プルルル・・・プルルル・・・と、いつもの電子音を聞きながら相手が電話に出るのを待つ事数回、電子音が途切れ
「やぁやぁ八月一日君、君から電話をしてくるなんて珍しいね? 君は私の事が苦手だと思っていたのだけど気のせいだったかな? いや気のせいではないだろうね? 」
開幕からテンション高めに挨拶する間も無く篠ノ之博士は喋り出し勝手に結論を出して満足そうだ、まぁ実際 俺は彼女の事が苦手なのは間違いない訳で
「ははは・・・突然すみません、ちょっとお願いって言うか教えて欲しい事がありまして・・・」
俺は何とか体裁を保つ為に言葉を紡ぐと
「いーちゃん と ちーちゃん の家の場所、かな? 」
とまさに聞こうとしていた事を篠ノ之博士に言い当てられてしまい、心臓が一瞬止まるかと思ったが何とか意識を保ち
「・・・よく、分かりましたね? 」
「はっはっはっ、この天才 束さんには全てお見通しさ! なんたって君が私へ連絡してくるなら、いーちゃん関係しかないしね? 」
篠ノ之博士は上機嫌な様で笑いながら楽しそうに言う、いや普通にスゲーな
「教えてあげるのは簡単、でもタダであげるのは私のポリシーに反するんだよねぇ〜? どうしようかなぁ〜? 」
本当に楽しそうに篠ノ之博士は俺を試す様な言い方をする、どんな無理難題を言われるか軽く冷や汗をかいていると
「よし、決めた。私が君へ望む対価は、いーちゃんとデートして来なさい。期限は夏休み中、場所は君自身がリサーチしてデートコースも選定する事、良いかい? 君が自分でデートの計画を練るんだ、それを対価とする」
「は、はい。分かりました」
俺は、あまりに良心的な対価に拍子抜けしてしまい、変な返事をしてしまうが、篠ノ之博士は愉快そうにクスクス笑い俺の様子を見て楽しんでいる様だ
「それじゃ約束通り、いーちゃん と ちーちゃんの家の場所を陽炎へ転送しておくよ、にしても私より簡単に教えてくれる人が沢山居るはずなんだけど、なんで私だったのかな? 」
「・・・そうですね」
篠ノ之博士は笑いながら俺に尋ねてきて、そこで俺は確かにそうだな と気付いてしまった
そうだよ、よくよく冷静に考えたら、わざわざ篠ノ之博士に連絡取らなくても弾とか数馬にクロエ、それこそ一夏さん本人や織斑先生も居るし、織部模型店まで行って家の場所を聞く事も出来るじゃないか
「もしかして気付かなかったの? 」
「・・・はい」
俺が素直に答えると篠ノ之博士は、クスクスと言う笑いからゲラゲラと笑い方が変わり、それはもう大爆笑していて何とも言えない微妙な気持ちになってしまう
「い、いやぁゴメン、君は本当 面白いねぇ八月一日君」
「ど、どうも」
数分後、漸く笑いが引いたのか軽く笑い疲れた様な声で篠ノ之博士に言われ、曖昧な返事を返す、正直 何が正解かよく分からないし
「おっと、そろそろ行かなきゃ。地図は陽炎に転送したから、あとは陽炎に聞いて? もし分からなかったら、その時は私より優しい人を頼る様に、ね? 」
「あ、ありがとうごいました」
俺が篠ノ之博士へお礼を言うと、彼女は聞いているのか分からないタイミングでバイバーイと言い通話を切る、それから数拍置き俺は深く溜息を吐きベッドに倒れ込み
「・・・疲れた」
電話1本するだけでこれ程疲れてるとは、やっぱり篠ノ之博士は苦手だ。いや彼女は悪い人ではないのは分かってるんだけど、何となく苦手なんだよなぁ
「大丈夫か? マスター」
ふわり と半透明の陽炎が現れ心配そうに俺の顔を覗き込みながら尋ねてくる
「大丈夫だよ陽炎、篠ノ之博士と電話して少し疲れただけだから」
「母上は個性的だからの、マスターの苦手な分類の人間かも知れぬな? 」
と言い陽炎は苦笑し
「それはそれとして、母上から織斑姉妹居住地のデータが転送されてきた。 現在地から推定で約2時間程で到着出来ると思うが、どうする? 」
陽炎は俺を気遣ってくれている様で、そう尋ねてきたので どうしたものかと時計を確認すると、大体15時を示していた
「・・・流石に今からはダメだね、早くて明日、かな? 」
そもそも突然訪問するのも失礼だろうし? ひとまず一夏さんに連絡してからにしないとな、と答えを出しベッドから立ち上がり喉が渇いてしまったのでキッチンへ向かうと、楓が麦茶を飲んでいたので
「楓、俺にも麦茶くれ」
「お? おー」
楓は自分が使っていたコップに麦茶を注ぎ俺に渡してきたので受け取り麦茶を飲み干す、やっぱり夏は麦茶だなぁ
「なぁ、兄貴? 俺の見間違えだと言いんだけどさ? 兄貴って兎の幽霊に憑かれてる? 」
「は? お前、何言ってんだよ? そんな訳・・・」
珍しく焦った様な表情をしている楓に、とうとうおかしくなったのか? と思いつつ楓の目線の先に眼を向けると、俺の右肩辺りで半透明の陽炎がフヨフヨ漂っているのを見て、楓が言った兎の幽霊が陽炎だと気付く
「半透明でも見えるんだ、知らなかった」
「うむ、吾輩も知らなかった。 もしかしたら此奴も適合者かも知れぬぞ? 」
と陽炎は少し面白そうに言うが、正直 俺的には笑えない。喧嘩はするが嫌いじゃない弟を、IS学園に入れるのは少し躊躇いがある
こう言っては何だが、少々所ではないぐらい息が詰まるからなぁ、本当
とりあえず楓に陽炎を紹介して誤解を説いとこう、じゃないと後々面倒そうだしね?
お待たせしたした
電話する相手を間違えた回でしたw
薫君、ドンマイw