一夏ちゃんは戦わない   作:銭湯妖精 島風

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※5年後です

真エンディング



薫君視点




ラストシューティング

 

 

 

もう慣れた換装作業を受けながら俺は集中する、この一戦は負けられない

 

 

「漸く此処まで来たなマスター」

 

「そうだね陽炎」

 

いつもの様に俺の右側を漂う陽炎の言葉に頷き返答する

 

そう、俺達は漸く此処までやってきた。この日まで長い道のりが有った、負けた続きの道のりだった、それでも前を見据えて俺は・・・俺達は此処まで来た

 

 

「今日、ここでマスターが勝てば歴史に名を刻む事ができる。人類初として」

 

 

「それも悪くないかも知れない」

 

 

人類初の男性IS適合者として既に刻まれてる感は否めないけど、少なくとも今日この戦いに勝てば人類初の男性IS搭乗者(シグルド)の称号を得る事が出来る

 

そんな感じで陽炎と会話をしていると

 

 

「準備完了、あとは勝つだけだね」

 

「ありがとう」

 

 

一夏が俺に微笑みながら報告してきたのでお礼を言い、カタパルトの先を真っ直ぐ見据える

 

 

一夏にはIS学園に入学した時からお世話になりっぱなしだな、1年の秋にあった修学旅行で京都に行った時も助けてくれた

 

打鉄改の強化改修を都度してくれたし、私生活でも ずっと俺を支えてくれた、だから俺は今日、今日だけは勝たなければならない

 

「一夏、この試合に勝ったら聞いて欲しい事があるんだ」

 

「分かった、待ってる」

 

俺の言葉に一夏は短く答え、作業をしてた整備士達に声を掛けてピットから待機場へ引き上げていく

 

 

「よし、行こうかマスター」

 

「あぁ、行こう陽炎」

 

 

俺は陽炎の言葉に答え主機の出力を上げてカタパルトの勢いを受けてアリーナへ飛び出し、内壁をなぞる様に飛び待機位置で静止して対戦相手を真っ直ぐ見据える

 

 

「待っていましたわよ、薫さん」

 

「そいつはどーも、遅刻してないからセーフだろ?」

 

真剣と言うよりはワクワクした様子でオルコットが言い俺も少し軽い調子で返答するとオルコットがクスリと笑う

 

 

「そちらの意味ではありませんわ、まぁ言いでしょう。提案がありますの」

 

 

そうオルコットは言い芝居かかった身振りをし

 

 

「漸く念願の舞台、そして今一度 私は貴方を試さねばなりません。あの日 私を救ってくれた彼女と貴方の未来を明るく照らす為にも。故に貴方には全力で戦って頂きます、互いに手の内は知り尽くしていますしね」

 

 

「あぁ、言われなくても全力で死に物狂いに足掻いて足掻いて勝ってみせる」

 

 

オルコットは俺の返答に満足したのか頷き、目つきが戦闘モードになり得物を展開したので俺も焔備を展開し構える

 

そしてカウントが空間投影されカウントダウンが始まり、カウントがゼロになった瞬間、試合が始まる

 

 

「陽炎!」

 

「任せよマスター」

 

俺が陽炎に指示を出すと焔改のミサイルポッドからマイクロミサイルがバラ撒かれアンチレーザースモークが散布される

 

「やはり初手はそうなりますわよね!」

 

「やらなきゃ面倒になるからね!」

 

アンチレーザースモークの中からオルコットが飛び出してナイフを振って来たので対物シールドで受けて身体を捻り距離を作り焔備を撃つが、オルコットは直ぐに体勢を立て直して左右に避けながら俺から距離を空けていく

 

 

「やっぱ一筋縄には行かないか」

 

「そうだの、学園生活での約3年で互いの癖や思考・戦術は把握しておるからな、初手アンチレーザースモークもアヤツも理解しておった」

 

 

そう俺達は互いの手の内を理解している、このモンドグロッソ決勝まで奥の手を隠し切れる程の余裕なんてある訳が無い

 

IS学園での3年間と卒業後の研究、手札の数は互いに分かり切っている状態だ

 

 

そんな状態で勝敗を決するのは、もはや意地と気合いだろう多分

 

 

「マスター、高エネルギー反応じゃ来るぞ」

 

「了解」

 

俺は陽炎の言葉を聞き対物シールドを前面へ出して衰退していないレーザーを防ぐ

 

 

「あらあら、やはりダメでしたか」

 

