B級パニック映画系主人公アトラさん   作:ちゅーに菌

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 あそぼ。リースXPです。前後編となっていますが、前編ほどの山場はないのでやや短めです。


大蜘蛛の三次試験 後

 

 

 

《みんなごめんね……》

 

 トリックタワーの石壁から切り出し、自身で製作した"私はポンコツ上位者です"と書かれている石板を首から掛け、部屋の隅で正座の体勢のままショボくれているアトラ。

 

 現在、辛くも囚人たちとの戦いに勝利し、50時間の待機時間に入り、待機部屋で待つことになったゴンたちは大変居たたまれない気分になりながら、しょんぼりしているアトラにどう声を掛けたものかと決めかねていた。

 

「アトラ、誰にだってわからないことはあるよ。アトラ、こっちに来て一年ちょっとぐらいだし」

 

「なーに、ハンター試験中にちょっと休憩時間ができたぐらいに思えばむしろありがたいぜ」

 

「そうだな。試験では動き詰めだった。飛行船でも快眠とは言い難かったため、今の状況をプラスに考えよう」

 

《みんな……》

 

「だっせ」

 

《――――――》

 

『「「キルア!?」」』

 

 試験中に自己紹介などを聞かれなかったことや、ワサビのことの憂さ晴らしを今さらするキルア。それなりに根に持つタイプなのであった。

 

「そうだアトラ。君のことについて聞かせてくれないか? 魔獣の文化や生態にはあまり馴染みがないから、是非参考にしたい」

 

《私のこと?》

 

「おっ、そうだな! 何でもいいから聞かせてくれよ!」

 

《んー……なら私の種族はアトラナートって言ってね。普通は夜行性で肉食性、こんな感じに糸を使える種族よ》

 

 いつものように宙へ糸で文字を書くアトラ。どうやらクラピカが話題を変えることにしたのは功を奏したようだ。

 

《まあ、でもこの世界には、私一人しかいないわね。それは保証するわ》

 

「それは……」

 

 普段と変わらない様子で、当たり前のように書かれた文字にクラピカを始めとした面々は沈黙する。特に自身と同様に一族を皆殺しにされるようなことがあったのではないかと考えたクラピカは、隠し切れない強い同情の目を向けていた。

 

 一方、この世界"には"アトラナート族がアトラク=ナクアしかいないことを、当然の事として受け取っているゴンは他の仲間たちの様子にハテナを浮かべて首を傾げている。

 

「すまない……辛いことを語らせるつもりではなかったんだ」

 

《……? 別に一人には慣れてるから大丈夫よ》

 

「ところで、お前って何歳なんだ? 見た目だと若そうだけど、明らかに俺のお袋より上そうな雰囲気だし、虫の魔獣の寿命なんて知らねーしさ」

 

 すると純粋に疑問に思ったのか、アトラに対してキルアがそんな質問を投げ掛ける。女性に対して失礼な内容ではあったが、やや重苦しくなった雰囲気よりはマシな質問であった。

 

 無表情になり、たっぷりと30秒ほど長考した後で、アトラは文字を書く。

 

《何千万年ってところよ。詳しい歳月は長生きし過ぎて忘れたわ》

 

『え? でもアトラ恐竜が普通にいた時代には人魚と友達だったって、前に――ひひゃいひょはほら(痛いよアトラ)?』

 

《しゃらっぷ》

 

(億超えてんだな……)

 

(億年超えの年齢か……)

 

(化石じゃん)

 

 言ってはいけないことを言ったと判断したため、アトラはゴンの頬を横に軽く引っ張って発言を止める。しかし、その行動こそ、最大の肯定であろう。

 

 ただならぬ存在だとは思っていた三人であったが、そこまでの年齢が提示されるとは思わず、流石に半信半疑な様子であったが、否定する理由もなく、何とも言えない時間が流れた。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

《ゴン、一緒に寝ましょう?》

 

「いいよ、アトラ」

 

『「待て待て待て!」』

 

 その日の夜。ひとまず首から石板を掛けるのは止めたアトラが、さも当たり前のように問い掛け、ゴンも当然と言った様子で返答したことで、クラピカとレオリオが止めに入った。

 

 既に床に敷いた布団の上に半分寝転がるアトラの腕に抱かれる状態になっていた二人は、首を傾げて頭にハテナを浮かべている様子である。

 

《普通に寝るだけよ? くじら島では、よく抱き着かれて寝ていたもの》

 

「アトラふわふわして寝心地がいいんだ。キルアもどう?」

 

「ば、バッカじゃねーの!?」

 

 そうは言うが顔を赤くしており、アトラからすれば非常に可愛らしい様子である。

 

