B級パニック映画系主人公アトラさん   作:ちゅーに菌

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 あそぼ。リースXPです。ご好評なようで何よりです。暇潰しに少しでも楽しんでいただければ幸いです。


大蜘蛛の二次試験

 

 

 

 

「二次試験後半、あたしのメニューはスシよ!!」

 

 

 現在は二次試験の後半。美食ハンターのメンチとブハラが二次試験の試験官を担当し、前半でブハラが、このビスカ森林公園にいる豚の丸焼きを要求し、約70頭のグレイトスタンプを食べ終えて、後半のメンチに交代したところである。

 

 しかも、ニギリズシしか認めないらしく、この世界に来て日が浅い上に諸事情でアトラにはちんぷんかんぷんな話であった。

 

《困ったわ……人間の食べ物なんてわからないわよ》

 

「アトラ、肉食動物だもんね」

 

 というのも人間は雑食性だが、アトラの種族であるアトラナート族は肉食性の生き物のため、食形態がまるで異なる。また、味覚に関しても鈍く、濃いや薄いといった簡素な味しかわからない。故に人間の食べ物な上、明らかに特殊そうなものをアトラが作れるどころか、知っている筈もないのだ。

 

(こんな事ならチィトカアから取っておくべきだったわね)

 

 ちなみにアトラは長い時を生きているうちに爆発的に体の燃費が向上し、今では数十年から数百年程なら食事をしなくとも生きられる存在と化しているため、そもそも食事自体ほとんど必要もない。そのため、彼女がこの世界に来てから頻繁にモノを口にしている理由は、単純に腐らせるのはもったいないからと考えているからだけだったりする。

 

(まあ、でも――)

 

 アトラがチラリと辺りを見回せば、受験者たちは皆ハテナを浮かべた様子であり、寿司が何か知っていそうな受験者は、課題を言われてから嬉々とした笑みを浮かべているスキンヘッドの受験者ぐらいのものなので条件は同じに見える。

 

 そんなことを考えていると、クラピカが魚を使った料理だということを呟き、それをレオリオが大声で拡散したため、受験者は一斉に動き出す。アトラはそれを遠目で眺め、まだ動かないでいた。

 

「アトラは行かないの?」

 

《魚料理ということがわかっただけで、ニギリズシとやらが作れたら全員合格するわよ》

 

 ホワイトボードに書いた文字をゴンに見せつつ、試験官のメンチが座るテーブルを眺めれば、二本の棒が置かれ、隣に小皿に黒い液体が注がれており、緑色の何かも添えられていた。

 

(食べ物を棒で摘まんで黒い奴に浸けて食べるのかしら? なら緑っぽいのは薬味? 何れにせよ小皿より大きな食べ物ということはなさそうね)

 

《ゴンとキルアちょっと集合》

 

「……? なにアトラ?」

 

「なんだよ……?」

 

 何かを思い付いたアトラは、二人を引き連れてメンチの前までやって来る。自然体のままの彼女であったが、試験官の反応は明らかに引いており、明らかな緊張が見られた。

 

「な、なによ……?」

 

 メンチはそれだけ言い返すのが精一杯であった。何せ自身が数百、数千人居ようとも決して届かないような途方もない顕在オーラを放っている生粋の化け物である。これで少しでも邪悪なオーラを放ち始めたり、明らかな殺意が向けられたのならば、試験官を放り出して一目散に逃げ出しても何も可笑しくないだろう。

 

 幸いと言うべきは、今のアトラのオーラの性質は樹木のように全くの無害であり、殺意の欠片もない様子なことだろう。

 

 しかし、考えてもみて欲しい。仮に深い海でダイビングをしているときに、突然自身のいる真下に広がる深淵のような黒い海底から、全長数百mはあろうかというクジラに似ているが見たこともない種類の哺乳類が現れ、数mという距離まで近づいてきた上で、大きな瞳でじっと見るという行動をされた場合、果たして、見られた側は恐怖せずにいられるのかという話だ。

 

