戦姫絶唱シンフォギアBR   作:十露盤

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皆様、シンシンシンフォギア。
1ヶ月も間をあけてしまい、申し訳ないです。

それでは、お楽しみください。


Act8:The unnamed goddess

「いらっしゃいませー」

「よう、嬢ちゃん……」

「あ、菊次さん。お仕事お疲れ様です」

 

唱子が菊次を席に促すと、菊次は首を横に振る。

 

「いや……今日は、珈琲を飲みに来た訳でも、軽食を取りに来た訳でも無い……」

 

音もなく、()()()()、菊次は近寄って来る。

 

「……っ!?」

 

()()()

形容するならば、まるで電流が通ったような音がする。

 

「……先ずは第一関門突破……って訳だな」

 

菊次は手にした超小型のスタンガンを背広の内ポケットに仕舞うと、唱子を担ぎあげる。

 

「すまない。来店直後で悪いが、店員の子が倒れてしまった」

「ウソ! ショーコちゃんは大丈夫ですか!?」

「一応、俺が病院に運んでおく。心配はするな……」

「すみません、菊次さん……ショーコちゃんをお願いします」

 

────────────────

 

「よう、目が覚めたか」

「……貴方は……どうして私をここに?」

「俺はお前さんを調べてたんだよ……月浦村の、元住人として」

 

月浦村の名前を出され、唱子の眦が釣り上がる。

 

「そんな怖い顔すんなよ。俺は別に、お前に復讐とかチャチな事は考えてない」

「なら……どうして?」

「……お前の中の()()()()を、本格的に目覚めさせてやろうかと────────」

 

扉が吹き飛ぶ。

現れた人影は、唱子にも見慣れていて……

 

「唱子っ!」

「新さん!?」

「……思ったより速かったな、新」

 

肩で息をしながら、新はそこに立っていた。

 

「……唱子に、何をしやがった」

()()、何もしていないさ……そもそも、お前が居なければ、俺たち『韋駄天』がコイツを保護し、人類守護の剣と変えていたんだがな……」

「人類守護の……剣……?」

「俺の目的は話したぜ……お前の番だ、新……お前は何を思って、コイツを助けようとする? お前は俺に言ったよな……『どんな理由があろうと、人殺しは絶対の悪だ』と」

 

確かに、新は嘗てそう言った。

 

「そうだよ、その通りだ菊次さん。でも……唱子の事を信じるって言ったのも俺だ。それに嘘は吐きたくない」

「……分かり合えんな、新……まあいい。お前を正面から負かせて、コイツは韋駄天が保護する……」

「……望む所だよ、菊次さん……!」

 

────────────────

 

「……やめて」

 

新さんの拳が受け止められ、菊次さんの掌底が入る。

 

吹き飛ばされて血反吐を吐く新さん。

容赦なく新さんに近寄って、追撃を掛ける菊次さん。

 

「やめてよ……」

 

何時からか、私の頬には涙が伝っていた。

 

自分(わたし)の為に争っているから?

────────否。

 

目の前で血が流れているから?

────────否。

 

それならどうしてなのだろう。

 

新さんは、私のお父さんと似てた。

私の事を話しても、嫌な顔せずに聞いてくれた。

 

新さんは私の事を、心からの親愛で抱き締めてくれた。

これは、私の能力(チカラ)が言ってる。

 

それと同時に、黒い()()()も込み上げてくる。

 

ああ、これは、まるで──────

 

────────あの時と同じだ。

 

知らぬ間に口遊む、想い神(オモイガミ)たる私の旋律。

あの村を血に染めた……私だけの旋律。

 

── Gnitaheidr Gram von raxel tron

これに意味を付けるなら────

 

『神でありても、血に染まりて』

 

────────────────

 

「……唱子!?」

「まさか……纏ったってのか……ロールアウトした直後にロストした、シンフォギア────グラムを」

 

菊次は新を壁まで蹴飛ばすと、唱子の下に歩み寄る。

 

「それを嬢ちゃんが持ってるのは予想外だったが……なら、尚更……俺の所へ来い」

「……だ」

「何だって?」

「嫌……だ。私は、新さんと……ずっと一緒にいる」

「その力を持ったままじゃ無理だな」

「誰が決めた、無理だって……」

 

小剣が殴り飛ばされ、菊次の頬を掠める。

 

「……例え私が血に塗れても……私は、その可能性を否定するっ!」

「……無意味だ。無意味が過ぎる」

 

先程の新と同じく、鋭い踏み込みからの掌底が唱子に────

 

「唱子っ!?」

 

当たりはしたが、先程の威力は失せていた。

 

その証拠に、菊次の背中からは────

 

唱子の持つ、大剣の刃が伸びていた。

 

同時に、刃の美しかった空色も……菊次の血が染み込むように、赤く、紅く、赫く染まる。

 

「……これで、いいんです」

 

《Embrace/Death》

 

唱子の頬の涙が、止まることは無かった。

 

────────────────

 

「────唱子……っ!」

「あは、あはは……新さんだ……」

「どうして……なんでっ!」

 

瞳に光は無く、菊次の躰から刃を引き抜き、首を飛ばす唱子。

 

「あのままだと新さんが死んじゃいます。あのままだと私の前で新さんが死んじゃいます。あのままだと私のせいで新さんが死んじゃいます。あのままだと私が攫われてしまったから新さんが死んじゃいます。あのままだと私が月浦村から出てきたせいで新さんが死んじゃいます。あのままだと新さんが私の事に興味を持って私の事を調べてしまったから興味を持たせた私のせいで新さんが死んじゃいます。あのままだと私の事を抱き締めてくれたから菊次さんに新さんが殺されちゃいます」

「違う! 違うんだ、唱子!」

「なら何だって言うんですか、私のせいで新さんが死んじゃいそうになっちゃったから、新さんを殺そうとする人を私は殺しました。私は新さんの物になる、そう言いましたよね? 新さんが死んじゃってしまったら物を使う人がいなくなります。持ち主のいない物なんて物の役目を果たせません」

「唱子……やめてくれ、頼む!」

「これ以上これが抵抗しないようにしないと……」

 

首を飛ばされている菊次の躰に、逆手に持った大剣を叩きつける唱子。

腕も、足も、腰も、胴も……グチャグチャに切り刻まれる。

 

「あは、あははは……もうボロボロになっちゃった……」

 

大剣を地面に落とし、ギアが解除される。

 

新は痛みに耐えながら、唱子の元へ駆け寄り、狂ったように笑い続ける唱子を……ずっとずっと、抱き締めていた。

 

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