一夏ちゃんは戦わない   作:銭湯妖精 島風

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下準備をする一夏ちゃん

 

 

 

あれから2人と色々と話をして、やはり鈴は中国代表候補生で専用機を持っている事が分かり、鈴は努力の天才だと再確認して親友として嬉しい反面、薫君のサポーターとしては、少し頭を悩ませる状況になってしまった

 

と言っても私に出来る事は、あくまでも彼のサポートだけ、戦闘技術に関しては全くチカラになれない、だからパパッと裏技で情報収集して薫君に出来る限り勝率の高い作戦を伝え、アリーナの予約が取れた日は反復練習をしてもらう事にしてオルコットさんに、練習相手をお願いしておいた

 

 

そんなこんなで週末になり、アリーナの予約が取れなかったので私は校外に外出する事にし、外出届を姉に提出して私服を着て校外へ出る

 

制服だと目立つしね?

 

休日だけあって私と同じ様に外出している学園の生徒に紛れて1時間程モノレールに揺られ実家のある最寄りの駅で降り、私は実家では無く箒へのプチドッキリの為の下準備を兼ねて目的地へと向かう

 

駅から徒歩で10分程の目的地に辿り着き、私は いつもの様に入り口の引き戸を引いて中に入ると

 

「いらっしゃいませ、あぁ一夏か。今日はどうしたんだい?」

 

肩に掛かるぐらいの黒髪を襟足で結っている私が会いに来た男性が出迎えてくれた、今日は比較的空いている様で良かった

 

「こんにちは庵さん、お願いしたい事が有って」

 

「お願いしたい事? また千冬に内緒で取り寄せたいキットがあるのかな? 」

 

私の言葉を聞いて庵さんが揶揄う様にクスリと笑み言う

 

「違うよ、実はIS学園に箒も入学してて、ちょっとサプライズをね? ほら、箒は庵さんの事を知ってるけど、姉さんと付き合ってる事を知らないでしょ? 」

 

私の説明を聞いて庵さんは、なるほど と頷き

 

「確かに、サプライズだね? 俺は何をしたらいい? 」

 

と庵さんに尋ねられる

 

「ん〜そうだなぁ・・・箒を連れてくる日に居てくれれば大丈夫かな? 姉さんも連れて来たいけど・・・」

 

私は腕組みして考え呟く

 

姉を織部模型店(ここ)に連れてくるのは難しいかも知れない、何だかんだ多忙を極めているし

 

 

とはいえ、たまには姉も恋人との時間を過ごして欲しい、私の姉は頑張り過ぎる質だし?

 

 

そんな腕組みして頭をひねっている私を見て庵さんは苦笑する、彼も姉が多忙なのを知っているからだ

 

 

織部模型店の店主である 庵さん・・・ 織部 庵は姉の恋人である

 

歳は26歳で姉の2つ歳上、元々は篠ノ之道場の門下生で私達姉弟(しまい)は そこで彼と出会った

 

だから箒は庵さんの事を知っているし、私が(おとこ)であった事も知っている、私にとって庵さんは優しく強い兄貴分であり順調に行けば義兄になる人

 

そして私にガンプラを教えてくれた師匠で、彼を超えるガンプラを作る事が私の目標の1つだ、まだまだ道は長そうだが

 

とまぁ、十年来の中な訳だ

 

「とりあえず姉さんの方は話はしてみる事にしようかな? あ、そうそう 塗料が無くなってて買い足さなきゃいけないんだった」

 

私は腕組みを解き庵さんへ言うと、そうだね と返してくれたので、ガンプラ用の塗料が有る棚へ移動する

 

「今度あるフォトコンテスト、庵さんは出すの? 」

 

塗料の入った容器を手に持ち見ながら尋ねると

 

「もちろん、やっぱりビルダーとしては参加したいからね。ちょっと張り切り過ぎて徹夜しちゃったよ」

 

と庵さんは苦笑して言う

 

「ははは、庵さんらしいね。でも あまり徹夜すると姉さんが怒るよ? 無理するなって」

 

軽く笑って庵さんに言うと彼は だよね〜 と困った様な表情をして言う

 

 

「よし、これぐらいに・・・!!?」

 

減ってきた塗料を幾つか手に持ちレジの方へ進み、あるモノが目に入ってしまい思わず立ち止まってしまう

 

「PG 1/60 ユニコーン 最終決戦仕様だと!? 約4万円、うぅ・・・」

 

前から欲しかったモノを目の前にして私は睨みつける様に目の前の箱を凝視し、自分と戦う

 

手持ちの資金は塗料を買うぐらいのつもりだったから流石に足りない、だが中学時代にコツコツとバイトをして貯めた預金が銀行にある

 

しかし、預金を下ろせば通帳を管理している姉にバレてしまう。自分でバイトして貯めた貯金とはいえ額が額なので多少のお叱りは免れないだろう、姉は その辺り厳しい人だ

 

だからと言って、そうそう巡り会えない代物だ。下手したらプレミアが付く可能性もあるかも知れない

 

「・・・庵さん、取り置きは・・・ダメ? 」

 

レジに立っている庵さんに両手を合わせて少し上目遣いで尋ねてみる

 

「ダメ、身内贔屓をしない。それが爺さんから店を継いだ時に言われた約束だからね」

 

にこり と笑みを浮かべ庵さん言う、それを聞き項垂れ正直泣きそうになりながら考える

 

姉の知らない私の隠し財産は、2週間程前にマグアナック36機セットを買ってしまったから無い

 

だから私の取れる道は、姉のお叱りを受ける か 庵さんを説得するかの2つに1つ

 

「じゃぁ・・・分割はダメ? 流石に姉さんに叱られるから」

 

と尋ねると庵さんは苦笑し

 

「そんなに欲しいんだね、いつもなら諦めるのに。分かったよ、俺が立て替えてあげるから、分割でいいよ? あ、お金の代わりにウチでバイトでもいいけど? 」

 

と今の私にとって神の一言を言ってくれた私は嬉しさのあまり庵さんの隣に走り寄り抱きつきお礼を言う

 

 

早く庵さんが正式に義兄(あに)にならないかな、あとで庵さんに聞いてみよう

 

 





名前*織部(おりべ) (いおり)

年齢*26歳

性別*男

身長*177㎝

容姿*肩に掛かるぐらいの黒髪で襟足で結っている美青年

備考*

一夏ちゃんのガンプラの師匠の様な人で、一夏ちゃんの兄貴分であり義兄(予定)


祖父から受け継いだ織部模型店を営んでいて、一夏ちゃんは常連

大らかな性格故に大変モテる人

千冬さんの彼氏で、篠ノ之道場の元門下生で、千冬さんや束さんには及ばないが、剣士としての実力は相当なモノ


織部模型店は喫茶スペースが併設されているので、プラモを買いに来る以外にも喫茶スペースのコーヒーを目当てに客が来るぐらい繁盛している

喫茶スペースの方は主に彼の妹(名前未定)が担当している、つまり妹が美味いコーヒーを淹れる

それなりに広く、ガンプラ以外のプラモデルもおいてあり、作業場が有って道具や機材の貸し出しもしてくれる

実は奥の部屋にガンプラバトル用の筐体がある、方式はガンダムビルダーズの様にガンプラをスキャンし、ゲーム上に反映させるのでガンプラ本体にはダメージを受けない安心仕様

操作系はコクピットを模しているが、簡略化されている、しかし操作感はリアルに感じる謎仕様




数少ない 千冬さんが頭の上がらない人


10年以上の付き合いな為、一夏ちゃんは普通にタメ口で喋る




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