一夏ちゃんは戦わない   作:銭湯妖精 島風

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地方予選 捌

 

 

 

八月一日と接敵して十数分、私は未だ八月一日とのバトルを続けている

 

 

「やはり直線加速のスピードでは勝てんし、可変による急減速と急加速を上手く使って一撃離脱は厄介だな」

 

 

言葉では厄介と言っているが、実際に抱いている感情は『楽しい』だ、私は今 八月一日とのバトルを楽しんでいる

 

「とはいえ、やらねばならないのは違いないし・・・そろそろ本気で行くか」

 

 

私のGNバルカンによる牽制をクルクルとロールしながら躱し距離を取って行く八月一日を見据え呟き軽く深呼吸して自分の中のスイッチを入れ、間接思考制御(オートサポート)から完全思考制御(フルマニュアル)へ操作システムを切り替えて

 

「八月一日、そろそろ温まって来ただろう? 本気で行かせて貰う。確認したい事もあるしな」

 

 

「やっぱり本気じゃなかったか、通りで攻撃がヌルいと思ったよ」

 

私の言葉に八月一日は合点が言った様な様子で返答してくる、コイツなかなか目が良いな、と思いつつ

 

「それに気付くとはな、褒めてやる」

 

「それはどーも」

 

完全思考制御に切り替えたので、私の機動は生身のソレに近くなる、八月一日のビームを必要最低限の距離で避けて八月一日と斬り結び

 

「では尋ねよう八月一日、お前は織斑一夏の事をどう思っている」

 

「素敵な人だよ、至らない俺を支えてくれる最高の人だ」

 

鍔迫り合いの状態から離れて躱し撃ち斬り結ぶ、八月一日の挙動に嘘をついている印象は無いから本心なのだろう

 

「次は俺から質問なんだけど・・・M、君は一夏さんと知り合いなの? 」

 

「今それを答える必要があるのか? 」

 

八月一日は本当に気になる様子で尋ねてきたので尋ね返すと

 

 

「え? あー・・・必要はないけど最近、似た質問を複数人にされたからさ」

 

 

八月一日は苦笑しながら言い再びMAモードになり私から距離を取ってゆく

 

 

それにしても『私と似た質問を複数人からされた』と八月一日は言った、つまり私と似た想いを抱いている人間が複数人居るという事だ

 

まぁその事に関しては容易く想像出来る、何故なら一夏は素晴らしい人間だからだ。一夏は見返りを求めずに人助けをする事ができ、尚且つ それを見せびらかさない慎ましさを兼ね備えている聖女の様な人間なのだから

 

そんな一夏の幸せを願うのは当然だろう、中には過激派がいるかも知れない

 

とか思考しつつ八月一日の挙動を注視し

 

「・・・知り合いではない、一夏は私の事を知らない。私が一夏を一方的に知っているだけだ」

 

本当は正直に答える必要も無いが、八月一日と一夏が結婚すれば八月一日は義兄になるので正直に答え

 

 

「ちょっと理由が有ってな・・・まぁ私の話はどうでもいい、八月一日 お前は一夏を守り切れるのか? 」

 

 

「もうその質問を聞くのも4回目だよ、本当 一夏さんはみんな愛されている。だから敢えて何度でも答えるよ、俺は一夏さんを必ず守る、必ず」

 

八月一日からのビームを躱しながら尋ねると力強い声で言う、八月一日の声には一切の迷いも淀みも無く本心である事が分かり、私はコイツなら大丈夫だと自然に思った

 

ならば私のすべき事、言うべき事は決まっている

 

「まだ一夏には秘密なんだが、もはや隠す必要も意地を張る必要も無いだろう・・・織斑マドカ、親愛なる姉の為、今ここで お前を今一度推し量らせて貰う! 」

 

「え? 親愛なる姉? え? え? 」

 

私の言葉に八月一日は少し戸惑っているが敢えて無視し、私は突貫して八月一日と斬り結び

 

「お前の本心は剣を通して理解した、次は実力をしてして見ろ八月一日、私が・・・私達が安心して見守れる様に! 」

 

 

「その言葉も4回目ぐらいだよ!! 」

 

 

私は八月一日の返答を聞きながらナイトメアを操作し回し蹴りの要領で爪先のビームサーベルで斬ろうとするが、八月一日に回避され距離を取られてしまう

 

 

「でも俺は何度でも証明するだけだ!! 」

 

猛スピードで私から距離を開けた八月一日はある程度離れた後に反転してミサイルを掃射してくる

 

「流石に この量では不味いな・・・ファング!! 」

 

私は後退しながらファングを放ちアーマードパックに搭載された尋常じゃない量のミサイル群を撃ち落し始め爆発の閃光と爆煙が一面を覆う

 

「ふん、ミサイルでは私は落とせないぞ八月一日」

 

「分かってるよM、それはただの布石さ」

 

爆炎と爆煙の中から赤紫に光るムラサメが現れ、ナイトメアの左肩から下を斬り落とす

 

「なるほどな、切り札を唯の目眩しに使うとはな、予想外だったよ八月一日」

 

「それはどーも」

 

まだ左腕を無くしただけ、私は そう思いファングを使い迎撃をするが現実は そうでは無かった、八月一日は1か月で急成長していた 否、"いた" ではない "している "が正しい

 

八月一日は私とのバトル中にも成長を続け、私を超えて行った

 

「・・・また勝てなかった、か」

 

「でも、負けても無いよね」

 

ムラサメのビームサーベルがナイトメアのコクピットに突き刺さり、ナイトメアのクラレントがムラサメのコクピットを貫いている状態になっている、まさに痛み分け、刺し違えてしまった

 

「八月一日、私は お前を認めよう。だが覚えておけ、一夏を悲しませて泣かせたら・・・私がお前を必ず殺す、必ずだ」

 

「・・・その言葉も4回目だよM、分かっているよ、うん」

 

私の言葉に八月一日は苦笑している様だったが、私は私で妙にスッキリした気分になったので良しとしよう

 

 

 





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