更新が空いてしまい、申し訳ないです。
それではお楽しみください。
「新さん、いますか?」
唱子が新の部屋のドアをノックする。
数秒置いて、部屋に入るよう促された。
「唱子、どうしたんだ? 突然」
「ええと……私の買い物に付き合ってください」
「良いけど……ナナミじゃなくて、俺なのか?」
「新さんが良いんです。ほら、ついてきてくださいってば」
「あっ、ちょっ、唱子! せめて着替えさせてくれ!」
未だ寝間着のままの新を引っ張って進もうとする唱子を、引き止めるように新も堪える。
今日はカフェ・シエスタも定休日。
暫しの安息は、此処に。
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大規模ショッピングモール“イネス”。
ナナミ曰く、『とんでもない複合型モール』であり、実際に病院やらゲームセンター、公民館すらあるショッピングモールだ。
「何を買いに来たんだ?」
「ええと、そろそろ冷えてくるのでコートと、私の日用品と……まあ、後はお店で使う道具の買い出しですね」
「分かった。じゃあ行くか」
「はい!」
入口から入って直ぐに、唱子の目当ての店はあった。
「“クライム”……?」
「洋服屋さんです。ここで上着を揃えちゃいましょうか。新さん、コートが無いって言ってたじゃないですか」
「あー、覚えててくれたのか! 俺も忘れてたからな……」
「忘れないでくださいよ? これからは寒くなるんですから」
「そうだな……」
「あ、新さんはこれとか似合いそうですよ!」
「これか……おっ、安いな……」
「私のも……選んでほしいです」
「これだな……」
暫くコート選びは続き、唱子と新は一番気に入った物を購入した。
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そして、その光景を外側から見る者が1人。
「……『韋駄天』弐から通達。壱より引き続き、
ここ数日、特務部隊『韋駄天』は、特異災害対策機動部二課にすら任務を秘匿し、櫛原唱子の“観測”を始めていた。
「対象のバイタル、安定。観測を続行します」
通信を切断し、唱子に向き直る。
「……あんな一人の小娘に、神の力が宿ってるのかねぇ……?」
タブレット端末を待機状態へ戻し、彼のジャケットに着けられたバッジを見る。
「ま、俺は韋駄天。小娘にも、隣の奴にも捉えられないさ」
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「唱子、これとかどうだ? 似合いそうだけど」
「……スカート、短いんですけど」
「あ……唱子って、もしかして苦手だったか? ミニスカート」
「ナナミさんにも言われましたよ、それ。なんというか……無防備の象徴みたいで……」
「そうか……なら、これは戻して……」
新が棚に戻そうと、スカートを手に取る。
「ま、待ってください……」
「唱子?」
「……新さんが着て欲しいって言うなら……着ない事は無いですけど……」
「……いいのか?」
「でも! 新さんと一緒に出掛ける時だけです! それ以外では絶対着ません!」
「わ、分かった分かった……」
「あ! 新さん今喜んだ! 私が着てもいいって言ったら喜んだ!」
「喜んでない! 喜んでなんてないぞ!」
「嘘! 絶対嘘です! 私の目は誤魔化せませんよ!」
そのやり取りを目撃され、彼ら彼女らの“声”が聞こえたのか、唱子の顔が目に見えて赤く染まっていく。
「……新さんのせいですよ」
「それはさすがに理不尽だろ!?」
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「はー、なんか疲れましたよ」
「唱子、お前なあ……」
「新さんが変なこと言うからです」
「……悪かったよ」
「新さん……じゃあ、あそこ行きませんか?」
唱子が指すのは、クレープ屋のワゴン。
街でも美味しいと評判のクレープは、偶にシエスタでも話題に上っている。
「じゃあ、食べに行くか」
「ですね……」
ワゴンの列は幸運にもあまり長くはなく、直ぐに新と唱子の順が回ってきた。
「おっ、お二人さんは何にする?」
「私は……このチョコレートのを」
「俺はこっちのバナナのかな」
「バナナとチョコレートな、OK。お熱いお二人にちょっとだけ具材はサービスしてやるよ!」
数分で二つのクレープが完成し、手渡される。
「熱いから気をつけろよ」
「ありがとうございます。いただきます」
静かにクレープを頬張る唱子と、自分のクレープを齧りながら唱子を眺める新。
その“声”に気付いたのか、唱子が新に視線を向ける。
「どうしたんですか?」
「いや、唱子……クレープ、ひとくち分けてくれないか?」
「……良いですけど……ひとくちですよ、ひとくち」
目を逸らしながらも、唱子は新の口にクレープを運ぶ。
「ん、こっちも美味いな……俺もこれにすればよかった」
「あ、新さんのも分けてください、ひとくち」
「良いぞ、ほら」
「はむっ……」
ゆっくりと咀嚼する唱子。
そして、それを見る新。
「どうなんだ……?」
「……お、美味しい……です……」
「唱子?」
「美味しいです!」
「そうか……やっぱり話題になるだけあるよな……」
「………あっ」
「どうしたんだ、唱子」
先程の洋服屋での一幕よりも、赤く赤く染まっていく唱子の顔。
「唱子!?」
「……こ、これ……関節キス、ってやつですかね」
「……言われてみれば」
「うーっ……」
「でも、唱子とは前にキスしたよな? なら大丈夫なんじゃ……」
「それと、これとは……話が、別なんですっ!」
赤い顔を隠すように、唱子は顔に手を当てていた。
その様子すらも、誰かに観測されている事に気付かず。
そういえば、シンフォギアXDにてアマルガムの調と切歌が実装されましたね……
調は来なかったです、はい。