 ちなみに、ゴンがたまに背に乗って寝ている元の姿のアトラは、オーラ操作で刺激毛を柔らかくしなやかにしているためとても寝やすい。ゴンがまだ共に寝たことのない今のアトラは、全身の糸をクッションのような性質に変えるためとても寝やすい。ビジュアルはどちらも違った意味で問題だが、ふわふわの布団か、ふかふかの抱き枕なのである。

 

「男女七歳にして席を同じゅうせずというだろう? どちらにせよ人前では控えるべきだ」

 

「そうだぞ! 羨ま――とにかく止めろ!」

 

《ちぇー》

 

「えー!」

 

 問題があった事と言えばその程度で、寝ている以外の時間は、待機室にあったDVDなどの娯楽品を全員で見つつ、特に喧嘩や雰囲気を悪くするようなこともなく、お泊まり会のような時間を過ごすのであった。

 

 強いて問題だったことをあげるとすれば――。

 

 

 

 

『あっはははー! どうしてそんな死に方するのよ! おっかしー!』

 

「スゴい笑顔だよアトラ……」

 

「これ笑えるか……?」

 

「私にはわからん……」

 

「フィクションだってわかりきり過ぎてつまんねーよ」

 

 ファイナル・デスティネーションシリーズを偉く気に入っていたことぐらいであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、50時間の待機を過ごし、再びトリックタワーを降り始めた一行。そこには苦難に次ぐ苦難が待っていた――。

 

 

『危ない岩ね。みんな潰れちゃうじゃない』

 

『「「「――――!?」」」』

 

 

 まず、どこかの考古学者が踏み込んだ遺跡のトラップのように転がる岩はアトラがデコピンで粉砕する。

 

 

「アトラ。次どっち?」

 

《うーん……下かしら?》

 

「よし、バツだな!」

 

 

 マルバツで進む立体迷路はアトラの勘で一度も行き止まりにならずクリア。

 

 

『あははー! これ楽しいわ! どかーんっ! どかーんっ!』

 

「まるで紛争跡地の地雷処理機だな……」

 

「ってか、好きな数字のサイコロの目出してねーか……?」

 

 

 地雷つきの双六はアトラが楽しげに地雷をイチイチ踏みながらやっていた。

 

 

 このように様々な課題を若干一名を盾にしつつ、無事に五人は最後の分かれ道に到着したのだった。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 長く困難な道と短く簡単な道を提示され、アトラを除く四人は押し黙る。長く困難な道は五人で行けるが、どんなに短くとも45時間掛かる道。短く簡単な道は3分ほどで行けるが、二人を置いていかなければならない道である。

 

 そして、部屋の中を見れば古今東西のあらゆる武具が並べられており、争えということを暗示されていた。

 

『銃はないのかしら……?』

 

 武具を興味深そうに眺めるアトラは少し残念そうな表情をしている。そんなアトラを尻目にゴンは全員で行ける方法を最初から模索し、三人はアトラだけは天地がひっくり返ろうと倒せそうにないため、この中の二人が脱落することを予期し、誰も何も言わずに黙り込んでいた。

 

 そんな空気を破ったのは他でもないアトラであった。

 

《じゃあ、私がまず一人ね》

 

 その文字に四人が驚きや困惑を見せる中、アトラは当たり前のように自身の手首に手枷を繋いでしまった。そして、四人の表情を見てアトラは首を傾げる。

 

《50時間待機しなきゃならなくなったのは私のせいなんだから私が繋がれるのは当然じゃないかしら?》

 

「だ、だからと言ってそんなに簡単にハンター資格を諦められるものなのか!?」

 

《……? まあ、これぐらいなら別に。それに例え今回ダメになっても毎年やってるじゃない》

 

 クラピカの叫びにさも当たり前のように全く後悔もなく言い切ったアトラに四人は閉口する。彼女の覚悟はそれほどだと伝わったのだろう。

 

《私が二人分になれればそれでよかったんだけどね……》

 

 そう書きながら、アトラはバツのボタンを押し、その様子を見て他の面々もボタンを押した。結果はマルが1で、バツが4のため、短く簡単な道が選択される。

 

「みんな!?」

 

「よせよゴン。これ以上はみっともねーよ」

 

 ゴンの叫びを聞いたレオリオは笑顔を作り、ゴンの頭を乱雑に撫でる。

 

「うしっ!」

 

 そして、すぐにレオリオはアトラの隣に並び手首に手枷をはめた。それによって短く簡単な道を塞いでいた鉄扉が開いていく。

 

「レオリオ!?」

 

「おいおい……それ以上言うなよ。医者になるためにハンターになるなら別に来年でもいいからな」

 

