そうや! 暗黒大陸の災厄をゾルディック家に不法投棄したろ!(だいたいあってる)
※イルミくんが酷い目に遭います(いつもの)
時はアトラク=ナクアが試しの門に来る少し前まで遡る。
「旦那さまー!」
ゾルディック家当主――シルバ=ゾルディックは、いつにないほどの満面の笑みで廊下の先から駆け寄ってくるメイド服姿のチィトカアを視認し、あからさまに眉を顰めた。
「ちょっと!? 何ですかその"うわぁ……。またコイツ面倒事を持ってきたぞ……"とでも言いたげな顔は!?」
「以心伝心なようで何よりだ」
ちなみにこのメイド服を着ているチィトカアは、自身をメイド長と名乗っておりゾルディック家では、既に隠居してるマハ=ゾルディックと似たような生活を送っている。また、この暗殺家の初代に仕えてからずっと居ついている化け物レベルの古株であり、実質創設者の片割れもいいところの存在のためヒエラルキーはトップであった。
しかし、そこは何故か決して牛耳るような高職には就きたがらないチィトカア。彼女は扱いが未だに執事の事務長であり、主にゾルディック家の暗殺業務の電話番と依頼管理と支払金未払いの取り立て業務などを行っている。
まあ、シルバ――というよりもゾルディック家の血族が見れば、多くは彼女らのダル絡みやおちょくりを思い出して、このような反応をするだけだ。
「それでなんの用だ?」
「ええ、慟哭さえ溶ける深淵にあらせられる"
「は――――?」
それには流石のシルバも絶句する他なかった。
少なくとも過去にゾルディック家の人間が渡航した記録があり、チィトカアと極めて良好な関係を築くゾルディック家現当主である彼は、暗黒大陸についての情報は知っている。
そして、このチィトカアから彼女の主についての情報も教えられてはいたのだ。無論、彼女らと敵対しかねないため、代々のゾルディック家当主だけにひっそりと伝えられていた。
"深淵の主"、"終焉を紡ぐ者"、"ン・カイの王"。人類などその気になれば糸を紡ぐ片手間に滅ぼせるほど途方もない力を持った暗黒大陸の覇者であり、文明を持つ種族が定義する"神"に限り無く近く同時に最も遠い存在。
つまりは、頂まで登り詰めた"この星の最強格の念能力者"の一柱だという。
最早、スケールが大き過ぎてついて行ける次元ではないが、人類の生活圏よりもずっと外にいる筈のそれが、まさか自身の代でこのゾルディック家に直接来訪してくると聞かされたシルバの衝撃は計り知れないであろう。
彼は溜め息を吐いた後、半眼かつ絶妙に嫌そうな表情でチィトカアを見つめる。
「………………わざと黙っていたな?」
「ええ、イイ顔でしたよぉ……?」
悪びれる素振りがまるでなく、むしろ朱に染めた頬は恍惚とした表情にさえ思え、根からの性格の悪さが滲み出ているチィトカア。理由や原因はどうあれ、このようなものが讃えている存在がマトモな可能性は極めて低いであろう。
「まあ、その落ち着き様は、流石は伝説の暗殺者と言ったところですね! 私も鼻高々です!」
「皮肉か?」
それが本心で言っているのだから質が悪いことをシルバはよく知っていた。まず、チィトカアは第一が主、第二がチィトカアの拡散、第三がその他の全てである。そのため、そもそも彼女らは人間のことを一時の愛玩用程度にしか結局のところ考えてはいないのだ。
感情で言えば、誰でも今すぐ首にしたいところだが、チィトカアという生体ネットワークを抱えないことは、裏社会で生きる上であまりにリスクが高く、手放した場合のデメリットが大き過ぎるため、それも出来ないのである。
「だ、旦那様……! ここにおられましたか!?」
すると1人の執事が、血相を変えた様子でシルバとチィトカアがいるこの場所へ駆け込んできた。その者は酷く焦燥した様子で、纏うオーラも明らかに淀んでいる。
「どうした?」
「そ、そと、外をご覧下さい……! 試しの門の方角に何かがいます……!!」
その言葉を受けたシルバは、首を傾げて締め切っていた部屋のカーテンを開け、少し身を乗り出して試しの門がある方向を眺め――。
試しの門の両扉そのものよりも遥かに太く、天を貫く柱のように空に伸びた巨大過ぎるオーラの山あるいは極光がそこにあった。
「は……?」
呆けつつ、危機管理能力によって何故あれほどのオーラを視認出来る範囲に居て気付かなかったのか思考したシルバは、オーラの持ち主が樹木か何かのように無機質で敵意の欠片もなく、そのまま自然に溶けそうな程に波立てないオーラだからだということに気づく。
そして、シルバは悟る。生物や念能力者という次元ではなく、あれはただそこにあるだけの善も悪もない自然災害そのもの。
