一夏ちゃんは戦わない   作:銭湯妖精 島風

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簪 視点


束の間の休息

 

 

 

 

 

 

一夏が恋の悩みに自分なりの答えを見つけ、その過程で私の失言に対して一夏の追求を何とかした翌日の放課後、私は来月半ばに出場予定の大会の打ち合わせをする為に生徒会室に向かう

 

「失礼します」

 

扉をノックしてから中に入ると、いつもなら書類仕事をしている虚さんがガンプラのパーツをヤスリ掛けをしていて、姉はグッタリとデスクに突っ伏していて

 

「・・・酷い目にあったわぁ」

 

と疲労に満ちた声で呟く、この様子だと姉の所に一夏が来て尋問した様だ、南無

 

 

心の中で合掌しておき

 

 

「お姉ちゃん、来月の事なんだけど・・・」

 

 

「お母さんなら参加出来るって言ってたから大丈夫よ? ついでに虚ちゃんがエントリーを済ませてくれたし、今 作ってるヤツが お母さん用のガンプラよ」

 

 

私の言葉から質問を予想し答えを言う姉に、相変わらず優秀だな と感じつつ

 

 

「いつも有り難う」

 

 

「大した事してないわ、気にしないで」

 

私の言葉に、のっそり起き上がりニコリと姉は笑み言う

 

「虚さんも有り難う」

 

 

「私も大した事してないので、気にしなくて大丈夫です」

 

 

虚さんはヤスリ掛けしていたパーツをガンプラに組み私を見て言う

 

 

「それじゃぁ、打ち合わせを始めましょうか。まずエントリーしたメンバーは私、簪ちゃん、お母さんがファイター、虚ちゃんがオペレーターね」

 

 

 

姉はエントリーシートを片手に持ち眺めながら言い

 

 

「次にルール関係ね、1チーム ファイター3名 オペレーター1名を上限としてエントリーし、事前に申請されていれば補欠を2名申請が可能、エントリー自体はファイター1人でも可能の様ね」

 

 

と姉は続け、私にルールの書かれた紙を差し出して来たので受け取り軽く目を通す

 

 

「ガンプラの事前申請と審査は無し、ただし大型のMAを使用する場合は事前に申請が必要、1/144と1/100キットの使用を推奨」

 

 

私は気になった所を口に出して読み考える、チームでは無くソロで出場するならMSではなくMAを使用するのも有りだろう

 

 

それにオペレーターがいた方が有利に事を運びやすくなる

 

 

「一応、ルールには目を通しておいて? 去年と変わってないと思うけれど念の為にね」

 

「分かった」

 

肩を竦めて言う姉に返事をして

 

 

「お母さんと練習はしないの? 」

 

ふと思った事を尋ねてみる

 

 

「そうね、次の行事の後にしましょうか。一度は連携の確認とかしないとダメだしね? 」

 

「そうだね、わかった」

 

姉の言葉に頷くと

 

 

「そういえば、次の行事はタッグマッチよね? 相手は見つかった? 」

 

姉は何気無しに私に尋ねてくる、そういえば今朝 先生がそんな事を言っていたっけ?

 

 

「今、思い出したぐらいだから見つかってないよ? 」

 

 

「そう、私が探しましょうか? 直ぐに見つかるわよ? 」

 

 

相変わらず姉はシスコン気味な様で言ってくるが

 

 

「相方居なくても問題ないよ、居なければ居ないで当日に抽選で組まされるから」

 

 

それに一部例外を除いて専用機持ちに当たる可能性の方が低いだろうから基本的は負ける可能性は低い、これでも実力で代表候補になったと自負があるから一般生徒に負けるつもりは無い

 

 

「そう、そうね」

 

何故か残念そうな姉を見て、少し呆れてつつ次の行事の事を改めて考える

 

 

次の行事は1年全参加のタッグマッチ戦で整備科志望を確定している人以外は相方を見つけて申請しないといけない

 

 

申請締め切りは今週末まで、行事本番は来週だ

 

私達が試合をしている間に整備科の2年3年と1年の整備科志望が試合で使われた練習機の整備をする、と言うのが今回の行事だ

 

ある意味、戦場は裏方かも知れない、練習機の数は決まっているし、一般生徒には練習機を貸し出すから1試合につき4機、それを試合を遅らせない様に整備したりしないといけないのだから

 

 

「・・・一夏がいるとはいえ、裏方は修羅場か」

 

 

まぁ生徒だけで整備をする訳でもないから、そこまででも無いのかも知れないけど

 

 

「一夏さんは、既にプロと同等の技術を持っていますよ。専用機が有るとはいえ、作業スピードが段違いです」

 

 

自分のデスクの上にジェスタキャノンを3機並べてポーズを取らせていた虚さんが言う

 

「実際に見たって事? 」

 

「えぇ、この目で間違いなく。彼女は1人で4人分の作業を同時に進行させていました」

 

 

作業スピードが速くて正確だから4人分の作業をしていた のではなく、4人分の作業を同時に進行しているから作業スピードが早い、と言うのは凄い事だ

 

 

一夏はマルチタスクを習得している訳だから

 

 

試合においてマルチタスクは必須スキルだ、射撃管制と機体制御を同時にしたりするからだ

 

そして戦闘と整備ではマルチタスクのベクトルは全く違う、難易度も複雑さも整備の方が何倍も高い

 

 

「本音のやる気を上手く出してくれていますし、彼女には感謝しなければ」

 

 

と虚さんはクスっと笑う

 

虚さんの実妹で私の幼馴染で私付きの侍女である本音は、普段はナマケモノの様な眠た気な表情と動きをしているが、高い整備技術を持っている

 

しかし生来の のんびり屋な性格ゆえに基本的にヤル気をあまり出さない、まぁそれはそれで癒し系で良いと思うけれど

 

 

実姉としては、気になっていたのかも知れない

 

 






お待たせしました


裏方の話でした


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