 ほとんどの受験者は幸いだろう。何せ念を知らないため、彼女を目で見える姿のままの魔獣として認識出来るのだから。しかし、念能力者にとっては怪物以外の何物でもないのである。

 

 仮にこんな化け物に喜々として戦いを挑めるような者がいるなら、狂っているとしか言いようがないとメンチは冷や汗を流していた。

 

《ちょっと失礼》

 

 するとアトラはホワイトボードにそんな文字を書いてメンチに見せてから、黒い液体が入ったボトル――醤油差しと、それの脇に置いてあったチューブ――ワサビを手に取った。

 

 他の受験者ならばメンチは何か言っていたところだが、流石にこの怪物の行動を阻む勇気は湧かなかった。

 

《二人とも"あー"って言って貰えないかしら?》

 

 その頼み通り、二人が口を開けた瞬間――。

 

 

 アトラは目にも止まらないほどの速度で、ゴンの口に醤油差しから醤油を垂らし、キルアの口にチューブワサビを捻り出した。

 

 

 

「ぶぇっ!? しょっぱ!?」

 

「ッ――――――!?」

 

《感想よろしく》

 

「酷いよアトラ!?」

 

「お前ふざけんなよ!?」

 

《どうどう》

 

 アトラは自分でやっておいて、詰め寄る二人をなだめようとしていた。そして、すぐにホワイトボードに言い訳を書き出す。その表情はイタズラが成功した子供のような笑みを浮かべており、妖艶な表情にあどけなさが追加され、えも言われぬ美しさがあった。

 

 そのままの表情で、彼女は更に文字を書く。

 

《だって私、味は濃いか薄いしかわからないもん。草食すると体調悪くなるから得体の知れないものは食べれないもん》

 

「もんじゃねーよ! せめて言ってからやれよ!?」

 

《ごめんなさいね二人とも。アメちゃんあげるわ》

 

「いらねーよ!? つーかせめてもうちょい子供向けのアメを持ってろよ!?」

 

《ああん》

 

「アトラ、これ全然甘くないよ……」

 

 特に涙目で鼻を押さえているキルアが詰め寄っている。アトラは申し訳ないと思ってはいるのか、この世界に来てから持ち歩き始めた肝油ドロップを差し出したが、ゴンは受け取り、キルアは突っぱねた。ちなみに甘味が付いていない薬用タイプの肝油ドロップである。

 

《で? 味は?》

 

「スゴくしょっぱかったよ……」

 

「どうもこうもねーよ……鼻になんかスゲー来た。毒より毒みてーだったぞコレ……」

 

(ふむふむ……どちらにしても口や鼻をさっぱりさせるためかしら? それにこれだけ過剰に反応するとなると、よほどに臭みを消したいと見えるわね。多分、調理済みの食材にはここまではしないだろうし、魚は生でそのまま使うのかしら?)

 

《食事道具から大きさは一口大。浸けタレと薬味の味から使う魚はたぶん生魚。後は幾つか候補は考えられるけど、ニギリっていうのだけがよく分からないわね》

 

「え……ああ、そっか全然考えてなかった」

 

「な、なんだよ……ちゃんと試験やってんのか」

 

 二人の漠然とした感想を聞きつつ、アトラは今のところある情報から推測したものを二人に見せて、情報を共有させる。

 

《ありがとう》

 

 そして、一言お礼を書いて、醤油差しとチューブワサビをメンチに返すと、三人は魚を取りに試験会場の外へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

「ねぇ……メンチ?」

 

「なによ……?」

 

「たぶん、あの406番が受験者の中で一番、注意深く考えてメンチの試験に取り組んでるよね……」

 

「………………そうね」

 

 アトラが再び現れたとき、少なくとも受験者の中で最もニギリズシに限りなく近い別の何かを提出してくることが考えられるため、その場合の対応を考え、メンチは頭を抱えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うーん……』

 

『ピー!』

 

 青空の下、いつの間にか頭にカワセミを乗せたアトラは、とりあえず手当たり次第に採ってきた川や沼の魚介類をザル一杯に乗せており、その隣には既に出来上がったとおぼしき、ニギリズシなるものの試作品が4個あった。