台風に人間が戦いを挑むか? 答えなどそもそもが必要すらない世の摂理。誰が見ようとも形容できる神、あるいは悪魔の象徴。狂った人間でないのならば戦うという選択すら一考にも値しない絶対の上位者であった。
「我が主は来ませり。ほら……出迎えの準備が必要でしょう?」
屈託のない陶酔し切った笑みを浮かべてから、主人の了解もなくチィトカアはその場から消える。
そんな彼女が僅かに残したオーラの残滓を少しだけ眺め、再び依然としてこちらにゆっくりと近付いてくるチィトカアらの主のオーラを目にしつつ、シルバは大きな溜め息を溢すのであった。
◆◇◆◇◆◇
《ハロー、いつもくそ生意気なチィトカアがお世話になっているみたいね。これお土産よ》
「………………これは丁寧に」
客間で件の来客を迎えたシルバは少し呆けてから、お土産なるものを受け取る。そして、チラリと見た上、円で中身を少しだけ調べてみるが、明らかにただの焼き菓子の詰め合わせである。
少し記憶を辿れば、ゾルディック家も利用している最寄りの空港のお土産売り場で売っている人気商品であり、余りに無難過ぎるために暗殺家の家長に渡すには異常なほど浮いている点を除けばただの菓子であった。
《手土産というマナーがあるらしいものね》
そう書きつつ"ふんす"とホワイトボードに擬音を書き出して何故か胸を張る漆黒の風貌をした人間に極めて近い女性魔獣――アトラク=ナクアは相変わらず冗談のようなオーラを一切抑えずにその場にいる。
とりあえず、客間に通したはいいが、その気になればククルーマウンテンをモノの数秒で更地にしかねないオーラを持つ危険生物相手にシルバは気が気ではない。
「不躾ですが、どういった要件でこちらに?」
《…………観光かしらね? 後、ゴンとルルちゃんが来たいって言ってたから? ゴンは今別邸にいるみたいで、ルルちゃんはこの娘よ。可愛いでしょう?》
『……………………!』
「――――!!!?」
突如、アトラク=ナクアの傍らにある家具の角から煙が立ち上ると共に、右前足の膝から先が存在しない犬のような形をした何かが現れる。
そのオーラは彼女とは比べ物になろう筈もないほど小さいが、人間からすれば熟達した念能力者を100人以上積み上げたような異常なものである。その上、明確に全てへ殺意を向けたオーラを放っており、シルバすら一瞬畏縮させられるほどであった。
ちなみにそれによって隣の部屋で控えていた執事の数名が、ルルハリエルの暴虐的なオーラに当てられて泡を吹きながら白目を剥いて倒れている。無論、精神の方は更に無事ではない。
《んー……》
そんなことは特に意に介していないアトラク=ナクアは、出された紅茶と茶菓子を眺めつつ片手の人差し指を唇に置いて目を竦めて残念そうな表情になる。
《私、肉食で紅茶は飲めないからラードが欲しいわ。出来ればお茶請けは生肉とかがいいわねぇ……》
「た、ただっ、ただいま……お持ちいたしますッ……!」
ルルハリエルのオーラに当てられて尚、辛うじて無事だった執事がやや覚束ない足取りで現れ、調理場の方へと向かって消えて行く。
《ああ、それで用件なんだけどね。こっちのルルちゃんがアナタのところのイルミさんに会いたいんですって》
「イルミに……?」
《ああ、ククルーマウンテンに居ないことは円で見たから知っているわ。なのでそちらの都合もあるから、ちゃんと戻ってくるまで待つわね。という訳で会わせてくださるかしら? ああ、別に捕って喰おうという訳じゃないから大丈夫よ。むしろ、そちらにとってかなり有益だと思うわ》
「その具体的な内容については?」
《乙女のヒ・ミ・ツ♡》
「………………………………イルミ、俺だ。単刀直入に言う……仕事の違約金はこちらで支払う。今すぐに帰って来い」
シルバはほんの少しだけイラッとした感情を覚えたが、とりあえず自身の携帯電話でイルミに連絡し、その用件を伝えた。
このシルバの英断により、アトラク=ナクアがゾルディック家に居座る期間は3泊4日に縮んだのである。
◇◆◇◆◇◆
《おハロー》
「………………………………ああ」
2日後。仕事を一旦停止して飛行船を使い最速でゾルディック家の本邸に帰って来たイルミは、これまでの闇人形のような彼は何処へ行ったのかとシルバすら疑問に覚えるほど、嫌悪を含む絶妙な引き笑いを浮かべてアトラク=ナクアに対応していた。
彼女の隣には何故かイルミが部屋に入って来るなり、この4日間で一度も殺気を抑えなかったルルハリエルが、殺気を収めており、やはりイルミを呼んだことは正しかったとシルバは確信する。