「よく言うよ、2年前より精度上がってるじゃないか」

 

 

自身の得物を構え楽しそうに言い笑うオルコットに素直な感想を述べてアンチレーザースモークを更に散布し焔備で牽制を図る

 

 

「油断出来ぬな、フレキシブルを用いて弾道を作るとは」

 

「ほんと、厄介だよね」

 

アンチレーザースモーク内ではスモーク内に含まれる微粒子がレーザーに干渉して減衰して威力を著しく低下させる訳だが、干渉した微粒子はレーザーに当たると消失してしまい濃度が下がり効力が下がっていく

 

だから適時アンチレーザースモークを散布し続けなければならない

 

そしてレーザーの通った道を再び塞ぐまで僅かな時間が必要な為、レーザーを連続で放つ事でアンチレーザースモークにトンネルを作る事が可能なのだが、誤差なく通すのは、かなりの技術を要するのだがオルコットは出来るんだよね

 

 

だとしても、俺に出来るのは足掻いて足掻いて足掻いて這いつくばっても足掻いて勝利を諦めずに前へ進むだけなので、出来る事を試行錯誤し続ける

 

 

なんとかオルコットへ応戦する事、2時間と少しが経過し俺もオルコットも肩で息をしながら向き合って真っ直ぐ互いを見据える

 

 

「素晴らしい、やはり貴方が私の好敵手です。もっと戦っていたいですが、次が打止めですわ」

 

 

「それはどうも、もう小細工は無しだ。俺もこれで打止めだしね」

 

 

オルコットは破損したビットやレーザーライフル、装甲を棄てレイピアを構え俺もならい焔備と焔改のミサイルポッドを捨て、呪われていそうな黒剣を右手に握りしめて集中する

 

 

突き穿つ白銀の枝(ミストルティン)

 

復讐するは我にあり(ヴェンジェンス・イズ・マイン)!!」

 

 

互いに放つ死力を尽くし出し切った最後の一撃が交差し閃光が辺りを覆い尽くし俺達の姿を飲み込み

 

 

 

「・・・参りましたわ、私の負けですわね」

 

 

「俺の・・・俺達の勝ちだ」

 

 

大破したブルーティアーズを纏い地面に付しているオルコットが清々しい表情で言い、俺は答えて半分ぐらいしか刀身が残っていない黒剣を突き上げる

 

 

その瞬間、試合終了のアナウンスが響きアリーナは歓声に染まる、これはこれで悪くないかもな、うん

 

 

それから一旦ピットへ戻り打鉄改3を格納してジャージを着て表彰式へ出席してメダルを貰い、その後に特設会場でインタビューを受けていると一夏が明石を伴って通りかかったので

 

「一夏、聞いて欲しい事があるんだ」

 

「なにかな?」

 

まさかインタビューを一旦止めて話かけてくると思ってなかったのか少しキョトンとしている一夏が可愛いな、と思いつつ

 

 

「織斑 一夏さん、俺に貴女を一生守らせてもらえませんか? 結婚して下さい、お願いします」

 

 

「はい、喜んで」

 

 

俺がリングケースを取り出して片膝をつき彼女に言うと、一夏は最初キョトンとしていたが、すぐに満面の笑みを浮かべ返事をくれ、報道陣が騒がしくなったけど、まぁ仕方ないか、うん

 

 

きっと明日の新聞はシグルド誕生と俺の結婚の話が載るんだろう、多分

 

 

俺は漸く人生のスタートラインに立った所だ、一夏と共に1つ1つ噛み締めて生きてゆこう

 

 

それが俺の、俺達の生きる意味だと思うから

 

 

 

 






お待たせしました


今度こそ最終回です


本当は、もっと細かく設定をしていたんですが、描写能力が低くてダメでした。すみません


詳しく書いてない裏設定とか沢山あります、マジで沢山あります。書く予定だったけど削ったネタもありました


明石と陽炎の百合な話とか、マヤマヤと静さんが付き合ってるって設定とか、本当 色々と書けてない話が有ったんですが、削りました。この辺は反省点として次回の教訓にしたいと思います


では改めて、この様な拙い作品を読んでいただきありがとうございました


約15ヶ月もの長い執筆にお付き合いいただき、大変ありがとうございました、コメントや評価を頂けた事、とても嬉しかったです


既に次回作は始動していますので宜しければ引き続き、そちらも読んでもらえたら嬉しいです


本作は今回で最後になります、本当にありがとうございました



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