あそぼ。元リースEXです。更新が早いので別人だと思いますが初投稿です。
《昔の私ぃ?》
最終試験会場へと向かう飛行船で与えられたゴン=フリークスの自室で、アトラ、ゴン、クラピカ、レオリオ、キルア――そして何故かチィトカアが一堂に会していた。まあ、チィトカア以外はこれまで協力して来た仲のため、異物なのは彼女だけであろう。
ちなみに四次試験は最後のレオリオのプレートを入手する際は、アトラは特に何もせずに事のなり行きを見守り、蛇の毒で誰かが死に掛けたら流石に救い出そうぐらいの気持ちでいたところ、全てゴンとクラピカとレオリオで解決してしまった。そのため、ティンダロスの猟犬を回収してからのアトラはゴンに料理を振る舞うだけのお姉さんであった。
そして、落ち着いた時間が出来たかと思えば、珍しくキルアからふと上がった疑問がそれである。
「いやさ。お前が足を洗う前ってどんな奴だったのか気になるじゃん? ぜってー、家と同レベルかそれ以上だぜ?」
「ゾルディック家の嫡子にそこまで言わせるのか……。いや……だがそれは余りにも失礼――」
《今さら減るものじゃないし、別にいいわよ。それに誰にでもブイブイ言わせていた時代ってあるじゃない?》
知りたくないと言えば嘘になるが、アトラを立てる言葉を言っていたクラピカをホワイトボードで遮り、アトラはそんなことを書く。
そして、アトラが新たにマジックの先をホワイトボードにつけた――その直後、チィトカアが満面の笑みで割って入り、声高らかに叫んだ。
「昔のアトラ様は本当にかっこよかったんですよー! 触れたモノどころか、見たモノ全てを引き裂かんばかりの冷徹無比な方でしてね!」
《えっへん》
「いや、それ誇るところか……?」
レオリオがツッコミを入れるが、アトラは胸を張ってふんすと擬音が出そうな程誇らしげに見える。彼女にとっての精神的な全盛期の時代は驕ることはあまりせずとも別段隠すような事でもないらしい。生きる力こそが全ての暗黒大陸らしいとも言えよう。
ちなみにこのチィトカアは、ハンター協会会長秘書兼審査委員会の副責任者かつ"
ハンターを志し、内情を少し知るのならば誰しもが知っていて然るべき存在の1人であり、また少なくとも約300年間ハンター協会及びハンター試験に従事している。そのために全くそういった事情に興味のないゴンとキルアのような一部の特殊な例を除きこの場に居合わせるだけで気が気ではないであろう。実際にレオリオとクラピカはチィトカアが、友人か何かのような感覚で当たり前のように遊びに来てからは、緊張のためかかなり大人しくなっていた。
もっともチィトカア本人には自身の地位などどうでもいいらしく、フレンドリーなゴンやキルアと同じように接され、接しており、逆にレオリオとクラピカの方が冷や汗を流している。
「"身の程を知るのね、豚。では、ごきげんよう"――とゾクゾクしちゃうぐらい冷たい視線で相手に言ったり!」
「へー、そうなんだ」
《そうねぇ…………ん? あれ? 私、昔そんなこと言ったことあったかしら?》
「退魔師に与えられた傷を癒すために女子校に潜伏して、白髪の女子校生徒と百合百合なラブロマンスを――」
《ねぇねぇチィトカア? 多分、それ私じゃないわ。なんなの? 他にも主がいるの? 流石に怒るわよ? ねぇねぇ聞いてる? 私怒っちゃうわよ?》
「
「要するに今じゃ見る影もないってことかよ……」
「仲がいいんだね。アトラとチィトカアさんは」
「あたぼうですよ」
《おどりゃ終いにゃ喰らうぞ、ワレェ!》
ベッドにちょこんと座り、首から紐で下げているホワイトボードに"ぷんすこ"と書き、真顔でその言葉以上にぷるぷると怒りやら悲しみやらに身を震わせているアトラは、明らかにチィトカアに弄られている。
そんなアトラにキルアは見た目よりも彼女を買っているのか溜め息を吐き、ゴンは二人の気の置けない関係を微笑ましげに見ていた。
(いやいやいやいや、おかしいだろ!? その方は1500歳以上らしいんだぞ!?)