ちなみに滞在中、何故かアトラク=ナクアはシルバの父であるゼノ=ゾルディックと意気投合して茶飲み仲間になっており、昔の自分の若気の至りと言った話題をよく話しているが、家長のシルバからすれば互いの器を測りかねるばかりであろう。
尚、ゼノからアトラク=ナクアについての話を聞くと"あれに危険性じゃと……? ないない、ありゃとっくに終わっとる。カッカッカ、お前もいつかわかる時が来るさ"等と要領を得ない回答をするばかりである。
とりあえず、シルバはイルミにアトラク=ナクアを如何様な形でも納得させるように耳打ちするが、彼は更に表情を歪め、珍しく反抗的な様子を見せた。
(は? あれをどうにかしろって俺に? 父さんあんなのどうこうしろって本気で言ってんの? むしろ、最終試験で当たるハメになったこっちを労って欲しいぐらいだ)
(マジか)
互いに耳打ちをし、イルミがハンター試験でとんでもないことになっていたことをシルバは今知る。まあ、単純な話だが、銃で撃たれて死ぬよりもゴジラに踏まれて死ぬ方が怖いに決まっているからであろう。
《うんうん、それで用件って言うのはふたつあってね。ひとつはルルちゃんが、試験でアナタを見ていたらこの世界の暗殺者のお仕事に興味が湧いたらしくて、ゾルディック家にお世話になりたいそうなの》
「は?」
《自慢じゃないけれど、ティンダロスの猟犬は
『…………………………』
そんなことを言いつつ、何故か手足を畳んで猫のように香箱座りをしながら待機しているルルハリエルの頭をアトラク=ナクアは撫でる。
「申し訳ないが、猟犬はミケで間に合っている。それにこちらも親族経営の仕事としてやっているのでな。おいそれと曲げることもできん」
《そう……》
「だっ、ダメだ親父!? そんな事言ったら――」
《なら、猟犬が必要になればいいのね? ルルちゃん》
『――――――』
次の瞬間、ルルハリルの姿が煙のように跡形もなく消え去った。
その場には相変わらず、ニコニコと笑みを絶やさないアトラと、"あー……"と言いつつ片手で頭を抱えたイルミと、目を丸くしたシルバだけが残される。
『………………』
「な――」
そして、約3秒後。左手にあるものを乗せ、人型形態に変化したルルハリルが部屋の角から細い煙と共に現れたことで、シルバは彼女に釘付けになる。
それは試しの門の番犬として飼われていたミケの生首であった。少なくとも数kmは試しの門から離れているにもかかわらずだ。更にルルハリルの背後にミケの残りの身体が現れ、床に横たえられた。
《うふふ、これがティンダロスの猟犬の固有念能力よ。120度以下の鋭角を自由に出入りでき、外が観測可能な念空間を持つわ。これ以上ないほど暗殺向きね。うーん……でもアナタたちが断るなら残念だけれど、他の暗殺者の伝を探すしかないわねぇ……》
「ぬぅ……」
シルバは小さく唸る。暗殺家を営む者として、このような競争相手が出来てしまえば堪ったものではない。このアトラク=ナクアという人外の者は、のーてんきを装っているが、自身が圧倒的な上位者である事を最大限利用した脅迫染みた手段を取るやり手である。
《そもそもこっちの世界だと……"ガス生命体 アイ"だったかしら? あれを抱えているぐらいなんだし、一体増えたところで大差ないわよ。あれよりルルちゃんはずっとお利口さんだしね。お手》
『――――!』
お手をする暗黒大陸の生物を見せつけられるシルバとイルミ。この辺りでシルバは、用件がふたつあると言っていたことを思い出す。
《それに親族経営って言うのは好都合ねぇ……》
「それでふたつ目というのは?」
《ええ! どちらかというとそっちが主目的なのよ! ルルちゃんアナタの気持ちをイルミに見せてあげなさい!》
『……………………――――□□□□■■■■■■■■■■!!!!』
次の瞬間、ミケの頭を床に置いたルルハリエルは、魂を焦がし抉り裂くような大咆哮を上げると共に何らかの念能力を発動した。
「…………!?」
「――――!」
(な――)
それに反応して飛び退いたシルバとは対象的に、反射的に針を放ったイルミを見たシルバは驚く。暗殺者としての教えを忠実に守る闇人形である筈の彼が遥か格上の敵にこのような暴挙をする筈がないのだ。ハンター試験の前後で彼の何かが変わったのであろう。
投擲された針は全く回避行動を取らないルルハリエルの胸に数本命中して突き刺さる。しかし、どういうわけかイルミの念能力はいつまで経っても発動しなかった。
《残念、操作系能力の優先権よ》
「またかよ……!? というかソイツ変化系の筈だろ!?」
《…………?
