一夏ちゃんは戦わない   作:銭湯妖精 島風

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地方予選 陸

 

 

 

私は仄かに暗い此の場所が好きだ、ルールが明確で己の力量により全てが決まる此の戦場が好きだ

 

 

私は自分が何者で有るかを知っている

 

私は自分が普通の人間で無い事を知っている

 

私は自分が紛い物として産まれたと知っている

 

私は自分が自分では無い誰かの代用品だった事を知っている

 

私は自分の心の奥底に有る破壊衝動がある事を、闘争を望んでいる事を知っている

 

私は自分がマドカと名付けられた人間で有る事を受け入れている

 

 

私の名はマドカ、織斑マドカ、裏世界のトチ狂った愚かな闇組織により地上最強の生物 織斑千冬のクローンを作り最強の軍団を作る為に産まれた存在だ

 

よくもまぁそんな馬鹿げた事を考えたものだと、今は思う

 

とはいえ、当時の私に自意識や自由意志なんて物は無かったし自分が何者で有るかなんて正直どうでもよかった

 

私は、私達は組織の道具で、私達の価値は それ以上でも それ以下でも無いのだから

 

そして使えないと判断された道具は捨てられるか再利用される、それが私達の日常だった

 

あの日までは

 

 

織斑千冬のクローンを用いた兵士を作る、と言う行為は言葉程簡単には行かなかった、ただでさえクローンを作るのは難しく、織斑千冬の生きた遺伝子を入手する事も難しかった、そして奴等は失敗作(したい)の山を築き完成形である私達を産み出した

 

その最後の最後で産まれたのが私だった、あの日、私が人間になった あの日、私は最終調整の為に装置に繋がれていた、最終調整が終われば私は武器を持ち下された命令を実行する人形になる、そんな状態だったが 最終調整は行われなかった

 

 

ISとは全く違う手足が長い紅いナニカを纏い、やたらブチギレながら怒号を飛ばし壁をブチ抜き現れ組織の戦闘要員を薙ぎ倒す声からして女と、そのブチギレ女を嗜めながらも自身も戦闘要員を打ちのめす 此方も声からして女による襲撃があって最終調整所ではなくなったからだ

 

既に最終調整が済み私以外は実戦テストへの名目で戦場に送られていたから私以外にクローン兵士はおらず、死傷したのは全て馬鹿な野郎達だったのは幸いだったかも知れない

 

 

ブチギレ女は粗方片付いた後も怒りが治らなかったのか組織の施設を破壊し、ありとあらゆる装置を それはもう徹底的に破壊の限りを尽くしているのを ボーっと眺めていると、嗜めていた方が私に優しく話掛けてきて言う

 

貴女を救いに来た、と

 

スコールと名乗った女は、道具として産まれた私の知らない眼をしていた。その眼は強い意志と確かな怒りを映していたが、それは私に対してでは無いのは何となく理解出来てしまう

 

 

スコールによれば、先に戦場に送られた彼女達は既に逝ってしまった、と言われだが、そうか としか私は思わなかった。組織にとって私達は替えのきく道具でしかなかったのだから

 

その組織もスコール達が壊滅させてしまった訳なのだが

 

破壊の限りを尽くしていた方が最後の装置を粉々にして私の方を向き、今日から お前はアタシ達と暮らせ、と妙に偉そうに言ってきたが元より私には自由意志なんて物はなかったし、自主性なんて存在しなかった、故に私は言われるがまま2人についてゆく事にし、裏の世界から表の世界へと足を踏み入れた

 

 

そこは私の知らない事、知らない物が溢れた眩しい世界だった、眩し過ぎるほどに

 

 

オータムとスコールに読み書き、表で生きていく為にしてはならない事、してはならない理由、金銭の種類などを教えてもらいながら、私は2人の上司と言う篠ノ之束博士の治療を受け、私にも自由意志や自主性が芽生え好き嫌いが生まれたが、私は厄介な性格をしているようで、2人には感謝しているが素直に感謝を述べられない

 

口は悪いが不器用に私の事を育ててくれているオータムとは良く喧嘩になるが、口が悪い割に手を上げられた事は一度もない。

 

立ち振る舞いや言葉遣いは優雅だが私と一緒に良くオータムに叱られるスコール

 

こんな紛い物の私の里親をしてくれて2人には感謝しかない

 

 

裏工作して私の戸籍を作り小学校へと入学出来る様にしてくれた篠ノ之博士にも感謝しているし、中学校に進学してからは たまたま仲良くなった蘭先輩にも感謝している、でも会話の内容が6〜7割が蘭先輩の兄の話なのはなんでだろう? まぁ先輩が楽しそうだから良しとしよう、うん そうしよう

 

 

私は闘争を望んでいる、植え付けられた知識と本能が戦いを求めている

 

私は此の仄かに暗い筐体の中が好きだ、適度に硬い座席に座ると落ち着くからだ

 

私は戦争を望んでいない、何気ない日常は尊く美しく掛け替えない物と知っている

 

私は確かめなければならない、あの男が親愛なる彼女にふさわしいかを、私は素直になれない厄介で忌々しい性格をしている。彼女は私を知らない、しかし私は彼女を姉と慕いたいと思っている、故に私は彼女を超える

 

彼女を超えた時、私は胸を張って彼女に会いにいける筈だ

 

まずは

 

「八月一日 薫、貴様の本気の覚悟を見せて貰うぞ? 貴様が愛しき姉(いちか)にふさわしいかを私が見てやる」

 

 

いつか素直になれる様になった時、私は言えなかった感謝を口に出来るのだろうか?

 

まだわからないが、きっといつかは、きっと

 

 





お待たせしました


本当はカット予定だったマドカの話を入れました

手足が長い紅いナニカはティターンモデルです


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