方陣も未知の物だった。それに最後の力は…」
達也には理解できた。最後のあれは実際に時を止めたのだと。その様なことを実行出来、尚且つその中でも動ける彼らに達也は恐怖するのだった。
達也の最優先事項は妹の深雪を守ること。故にあの力を使われても守ることが出来るのかと考える。
「お兄様、移動しましょう…」
「ああ…そうだな。もう少しすれば警察も来るだろう。監視カメラの映像も『母上』に連絡して手回しして貰わなければいけないな」
「すみません…」
「深雪が謝る必要はないよ。おれは深雪が無事なだけでも嬉しい」
「お兄様……」
二人は手を繋ぎ、まるで恋人のように歩いていった。
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「達也殿は極めて迅速に事態を収束させました」
「実際に働いてくれたのは深雪さんで、達也さんは棚から牡丹餅という気もしますが…。命じた仕事に成果を出したのだから不満を唱えるのは筋違いよね」
「真夜様、それでもう一つの件ですが…」
「ええ…ジオウ…仮面ライダージオウ…」
真夜の脳裏には2062年に行われた少年少女魔法師交流会での崑崙方院によって拉致された時の事を思い出された。
『止めてください!離してぇ!!』
四葉家という優秀な魔法師の血筋であろうと真夜は当時、12歳の少女。抵抗空しく、引き摺られるようにして連れ去られようとしていた。
婚約者であった七草弘一は重症を負いながらも真夜を助けようと抵抗した。弘一も拉致されることは無かったが、真夜を助けるまでに至らなかった。
その結果、真夜一人が拉致されることとなった。拉致された魔法師の末路など想像するだけでも恐ろしい。
良くて人の形を保って、悪ければ人としての最低限の機能を残した状態で標本だろう。真夜自身も理解している為に必死に抵抗しているだ。
更に魔法師とは整った容姿の者が多く。真夜もその例から漏れておらず、12歳の少女の幼さを残しつつも美しい容姿をしている。
そんな彼女が敵対組織に拉致されれば、女性としての尊厳を失う事となるだろう。
『(ごめんなさい…姉さん…もう会えないかも…本当にごめんなさい…)』
最早、無駄だと抵抗も諦め日本に居る双子の姉に謝っていると…
『待て……その少女を何処へ連れていくつもりだ…』
『爺さん、そこを退け』
真夜の前に一人の壮年の男性が現れた。落ち着いた声色に対してその言葉の節々から怒気を感じる。
『お前たちが己の民の為に戦争をするのなら。私にそれを否定することは出来ん。だか、お前たちが今からその少女に対して行う行為は決してそうではないだろう?』
『黙れ、シジイ。さっさと其処を退けぇ!?』
拉致犯達が魔法を発動するが…
『愚かな…』
壮年の男性が手を前へ突き出すと魔法式が停止した。魔法式を阻止するのなら見たことがある真夜も『起動した魔法式』が『消えずに停止』した光景には驚いた。
『何しやがったぁ?!』
『お前達が幼き子供から未来を奪うというのなら。私は止めさせてもらう』
男性の腰にはいつの間にか『黄金のベルト』が装着されていた。
『変……身…』
『な、なんだ!?その姿は?!』
『お前たち!撃てぇ!!』
先程、魔法式が止められた男たちは魔法は効かないと判断したのか今度は銃を放つ。
オーマジオウへ放たれた銃弾は全て、空中で停止する。
「クソっ!だったら、これならどうだぁ?!」
拉致犯の一人が真夜の頭部へ銃を突きつけた。
『な、なんなんだよ!これはあぁぁ……』
オーマジオウが腕を振り払う。すると、空中の銃弾や拉致犯達の姿が泡のように弾けて消え失せた。
真夜が目の前の現実に呆けているとオーマジオウが声を掛ける。
『は、はい!助けてくれてありがとうございました…』
オーマジオウは真夜を空間の歪みへ導く。
『あっ!あの…お名前を訊いても宜しいですか?』
『いえ、そうではなくて…本当の御名前は駄目ですか?』
オーマジオウは少し悩むようにして考え込む。
『待ってください!』
真夜の制止も空しく。空間の歪みは真夜を包み込むと日本へ送り、消えるのだった。
『常磐…ソウゴさん…』
これが四葉真夜と常磐ソウゴ、オーマジオウの出会いだった。
次回の仮面ライダージオウは…
「私達は一科生と二科生の差別を無くし…」
「我々、ブランシュこそ新たな時代の王となる!」
「いいや、彼らは落ちこぼれじゃない。皆、それぞれが何かの天才なんだ」