一夏ちゃんは戦わない   作:銭湯妖精 島風

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鈴と夏と

 

 

甲龍のオーバーホールを兼ねた大規模修理をする傍ら、軽傷だった鈴が復活したので整備室に呼び出し

 

「ラウラもラウラだけど、鈴も鈴で熱くなり過ぎ」

 

明石で必要なパーツを生成しながら鈴へ言う

 

「・・・悪かったわよ、それについては反省しているわ」

 

 

こうゆう時、鈴は大抵 言い訳をする傾向にあるので素直に謝った事に驚いていると

 

「あんた の言いたい事は理解しているわ、月末の行事へ参加が絶望的って事よね? 」

 

と鈴は私の言いたい事を理解していた事に更に驚く

 

「思いっきりの良さは鈴の良い所だけど、悪い所でもあるね? 」

 

「うっ・・・」

 

少しからかう様に鈴へ言うと鈴は、あからさまなリアクションを取る

 

 

「ま、今回は 何とかして行事には間に合わせるから。でも次が有る保証は無いからね? 」

 

「ありがと一夏、次が無い様に気を付けるわ」

 

私の言葉に鈴は少し真面目な表情で言う

 

 

「にしても、作業用の専用機を持ってるって聞いていたけど、本当変わったISよね? 」

 

鈴は私の腰部を始めとしたアンロックユニットのクレーン等を見て呟く

 

「そうだね、基本的には整備室の機材とかが無い場所で作業をする事を前提にしているんだ、例えば宇宙空間とかね? 」

 

明石には戦闘用のOSはインストールされていない、必要無いし

 

その代わりに様々な作業が出来る様なOSやソフトが沢山入っている

 

 

「宇宙空間でISの修理とか改修するわけ? なんて無謀な」

 

と鈴が微妙な表情をしたので

 

 

「明石は作業用ISで有って、IS用作業ISじゃないんだよ? やろうと思えば宇宙ステーションだって作製出来るんだから」

 

 

生成したパーツにナンバリングしてブルーシートの上に置きながら鈴に説明する

 

 

「え? だって あんた ISの整備士を目指してるんでしょ? 安定してるし危険も少ないからって 」

 

 

鈴は更に不思議そうな表情をして私へ聞き返す

 

 

「それは勿論そうだけど、明石は宇宙ステーションまで作製出来るスペックが有るって意味で、実際に作る訳じゃないよ 」

 

「そう、それなら安心ね」

 

私の説明に納得したのか鈴は安心した表情になる、ほんと鈴はオカンっぽい

 

 

「ひとまず暫くは甲龍は返せない、まぁ見ての通りバラバラだからね」

 

作業工程的にはオーバーホール中で甲龍はバラバラのパーツの状態なので鈴も見たら分かると思うが一応 説明しておく

 

 

「見たら分かるわよ、むしろ よくパーツ単位までバラバラに出来たわね? 」

 

 

ブルーシートの上にナンバリングされて綺麗に並べられ順番に損傷の有無や洗浄をされているパーツを見て鈴は言う

 

 

「まぁね、のほほんさん を始めとした有志メンバーの腕は折り紙付きだよ。私は師匠が規格外だったし、時間は有ったからね」

 

鈴の言葉に答えて笑む

 

「・・・師匠ってもしかして」

 

鈴は私の師匠について思い当たる様で、また微妙な表情をする

 

「束さんだね、箒のお姉さんだし、姉さんと幼馴染みだから昔から付き合いがあるんだ」

 

と私が言うと鈴は少し頭が痛そうな表情をして

 

 

「・・・ねぇ一夏、IS業界で最高位のVIP、ISの産みの親であり時代の最先端を常に行く稀代の天才 篠ノ之 束がIS整備の師匠で、世界最強のIS乗りであるブリュンヒルデ 織斑 千冬の実妹、あんた とんでもない肩書を持ってるわよ? 自覚ある? 」

 

と鈴は私を指差して言う

 

鈴が言っている事は事実だから否定はしないけど、姉は私が産まれた時から姉であり、気付いたらブリュンヒルデになっていたし

 

束さんは、物心つく頃には既に遊び相手してくれてたし、私に とっては ちょっと変わった個性をした愉快なお姉さん、ぐらいの認識なんだよなぁ

 

 

「まぁ理解はしてるよ? でも実姉だし、束さんは物心つく事からの付き合いだからさ? 」

 

と私が言うと鈴は再び微妙な表情をする

 

「・・・今、あんた が誘拐された理由が分かった気がするわ」

 

鈴は深く溜息を吐いて肩を落とし言う、それを見て私が首を傾げていると

 

 

「いい? あんた は世界的VIPの弱点になり得るのよ、つまり あんた を誘拐して2人に、何かしらを要求して言う事を聞かせる事も可能なの、わかる? 」

 

 

と鈴は真剣な表情をして私を指差して断言する

 

「いやいやいや、まさか〜・・・」

 

流石に話が飛躍し過ぎと思い笑って済ませようとして、似た事が有ったのを思い出して言葉を失う

 

「大丈夫よ一夏、あんた は、あたし達が守るわ必ずね」

 

一瞬だけアノ日の事が頭を過りトラウマが発動しかけた瞬間に鈴は私を抱きしめて優しく語り掛ける様に言う

 

「・・・ありがとう鈴」

 

いつも優しい鈴を抱きしめ返して、お礼を言う

 

 

きっと私が知らない間に、気付かない間に鈴や弾、数馬に私は守られて来たのだろう

 

私に悟らせない様に、私がアノ日の事を思い出さないでいい様に、秘密裏に

 

 

今度、時間を作って何か御礼を作ろう、それぐらいしか私には出来ない、だからせめて お菓子を作って渡そう

 

信頼出来る親友達に感謝を込めた お菓子を

 

 

時間を作るには、まずは目の前の仕事を終わらせないといけない、組み上がって直ぐに搭乗して試合が出来る訳では無いから、次の行事まで結構ギリギリかも知れない

 

 






お待たせしました


仕事が荒れていて今後の更新はおそらく週末更新が主になると思います



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