ジャンケンの結果、鈴がサーブ権を獲得したので鈴がサーブをする事になった
「鈴、少し加減してね? 鈴は勝負事に熱くなりすぎる癖があるから」
「分かってるわよ、怪我をさせないように気をつけるわ」
私の言葉への返答が怪我を『しない様に』ではなく『させない様に』気をつけると言う自信満々な鈴らしいな、と思いつつ、谷本さんと岸原さんを見据え少し集中する
のほほんさんはお世辞にも運動が得意ではないし運動能力が高くない、しかし谷本さんは かなり運動が出来るし、岸原さんは谷本さん程ではないが、それなりには出来る筈だ、それに のほほんさんならミラクルを起こしてもおかしくない
「行くわよ! 7月のサマーデビル谷本!! 」
「受けて立つわ! 来い! 」
謎の掛け合いが始まって鈴は鋭いサーブを谷本さんへ打ち込み、谷本さんは勢いを殺す様にレシーブをして
「理子、お願い」
「オッケー、任せて! スマーッシュ!! 」
「受け止める!」
息ピッタリのタイミングで高威力なスパイクを岸原さんが放ち箒が持ち前の反射神経で反応し、勢いを殺してボールを拾う
「行くよ鈴」
「任せなさい一夏」
箒が拾ったボールを私が鈴の打ちやすい位置へトスを上げ、鈴が持ち前の運動神経で高く飛び上がりオーバーヘッドキックでボールを蹴り、のほほんさんの足元にボールを着弾させ、小さなクレーターを作る
「・・・えー」
おかしいな、ビーチバレーをしていた筈なのに、いつの間にか超時空サッカーみたいになったなぁ、おかしいなぁ
ひとまず、のほほんさんに直撃しなくて良かった、うん
「鈴、危ないから次から超時空サッカーは禁止で」
「なんでよ、当てないわよ? 」
満足気にドヤ顔してる鈴に言うと、本当になぜ禁止にするか分からない、と言った表情をして言ってくる
「鈴が当てるつもりが無くても、当たる時は当たるでしょ? だから禁止、分かったかな? 」
「わ、分かったわよ。もうしないわ」
少し言葉に圧を持たせて鈴へ言うと、鈴は素直に頷いてくれたので良かった
それから試合を再開し、常識の範囲内で試合が繰り広げられてゆき私達の勝利で1戦目が終了する
「お疲れ様、いーちゃん」
「うん、ありがとう束さん、なんでさも当然の様にいるのかな? 束さんは部外者でしょ? 」
完全に南国へバカンスへ来たセレブみたいな装いの束さんからポカリを受け取りつつ尋ねる
ちなみに箒は束さんとあからさまに目を合わせない様に不自然な動きで退避していった
「ん? あーまぁね? 一々イベント毎に招待状を要求するのも面倒になったし、向こう3年は今の根城を離れるつもりも無いし、少し副業を減らそうと思って、IS学園の非常勤職員になったんだ〜」
にぱー と束さんは笑みを浮かべ私の質問に答える、なんか凄い事を言ってるけど、聞こえなかった事にしよう、うん
「例の試作品の件だって束さんがいた方が、いーちゃんの負担も減るでしょう? 」
そう言い束さんは私の頭を優しく撫でる
本当、束さんには敵わないな、いつも先回りして私を助けてくれる。感謝してもし尽くせない
「ここに居たのか、束」
相変わらず凛とした雰囲気を纏いモデルの様にスタイルの良い私の自慢の姉が山田先生を伴って現れる
「やぁ、ちーちゃん。束さんに何か用かな?」
姉さんに名を呼ばれた束さんが姉さんに尋ねると
「用、と言う程ではないが、お前が乗ってきたニンジンが邪魔だ、早めに片付けておけ。あとお前もハメを外しすぎるなよ? 」
「ふふ、分かったよ」
姉さんの言葉に束さんは、ニコニコニーと笑み答える。本当に話を聞いてるか不安になるが、まぁ聞いてるだろう、多分
「束、たまには身体を動かそう。少し付き合え」
「構わないよ、ちーちゃん」
はたから見たら、いつもと変わらない凛とした表情なんだろうけど、妹である私から見たら束さんと久しぶりに遊べて嬉しそうに見える
普段なら絶対に姉さんから束さんを誘ったりしないし? 本当珍しい
そんな訳で姉さん、束さん、山田先生の3人がチームになり、試合が始まる
にしてもガンプラバトルと庵さんと一緒にいる時以外で楽しそうにしている姉さんを見たのは久しぶりな気がする
昔から自分に厳しく律し、他人に不器用ながら優しくしてきた姉さん。姉さんは、また24だから、まだまだ遊びたい年頃でもあるだろうけど
まぁ趣味に全力を出してしまうし、ガス抜きは出来てるのかな? その辺りが少し気になってる
「・・・篠ノ之博士がいる」
ビーチバレーの人集りに引き寄せられたのか薫君が隣にやって来て呟く
「IS学園の非常勤職員になったんだって」
「そ、そうなんだ」
束さんが突拍子も無い事をするのに私は慣れてるけど、薫君は慣れて無い様で少し困惑している様子で言う
「・・・八月一日」
「え? うん」
薫君を挟んだ向こう側に居る鈴が薫君の脇腹を軽く小突き薫君へ耳打ちをして薫君は頷き
「い、一夏さん、その水着似合ってる、よ? 」
「あ、ありがとう薫君」
薫君が少し恥ずかしそうに私の水着を褒めてくれた事が嬉しくて照れながらお礼を言うと、周りから生暖かい目線が注がれて少し居心地が悪くなってしまうが、薫君の隣から動きたくないので我慢しよう、そうしよう
お待たせしました