一夏ちゃんは戦わない   作:銭湯妖精 島風

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連休 バトル リタイヤ

 

 

 

彼への想いに気づいてしまった私は

 

 

「・・・私は・・・薫君が好きなんだ」

 

 

私は座席に背中を預けて筐体の天井を見ながら呟く

 

 

薫君の声を聞くだけで、笑顔を見るだけで、側に居るだけで私の胸は満たされて幸せを感じている、全ては彼の事を好きだからなのだと私は自覚する

 

 

それと同時に不安と恐怖が私を襲う

 

私は元男なのだ、薫君は その事を知らない。事実を伝えてしまったらきっと薫君は私への態度を変えてしまう、彼を悩ませてしまうかも知れない

 

そうなれば、私は彼の側に居れなくなっていまうだろう

 

ならば、この想いは伝えてはならない。 私の様な半端な存在が彼の人生を狂わせるなんで有ってはならないのだから

 

「・・・それでも・・・私は薫君の側に居たい・・・だから・・・」

 

 

私は薫君の為に・・・否、自己満足の為に彼に尽くそう。いつか彼が誰かと付き合う事になっても、整備士として仕事を全うしよう

 

そう私は結論を出して、薫君への想いに蓋をして俯く

 

真っ赤に染まる自分の服を眺め

 

「・・・痛いな、これが恋、か」

 

ズキズキと痛む頭と熱を持つ頭、まだ流れる血を見ながらチクリチクリと痛む胸の痛みを味わいながら呟く

 

この胸の痛みは私が生きている証、そう割り切り思考を切り替えて考える、この状態じゃ この後の行動は無理だな、と

 

上着だけならまだしもスカートにまで鼻血が付いてるし、顔なんて鼻血で真っ赤だ

 

「どうしよう・・・」

 

どうしようと考えた所で、鼻血が止まらないので袖で押さえて止血するしかない

 

そういえば弾は大丈夫かな? まぁなんも言ってこないから大丈夫なんだろう、多分

 

でも、一応 聞いてみようかな

 

「弾、大丈夫? 」

 

「おー、片付いたか? どーよ」

 

予想通り余裕が有る様で弾は軽い調子で言う

 

「鼻血止まらない、加勢行けないわ」

 

「はぁ? マジか、分かった。リタイヤして安静にしとけよ?一夏」

 

 

弾に ありがと とだけ伝えて血で汚れていない方の手で画面操作をしてリタイヤを選択して軽く深呼吸する

 

ひとまず鼻血が止まらないと動きづらいので止血に専念してボーっとして筐体の天井を眺め

 

「はぁ・・・止まらないなぁ・・・」

 

ボーっと止血していると

 

「おーい、大丈夫か? 」

 

「大丈夫だけど、大丈夫じゃ無いかも?」

 

座席の後ろから弾が現れて尋ねてきたので答えると

 

「なんだそれ・・・って、真っ赤じゃねーか、染み抜き大変だぞ?それ」

 

私の様子を見た弾がウワッて表情をして言うので

 

「そんなの分かってる、悪いけど端子抜いてくれる? 」

 

私の言葉に弾は おう とだけ答えてヘッドセットから端子を抜いてくれる

 

「とりあえず庵さん か 静さんに頼んで横にならせて貰えよ」

 

「大丈夫、もう少ししたら止まるから」

 

弾には そう言い袖で押さえたまま筐体を出ると

 

「あ、一夏お疲れ様・・・って、あんた血が付いてるじゃない、鼻血?」

 

いつの間にか居た鈴に見つかり尋ねられたので

 

「うん、ちょっとね」

 

「もう、袖で押さえたら袖まで血塗れになるじゃないの。ほら手を退けて」

 

相変わらず世話焼きの鈴がティッシュを取り出して私の世話を始める、実は私と鈴は そこまで身長差は無い、だいたい8㎝ぐらいだ

 

 

「よし、とりあえずこれで良いわね」

 

「ありがとう鈴」

 

満足気な鈴にお礼を言うと

 

「気にしなくて良いわ、慣れてるし・・・八月一日、一夏に着せるから あんた のパーカー貸しなさい」

 

心配そうに様子を伺っていた薫君にさながらカツアゲみたいに言い薫君からパーカーを受け取り

 

「それじゃ一夏を家に連れて行くわね? 着替えさせなきゃ」

 

と言い私の手を引き進んでいく、相変わらず見た目よりチカラが強くて抗えない

 

そんな訳で織部模型店のトイレに入り鈴の指示で上着を脱いで畳み明石のバススロットに収納し、流しで手を洗う

 

「あんた、フルマニュアル使ったわね? 」

 

鏡越しに私を睨み鈴は言う、どうやら鈴にはお見通しの様だ

 

「まぁね、なんで分かったの? 」

 

顔についた血を流しながら尋ねると

 

「途中から見てたのよ試合中継をね? そしたら あんた 途中から動きが段違いに変わったじゃないの、だから分かったのよ」

 

どうやら見られていた様だ、それなら仕方ないか

 

「特定の事柄ですぐ頭に血が昇るのは、あんた の悪い癖よ? もう少し冷静になりなさい?」

 

鈴はヤレヤレと肩を竦めて そう言う

 

「・・・無理だよ、鈴 私には無理、それが出来たら もう出来てるしね? 」

 

 

備え付けのペーパータオルで手と顔を拭き鈴を真っ直ぐみて言う

 

「はぁ・・・そうね、そうよね」

 

鈴は呆れた様子で肩を竦めて薫君のパーカーを差し出してくる

 

「でも、ありがとう鈴」

 

薫君のパーカーを受け取り着て鈴へお礼を言う

 

「ほんと、あんた は手が掛かるわね? 全く・・・1人にしたら不安しかないわ」

 

と、鈴はオカン全開で言ってくる

 

なんだかんだと文句を言いながら人の世話を自ら行なっていく、その姿は 正に母親の様だ

 

きっと鈴は素晴らしい母親になる事だろう、鈴には母親になる事が無い私の分まで幸せな家庭を築いて欲しい

 

何気に鈴ってモテるし、家事スキルも高いから恋人もきっと直ぐに出来るだろう、多分

 

 






お待たせしました

なんとか書きましたよ、書きつらかったです

一夏ちゃんを幸せにしたいぃ
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