 

 まず前提として、匂いの少なく筋の少ない部位の生魚の切り身を全て使い、何故か調理場に沢山あった黒緑色で薄い海草を干した物の匂いがする何かも使っている。

 

 ひとつ目は生魚の切り身を中心に入れてお米で囲んで握り、黒緑色の何かで全面を覆ってみたもの――オニギリ。

 

 ふたつ目は黒緑色の何かにご飯を乗せてその更に上に生魚の切り身を乗せ、巻いて輪切りにしてみたもの――マキズシ。

 

 みっつ目は一口大のご飯の上に魚の切り身を乗せ、その周りを黒緑色の何かで囲ってみたもの――グンカン。

 

 

 そして、4つ目は――。

 

 

「アトラ、なにこれ……?」

 

「なんか泡立ってんだけど……?」

 

《私の故郷の郷土料理よ》

 

 それはペットボトルに並々と入った黒々として粘性がある液体であり、表面でキチン質の何かが浮き沈みしている石油タールのような物体。既に人肌まで冷えているにも関わらず、絶えずマグマのようにゴポゴポと泡立っている姿が特徴的な――形容しがたい何かであった。

 

「………………食べれるの? 気持ち悪いぐらい匂いがしないんだけど?」

 

「ぜってやべー奴だろ……」

 

《失敬しちゃうわ。ちゃんと料理よ、料理。後、さっき採った川の幸しか使ってないわ》

 

 明らかに食べ物に向ける反応ではないゴンとキルアにそう書きつつ、アトラはペットボトルを傾けて中身を飲む。排水溝を詰まらせそうなほどの粘性を持つ見た目をしていたにも関わらず、どういうわけか傾けた瞬間に水のようにサラサラと流れ、彼女の喉へと入っていった。

 

『ぷはっ!』

 

 そして、炭酸飲料をイッキ飲みした後のような仕草と反応をしたアトラは、すぐに糸で文字を書いた。

 

《うん、濃い!》

 

「あはは、濃そうだね……」

 

「俺は何されても飲まないからな?」

 

《あらそう? とりあえず先にダメ元で行ってくるわね》

 

 二人は食文化や食形態の違いを体験しつつ、4つのニギリズシなるものを全て持って試験官の元へ向かうアトラを見送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《作ってみたわ》

 

 今のところ誰一人としてニギリズシの正しい形を提出してきた受験者がいない状態。

 

 ニギリズシの形になっていればというメンチの祈りは届かず、アトラが持ってきた物は、オニギリ、マキズシ、グンカン、謎の黒い飲料の四種類であった。

 

(惜しいッ! 惜し過ぎる……!)

 

 三種類は絶妙にニギリズシを掠めるように外しており、それが3つも合わされば最早、狙ってやっているようにさえ思えてしまう。ちなみにアトラとしては、単純に一口大のご飯に切り身を乗っけただけで料理と言えるのだろうかと考え、何故か調理場に沢山用意されていた黒緑色の何かこと海苔も使おうとしたため、あえて避けていたので、強ち間違ってもいない。

 

 そのまま言えば"あとすこしです。頑張りましょう"ぐらいの評価であり、もう一回並ばせるところである。しかし、明らかに他の受験者とは異なる洞察力及び観察眼と未知のモノへの挑戦する姿勢、そして目の前に立たれているだけで雪崩が眼前に迫るような危機感を抱く量のオーラにより、どうにか合格させなければとメンチは考える。

 

《ドキドキ……ドキドキ……》

 

『ピー!』

 

 尤も当の本人はホワイトボードにそんな文字を書きながら待つ程度には試験を楽しんでおり、川で魚を取るときに頭に乗ってきたカワセミをそのまま乗せ続けている。カワセミはよほどに居心地がいいらしく、我が物顔でアトラの頭で脚を畳んで座っており、メンチとはまるで対照的にリラックスした様子に見える。

 

