薫君視点
顔を赤らめ酒気を纏う美女2人から肩を組まれ軽く左右に揺さぶられながら、なぜこんな苦行を行なっているかを考える
確か・・・結局キャノンボール・ファストで簪さんとの差を詰めはしたけどギリギリで負けてしまった
ヴェンジェンスのチャージもままならなかったし仕方ないか
そんな感じで予選敗退したから一夏さんと一緒に残りのレースを見て、それから・・・
そこから何故かモヤが掛かった様に曖昧に記憶を思い出せない、なんだっけ?
あれ? なんか前にもあったなコレ・・・そう、気付いたらIS学園研究区間D-35多目的倉庫に居たんだ
なんか既視感の有る配置で料理や飲み物、飾り付けとソファ類があって、なんかダメな大人になってる
「ダメだよ千冬、お祝いだからって飲み過ぎちゃ」
「くっころ・・・」
相変わらず爽やか系の庵さんが俺から
「目を離した隙に・・・ほら博士、あっちで水飲もうな、水」
「えぇ〜やだぁ〜もっと薫君と話する〜」
「黙れ酔っ払い、スコール」
「行きましょうね、博士」
と颯爽登場したオータムさんが篠ノ之博士を説得したが、博士がゴネタのでオータムさんが半ギレでスコール さんを読んで2人で篠ノ之博士の両脇を抱えて強制連行してゆく、2人共 強いなぁ
「災難だったな、八月一日」
名前を呼ばれ、そちらを向くとジャンパースカートタイプの制服を着たマドカが肩を竦めて立っていた
「ははは・・・本音を言えば、もう少し早く助けて欲しかったよ」
「無理を言うな、私では千冬姉さんも篠ノ之博士も抑えられない。事態が悪化して私まで餌食になる可能性すらあるだろう? 」
とマドカは言う、その表情を見る限り本気で思っている様で俺を見捨てる判断をした様だ
実際会った回数なんて数回だし、これが普通かも知れない
と思い苦笑しながらチラッと目を動かすと遠くの壁際で先程のダメな大人2名がハタキさんの前で正座して怒られているのを見つけたが見えなかった事にしておく
「さてと、一夏が お前をまっているぞ? まだ夏の残滓があるとはいえ夜風は冷える、早く行け」
マドカはツカツカと俺に歩み寄ってきて隣へ立ちバシンと俺の背中を叩き言う
「分かったよ」
結構強く叩かれた背中の痛みを耐えながら俺は歩き出す、目的地は何となく分かる
多目的倉庫を出て少し入り組んだ通路を進み階段を上がった先に有る鉄扉を開き屋上へと出る、そこにはフェンスの上に座り月を眺めている一夏さんがいた
「・・・来てくれたんだ」
「お待たせ、待った? 」
「ううん、そんなには」
鉄扉の開く音で俺に気づいたのか、一夏さんは振り返ってニコッと笑み言う。うん、可愛い、俺の彼女は可愛いぞ
「誕生日おめでとう一夏さん」
「ありがとう、薫君」
俺は一夏さんの隣に座り彼女へ言うと彼女は再び嬉しそうに笑む、それを見つつポケットからラッピングされた包みを取り出して
「これ良かったら」
「ありがとう」
誕生日プレゼントを渡すと一夏さんは更に嬉しそうな表情をして、更に可愛いと感じる
「開けていいかな? 」
「どうぞ、気に入ってくれると嬉しいな」
本当に嬉しそうに一夏さんは丁寧にラッピングのリボンを解き箱を開き
「これ・・・」
「一夏さんの誕生石を使ったネックレスだね」
月明かりを浴びて蒼く光る石を見て一夏さんが目を丸くしていたのでサラッと言ってみる
まさか誕生日プレゼントにサファイアとクリソプレーズをあしらったネックレスを貰うとは思って無かったみたいで一夏さんは固まったままだ、可愛い
まぁ普通なら、ただの高校生が手を出せる代物では無いけど、データ提出の対価に結構な金額を貰っているし、学園生活では中々お金を使わないから それなりに有った訳だけどね?
「わ、わ、わ、悪いよ! 絶対高いよね?! 」
「まぁそりゃ本物のサファイアだから、ね? 」
ワタワタと焦る一夏さんが可愛いなぁと思いつつ答えると
「ね? じゃないよ?! 嬉しいけど、これはぁぁあ」
「ちなみクーリングオフは非対応なので悪しからず」
可愛く焦る一夏さんに笑みながら言い、箱からネックレスを取り出してフェンスから降りて一夏さんの後ろに回って彼女にネックレスをつけ
「うん、似合ってるよ」
「あ、ありがとう」
一夏さんは観念したのか顔を赤らめて言う、やっぱり可愛い
「まだ残暑が残ってるとはいえ夜風に当たり過ぎるのは身体に悪いし、そろそろ戻ろか」
「そうだね、そろそろ姉さんも懲りただろうし、ハタキさんを止めないとね? 」
俺の提案に一夏さんは答え、クスリと笑み言う
その表情は、やはり可愛く、綺麗だった
俺は、この笑顔を守りたいと強く思い、改めて誓う絶対に強くなって彼女を守る事を
俺は弱い、俺1人では弱い、しかし俺は1人じゃない
彼女達に報いる為にも頑張ろう
目標は高く、モンドグロッソ優勝と言った所かな?
よし、そうしよう。 目指せモンドグロッソ優勝!!
お待たせしました