(役職は兎も角、その名声は現ハンター協会会長以上の怪物なんだぞそのお方は!?)
アトラの年齢については、全員が話半分に聞いていたため、ここに来てそれがほぼ事実だったことをクラピカとレオリオは理解し、とんでもない存在と関係を持ったのではないかと今更ながら戦々恐々としていた。
「そもそもアトラとチィトカアさんってどういう関係なの?」
「眷属です」
《
互いの動きがピタリと止まり、疑問をぶつけたゴンに向かって二人はそう返した。息だけは無駄にピッタリである。
『えー、これより会長が面談を行います。番号を呼ばれた方は二階の第一応接室までおこし下さい。受験番号44番の方。406番の方おこし下さい』
すると、このチィトカアの旦那のビーンズの声でそのような館内放送が入った。どうやら最終試験に臨むに当たり、ハンター協会会長直々の面談があるらしい。
《あら……? 面談なんてあるのね》
「予定に無かったので、会長の思い付きだと思いますよ? まあ、それ以前に最終試験は会長か私が毎年適当に決めているので――」
アナウンスに対してのアトラの疑問に対し、そこまで言ったところで、チィトカアは大袈裟に口に手を当て、目を丸くしてから更に言葉を続ける。
「あっ、適当は臨機応変って意味ですよ? 合格者が出なかったり、最終試験前に通過者が1~2名だけ残ってそのまま合格したりなどする年もそこまで珍しくはないので、最終試験はある度にその都度考えているんですよ。最終試験までに残る人数もバラバラですしね。今年は豊作ですよ」
「へー、多いんだ」
「まっ、試験正直チョロかったもんな」
「人数に関しては10年に1回ぐらいあるかないかですね。簡単だと思えるのは、それだけあなたが人間何人分もの濃い人生や、バイオレンスな日々を送って来たからですよ」
「ああ……それは言えてんなぁ……」
ハンター試験の試験官側の情報をベラベラとチィトカアは喋り、それをゴンとキルアは世間話のひとつとして、事も無げに笑いを交えて話している。
これに関しては本来ならば、色々とツッコミを入れるべきではあるが、勝手にハンター協会のお偉方がポロポロと情報を溢してくれる分には、それに肖ろうとクラピカとレオリオは静観していた。
《まあ、いいわ。じゃあ、行ってくるわね》
アトラはそう書いてベッドから立ち上がると、出入り口に向かう。そのとき、チィトカアを含む全員から"頑張って"と言った内容の声援が届き、彼女は優しげに小さく微笑む。
《ノシ》
そして、そんな文字をドアを締め切る前に見せて退出して行った。
それを最後まで手を振って見送ったチィトカアは、ゴンらに向き合うと何処と無くまだ愉しげな様子で、ピンと人差し指を上に立てる。
「お察しの通り、今年は会長が最終試験の試験官担当です。まっ、会長は私と違って最終試験まで進出した受験者方をあまりふるいに掛けないタイプなので安心してください」
「二次試験官に基準は絶対と言っていたような……」
クラピカが他者に聞こえない程度で非常に小さく呟いた言葉にチィトカアは反応し、満面の笑みを浮かべつつ悪戯っぽく舌を出して指先をひと舐めしてみせる。
「確かに試験においては絶対の基準は必要です……。しかーし! 試験前に試験官の好感度を稼いで有利な話を聞き出すことは処世術や情報収集という点でハンターとしての評価ポイントになり得ます。また、試験には評価基準のブレとは一切関係なくアタリ年や、ハズレ年も付き物でしょう? 私はハズレ年担当なだけですよ。損な役回りですねぇー、ふふーん♪」
「あ、あはは……」
「なんというか……流石長年ハンター協会にいる方なだけはあるんだな……」
モノは言い様かつ意地の悪さに性格が滲み出ていると思いつつ苦笑いを浮かべるゴンら一同なのであった。
◆◇◆◇◆◇
「まあ、座りなされ」
飛行船にあった応接室は和室であった。応接室というよりも、応接間に見える。ハンター協会のハンター試験用の飛行船ではあるが、実質審査委員会の責任者と副責任者の私用船と化しているところがあるため、内装に関してはネテロ会長とチィトカアの趣味である可能性がある。
