熟睡道師の憂鬱   作:一ノ原曲利

1 / 6
 お古という名のお年玉第二段―――!!
 pixivではほとんどというか全くコメが無かったキルラが予想外に(?)反応が返ってきてびっくりしてます。もしやハーメルンならば…? と思い、封神レイヴンズもこちらへ引越してきました




第一話 目覚めと任命

 

 

 

 僕には起床という行動が無い。

 なぜかって? それは勿論起きないからだ。

 起きないから、起床しない。

 ほら、こーやってもふもふの羊の上で目を閉じて、ずーっとずーっと寝てる。それが僕にとって幸せであり人生だからだ。

 そのことへの自覚が、既に僕の中では完結した人生の終着点だった。なにもしなくていい、たまに夢見てたまに羊の頭を撫でて、たまに呼吸をすればそれだけで幸せだ。

 自閉しているわけじゃない。ただ、それ以外にあまり外に興味が無いだけ。

 同世代の人にでも会ったら「枯れてる」とな言われそうだけど別にどうでもいい。

 

 現状に不満がない。

 自分に野望がない。

 外界に興味がない。

 未来に希望がない。

 将来に絶望がない。

 

 このままゆっくり山奥の里の養羊所で、便利なスーツを着ながら寝てれば、僕は僕で幸せだった。

 

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 

 蓬莱山。

 

 古来中国最古の地理書『山海経』の蓬莱山は、『蓬莱山は海中にあり、大人の市は海中にあり』と記されている。

 日本の浦島伝説の一つ『丹後国風土記』では『蓬莱』を『とこよのくに』と読むらしく、かの有名な『竹取物語』に記された『蓬莱という山』には不老不死の薬があると言われ、かぐや姫は結婚を迫られた男に拾得不可能の業の一つとして『蓬莱の玉の枝』を要求した話はあまりにも有名である。

 他にも、『五神山』として『方丈(ほうじょう)』『瀛州(えいしゅう)』『岱輿(たいよ)』『員喬(いんきょう)』に並び称され、徐福伝説を記した司馬遷『史記』巻百十八『淮南衝山列伝』では『東方三神山』として上記の失われたとされる『岱輿』『員喬』を抜いた三つの伝説の地として記録が残されている。

 

 そのどれもには『仙人』という単語が付く、信憑性も疑わしい存在だ。

 

 だが、地球とまったく同じような大きさの、地球と全く同じような環境の、地球と全く同じような座標に、それはあった。中国大陸の未開の地、人っ子一人住む気配の無いような地の上空に、それへと繋がる(ワープゾーン)が存在する。力を持った者にしか到達出来ず、かつ潜ることが出来ないそれの先に、蓬莱島はあった。

 『島』と単語も末尾に付いているが実際にはそうではなく地球と同じような、それでいてまったく異なる位置に伝説の地は存在していた。現代の地球とほぼ変わりなく存在する生態系。少々未発達な村。そして――ヒト。

 だが蓬莱島と呼ばれるこの星でも、光景からして唯一違って見えるものが存在する。

 

 それは、島だ。

 

 島が、ジェット機のようなエンジンを搭載して浮いていた。

 

 『崑崙山(こんろんさん)(ツー)』とでかでかと書かれた球体状のその島の中枢にある執務室で、不定形な衣のようなマントを羽織った絶世の美男子とも呼ばれそうな美しい男は、目の前に積み上がっている膨大な量の書類から目を背け物憂げに溜息をついていた。なんとも様になる仕草である。

 

「……今日も書類が多いですね」

「それは仕方ないことだよ楊戩(ようぜん)教主」

「教主はやめてくれないか」

 

 またどさり、と傍らに長い鞭を抱えつつ大量の書類を運んできた青年は苦笑した。

 

「もういい加減慣れてくれなくちゃ困る…っていうのはもう何百回も言ったか。まぁ僕等仙人には2000年なんてあっという間だしね」

「……そうか、もう2000年以上も経過してるのか」

「最近になってようやく書類整理も板について落ち着いてきたから実感しただろ? いまだに人間界で悪さしてる連中はうじゃうじゃいるけど」

「妖怪仙人も時代がかわり文明が移ろい、科学が発展したところで存在意義は変わらないね、張奎(ちょうけい)くん」

「……その言葉は僕への文句か?」

「いいや、実際のところキミの活躍は大助かりだよ。お陰でキミとこうして話す余暇が作れたと言ってもいい」

 

