一夏ちゃんは戦わない   作:銭湯妖精 島風

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イギリス代表候補の咆哮

 

 

 

それから彼以外には滞りなく授業は進み2時間目を終え、トイレに行って用を足して戻ると彼に金髪のお嬢様(セシリア・オルコット)が彼へなんか話をしていたが、少し苦手な類の人みたいなので、限界まで気配を消してオルコットさん の後ろを通り文庫本を読んでいる箒の横に移動して屈んで小声で尋ねる

 

「ねぇ、オルコットさん は何で八月一日 君に絡んでるの? なんか凄い偉そうだけど」

 

「さてな? お前が席を立って直ぐに八月一日へ偉そうに絡み始めたんだ」

 

箒は文庫本から目を離さずに小声で答える、その表情は不愉快そうだった

 

「・・・そっか」

 

私は それだけ呟いて立ち上がって、自分の性分と性格に少し嫌気がさしつつ

 

「あ、あの・・・オルコットさん? もうチャイムが鳴るから、そろそろ席に着いた方が良いんじゃないかな? 私が言うのもアレだけど織斑先生のゲンコツは痛いよ? 」

 

と出来るだけ冷静を装って彼女に言うと

 

「仕方ありませんね、続きは改めて。失礼しますわ」

 

とファサァッと自身の髪を翻して自席へ帰って行く、何か様になっていて美少女って凄いなぁと感じつつ私も席に座ると

 

「えっと、ありがと」

 

と彼は私にお礼を言ってきた

 

「え? う、うぅん、別に何もしてないから、気にしないで? 」

 

出会って数時間の仲だが、漸く彼の笑みを見て少し戸惑って変な感じで返答をしてしまったが彼は気にしていない様子だったので良かった

 

 

とはいえ、私が抱える問題故に彼と普通に会話が出来る様になるには暫く時間が必要だろう

 

少なくとも1年は同じクラスなのだから、少しは会話出来る様にならないと彼に悪いだろうから

 

それから数分経たずに3時間目の始業の鐘が鳴り姉さんが教壇に立ち

 

 

「では3時間目の授業を始める前に、クラス代表を決める。毎月の様にある各種行事へ出てもらう他、クラス委員長を兼務して貰う。自薦他薦は問わないが、自薦が望ましい」

 

姉は教卓に自分が持ってきた教科書などを置き教室を見渡して言う、競技者志望なら千載一遇のチャンスな訳だから自薦が居る筈なのだが、一向に挙手する人が居ない

 

おかしいな、間違い無く1人は自薦して当たり前のセシリア・オルコットがいるのだけど・・・まさか、他薦で自分が呼ばれるのを待ってるのか?

 

この状況でオルコットさんの名が上がる訳無い、だって さっきの様子を見たら誰でもクラス委員長にしたいなんて思わない

 

「なんだ、居ないのか・・・仕方ない、他薦で良い。誰か居ないか? 」

 

姉は少し面倒くさそうな表情をして言うと、次々にクラスメイトは彼の名を挙げる、その状況に軽く怒りを覚える

 

私は元来 少々頭に血が上りやすい質だ、特に理不尽に対して

 

これは元々 私が男だったと言うのも有るが私には肉親が姉しか残っていないと言う家庭環境もある

 

この世界は平等に出来ていない、それを物心ついた頃から散々理解して来た、だからこそ 私には許せない事だった

 

故に意見しようとして、声が出なかった。生来の性格と真逆の私に刻まれたトラウマ、それが私に声を出させなかった

 

だが、そのおかげで怒鳴らずに済み深呼吸をして冷静さを取り戻し、言葉を選んで意見しようと考えていると、ガタンと音を立てて椅子から立ち上がって

 

「納得いきませんわ!」

 

と憤慨した表情をしているオルコットさんが吠えていた

 

それを見て更に冷静になり頭の中が妙にスッキリする

 

「なぜ世界初と言うだけの男性が推薦され、イギリス代表候補生の(わたくし)が推薦されないのですか? 全く納得できませんわ!! だいたい・・・」

 

クラスメイトの理不尽を諭してくれるのかと少しだ期待したが、やはりそんな事は無く、自分が推薦されない事に不満が有った様でよく喋る

 

なんでも、文化的に後進的な日本にいる事がどれ程嫌か、とか色々と言ってくれるので、一旦冷めた頭に再び血が上って行き我慢の限界を超え、俺は机に拳を叩きつけ立ち上がり

 

「いい加減 煩いな! そんなに日本が嫌なら国に帰れば良いだろうが、それに お前は そんなに偉いのか? 高々 代表候補生で偉そうに」

 

そこまで言って私は、ハッと正気に戻り軽く後悔する

 

たまに私は昔の自分(オレ)に戻ってしまう事がある、特にキレた時とか極度に頭に血が上ってる時とかに

 

まだ言葉だけだったのでマシな方、多分

 

というわけで出た言葉は戻らないので少し後悔をしつつオルコットさん を見ると私の様子に驚いたのか口を開けて固まっていたが数秒して

 

「な、な、な、なんなんですの貴女! 私は代表候補生、沢山の候補生 候補から選ばれたエリートですわ!! それを貴女は! 」

 

と元々色白の彼女が顔を真っ赤にして憤慨しながは言うが、私は少しも共感出来ず

 

「あー・・・うん、ごめんなさいオルコットさん少し言い過ぎたよ、でもイマイチ凄さが分からないんだ。何せ・・・私の実姉は日本代表で初代ブリュンヒルデ、幼馴染のお姉さんはISの生みの親なんだ。今更、代表候補生で専用機を持ってるぐらいじゃ、ちょっと凄さが分からない」

 

と言ったら私の背後に立っている姉が私を睨む気配を感じ背中に冷や汗をかく

 

ヤバイ、姉さんはブリュンヒルデって呼ばれるの嫌いだったのを忘れていた

 

とりあえず私の言葉にオルコットさんは口をパクパクさせて言葉に出来ない表情をしていたので

 

「え、えーっと・・・オルコットさんがクラス代表をしたいみたいなので、彼女をクラス代表にしたら良いんじゃないですか? 織斑先生? 」

 

と恐る恐る姉の方を向き進言してみる

 

「・・・そうだな、それも良いが推薦した者もオルコットも納得いかんだろう。模擬戦をして白黒つけてクラス代表を決める事にする、八月一日、オルコット両名は そのつもりでいろ。あと織斑、お前は昼休みに生徒指導だ、逃げるなよ? 」

 

私の進言に答え2人へ申し伝えをした後、ギロっと言う効果音が聞こえそうな目で私を睨みながら言われ、実姉の威圧感に少し漏らしそうになるが耐えて頷き自分の席に座る

 

「では授業に入る、テキストの・・・」

 

と姉は直ぐに切り替えて3時間目の授業に入る、ヤバイ昼休みが怖くて集中できない

 

 

どうにか逃げる方法を思案するが全く思いつかなかった、むしろ逃げた方が恐ろしい結末が待っているのは目に見えているのだった

 

 

 

 






こんな一夏ちゃん、どうでしょう?


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