拙作、「戦姫絶唱シンフォギアBR」をお楽しみください。
………雨が降る。
傷に沁みるが、もう、どうでもいい。
私は────────
人でなし、なのだから
────────────────
「まーたサトリが歩いてやがるぜ」
「うわ、まだ生きてたのアイツ……」
「アイツの兄さんを見習って死ねよ」
────ヒュッ
「いっ……」
額に石が当たり、血が流れる。
『はっ、ざまぁ!』
『無様に石喰らってやんの!』
「……心の声ダダ漏れ」
「なんか言ったかよサトリ!」
蹴られる。
「……別に、なんでも?」
「はー、お前もうそろそろ死ねよ……必要ねぇからさ」
「そうそう。家族揃ってきめぇ事しやがってよ……」
父が研究職で何が悪いのだろうか?
思っていたが口には出さない。
まあ、いつもの事だ。
放っておいても問題は無いだろう。
────確かにこの時までは、そう思っていた
────────────────
馴染みの駄菓子屋────店主はあまり良く思っていないようだが────で、いつもの水飴を買って帰る。
だが、いつもは聞こえない音が聞こえた。
──焦げ臭い匂いと共に
私は走った。
水飴を落とすのも、転んで膝を擦りむくのも構わずに。
暫く走って、家に着く。
本当なら、あんなに明るくなかったはずだ。
なのに、どうして………
「お父さん!」
「うるせぇ、こうしなきゃお前は殺せないだろ? サッサと入れよ!」
「きゃっ!」
『可愛い声出すんじゃねぇよ』
『あー、こんな事なら1回でもヤってから殺すんだったかな?』
『キモ……今更命乞い出来ると思うんだ……』
有象無象の声が聞こえる。
心の声が聴覚に捩じ込まれる。
兄が死んだ時のように、涙が込み上げてくる。
「お?」
「アイツ立ったぞ!」
「私は……死んじゃ、ダメだ……お父さんを、助けなきゃ……!」
そうだ、助けなきゃ
助けなきゃ、助けなきゃ
助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ助けなきゃ──────!
扉に手をかける。
ノブは流石に熱くなっていた。
でも痛くなんてない。焼けてても動けば構わない。
ドアがゆっくりと開く。
幸い、まだ家の中はあまり燃えていない。
駆け足で書斎へ向かう。
研究者である父は、仕事に誇りを持った人間だ。
────ならば、私よりも生きていて価値はあるだろう。
書斎の戸を開く。
「お父さん! 逃げよう!」
「
シュッ
それはお父さんがマッチを擦る音だった。
「なんで……?」
「僕は生きていてもこれからは成果を残せないよ。だから……唱子にこれをあげる」
投げ渡されたのは、ペンダント。
「……それを持って逃げて」
「でも!」
「……早く!」
窓が開けられ、私は突き飛ばされる。
その直後────書斎があった場所は炎に包まれた。
こんな形で、お父さんとは別れたくなかった。
手の中のペンダントが熱を持ち始めた。
『キミは、どうしたい? 父親を殺されて……』
「……許せるはずがない」
『……そうか、なら……』
「力を貸せッ!」
──Gnitaheidr Gram von raxel tron
───────────────
「……なんだよ、あの光」
「虚仮威しじゃねぇの? 最後の抵抗的なさ!」
『虚仮威しかどうか……試してみる?』
私の声は罅割れていて、原型は残していない。
手に握った小さな剣を、近くの奴に投擲する。
……綺麗に首と胴が別れてしまう。
私がやったのか? いや、コレは人の形をしたモノだ。無くなったって構わない。
『……無辜の命を奪った……報いと知れ』
それが本当に私なのかは、私も知らない。
投げ上げた小剣を幾つも幾つも殴り飛ばす。
人の形をしたモノの動きは命中するだけで止まっていく。
……彼女の纏う装甲は、蒼穹の如き空色から、血染めの赫へと変わっていた。
────────────────
家が燃え尽きるまで、彼女はモノを壊し続けた。
首を断ち、
細切れにし、
縦に2つに切り落とし……
いつしか、彼女の住んでいた小さな街の人間は、いなくなっていた。
「……」
仮面を外した少女は、血染めの装甲を嘲笑うように、歪んだ笑みを零した。
「……バイバイ、お父さん」
宛もなく、少女は歩き出す。
先の水飴には蟻が集っていて、少女はそれを踏み潰した。
お楽しみ頂けましたでしょうか?
それでは、今後ともご贔屓に