一夏ちゃんは戦わない   作:銭湯妖精 島風

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兎は冷たい床に座る

 

 

試合は本気の鈴の善戦虚しくラウラが余裕を持って勝利した

 

 

「で? 言い訳はある? 」

 

私は整備室の床に直接ラウラを正座させて仁王立ちで見下ろしながらラウラへ尋ねる

 

「・・・・・」

 

私の質問にラウラは無言で目を逸らして私を見ようとしない、そりゃ試合終了後 直ぐに私が有無を言わせずに連れて来て正座をさせた訳だから、目も逸らしたくなるだろうし、ラウラ自身 私が正座をさせている理由を理解している

 

 

「言い訳がないならいいや、私がラウラに正座させてる理由は分かるよね?」

 

 

私の背後で のほほんさん率いる有志が中破状態の甲龍をガントリーに懸架している中、私はラウラへ尋ねる

 

「・・・少々やり過ぎた」

 

消え入りそうな声でラウラは少しプルプル震え言う、正直可愛いが ソレとコレは別問題なので

 

「少々? なんで、わざわざ、フルコンタクトで試合をしたのかな? 次の行事まで時間ないんだよ? 分かる? 」

 

学校行事の公式戦なら兎も角、放課後にやる試合で いちいちISが破損していては維持費も整備費も人件費もバカにならないので普通は損傷が一晩程度で自己修復出来るぐらいで勝敗が決するモードと言うのが有るので、それを使う

 

だが、ラウラは使用しなかった。そしてラウラに限って うっかりなんてしない

 

 

「・・・うっ」

 

私の質問に答えないラウラを見下ろしながら威圧し、反省の色を伺いつつ

 

 

「今回、私が居たから良かったものの、本来なら次の行事に鈴と甲龍は参加出来なかったかも知れないよ? そしたら中国の担当者に報告しなきゃね、試合で専用機を中破させました、そのせいで公式戦に出れませんってね。間違いなく鈴の代表候補生としての評価は下がるよね? 」

 

別に私は試合で甲龍が中破した事を怒っている訳ではない、真剣に本気で戦えば機体は傷付く事も有るし怪我をする事もある

 

 

だから私達、整備士やサポート要員が居るだから

 

 

切磋琢磨して高め合うなら試合を重ねる他がないとも思う

 

だが、これはあくまで自主練の試合であって公式戦ではない、怪我をしない 故障しない、が前提になる

 

多少なら私達サポート要員でドウコウする事も出来る、まぁどうにか出来るから壊していいって訳じゃないけど

 

まぁとにかく私が怒っている理由は、先の事まで考えて試合をしなかった事、それだけだ

 

幸い鈴は疲労と軽い打撲ぐらいだから次の行事に間に合うだろう

 

 

「全く・・・後でクレアさんに・・・いや、ジークさんに連絡しとくから」

 

私がそう言い甲龍の詳細な状態を見ようと背を向けた瞬間、腰辺りに軽い衝撃を受け見るとプルプルからガタガタに震え方が変わったラウラが泣きそうな表情をして抱き付いていて

 

「一夏、それだけは! それだけはぁぁああ」

 

と叫ぶ様に言う、なんでか知らないけどラウラってジークさんに怒られる事を酷く恐れるんだよなぁ、なんでだろう?

 

 

まぁそれはそれとして流石に可哀想になってきたので

 

「次は無いからね? 次やったら警告無しでジークさんに報告するからね? 」

 

 

「分かった、約束しよう。だから兄様(にいさま)には報告しないでくれ」

 

 

もう半泣きのラウラに言い、約束を結び ひとまずラウラの頭を撫でておく

 

 

そのうちジークさんの耳にも入ると思うけど、まぁ私が報告してないし約束を違えた事にはならない筈だ

 

 

「ラウラ、私は今から甲龍の状態を確認するから離れてくれないと明石を展開できないよ」

 

私が苦笑しながら言うとラウラは頷き離れたので安全距離を確保して明石を展開して甲龍の状態を診る

 

 

「左龍咆欠損、両腕部に亀裂と損傷、背部にも損傷・・・これはオーバーホールする様な感じかなぁ」

 

スキャンした情報を見ながら呟く

 

甲龍は次の行事には参加出来ない程のダメージを受けていて甲龍自身の自己修復能力では間違いなく行事に間に合わない、それに整備士の手によって修理をしようにも甲龍の精密な図面が無いし、予備パーツが無い

 

そんな状態なので本来は甲龍は次の行事に参加出来ないのだが、私と明石 そして有志が居るので前提を覆せる

 

 

「それじゃ図面配るね? のほほんさん、腕から始めて? そっちは任せる。私は龍咆から始めるから」

 

「はいはーい」

 

有志にスキャンデータを元に図面をコアネットワーク経由で引っ張り出し転送して、のほほんさん に有志への指示を任せて私は欠損したパーツの精製を始める

 

 

のほほんさん は普段は動きが凄くゆっくりで癒し系なのだが、整備の腕が既に実戦で通用するレベルをしている

 

 

私と仲良くしてくれるし、人当たりも柔らかいから有志メンバーとの緩衝材みたいな役割もしてくれて本当に助かっている

 

 

ちなみに私が整備作業時に有志メンバーを招集したら私の助手扱いで彼女達にはソコソコのバイト代が出る、出所は・・・まぁ姉さんが知ってる筈、多分

 

 

「欠損パーツの生成に1日、オーバーホールで2日、状況見て交換パーツの生成に1日、組み立てに2日・・・早くて日曜日の夕方か、んー」

 

 

そう早くて、だ

 

少しせっかちな鈴を説得するのは骨が折れそうだなぁ・・・オーバーホールと組み立ては人手で解決出来るけどパーツ生成は明石にしか出来ないからなぁ

 

 

まぁどうにか鈴を説得する他ないか、頑張ろう

 

 






お待たせしました


んー有志メンバーの人数と名前を決めようかな?と思います

よろしければ、アドバイスくださいませ


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