《おk》
アトラはホワイトボードを見せながら座布団に腰を下ろしてしゃがみこむように座る。相変わらず、座っていてもスカートで足は見えず、座るときの足の畳み方の動きが人間の関節によるモノとは似ても似つかないが、今さらそんな些細な事に言及するネテロではない。
「これは最終試験のための面談じゃ。参考までにちょいと幾つか質問するぞい?」
《わかったわ》
「まず、なぜハンターになりたいのかな?」
《チィトカアから聞いているかも知れないけど、観光のためね。とりあえず2000~3000年ぐらいは少なくとも滞在する予定だから、色々使えて私でも取れて少しでも長く使えそうな資格って、この世界だとハンターライセンスぐらいじゃない?》
それは概ねネテロが予想していた中で、最もショボいが最も妥当な答えであった。戦ったからこそわかる事として、アトラクラスの武人ならば、最早このような小さな世界を手中に収める理由がまるでない。
「なるほど……。最終試験とは関係ないが……よければ観光について少し聞いてもかまわんか?」
《ええ、なんでもいいわよ。あなたも大変ね》
「助かるのう。ゴンくんとの関係は?」
この場合の観光についてとは、概ねアトラが暗黒大陸からこの世界に来てからの行動などの全てを暗に意味するため、彼女は本当に何でも聞いて良いと言っていた。
《ふふっ。偶々、彼が空を歩いてる私を見つけてね。少し驚かしてやったのに逆に目を輝かせちゃって、"友達になりたい"だなんて言ってきたのよ》
(親子じゃのう……)
ゴン=フリークスの父親であり、ハンター協会の十二支んのひとりでもある
《だから友達になったわ。そして、この世界で最初の友達ですもの。旅は一期一会。彼が死ぬまでは気に掛け続けるわ》
「よい心掛けじゃな。悪いのう。話を戻そう」
(絶妙に重いなコイツ……。まあ、人間とは価値観が違うだけかも知れねぇが)
ネテロがそんなことを考えつつ、最終試験の話題に戻ろうとすると、アトラは目をパチクリと開いて少しだけ驚いているように見えた。
《意外ね。もう少し、あなた方が暗黒大陸と呼ぶ世界について聞いてくると思っていたわ》
「観光の外の事は聞かん。過ぎたる野心と探求は身を滅ぼす。それにハンター足るもの誰しも己で掴み取らんとな。お前さんに一から百まで示されるようでは名が廃るわ」
《ハングリーね。そういうの好きよ私。飴ちゃんいる?》
そう言うとアトラは薬用肝油ドロップを2つ取り出し、ひとつを口に含むともひとつをネテロに差し出す。とりあえず受け取り食べたネテロの口に甘さの一切ない肝油の味が広がる。普通に嫌がらせである。
「…………ではおぬし以外の8人の中で1番注目しているのは?」
《うーん……。それはもちろん、405番ね。だって彼、見ておかないと時々平気で死地に飛び込むし。怪我は兎も角、死にでもしたらミトに合わせる顔がないわ》
「ほう……それはそれは」
完全にアトラが抱いているのは、保護者目線のそれである。少なくとも彼女にとって、ゴンに死なれる事は大変困るらしい。
ネテロがこれまで接した感想としては、聞けば聞くほど善良かは兎も角として、お人好しで思いやりのある人間のような感性を持つ魔獣の女性であった。
「では最後の質問じゃ。8人の中で、今一番戦いたくないのは?」
《ふふ、もちろん。405番のゴンだけよ。他はまあ――理由があるなら誰を殺してもいいわ》
笑顔のまま、当然のような表情で言い切った内容にネテロは余り驚愕はなかった。
このように妙な人間関係の価値観を持つ者は彼の知る限り、世界のごみ溜めである流星街の出身者が当てはまり、暗黒大陸出身の彼女が、流星街に似つつそれ以上にドライな死生観を持っていても不思議はないであろう。
《ああ、でもゴンがダメって言いそうだから……99、403、404もナシかしらね? 後、44番もゴン的にも私的にもちょっと殺したくないかしら?……っと質問は一番だったわね――》
そこまで言ったところでアトラは少し止まり、手を口にかざして少しだけ照れたように笑う。