(そうなのか……。ふむ、次の世代の参考にしてみるか)
何れだけ篦棒に
そんな会話をしている間もルルハリエルの操作系能力は発動し続け、徐々に彼女の体積自体が物理的に縮小していくのが見て取れた。
ここまで来るとシルバは少し興味深そうに彼女の念能力の使用を落ち着いて眺め、イルミは10mクラスの体積を現在進行形で僅か180cmほどの人型の体格まで落とし込んでいるアトラク=ナクアをハンター試験で知っているため、それに比べればかなり雑に思え、複雑な表情をしている。
そして、5分程掛けて遂に念能力の行使は終了したようで、その場には2mほどの人間を干からびた生肉で固めたオブジェのような物体が残っていた。
《よしよし、いい感じね。イルミ、ちょっと正面に立ちなさい》
「イヤだ」
《はい、つべこべ言わない》
(中々、関係性が保たれているな……)
アトラク=ナクアの指先から伸びた糸で拘束されつつ引っ張られ、奇っ怪なオブジェの前に立たされるイルミ。そして、彼女はオブジェの背後に回り込むとそれに向けて拳を引き絞る。
《先に言っておくけれど、ルルちゃんって結構、ロマンチックなところあるのよ。運命の出会いとか、白馬の王子様とか、そう言うのに内心では憧れちゃう可愛い娘なの》
「は……?」
《ちょっと思い込みが激しくて重いところもあるけれど……それも含めて受け止めてあげてね?》
そして、掌底打ちを繰り出し、中を突き抜けた衝撃は瞬時に肉のオブジェを霧散させ――中身の"人間"をイルミの胸目掛けて弾き出した。
「あ……?」
依然として、アトラク=ナクアに糸で拘束を受けているため、その産まれたままの姿をした人間はイルミの腕の中にそのまますっぱりと収まる。
それは水色がかった踝まで伸びる長髪をし、人間よりもやや青白い肌に爬虫類のような瞳孔をした赤い瞳の女性である。また、185cmの身長のイルミよりも7~8cmほど背の低い大柄で、女神像か何かと見まごうほど均等で女性の魅力溢れる体型をしており、何よりも"右腕の肘から下の腕が存在しない"事が最大の特徴であった。
「ごほっ……かはっ……はッはッはッ……!」
女性は初めて呼吸をし始めた赤子のように噎せ、イルミにもたれ掛かりながら己の肺に空気を吸い込む。
ちなみにその間、イルミは腕で彼女を押し潰そうと全力で力を入れているが、彼の十数倍のオーラと明らかに勝る筋力を持つ彼女は一切意に介していない。また、縛られたままで針を刺そうとするが、そもそも圧倒的なオーラ量の差と力を入れにくい密着状態では満足に刺さらず、多少刺さり発動条件を満たしても彼女が自身を操作し続けることで優先権を握っているためか、能力自体が発動していない。
「ヒッ……ヒヒ……うふふふ……!」
そして、彼女は息を吸いながら笑うと共にイルミと視線を交え、目尻と口角をこれでもかと伸ばし、三日月のように歪めた。
「私の利き腕を捻り落とした責任……とって貰うんだから……ねぇ……? "あなた様"」
次の瞬間、彼女――ルルハリルの長髪が触手のようにイルミを絡めとると、細く小さな煙だけを残してその場から跡形もなく消えた。
それをしたり顔で見届けたアトラク=ナクアは、近くのソファーに座ると共に用意されたティーカップに注がれているラードを優雅に口をつける。
《お赤飯……炊かなきゃね》
「そういうことか……そういうことだったのか……。まさか、このためだけにゾルディック家に来たのか?」
《私は主にそうだけど? ルルちゃんったらハンター試験で片腕を奪ったイルミのことを凄く気に入ったみたいでね。"これはもう私の運命の相手なんです"って言って憚らなかったのよ。わざわざ、相手の種族に近くなる念能力まで作って家に押し掛けちゃう程度にはご執心よ。まあ、元々撃退されたのが悔しくて『
とんでもないことを書き始めるアトラク=ナクア。そんな様子にシルバは強い疲れを覚えた。
《今まで無礼でごめんなさいね。けれど強引にでも叶えてあげないと、ルルちゃんはとっても情熱的だから障害があれば、ゾルディック家をイルミ以外皆殺しにしてでも想いを遂げようとしたでしょうからねぇ。薮蛇だと思って諦めてちょうだい》