 そんなカワセミに少々殺意を抱きつつ、少なくとも食べなければ始まらないため、グンカンの海苔を剥がし、無理矢理ニギリズシにすることにした。

 

(なにこれ……)

 

 直後、シャリとネタに目をやったメンチは驚愕に目を見開く。

 

 何故ならばシャリは工場で作った機械部品の如く、寸分の狂いもなく完全な楕円形をしつつ米の一粒一粒が全く潰れておらず、ネタは有り得ないほど細く精密に繊維方向に切られ、一切ネタを痛めていない。いっそのこと、気持ち悪いと言ってしまえそうな程、魔法のような完成度であった。

 

(あ、あそこにあった道具だけで、どうやってこんな……)

 

 ちなみにアトラは調理の全てを手という名の全身を覆う蜘蛛糸を操作して行っているため、このようなことが出来ている。シャリの作り方は糸を型にして作り、ネタの切り方は長年の経験と細胞を潰さないレベルまで細くした糸を剣のように扱って行っていた。

 

「あ、アナタ……料理はするの?」

 

《えーと、2万年ぶりぐらいかしら? 私、基本は生き餌だから料理しないし》

 

(冗談よね? うわ……シャリにも全く熱が移ってないし……)

 

 それは単純にアトラが変温動物なので、外気温度と大差ない体温だからである。

 

 恐る恐る彼女はグンカンだったニギリズシを口に運び、咀嚼した。

 

(……………………美味いというよりも、(うま)いわ……)

 

 それはハッキリ言ってメンチからすれば料理ではなかった。

 

 例えるなら人智を超えた技術で作られた寿司握りマシーンである。そこに職人の技などはなく、機械による超絶技巧でもって造られた電子部品そのもの。人間には決して不可能なレベルの技術を持ちながらも、どういうわけか、そこに料理人として大切なモノが致命的なまでに伴っていないため、酷く無機質に感じる。

 

(惜しい……惜し過ぎるわよこんなのッ!? これに料理人としての意志が加われば、すぐにだって世界最高の料理人になれるだけの素質があるわ!?)

 

『――――!?』

 

 そう考えた瞬間、メンチは気づけばアトラの手を取っていた。突然、手を握られたことで驚いた彼女の体が少し跳ね、頭に乗ったカワセミも驚いて飛び立つ。

 

 これよりメンチはアトラのオーラと、彼女の人格などを完全に切り離し、目の前にいる巨大な新芽を正しく育成出来た場合の利が勝り、明らかに態度が変容し、元の性格を取り戻す。

 

 無論、その原動力はアトラに料理を覚えさせ、誰も味わったこともないような未知の料理を作らせて、自分が食べたいためという彼女らしい理由に他ならない。それにより、彼女の探求心は死への忌避と無意識の恐怖を超越した。

 

「アンタ! 美食ハンターになりなさい! アンタなら絶対に最高の美食ハンターになれるわ! 私が保証するわよ!」

 

《 ( ゚д゚) 》

 

「なにそれ、どういう反応の絵よ? っていうかアンタ喋りなさいよ」

 

《 ( ゚д゚ ) 》

 

 ちなみにアトラが使う共通語は、チィトカアの記憶から吸出したため、妙な顔文字などはネットにも大変明るいチィトカアの知識であり、それの元ネタなどは一切知らないまま使っている。なので俗に言うところのにわかである。

 

《喋れないの。後、私人間よりずっと味覚が鈍いから人間の料理をマトモに作るなんて無理よ?》

 

「ああ、なるほど……それであの味になったのね。わかったわ、それなら私がみっちり教え込めば何も問題ないわね!」

 

《待って、問題しかないから待って》

 

 一度踏み込まれたメンチのアクセルは止まらず、根は優しく気を使って反抗してこないアトラの性格に、メンチの性分は、悪い意味であまりにも相性のいい噛み合い方をしたため、アトラはメンチの勢いに負けた。

 

《ねぇ、それよりも私は合格なのかしら?》

 

「合格も合格! 満点はあげれないけれど85点よ!」

 