《…………ああ、別によく考えたら殺すかどうかは聞かれてないわね。いやねぇ、私ったらもう。なら特にいないわ。殺さないなら誰と戦っても戦わなくとも同じよ。時間はたっぷりあるし、楽しければなんでもいいわ》
「ふむふむ……殺さないなら……楽しければなんでもいいと……。あいわかった」
しかし、自身を省みつつ相手の信条を取り入れる事はしてくれるらしい。
「ふむ、これは試験とはまた関係のないので答えんでもいい質問なんじゃが、ハンターになるとなると大切なこと。おぬしは何のハンターになる気なんじゃ?」
《何のハンターって?》
「あのチィトカアならば、"征服ハンター"のように何をハントするかという目標じゃ」
《ああ……それなら……"
「いっ、意外なところに来たのう……」
それにはネテロも驚いていると、アトラはスカートの裾に手を入れ――そこから猟銃を取り出して見せた。それは明らかにスカートの容量を超えた長さのものであり、何らかの念能力で収納している事が窺える。
《こっちが前にくじら島に来た密猟者が持ってた銃。それでこっちがこの前の島で拾った銃よ》
そして、アトラは更にスカートの中からスコープの壊れたスナイパーライフルを取り出す。それは4次試験会場のゼビル島で死亡したスパーという試験番号80番の女性受験者の遺品である。
所有者が死んだことを理解した上で持っているのか、知らずに持っているのか。まあ、どちらでもアトラにとってはきっと違いにはならないとネテロはそれについて考えるのを止めた。
「銃が好きなのかの?」
《…………別にそこまで好きという訳ではないわ。だってほら……銃ってある程度文明が発達しているならどこにでもあるし、何よりも――》
アトラはマジックを書く手を止め、自嘲するように小さく笑みを浮かべてから再びマジックをホワイトボードに走らせた。
《私がどんなに格上でも、その文明を築いた生き物とそこそこ対等に戦えるじゃない? もちろん、フェアじゃないけれど》
「…………ああ、おぬしにとっては金持ちが趣味で猛獣を撃つようなものか」
《そうゆーうコト。あなたは少しはわかってくれるかも知れないけれど……。強いってホントの本当に暇で退屈なの。上が見えるうちが華ね。後はもう……ただ見下ろすだけよ。まっ、心にゆとりが出来たとも言えなくもないけれど、モノは言い様ね》
「………………なるほどのぅ」
アトラの想いと哀愁に共感を覚えてしまったネテロはそれ以上の事は語らなかった。ネテロもアトラも上り詰めてから思ったのであろう。"こんな筈ではなかった"……と。
《ああ、でも別に趣味なだけで目的にするほどでもないわねぇ。橋の建築も仕事だし……あら? 私ったら今まで、目的らしい目的を持って生きてなかったかもしれないわね》
「まあ、ハンターになってから考えても遅くはないことじゃ。ましてやおぬしには儂より遥かに時間があるからのう」
《折角だから考えておくわ》
アトラとネテロの面談は、最終試験の面談という割には私情を挟んでおり、時間も他の受験者よりも遥かに長く取られていたため、公正なものでは全くなかっただろう。
しかし、両者はまるで偶々入った喫茶店で出会った初対面の気の合う者同士のように、取るに足らないような話に思えつつも2人だけはどこか愉しげに思えた。
◆◇◆◇◆◇
【ゴンの面談】
自身以外の8人の中で一番注目しているのは誰か?
「44番のヒソカが一番気になってる。色々あって」
8人の中で一番戦いたくない者は?
「う~ん……。99・403・404・406番の4人は選べないや」
【キルアの面談】
自身以外の8人の中で一番注目しているのは誰か?
「ゴンだね。ああ、405番のさ。同い年だし」
8人の中で一番戦いたくない者は?
「……406番かな。アイツ、本性隠してるだけで俺どころか親父や爺ちゃんよりもずっとずっとヤバいよ。たぶん、比べ物にもならないぐらいにさ」
【レオリオの面談】
自身以外の8人の中で一番注目しているのは誰か?
「405番と406番だな。恩もあるし、合格してほしいと思うぜ」
8人の中で一番戦いたくない者は?
