一夏さんに見送られ俺はカタパルトによりアリーナへ吐き出される、少し勢いを調整して待機位置で停止すると、すぐに凰さんがマゼンタ色のISを纏い現れて俺と同じく停止位置で停止する
「まさか初戦で戦うとは思わなかったわ・・・まぁ正直、あんた とは一戦交えておきたかったし、丁度良いわね」
凰さんは自身に満ちた表情で言い、両手に一振りづつ青龍刀を展開し緩く構える
「それは どうも」
俺も菖蒲を構え、彼女を見据える
俺がIS・・・打鉄改に搭乗し始めて約
少なくとも凰さんは俺を見下し油断をしていない、だから隙が全く見えない
確かに俺は一夏さんから出所不明の情報を元に作戦を教えてもらい、時間が許す限り練習してきた、だが不安しかない。だって目の前の凰さんは間違いなく強い
俺が強く菖蒲の柄を握り締めると試合開始のブザーが鳴り
「さぁ、
「善処するよ! 」
正直、近接戦闘タイプの凰さんの土俵である近接戦仕様で戦いを挑むのは不安だが、シールドがある打鉄は そもそも近接戦仕様が前提だ、やるだけやるしかない
俺は不安を抱えながら凰さんと打ち合いを始める、事前情報通りスピードよりパワー重視の戦い方の彼女と雷切は相性が良い
「なかなかやるじゃない、これなら もう少し本気を出しても大丈夫そうね」
と凰さんは獲物を狙う獣の様な眼をして楽しそうに言う
「それは どうも、でも余裕を出せるのも今の内かもよ? 」
本当は結構いっぱいいっぱいなんだけど、悟らせない様に挑発すると凰さんは更に楽しそうな表情になり
「あら、楽しみね・・・やってみなさい」
ニィーっと口角を上げ凰さんは笑み、甲龍の両肩のアンロックユニットの装甲がカシャっと開き、まずい と思い対物シールドを前に出して衝撃砲を防ぐ
「あら、よく防げたわね? 衝撃砲は砲身も砲弾も見えないのが特徴なのに」
彼女は楽しそうに言い、俺の出方を余裕そうに見ている
なんつう威力だ衝撃砲、対物シールド越しでも凄い衝撃だったぞ? そしてなんで嬉しそうなんだ凰さんは、いや試合を楽しむ事態はいいと思うけど凰さんのは何か違う気がする
立ち止まっていては唯の的でしか無いので、動きながら
そんな事、誰が予想出来るだろうか? 出来ていた人がいる・・・一夏さんだ
一夏さんの作戦では、とにかく凰さんのテンポに乗らない様に立ち回る事を念頭に、と言われ反復してきた
鈴なら、銃弾を剣で弾くぐらい余裕でやってのける と笑う一夏さんの笑顔は可愛かったが、正直冗談だと思っていた・・・のだけど、まさか本当にやるとは
とにかく的を絞らせない様に動き、弟切草で弾をばら撒き、タイミングを見て菖蒲を振る、それを繰り返していく
試合が始まり20分が超え、俺のシールドエネルギーは だいたい7割弱といった具合になっている
何度も打ち合っているうちに細かいダメージを入れられてしまった、その割に凰さんには全く攻撃を当てられてないので正直まずい
「さて・・・充分楽しんだし、そろそろ幕引きにしましょうか! 」
「まだまだ! 」
一気に距離を詰められ弟切草が間に合わないと判断し、菖蒲と対物シールドで青龍刀2振りを受け止めて鍔迫り合いをすると
「もう終わらせるわ、まぁ及第点と言ったところかしら? 」
凰さんは少し不満そうな表情で言い、何を言っているか理解が出来ずに尋ねようとした瞬間、側頭部に衝撃を感じて そのまま吹っ飛び地面に墜落する
「・・・い・・・今、なにが・・・」
軽く脳が揺れたのか少し揺れる視界を感じながら、立ち上がり凰さんを見上げ頭からを振り意識をハッキリとさせる
「あら、意外とタフね? 八月一日、脳が揺れて立てなくする予定だったのだけれど」
と凰さんはカラカラと笑う、つまりさっきのは凰さんの仕業だった訳か・・・何されたかが全く分かんないぞ?
「まぁ良いわ、自分が何をされたか理解せずに負けなさい」
凰さんは再び間合いを詰めてきたので打ち合いになるが、明らかに意識と挙動にラグが出る瞬間が出てくる
まるで、誰かに一瞬だけ掴まれたかの様に
俺は凰さんの猛攻に削られ続け、消耗した対物シールドが砕かれ そのまま致命打を貰い地面に叩き付けられ負けてしまった
試合終了のブザーが耳に入り、自分が負けた事を認識しながら思う
凰さん、やべぇ と、打鉄は防御型のISで打鉄に装備されている対物シールドは損傷を受けるとナノマシンで自動修復してくれる代物だ、だから 凄い耐久値が高いのだが、凰さんは対物シールドの高い耐久値を削り切り破砕し、尚且つ俺に致命打になり得るダメージ浴びせてきた
一夏さんの情報では青龍刀に特出した能力は無かった、だから凰さんなりのダメージの出し方な有るのだろう
まぁ、なにはともあれ 負けてしまった・・・やっぱり壁は高いな
お待たせしました