《あら? そうなの》

 

 話題を変えるためと、抱いていた疑問を伝えたアトラは一先ず安堵する。

 

 そして、ゴンのことが気になったついでに他の受験者に目をやると、彼女が提出したニギリズシと似たような見た目のものを皿に乗せていた。どうやらメンチとやり取りをしていた時間が長く、明らかに様子がおかしかったため、他の受験者は真似ていたらしい。

 

《ところでもうひとつ質問なのだけれど、私以降の受験者はどうやって合格判定をするのかしら? 私が正解を提出したことで、当然の他の受験者は私と同じようなものを整えて持って来る……いえ、既に持ってきて並んでるみたいだけど?》

 

「あ゛あ゛ん? どいつもこいつも馬鹿のひとつ覚えみたいに……ずぶの素人とアンタじゃ天と地程の差があるっつーの! ならもう味ね! 見た目が同じならそうするしかないじゃない!」

 

《えっと……評価基準が途中から変わるのは試験的にマズいんじゃないかしら?》

 

「ハンター試験の合否なんて、試験官の匙加減のひとつで幾らでも変わるのよ」

 

《そうなの?》

 

「そうよ」

 

《そうなのね……》

 

 果たして美食を生業とする者に料理経験が無さそうな方々が作った料理を美味しいと言って貰えるのだろうか? 

 

 そんな当たり前の疑問を覚えつつ、ゴンにとてつもなく悪いことをしてしまったのではないかと思いながら、顛末を眺めることにしたアトラなのであった。

 

 

 

 

 

 







ー黒い液体のその後(全く読まなくていい部分)ー




「そういえば……」

 ふと、メンチはこれまで無意識的に避けてきた4つ目のニギリズシとして彼女が出したペットボトル入りで、キチン質の何かが浮き沈みし、常に泡立つ黒いタール状の液体が目に入る。

「これはなに?」

《私の故郷の郷土料理よ》

「ふーん……ユニークね」

 見た目は少々問題があるが、そのような見た目の物体が食べ物として存在することをメンチは記憶していなかった。すなわち、未知との遭遇である。

 故に美食ハンターとして手を出さない理由はどこにもなく、彼女は匂いだけ確認した後、ペットボトルに口を付け、傾けると中身を飲み込んだ。

「――――――――――」

《美味しい?》

 その瞬間、メンチはペットボトルを(あお)ったピタリと停止する。そして、ぶるぶると明らかに異様な震えをし始め、目の瞳孔の開閉をランダムに繰り返し続けた後、急速に目の光が消えていった。

「お、おいメンチ……大丈夫か?」

《在り合わせの材料で久しぶりに作ったから、口に合うといいのだけれど……》

 流石に黙って見ていられなくなったブハラがメンチの安否を確認するが、彼女からの反応はなく、それどころか瞳に夜空の星々ような異様な光が灯る。そのまま、誰に言うわけでもなく、星のない真昼の空をじっと見つめながら口を開いた。


「宇宙は空にあったのね……」


 意味のわからない奇っ怪な言葉を最後にメンチは地面に崩れ落ちる。そして、全てを悟ったような表情になった後、瞳の中の星々が消えると、憑き物が取れたかのような優しげな表情で眠るように瞳を閉じた。

「メンチー!?」

《あら……? ちょっと大人な味付けだったかしら?》

 その後、数十秒経って目覚めたメンチは何事もなかったかのように立ち上がり、試験を再開した。そのときの体験で感じたことを彼女は、終ぞ誰にも話すことはなかったという。








ーその他ー

キチン質の何かが浮かんだタール状の液体
 アトラの郷土料理、すなわちアトラナート族の料理。アトラ曰く『濃い味』。チィトカア曰く『いいえ。私は遠慮しておきます』。メンチ曰く『ガイアが私にもっと輝けと囁いてくる味』。味の向こう側に行けるらしい。しかし、無事に戻って来れるかは別のお話。

Q:アトラさんってなんか雰囲気によく流されてない?
A:根が優しくてチョロい。後、かりちゅま。




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