「そんなわけで405番と406番とは戦いたくねぇな」
【クラピカの面談】
自身以外の8人の中で一番注目しているのは誰か?
「いい意味で405番。悪い意味で44番。どちらとも言えないが406番」
8人の中で一番戦いたくない者は?
「理由があれば誰とでも戦うし、理由がなければ誰とも戦わない」
【ヒソカの面談】
自身以外の8人の中で一番注目しているのは誰か?
「――405番♡ 406番も捨てがたいけど、まだまだずっとずっと先になりそうだから、とりあえずは彼だね♣ いつか手合わせ願いたいなァ♤ くっくっくっ♦」
8人の中で一番戦いたくない者は?
「それは……405番だね♧ 99番もだけど、一番は彼かな♢ ちなみに今一番戦ってみたいのは406番なんだけどね♠ 前はちょっとコッチが無作法だったからさァ♥」
【ギタラクルの面談】
自身以外の8人の中で一番注目しているのは誰か?
「99………………406番」
8人の中で一番戦いたくな――。
「406番」
【ハンゾーの面談】
自身以外の8人の中で一番注目しているのは誰か?
「44番と406番だな。44番はとにかく一番にヤバい。406番は……上手くは言えないんだが、見てるだけで戦える気すら起きないのが何よりヤバい」
8人の中で一番戦いたくない者は?
「もちろん44番――と言いたいが、406番だ。直感的になんかな……」
【ボドロの面談】
自身以外の8人の中で一番注目しているのは誰か?
「44番だな。嫌でも目に付く」
8人の中で一番戦いたくない者は?
「99番と405番と406番だな。女子供と戦うなど考えられぬ」
◆◇◆◇◆◇
4次試験終了から3日後。
飛行船は最終試験会場に到着し、大きな御堂のような外観の運動向けの大ホールに受験者とハンター試験関係者は集められていた。
アトラを含むゴンら5名は比較的固まっており、それ以外の受験者はそれぞれ点々と間隔を開けて並び、試験官らスタッフに向かい合っている。
「最終試験は1対1のトーナメント形式で行う。そして、その組み合わせは……こうじゃ!」
そして、ネテロ会長はあらかじめ布を掛けて見えないようにしていたボードから布を勢いよく取り払い、その全容が露になる――。
『「「「「待て待て待て待てネテロ会長!!!?」」」」』
それは最終試験のために集まっていたこれまでの試験官が総出で止めに入る程度には、色々とアレなトーナメント表であった。
ワァ,アトライッパイハイッテルネ!
[ハイッテルワネェ]
ナンデダロウ?
[マア,ナンデモイインジャナイカシラ? タノシソウダシ]
ソッカァ,ナライッカァ
無論、主に何故か1匹で3枠分も出場している受験者がよりにもよってアレなのが一番の問題である。
「会長!? 正気に戻ってください!?」
「トーナメントの組み合わせを我々にも見せないと思ったらこんな!?」
「耄碌したの!? 遂に耄碌したのね!?」
「なんじゃいおぬしら? かような機会は生涯で1度もないかも知れんぞ?」
「そりゃあ、ないでしょう!? 1度あったら生涯が閉じます!?」
「ひえっひえっひえっ。案外、そうでもないぞい?」
あっけらかんとした様子でそのようにネテロは言う。しかし、その目は"マジ"という文字がありありと浮かんでおり、かなり据わっている。色々と冗談でもなんでもないらしい。
「ち、チィトカアさんも――」
「流石に草。面白いから私は支持します」
『「チィトカアさぁん!?」』
こうしてハンター試験審査委員会の責任者と副責任者が結託したことで、トーナメントの対戦内容はゴリ押された。
「では試験官に異論はないようじゃな? では最終試験のクリア条件じゃが――」
ネテロは1度言葉を止めて、トーナメントの合格者がひとりに見えるため、険しい表情を浮かべている受験者らを見回してから再び口を開く。
「最終試験のクリア条件じゃが、たった1勝で合格である。つまりこのトーナメントは勝った者から抜けていき、敗けた者が上に登っていくシステムじゃ。しかも誰にでも2回以上の勝つチャンスを与えられておる。ただし、受験番号406番のみ3勝で合格とする。何か質問は?」