「レオリオ……お前……」

 

「さっさと行け、俺の気が変わらねぇうちにな! 絶対ェハンターになれよ?」

 

 その言葉により、ゴンをクラピカとキルアが止めると、短く簡単な道の方へと引き摺るように連れて行った。

 

 そして、悲壮な面持ちのゴンとそれを慰めるキルア、より一層ハンターになる決意を強めたクラピカの三者は滑り台になっていた短く簡単な道を降り、目の前の自動扉が開き――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《おつかれさま。三人とも》

 

 真っ先にホワイトボードで労うアトラが目の前に立ち、その足元に座り込んで酷く疲れた表情をしているレオリオが目に入り、三人は目を点にした。

 

 

 事の発端は約3分前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《さて、動きましょうか。3分以内に到着して驚かさなきゃね》

 

「は……?」

 

 そんな文字を糸で書きながらアトラは、自身とレオリオの手枷を柔らかい針金でも曲げるようにへし曲げて脱出した。二人が抜け出したことで、バツの扉が閉まる様子を確認し、彼女は予想した通りといった様子で大きく頷く。

 

《うんうん、この時点で失格にならないならやっぱり大丈夫ね。ひとまず安心だわ》

 

「お、おい……何を――」

 

 次の瞬間、レオリオの呟きよりも先にアトラはある方向に向くと、一本だけピンと立てられた人差し指を向ける。

 

 目には見えないが、絶望的なほどの威圧感の高まりのような何かが充填されている感覚を彼は覚え、彼が閉口した直後、指先から何かが撃ち出された。

 

「おぉぉぉぉ!?」

 

 放たれた何かは石壁に直径5m以上の穴を開け続け、その衝撃波をレオリオは感じた。それが収まって、アトラが開けた穴を見てみれば、先に日の光が見えるため、トリックタワーの外壁まで貫通していることがわかる。

 

「お、おい……いいのかよ? こんなことして!?」

 

《…………?》

 

 トリックタワーを少し破壊したアトラにレオリオは詰め寄るが、彼女は彼のことを不思議そうな様子で首を傾げると、文字を浮かべた。

 

《だって別に、二人が繋がれた時点で扉が開いて、終了まで動けないと言われただけで、即失格とも動くなとも言われてないわよ? それにそもそもこの試験は、下に降りる方法まで最初から決められていないもの。ああ、舌噛まないようにね?》

 

「へ……?」

 

 その文字と共にレオリオは首根っこを掴まれたと思えば、次の瞬間に浮遊感と眩しい光を感じた。見ればさっきまでの部屋には既におらず、開けた穴の先にある外の空間にいることに気づいた。

 

 

 要するにアトラがレオリオをトリックタワーの外へ放り投げたのである。

 

 

「う……うぉぉぉおぉぉぉぉ!!!?」

 

 当然、飛べるわけでもない人間であるレオリオは、そのまま自由落下を開始する。未だトリックタワーの中腹にも満たない場所だったため、かなりの高さから真っ逆さまにレオリオは落ちた。

 

(あ、死ぬ)

 

 そして、地面から数mほどに差し掛かり、走馬灯が見え始めようというとき――。

 

「ぶぇっ!?」

 

 突如、何重にも貼られた妙に弾力のあり、柔らかな感触の蜘蛛の巣にぶつかり、九死に一生を得る。ひとつの蜘蛛の巣でもなく、幾つも一定間隔で折り重なった蜘蛛の巣にダイブしたことで、蜘蛛の巣は沈み込み、レオリオは地面から50cmほどの距離で丁度止まった。

 

《おかえり》

 

 そして、蜘蛛の巣が徐々に消えていき、ゆっくりと下ろされ、地面に体を付けたレオリオは笑顔でホワイトボードを掲げるアトラが立っている姿を目にした。

 

「し……」

 

《し?》

 

「死ぬわぁぁぁあぁぁ!? 殺す気かお前ェ!?」

 

《どうどう》

 

 そんな文字を浮かべるアトラの表情は悪戯に成功した子供のような表情を浮かべており、無駄に妖艶で可愛らしくもあるが、モノには限度というものがあった。

 

「だいたい、そんなんなら最初からバツの扉を蹴破ればよかったじゃねーか!?」

 

《………………その発想はなかったわ》

 

「うっそだろお前!?」

 

 心底感心したような様子でレオリオを見るアトラ。こうして、アトラとレオリオは残りの三人よりも先に三次試験を通過したのであった。

 

 

 






これが横抜きですか(勘違い)


Q:アトラさんって天然なの?

A:幻影旅団のシズクと同じぐらいには天然だよ!(いまさら)


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