恋文です。
今回でシンフォギアBRも5話。
前後編となっております。
それでは、どうぞ
「え? 今日……お店、休みなんですか、惣一さん」
「そうそう! 今日は月に3回ある定休日さ! 新は早くに出掛けちまったが……ナナミと唱子ちゃんはどうする? ミソラとアニメでも一気見するのか?」
唱子とナナミの朝食を用意しながら、惣一は問いかけ、朝の珈琲を淹れる為に珈琲豆を挽き、粉にしていく。
「あ、そうだショーコちゃん! そう言えば普段着とか持ってないよね?」
「……え? あ、はい」
「じゃあ私がショーコちゃんに似合いそうなの買ってあげるからさ! ちょっと電車に乗っちゃうけど、“イネス”に行かない?」
「……え、ええっと……」
「新におしゃれしたショーコちゃんを見せて、がっちりと骨抜きにしちゃおう!」
「……」
唱子は抵抗するだけ無駄だと思ったのか、ナナミの勢いに押されたのかは分からないが……ずり落ちていた眼鏡を整えると、小さく首肯した。
「じゃあ決まり! イネスに行くまでの服は私が貸してあげる! 私が中学生の時に着てた奴だし……何より、ショーコちゃんにも着てみて欲しいし!」
「……ええ……」
「ナナミ、程々にしてやれよ〜」
小一時間程、ナナミが唱子を部屋から出さなかった……とだけ、ここには記しておく。
────────────────
「来たよ、イネス! ここ近辺では最大のショッピングモールにして、ボウリング場やカラオケ、果ては病院、公民館までここにある……とんでもない複合型モールだよ!」
「そ、そうなんですか……」
目を輝かせて唱子に解説をするナナミ。
若干唱子は引き気味に、ナナミに尋ねた。
「ナナミさん、何処に行くんですか?」
唱子は分かりきっていたが、敢えてナナミに行先を尋ねた。
「うーん………先ずは、洋服からかな! 着いてきて!」
勢い良くナナミは唱子の手を握ると、3階の服屋に向かい、走り始めた。
────────────────
「……到着だ、新」
「ありがとうございます、
「月浦村になんの用なんだよ……」
「最近、うちで新しく住み込みで働いてる
そう言って、印刷された一枚の写真を取り出す。
「そうか……本当にその写真の娘が、この惨状から逃げてきたのなら……いや、まさかな」
「取り敢えず、俺ちょっと村に入ってみます」
「おう、入れ入れ……警察も、流石にもう調べ物は無いみたいだしな」
そう言って新は、自分のラップトップやメモ帳、デジタルカメラの入ったボディバッグを肩にかけて、菊次の車を降りる。
………全ては、唱子の真実を知るために。
────────────────
「ねぇショーコちゃん、次はこれ着てみない?」
「…………ええっと…………」
そう言って試着室の前を占拠し、両手どころか脇にも服を抱えているナナミ。
「そ、そんなに買うんですか……?」
「当たり前じゃん! 私の目の前には、とびきりかわいい眼鏡を掛けた黒髪の女の子……そして私の手には……」
「……手には?」
「服!」
「……つまり、私はそれ全部着るまで出られない……?」
「その通り! それで、ここでの用事が終わったらランジェリーショップ行こうか。ショーコちゃんはあんまり下着だって持ってないでしょ? ブラなんか1着も持ってないし……ね?」
唱子は悟った。
“あ、これナナミさん本気だ”と。
そして、気が遠くなるほど更衣し、気に入ったものを幾つか、畳んでカゴに入れる。
服の会計が終わると、ナナミは直ぐに唱子の手を取り、隣のランジェリーショップに駆け込む。
「ショーコちゃんは、どんな下着を着けたいとか穿きたいとかあるの?」
「……ええっと……普通に白じゃダメですか?」
「いいじゃん! 新も好きそうだしね……」
「え、何か言いました?」
「ううん、何も! でも白1色だと味気もないし、水色とかもいいかもね!」
「水色……」
「あ、でもその前にサイズ計らないといけないのか……すみませーん!」
「……まだ、続くの……?」
────────────────
「……月浦村の地図は……っと」
PDFファイルとしてスマホに落としていた地図を見ながら、新は歩き出す。
地図に付いているバツ印は、惨殺事件での被害者の遺体のあった場所だ。
「……ん?」
新は地図の1つの場所に目をつける。
そこには不自然な程にバツ印が集中していて、所謂“屍山血河”を築いていたと思われる場所だった。
「……ここからそんなに遠くない」
方向を変え、新は進む。
“知らなかった”で済ませないために。
そして──────櫛原唱子を、今一度知るために。
────────────────
「沢山買ったよ……久しぶりに!」
「……ありがとうございます。ナナミさん」
「気にしないで! ショーコちゃんにおしゃれして貰いたかっただけだからさ!」
そう言って、イネスのフードコートの椅子に座り、2人でソフトクリームを食べる。
ナナミはチョコ、唱子はハニーミルクである。
「私もそっちにすれば良かったかな……美味しそうだね、それ」
「……あの、食べますか?」
「ううん、今度来たら試してみるよ。限定から定番メニューになるみたいだし」
「その時は、私に奢らせてください」
「……分かった。約束ね……っと、じゃあ次はなんだろ……映画観る? それともゲームセンターで遊ぶ?」
「じゃあ、ゲームセンターで」
「おっけー! 私のテク、見せてあげる!」
2人は大荷物を店に配送して貰うように手配すると、その足でゲームセンターに向かった。
────────────────
「ここが……」
典型的な家屋“だった”と思しき建物。
壁の至る所は焼けていて、2階の部屋に至っては元の色を残していない。
「……失礼します」
無言の家に一言告げて、新は“櫛原”の表札が下げられた家に入る。
鍵は開いている。まるで……誰かを待ち望むようだった。
如何でしたでしょうか?
感想を下さると、私のモチベーションがぐーんと上がります。
次回もお楽しみに。