一夏ちゃんは戦わない   作:銭湯妖精 島風

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連休 チュートリアル 1

 

 

姉さんの雰囲気の代わり様に驚いて固まる薫君と箒から鈴に目を向けると僅かに頷き

 

「ほら、八月一日 中に入るわよ。あんた 今日が初めてでしょう? チュートリアルをしないと」

 

と鈴が薫君の背中を軽く叩いて有無を言わせずに織部模型店の中へ連れて行くのを見送り、未だに固まっている箒の肩を軽く叩いて

 

「箒、大丈夫? 箒? 」

 

「はっっ・・・私は何を・・・あぁ、庵さん、お久しぶりです。箒です覚えていますか? 」

 

なんとか正気に戻った箒が庵さんに挨拶をし

 

「久しぶり箒ちゃん、もちろん覚えているよ」

 

相変わらず爽やかな笑顔を浮かべ庵さんは箒へ言う、それを横目で見ながら相変わらず変に真面目な姉の方を見て少し違和感を覚えたので姉を凝視してみると、左手の薬指に太陽光を反射する金属が嵌っている事に気付いた

 

普段から最低限の化粧しかしないし、アクセサリーも着けない あまり飾りっ気の無い姉が指輪をしているのだ、これは好機だな と思い庵さんの左手をあからさまにガン見して指輪を確認して

 

「庵さん、指輪はいつ渡したの? 」

 

私の質問に怪訝そうな箒を横目にワクワクしながら笑顔で庵さんに尋ねると

 

「一昨日だよ、入籍と式自体は まだ先だから婚約指輪になるのかな? 」

 

「庵、いくら一夏とは言え、素直に答えなくても良いのではないか? 流石に少し、な? 」

 

素直に答えてくれた庵さんに姉が少し恥ずかしそうにしながら言う、その様子を見て幸せな気持ちになり、箒を見ると混乱しているのか庵さんと姉を交互に見てオロオロしていた、なんか可愛い

 

「落ち着いて箒、2人が婚約したのは私も知らなかったけど、2人は交際しているんだよ」

 

少し可哀想になったので箒の手を握り落ち着かせる様に言う

 

「あ、あの千冬さん、が? いや、めでたいことだが・・・ふぅ・・・おめでとうございます庵さん、千冬さん」

 

オロオロと混乱していた箒は深呼吸をしてから2人に祝辞を言う、流石に切り替えが早いなぁ

 

「ありがとう箒ちゃん」

 

「う、うむ、ありがとう箒」

 

爽やかに笑む庵さんと恥ずかしそうにしている姉を見て思う、姉には幸せになって欲しい

 

これまで姉は私の為に苦労をしてきた、私は もうある程度は自立が出来る、だから姉には自分の幸せを第一に考えて欲しいと思っている

 

そして庵さんならば姉を幸せに出来ると信じている、もし姉の相手が庵さんで無ければ私は安心出来ていなかったと思うし、もしかしたら反対していたかも知れない

 

順調に行けば、私は十代の内に叔母さんになるだろう、それは楽しみだ

 

 

「では、お二人の邪魔になるといけないので、我々は そろそろ店内(なか)に入ります、お話はまたいずれ ゆっくりと」

 

「うん、また今度」

 

箒は そう2人に告げて庵さんの返答を聞き私に目配せをして頷く、私は無言で頷き私達は織部模型店へ入り、ガンプラバトルの筐体が有る店の奥へ向かう

 

「良かったの? 庵さんに会うのも6年ぶりだったよね? 」

 

道すがら箒へ尋ねると

 

「構わないさ、千冬さんがあんなに幸せそうなんだ、せっかくの時間を邪魔をしてはバチが当たるだろう? 」

 

と箒は微笑み言う、私は そっか とだけ言い筐体の並ぶガンプラバトル区間へたどり着く

 

「弾、今どんな感じ? 」

 

左右に筐体が並んでいて中央の壁に備え付けられた大型スクリーンを見上げている弾に尋ねる

 

「今、数馬が薫のチュートリアルの相手してる所だ、鈴はNPC相手に新作のテスト中」

 

私達の方を向き弾は答え

 

「薫、本当に今日が初めてか? ムラサメの出来も操縦技術も初心者とは思えないぜ? 」

 

と弾はスクリーンを見上げて呟く、そこには宇宙空間を縦横無尽に飛び回りデブリをスイスイ避けるムラサメと、それに追従するリゼルC型が映っている

 

「リゼルC型か、見た所 外観は弄ってないみたいだ。あーガンプラバトル用? 」

 

「だな、俺らじゃ本職ビルダーには敵わないからな、ガンプラバトル用に調整してるって訳だ。でも関節とか重要な場所は手を入れてる」

 

 

私の言葉に弾は答え、私はなるほど と思う

 

ガンプラバトルをするだけなら、変に改造をするより素組みに近い状態で関節の可動域を調整したり、ゲート処理を丁寧に処理したりした方が良いわけだ

 

 

確かに観賞用と実践用では差が出るしね?

 

 

「それじゃ、箒もガンプラバトルのチュートリアルを始めよう?」

 

スクリーンに映る映像に見入っていた箒へ声を掛けると

 

「え?! いや、私は・・・ガンプラを持ってないぞ? 」

 

私に話しかけられて驚いたのか少し取り乱した箒が そう答える

 

「大丈夫、箒用のガンプラを用意してあるから」

 

私は箒用に用意したソードインパルスの入ったケースを明石のバススロットから展開し、箒へ渡す

 

 

関節強度と剛性、稼働範囲を高めた都合でインパルスの特徴の合体、分離、空中換装は出来ないが、まぁ問題無いだろう、多分

 

箒がいきなりシンみたいな戦い方したら私はビックリする、絶対

 

 

 

 





お待たせ致しました

繁忙期に突入したため、かなり不定期更新になります、気力がもたない

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