一夏ちゃんは戦わない   作:銭湯妖精 島風

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休日を過ごす

 

 

 

 

甲龍の大規模修理を約2週間掛けて完遂し、お菓子を大量生産して鈴を始めとした親友達に配ったり、有志メンバーへ配ったり、薫君へ手渡ししたりした今日この頃、せっかくの日曜日なので久しぶりに ゆっくりする事に決めベッドの上に寝そべり大型連休の時に自宅の本棚からシドニアの騎士を明石のバススロットに格納して持ってきていたのでソレを取り出し読む

 

 

「一夏がマンガを読んでるの初めて見た」

 

朝食を一緒に食べた後、部屋に戻って来てから真剣な表情でガオガイガーを見ていた簪が私の方を向き言う

 

 

「この前の大型連休で家に帰った時に持ってきたんだ、事前に寮のキャパシティ分からなかったからね。割と私はマンガとかアニメ好きだし」

 

 

マンガから顔を上げて簪を見て言うと

 

 

「だよね、一夏もコッチ側だもんね」

 

と簪はニッコリして言う

 

うん、否定しないし実際そうなんだけど、なんか含みが有る様に感じるのは気のせいかな、簪?

 

 

「あ、そうだ。昨日配った余りのクッキー有るけど食べる? 」

 

マンガを閉じてベッドに置き、寝そべった体勢から身体を起こしベッドの淵に座ってバススロットからクッキーを展開し差し出して簪へ尋ねる

 

「食べる、ありがとう一夏。 一夏って結構万能だよね 」

 

私からクッキーを受け取りラッピングを外しクッキーを一口食べて簪は言う

 

 

「ん〜・・・そうかな? お菓子作りは 元々好きだったからなぁ」

 

私もクッキーを食べて首を傾げつつ返答する

 

 

「料理が出来て、成績も優秀、運動神経も上位で、IS整備の腕は既にプロ、おまけに美少女。少し人見知りをするけど、些細な欠点で それが人間らしさを強調する、非の打ち所がない完璧な美少女だね」

 

 

なんか、いつも儚い系の簪が熱弁し始めて正直戸惑ってしまう、おかしいな? 今回は洋酒とか入れてない何の捻りも無いクッキーなんだけど?

 

簪が豹変する様な要素はクッキーには無かった筈、なんだけどな?

 

と言うか、褒め過ぎじゃないかな? 簪、なんか照れるよ

 

 

簪の不意打ちに戸惑っていると

 

 

「・・・立場上、本当は私が出張る事じゃないと思うけれど、一夏? 何か無理してるでしょう? 」

 

 

先程の酔った様な雰囲気の表情からスッと真剣な表情へと変わり簪は言う

 

 

突然の事で理解が及ばずに最初の辺りの言葉は聞き逃してしまったが、真っ直ぐ私を見る簪の視線が私を貫く

 

「そうだなぁ、大規模修理で少し無理したからかな? ありがと簪」

 

 

と私は簪に嘘をつく、実際には私が薫君への気持ちを無理やり蓋をしている事を言える訳がない、誰にも知られる訳にはいかない

 

 

「一夏、実は私は嘘を見抜くのが得意なんだ。 だから今 一夏が嘘をついているのが分かる、私に出来る事なら手を貸すよ? 」

 

 

真っ直ぐと私を見る簪へ そう言われ、私の心は揺らぐ

 

簪になら胸の内を晒してしまえるのではないか? と、決意が揺らぐ

 

 

きっと私が誰の迷惑を顧みずに自分本意に生きれば解決出来る

 

きっと薫君を自分のモノにする為にあらゆる手段を用いれば、容易く解決出来てしまう

 

 

「だから、無理をしないで? ね? 一夏」

 

 

戸惑い、困惑し、言葉を紡げない私に簪は優しく笑み言う

 

 

「私は・・・」

 

そんな簪に甘えてしまいたくなる、でもダメだ、ここで甘えてしまえば間違いなく決意が揺らいでしまう

 

 

「・・・一夏? 本当に、それで良いの? 後悔しない? 」

 

簪は優しい笑みのまま、私へ問う

 

 

「私は・・・」

 

簪には私が何を隠しているかが分かっているのだろう、だから私は考える

 

 

私は薫君への想いを告げない事に後悔するのか、を

 

 

「・・・良くない、絶対に後悔する。だって、私は」

 

 

だって私は薫君を愛しているのだから

 

そう、いくら自分を騙そうとしても私が彼に想い焦がれている事には変わらず、私の胸の内で想いは燃え盛っている

 

決して消えずに想いは強くなるばかりだ

 

 

彼への想いに気付き、蓋をしようと決意して たった2週間程度で揺らぐ程の想いなのだから、後悔するに決まっている

 

 

「・・・でも、私は彼の隣に立つ資格が無い、よ」

 

私は力無く俯き下を向いたまま簪へ言う

 

 

「資格? 資格って何? 人を好きになる事、想いを告げる事、想い人の隣に立つ事に資格なんて必要は無い、必要なのは勇気だけ」

 

ずっと流れぱなしのガオガイガーの様に力強く簪は私を真っ直ぐ見て言う

 

 

簪は間違いなくガオガイガーの影響を今 受けている、でも簪の言う通りかも知れない

 

 

私は勇気が無いだけなのかも知れない、でも簪は私の過去を知らない

 

 

「私は、普通の女の子じゃない。 きっと薫君は・・・」

 

私を選んではくれない、と続けようとすると

 

 

「それが何か問題? 本当は秘密なんだけど、私は一夏がどんな軌跡を歩んだか大体は知ってるよ? だから もう1度ハッキリと言うね? 織斑 一夏、元同性だからと、八月一日 君への想いを封じるのは間違ってる、それとも その程度で見限る男を貴女は愛しているの? 」

 

簪は真っ直ぐ私を見据えて力強く言う、その言葉に私の決意は揺らぎに揺らいで崩れ落ちる

 

 

「・・・そう、だね。私は勇気が足りなかったみたい、ありがとう簪」

 

 

「どういたしまして」

 

 

そう、私には薫君が私の過去を知り受け入れてくれると信じ切る勇気が無かった

 

 

勇気が有れば大体は解決する問題なのだから

 

 

「まぁ、それはそれとして、簪? なんで私の過去を知ってるのかな? かな? 」

 

私はニコニコしながら簪へ近寄っていく

 

 

私の過去は一握りの人間の記憶以外は全て束さんが改竄してくれたから私が元男と言う情報を簪が知ってるのはおかしいのだ

 

「それは、えーっと・・・」

 

簪は少し気まずそうに目を泳がしている

 

 

薫君へ想いを告げるより簪とのお話が先だな、うん

 

 

場合によっては簪の記憶も改竄しないとね?

 

 






お待たせしました


予定ではアニメ鑑賞しながら人生相談ぐらいのつもりが、何故かこんな展開になりましたw



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