また、彼女はそう書いて申し訳なさげに眉を潜める。どうやらこれまでの相手の話を全く聞かない様子にも理由はあったらしい。
「イルミは無事なのか……?」
《無事よ。単純にルルちゃんの念空間に連れて行かれただけだもの。まあ、丸一日ぐらいヤることヤってると思うけれど》
そして、親指と人差し指で輪っかを作ったアトラク=ナクアは、もう片方の人差し指で輪っかの中心を勢いよく前後させるジェスチャーを行う。音速の壁を超えるレベルで無駄に速いため、シュッシュッと風を切る擬音付きである。
「積極的なんだな……」
《そりゃ、
「単刀直入に聞きたいのだが……」
《なんなりとどうぞ》
「……当たるのか?」
《そらもう、一発でバッチリ孕むわ。まあ、子供は混血児になるけれどもルルちゃんの種族としての念能力は受け継ぐから子の能力は期待して良いわよ》
「ほう……」
そんな甘言に目を輝かせる辺りシルバも大概であるが、当事者の二人は既に誰にも止められないため、事が終わるまで暗黒大陸式の育成方法についてシルバが聞きつつ待つのであった。
《ああ、後このミケちゃん縫って再生しとくわね。死に立てなら全然間に合うわ》
また、アトラク=ナクアの人智を超えた神の領域の縫合技術を目に出来ただけでも念能力者にとっては収穫だったかもしれない。
◇◇◇
翌日。
「……………………」
「エヘヘ……あなた様……あなた様……」
アトラク=ナクアが彼女向けに調理されて提供された肉料理の朝食を食べていると、その近くのソファーの上に二人が出現した。
イルミの方はいつも以上に目に光がなく、体力とオーラが一切残っていないのかピクリとも動かず、ソファーに寝そべっている。
そして、イルミの上に被さるように乗っているルルハリルの方はとても肌が艶々しており、オーラの張りも非常に良く、何よりも自身の下腹部を愛おしそうに撫でている事が印象的であろう。
「あなた様……この子の名は"ミゼーア"などは如何かしら……? ヒヒヒッ……!」
ちなみにゾルディックの血とティンダロスの猟犬の血を受け継ぐこの子供が、数億年後にアトラク=ナクアともマトモに渡り合えるような暗黒大陸の上位者の一体に数えられることになるのだが、それはまだ随分先のお話である。
~登場人物紹介~
ミゼーア
クトゥルフ神話において、ティンダロスの猟犬を率いる王にして大君主。邪神でもなんでもないティンダロスの猟犬の王種一体なのだが、ただ強過ぎるため、外なる神に数えられている異端児にして風雲児。どれぐらい強いかと言えば、あのヨグ=ソートスがライバルな程度。この世界ではゾルディック家の血が流れるティンダロスの猟犬にして未だ受精卵。
~ルルハリエルの念能力~
操作系念能力。イルミに右腕を持って行かれた後、ルルハリエルが作製した。己を彼と同じ人間に極めて近く子を孕める程度の近所種に肉体を操作して改変する常時発動型念能力。ルルハリエルは変化系のため、操作系との相性は極めて低いが、それを人間からすれば余りある才能で成立させ、苦手系統の成長用念能力も兼ねている。
ちなみに外見的には水色掛かった踝まで伸びる長髪をして青白い肌に赤い瞳をした隻腕の女性となる。特に肉体改造に伴う著しい軽量化によって肉体強度そのものが激しく落ちており、身体能力は二回りほど元の姿に劣っているため、それ自体が非常に重い誓約となっている。
誓約:
・種族としての身体機能の大幅な低下
・肉体自体を削ぎ落として物理的に改変する能力のため2度と元の姿には戻れない
~QAコーナー~
Q:なにこれ……?
A:愛(型月仕様)
Q:なにこれぇ……?
A:イルミくんを徹底的に虐め抜いた小説はこちらです(迫真)
Q:アトラさんの縫合技術ってどれぐらいスゴいの?
A:フランケンふらんのふらんぐらい。
Q:ルルちゃんってなんで擬人化しただけでそんなに身体能力落ちたの?
A:
~ルルちゃんの転身~
身長432cm→177cm
体重374kg→68.8kg
※DBのフリーザの戦闘力が200万だろうが53万だろうが地球人には大差ないように、結局のところ相変わらず化け目です。