一夏ちゃんは戦わない   作:銭湯妖精 島風

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一夏ちゃん、少し復活

 

 

クレアさんと久しぶりに電話をして少し気が紛れて少し機嫌が良くなった、クレアさんは相変わらずズレた日本常識を持っていたので、少しだけ訂正してみたが多分 効果は無いと思う

 

 

電話を終えて携帯の画面を見ると束さんからメッセージが入っていたので開いてみると、PCの方へ添削した設計図を送っておいたから確認してね? みたいな内容だったので、お礼のメッセージを束さんに送ると部屋の扉がノックされ

 

 

「一夏、箒だが起きているか? 」

 

と箒の声が聞こえたのでベッドから降りて扉を開くと、心配そうな箒と薫君が立っていた

 

「えっと・・・いらっしゃい、でいいのかな? 」

 

私は疑問形で2人へ言うと、2人共苦笑して

 

「ま、まぁいいんじゃないか? 」

 

箒が そう言う

 

「一夏さん、ご飯持ってきたんだけど、昼は もう食べた? 」

 

薫君が購買で買ってきたであろう お弁当を私に見せて尋ねてくる

 

「あー、そういえば まだ食べてなかったよ、ありがとう」

 

すっかり昼食の事を忘れていたので薫君から お弁当を受け取り言い

 

「あ、お金、幾らだった? 」

 

「いいよ一夏さん、心配だったから口実作りに持ってきただけだしね? 」

 

財布を取りに行こうとして直ぐに薫君が言う、その言葉が妙に嬉しくて胸が暖かくなりモヤモヤとした気持ちが晴れて行く様な気がする

 

「あ、ありがとう」

 

少し顔が熱くなってきたが、お礼を言うと

 

「今朝より血色も良くなってるし、ひとまずは安心だな? しかし一夏、あまり無理はするなよ? 」

 

私の顔を見て箒は そう言い少し安心した表情をする

 

「それ、姉さんにも似た様な事を言われたよ。ありがとう箒」

 

と苦笑して そう箒に言うと僅かに不満そうな表情を一瞬だけした

 

幼馴染だから分かる僅かな変化だった訳だが、何故 箒が不満そうだったかは分からない、心当たりが無い

 

かと言って聞く訳にもいかないので、見なかった事にした

 

「クラスの皆・・・特にオルコットと布仏さんが心配してたよ、いや1番心配してたのは織斑先生かな? 」

 

「ははは・・・なんかゴメンね」

 

薫君の言葉に苦笑して謝り、少し反省する やはり無理せずに休めば良かったと

 

 

そもそも結果的に早退してしまっているしね? しかもSHRまでしか受けて無い訳で

 

「さて、我々はお(いとま)するとしよう。長居しては休めないだろうしな? 」

 

「そうだね、じゃぁ また。ちゃんと休んでね?一夏さん」

 

「ありがとう2人共」

 

そう言い2人は去って行くので、お礼を言い見送る

 

扉を閉め、机に座り薫君から貰った お弁当を開き食べる、何度か食べた事の有る普通の幕内弁当が なんだか いつもより美味しく感じ頬が緩む

 

 

私は良い友達を持って幸せだな、と思いながら お弁当を食べ終え何となくテレビをつけると、ニュース番組がやっていた

 

内容は、今朝に起こった事故や事件の特集の様だった

 

亡くなった人の名前や写真もながれていて、そこに映る人物の名前に見覚えがあり、不自然に感じる

 

亡くなった人達は全て政治家のお役人であり、私と薫君が交際し在学中に子を成す事を狙った派閥のメンバーだったからだ

 

同じ車や車列にいたなら、まぁ違和感を感じる事はなかっただろうし、別々の場所だから重なった可能性も有る

 

だが、私には どうも不自然に見えてしまった

 

そう、何者かの意図によって起こされたのではないか? と感じてしまったのだ

 

 

「・・・まさか、ね」

 

 

他の派閥によって排除された可能性も有るが、こんな事を計画し隠蔽 出来る人が知り合いに居るので彼女がしたのでは無いか? と心配になる

 

そう、彼女なら痕跡を残さず 事故に見せかけて亡き者にするぐらい造作もないだろう

 

 

「・・・束さんに聞いた所で誤魔化すだろうし、私じゃ嘘を見抜けないしなぁ・・・よし束さんを信じよう、これは偶然だ、偶然」

 

そう自分に言い聞かせる様に言い、薬を飲みゴミを片付けてからテレビを消してベッドへ戻り布団を被る

 

本当はダメだが、今日ぐらいは大目に見てもらう、まぁ誰も見てないんだけども

 

それから直ぐに眠気がやってきて私は夢へ落ちてゆく

 

 

 

薄暗い倉庫、鎖に繋がれた私、見下した眼で私を見下ろし注射器を持つ女と男達

 

 

女の手により注射器の針が身動き出来ない私に刺さる直前で、急に女の顔を鋼の拳が捉え切り揉み回転して飛んでゆき

 

「一夏さん、助けにきたよ」

 

と打鉄改を纏った薫君が鎖を引き千切り私を救ってくれる、その姿に私の鼓動は早くなり、そして違和感を覚えるが それさえどうでも良くなってしまう

 

彼が私を助けに来てくれた、それだけで十分なのだから

 

「ありがとう、薫君」

 

「さぁ、帰ろう? みんなが待っているよ? 」

 

彼の手を借りて立ち上がり お礼を言うと、薫君は微笑み そう言い私をお姫様抱っこをして、いつの間にか壁に空いていた大穴から倉庫を飛び出して空を飛ぶ

 

 

分かってる、これは夢だ

 

そう夢、だと分かっている。だってこんな結末は有り得ないのだから

 

こんな物語のハッピーエンドみたいな終わり方なんてしていない、でも・・・今は気付いてないフリをして彼の腕の中を楽しもう

 

多分、それぐらい許されるだろうから

 

 






よし、次こそクラス代表戦を書くぞ!

予定より2話増えてしまったw


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