一夏ちゃんは戦わない   作:銭湯妖精 島風

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八月一日 薫 の休日 2

 

 

 

 

ボーデヴィッヒさんに比べて幾らか雰囲気が柔らかいマリーを連れてIS学園 最寄りのモノレールに乗り、比較的近場で目的の物が確実に手に入る場所である大型複合商業施設レゾナンスへと向かう

 

ISコア意識のマリーがお金を持っている訳もなく、大した金額では無いので切符代を出してあげたら、マリーにやたら感謝されてしまった

 

 

そんな訳で夏本番間近の休日とあって、レゾナンスに組み込まれた駅も人で溢れていて、少し憂鬱になる

 

別に人見知りをする訳でも人混みが苦手でもないが、真夏間近で少々気温が高いので少し不快に感じてしまうのは仕方ないと思う

 

とはいえ、立ち止まるのも通行の邪魔になってしまうので、マリーを見失わない様に気をつけて一先ずは改札から出て通行の邪魔にならない様に壁際に移動し

 

「とりあえずレゾナンスに着いたね、これからどうするの? 」

 

「そうだな、コアネットワークからリィンの探知を掛けて居場所を割り出し追跡をする、問題が起こらなければ私が出て行く必要は無いしね? 」

 

俺の質問にマリーは答え微笑み

 

「ここまでありがとう、あとは私1人で大丈夫だ。帰りはララに連れ帰って貰うつもりだから」

 

「そう? 分かった、また困った事があったら陽炎に連絡してくれれば、協力出来る事は協力するから」

 

「あぁ、ありがとう。八月一日君」

 

俺はマリーに軽く手を振って別れて駅からレゾナンス本館へと歩き出す

 

 

「結局は1人か、まぁたまには良いかな」

 

 

そういえばIS学園に入学してから自分1人だけで外出したの初めてだなぁ と気付く、これまで外出した時は一夏さんが一緒だったな、と

 

 

とりあえず軽く伸びをして軽く肩を回して何気無しに右手にある通路を見てみると、見覚えの有る赤毛の美少女が探偵みたいに隠れて何かを見ていたので歩み寄り

 

「・・・蘭ちゃん、何してるの? 」

 

「薫さん、邪魔しないで下さい。 私の お兄を取ろうとする馬の骨を尾行してるんですから」

 

 

蘭ちゃんは俺の方を見ずに、少し離れた場所にいる弾と虚先輩を凝視し爪を噛みそうな声色と表情をして言い、俺には聞き取れない声量でブツブツと高速詠唱をしている

 

なんだろ・・・怖いよ、この子

 

「あれ? 今日は1人なんですね? 」

 

軽く屈んだ監視体勢から普通の体勢になり蘭ちゃんは俺を見ていう

 

「まぁね、凰さん達と約束が有ったみたい」

 

「そうですか」

 

と俺の返答を聞き、興味なさげに相槌をうち

 

「薫さん、私にとって一夏さんは お兄と同じぐらい大切な人です。それこそ お兄と一夏さんが結婚してくれたら究極に幸せと思える程に・・・」

 

「う、うん・・・」

 

蘭ちゃんは俺を真っ直ぐ見据えて言う、その目にハイライトが無いのは気のせいだと思いたい とか考えつつ様子を伺う

 

「しかし、一夏さんはアナタを選んだ。お兄では無くアナタを・・・あぁ勘違いしないで下さい、別に不満が有る訳では無いんです。一夏さんの意思が1番大切ですから、私が言いたいのは簡単な事・・・私の、私達の大切な一夏さんを悲しませ泣かせたり傷つけたりしたら、私がアナタを殺します。あらゆる手段を使い産まれてきた事を徹底的に後悔させて、苦しみの限りを尽くしてからアナタを殺します、覚えておいてくださいね? 」

 

「お、おぉう・・・覚えておくよ」

 

これまで何度も『一夏を悲しませたら、お前を殺す(意訳)』宣言をされてきたが、蘭ちゃんのオーラが他の人とは別物だ

 

今までの人は、ただの警告だけの威圧だったけど蘭ちゃんは違う、既に殺意を持ち次の瞬間には俺を殺せる段階にいる、間違いなく蘭ちゃんは俺を信じていない

 

それに彼女は一夏さんが俺を選んだ事に不満が無い、と言っていたが本音の所は不満に思っているし、納得していないのだろう

 

でも、一夏さんの意思を最優先に考えている事は間違いない。だから本音では不満だが口先では納得している風を装っているのだろう、多分

 

 

「それじゃぁ私は尾行を続けますから此処で失礼します、またどこかで」

 

 

纏わり付く泥の様なオーラを纏った蘭ちゃんは、それだけ言うと人混みに紛れて居なくなる、それを確認し深く溜息を吐き

 

「あそこまで殺意の有る目で見られたのは初めてだったな・・・本当に一般家庭の子なのか? あんな殺気出せるなんて」

 

独り言を呟きつつ脱力し精神的に疲れてしまったので、近くに有った休憩エリアの自販機で微糖の缶コーヒーを買いベンチに座り休憩する

 

 

「はぁ・・・これだけ釘を刺されると、そろそろ悪夢を見そうだなぁ」

 

なんで臨海学校に必要な物を買いに来ただけなのに、こんなに疲れなきゃいけないんだろう? と思ったが答えが出る訳が無いので思考を切り替え、臨海学校に必要な物リストを携帯を見て確認する

 

「水着、日焼け止め、念の為に新しい下着とか色々、か」

 

とリストを見て確認し、そういえば海に行くのも久しぶりだなぁ と思う

 

最後に行ったのは小学生の時だったなぁ、中学からは部活してたし行かなくなったっけ とか思い出す

 

糖分を摂取して少し回復したので、水着から買いに行く事に決めベンチから立ち上がり空き缶をゴミ箱に捨てて行動を開始する

 

 

願わくば、これ以上トラブルが起こらない事を切に願いたい

 

 






お待たせしました


釘を刺した面子の中で蘭が1番殺意が高くなってしまったw


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