束さんとクロエの事について話す事十数分、薫君が制服を身に纏い現れジークさんと束さんを見て少し戸惑っているのが見えたので声を掛けようとすると
「やぁ、君が八月一日君だね? ふむふむ・・・」
いつの間にか薫君の正面に立ち彼を品定めする様に束さんは上から下まで見て言い、薫君は そんな束さんに困惑した表情をしていた、それを見て少し胸がモヤッとしたので
「束さん、もう少し常識的に挨拶して? 薫君が困ってるよ」
「ごめんごめん、いやぁ興味深くてねぇ」
私の言葉に束さんはテヘペロしながら謝って少しだけ薫君から離れ
「ほんと、不思議だねぇ? 君は何故 ISに乗れるのかな? この私でさえ原因究明が終わってないのに、ねぇ? 」
束さんはニコニコと笑みながら薫君へ尋ねる、その姿は まるで無邪気な子供の様だ
「・・・え? あー・・・なんでですかね? 本当なんでですかね? 」
薫君は困った表情で束さんへ返答する
「そっか、そうだよね。ごめんね? ナノ単位まで分解して調べたら分かるかも知れないけど・・・いーちゃん と 箒ちゃんに睨まれてるからやめておくよ」
はっはっはっ と誤魔化した様に笑う束さんを笑う私と箒は睨む様に凝視しておく
「は、はぁ・・・えっと、一夏さんと篠ノ之さんの知り合い、なんですか? 」
薫君は、なんとも言えない表情をしていたが、話題を変えようと質問をすると
「・・・遺憾ながら実の姉だ、八月一日。遺憾ながら、な」
束さんが答える前に箒が疲弊した表情で返答する、こうは言っているが箒は箒なりに束さんを尊敬している、らしい
「ん〜私の場合は・・・姉弟子、姉の親友、恩人、歳上の幼馴染、師匠、かな? 」
剣道とビルダーの両方 束さんは姉弟子になる、剣道では束さんと箒の父 柳韻先生が師匠、ビルダーとしては庵さんが師匠だ
ISのアレコレに関しては束さん直々に教えて貰ってる、でも私的には歳上で幼馴染が1番しっくりくるかも知れない
「へぇ、そうなんだ」
箒の返答には少し微妙な表情をした薫君が そう言うと
「私は2人共 可愛い妹かな? 」
にこにこにー と束さんは笑みを浮かべて言う
相変わらず実年齢に比べて表情が幼く感じる、まぁ昔からだけども
「さて・・・少しお節介をしようかな? ジー君? 」
と束さんはニコニコしたままジークさんに声を掛けると
「観覧室の個室が空いています、其方を押さえました」
直立不動のジークさんが、束さんの意図を汲み取った様で そう答える、相変わらず凄いな この人
「ありがと、さぁ行こうか八月一日君、いーちゃんも、ね? 」
そう言い束さんは歩き出したので、薫君と2人で首を傾げながらついて行く
数分足らずで個室の来賓席に辿り着き
「じゃぁ、八月一日君? 反省会を始めるよ? さて今回の君の敗因はなんだと思う? 」
なんか芝居がかった仕草と表情で薫君へ束さんは尋ねる
「実力と経験の差、です」
薫君は束さんを真っ直ぐに見て言う
「そうだね、それも要因だろうね? でも それだけじゃない、八月一日君 君に足りないモノは打鉄改への理解と対話だよ」
ビシッと効果音がつきそうな動きで束さんは薫君を指差して言う
「理解と対話、ですか? 」
薫君は束さんの言った意味が分からない様で困った表情をして尋ね返す
「そう、理解と対話・・・ISのコアには人格が宿っている、だからISは搭乗者を理解し最適化して行く、相手を知り自分を知ってもらう。君も信頼関係がしっかりしていない相手に命を預けられないでしょ? 」
束さんの言葉に薫君は無言で頷く
「と言っても知り合って直ぐに信頼は勝ち取れるモノじゃないからね、努力を惜しまずに研鑽するしかないかな? 」
と束さんは真面目な表情で薫君へ言い、彼は力強く頷く
「じゃぁ、此処からは いーちゃん の番かな? 」
にこ っと私に そう言ったので頷き
「薫君、鈴との試合の分析と解説をするね? 」
「うん」
私の言葉に薫君が頷いたので表示枠を展開して
「まず不可視の砲弾を撃ち出す衝撃砲、その利点は砲弾が不可視である事、砲身も不可視で射角を選ばない事、そして空間に圧力を掛けて砲身を形成している特性を応用出来るんだ」
「応用? 」
表示枠に鈴が
「まず序盤の此処、この時は普通の捻りの無い使い方をしている。けれど・・・試合が始まって20分が越えた辺り、この時に鈴と鍔迫り合いをした薫君は真横から側頭部へ攻撃が当たっている、これが龍咆の怖い所」
説明に合わせて流す映像を流しながら薫君へ説明をする
鍔迫り合いの状態からでも射角に際限が無い以上、好きな場所に不可視の砲弾を叩きこめる訳だ、厄介極まりない
「それに空間に圧力を掛けて砲身を形成する特性を利用して、砲身形成を相手の挙動に合わせて行う事で一瞬だけ、ほんの一瞬 挙動を鈍らせる事が出来るみたいだね」
本当に僅かに鈍るだけだ、でも試合では そのコンマ1秒の差で防げる攻撃が当たりダメージになり、当たる筈の攻撃が外れたり防がれたりする
鈴は自身の専用機、甲龍の事を理解し熟知した戦い方をしている、やはり鈴は凄い
普通なら、龍咆は射撃武器でしか無いのに
親友としては誇らしいが、薫君の敵となると厄介な相手なので少し複雑な気持ちになってしまう
お待たせしました