「組み合わせが公平でない理由は?」
「うむ。当然の質問じゃな。この組み合わせは今までの試験の成績をもとにして決められておる。簡単に言えば、成績のいい者にチャンスが多く与えられているということじゃ。ただし、406番に関しては"印象値"が高過ぎた為に他の受験者へのハンデじゃ」
更にネテロは"ゆえに採点内容は極秘事項じゃが、やり方ぐらいは教えよう"と言って指を3本立てた。
受験者の中で特にキルアが成績に関して不服そうにしていたが、話が続けられていることで押し黙る。
「まず審査基準。これは大きく3つじゃ。身体能力値、精神能力値、そして印象値。これらの3つから成る。身体能力値は敏捷値・柔軟性・耐久力・五感能力等の総合値を。精神能力値は耐久性・柔軟性・判断力・創造力等の総合値を示す。だが、これはあくまで参考程度じゃ。最終試験まで残ったのじゃから、今更じゃな。重要なのは"印象値"! これはすなわち、前に挙げた基準では測れない"なにか"! 言うなれば、ハンターの資質評価と言ったところかのう。それと諸君らの生の声とを吟味した結果、こうなった。以上じゃ!」
"印象値"。確かに深読みしてもそのままの意味で捉えてもアトラが振り切れているという事は誰もが周知のところだろう。また、身体能力値や精神能力値に関してもアトラと接した人間ならば、疑いようもない程逸脱していることも理解できた。
「さて、最終試験に戻るぞい。戦い方は単純明快。武器オーケー、反則なし、相手に"まいった"と言わせれば勝ち! ただし、相手を死に至らせてしまった者は即失格! その時点で残った全員が合格となり、試験は終了じゃ」
そして、ネテロは"それから"と区切るとそれに付け足すために言葉を続ける。
「406番との試合に限り、開始から10分経過するまで互いに"まいった"は禁止じゃ。無論、他のルールは変わらん」
"406番との試合に限り、10分経過するまで互いに『まいった』は禁止"。そう発言した瞬間、ネテロに向けて301番の針だらけの男――ギタラクルから射殺さんばかりの視線が向けられたが、それにネテロは視線さえ向けずに涼しげな顔をしていた。
《左ブロックか決勝で私と私が当たった場合は?》
「その場合は3勝の条件が満たせなくなるため、自動的にお前さんの失格じゃ」
《なるへそ》
他の受験者へのハンデと特殊ルールが設けられた当の本人は、そのような反応をしており、早速第一試合で対戦がある事を審判員から告げられたために前に出る。
どうやら異論や不平は一切無いらしく、アトラが何も言わないならばと、ゴンの仲間たちもそれ以上の事を言及するのは止めた。
「よろしくねアトラ!」
《 ( ・`д・´) 》
そして、アトラの対戦相手であるゴンもまたアトラと共に前に出て、二人はそれぞれ少しだけ距離を開けて対峙する。
「そ、それでは最終試験を開始する――アトラク対ゴン……!!」
そして、何故かやや引き気味な様子の審判員が合図を掛け最終試験第一試合は始まった。
○アトラの多いトーナメント表を見た無能力者視点
(なんであんなに試験官たちは騒いでいるんだろう?)
○アトラの多いトーナメント表を見た一般的な能力者視点
(筑摩江や 芦間に灯す かがり火と ともに消えゆく 我が身なりけり)
~QAコーナー~
Q:なんでアトラはチィトカアに言われてばっかりで全然怒らないの?
A:チィトカアが元を辿せば自分の念能力の産物だから。そもそも念能力とは自身のオーラから捻り出したものであり、
極論言うと、自分の捻り出したウンコにマジギレする人間が居ないのと同じ理由(アトラさんがキレていないとは言っていない)。
Q:なんでチィトカアはアトラを煽るの?
A:なのでアトラに何をしてもマジギレしない事を誰よりも理解しているから。恐らく煽って来ることが誓約。
Q:(トーナメント表を)描いたなコイツ!
A:ペイントでな!
Q:トーナメント表を見るに原作以上にゴンの評価がえげつなくなってない?
A:暗黒大陸の頂点クラスの化け物を友人として実質上従えている時点で、どの三ツ星ハンターすら成し得なかったどころか、前人未到の大偉業。