 楊戩と呼ばれた妙齢の男は肩を揺らす。書類に走らせるペンの動きは高速に近しいものなのだがそれをやってのけるのが教主たる由縁でも在る。

 

「…ところで、妖怪仙人取締り役のキミがわざわざこうしてこっちに足を運ぶなんて珍しいね、話があるんだろう?」

「察しがいいな。とりあえずその報告書を読んでもらっていいか?」

「誰からだ?」

「…元始天尊からだ」

 

 ペンの動きを即座に止めた楊戩は張奎が持っていた書類を即座に掴み、読んだ。一文一文を目で追うごとに表情に険しさが浮かぶ。

 

「……これは、本当なのか」

「間違いない。半世紀前に起きた封神台での『魂の記帳』の誤記…漸く裏が取れた」

「やっと元始天尊様の重い腰が上がったか…場所は?」

「日本らしい」

 

 これはまた、と楊戩は天を仰ぎオーバーリアクションを取って見せた。勢いで腰掛けていた椅子ががくんと傾いだ。

 

「まったく…四半世紀前に封神フィールドの範囲を広げると言ったそばからこれか。誰を行かせるつもりだい? 僕らはこの通り中国で手一杯だ」

「驚き呆れるものいいけどな、書類は三枚あるんだぞ? ちゃんと最後まで見てからにしろ」

「三枚?」

 

 ぺらりと捲ると二枚目、三枚目の存在が明らかになった。楊戩は二枚目三枚目に記述された内容を読み、再び深いため息をつく。

 

「……なるほどね。これを機に彼を起こすわけか。雲中士(うんちゅうし)太乙(たいいつ)普賢真人(ふげんしんじん)は何と?」

「もう擬似山河社稷図(さんがしゃしょくず)による治療は済んでいると。……まったく、アレ食らったことある僕としてはアレを治療として使うのもどうかと思うけど、それで完治する彼もどうかと思うね」

「ハハッ、まぁ彼は我々道士の中でも特殊な部類だからね。あとは先代譲りの怠け癖をどうにかできればいいんだけど……彼、ちゃんと道教塾に通って…無いよね」

「あぁ、封神台に記録は残ってないけど相変わらずこちらに来ているだろう。既に燃燈道人達を派遣している」

「力づくでたたき起こすつもりかい?」

「スーパー宝貝使いが二人もいれば十分だろう」

「……申公豹(しんこうひょう)?」

「いや、哪吒(なたく)

金蛟剪(きんこうせん)盤古幡(ばんこはん)か……正直、スーパー宝貝は人間界では禁術指定だから使うと道教界が五月蠅いんだけどね…」

「生憎と、ここは人間界じゃなくて仙人界だ。別に問題ないだろう?」

「新人の道士達からすれば動物園のパンダ状態だよ、キミも禁鞭を使ってみたら?」

「キミも知ってるだろう、禁鞭は気高い宝貝なんだ。キミ達みたいに本能の赴くままに使ったりはしない」

「あ、そこにゴキブリが」

「禁べぇええええええん!」

 

 ばしぃーん! 床石を砕きかねない音が執務室に響き渡った。執務室中を縦横無尽に駆け巡る鞭のしなりと甲高い殴打の音に釣られて崑崙山中にいた道士達が集まっていく。次第に増えていく道士達を見て張奎は己の失態を悟った。あとで禁鞭からのキツーイお仕置きが待っているだろう。

 

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 

 桃源郷。

 

 かつて人間界にそう呼称されていた地があった。当時は世界初の共産主義国家などと囃し立てられもしたが所詮外界との接触は薄く、住民こぞってこの蓬莱島へと移住した。元々殷王朝の侵略から命辛々生き逃げ延びた羌族が作り上げた村であり、とにかく誰かに襲われなければどうでもよかった。

 蓬莱島の情勢が安定したと同時にこぞって桃源郷の連中が移民し、羌族は道士でも妖怪でも仙人でも無いのにも関わらず蓬莱島で生き続けている民族なのだ。そも、外界から隔絶した世界を好み『働かざるもの喰うべからず』をモットーにしている連中にとっては蓬莱島は最高の地であった。

 蓬莱島に出来た第二の桃源郷、羌族が住む村の一角。そこでは放牧された羊がメェメェと鳴きながら草を食んでは居眠りしていた。季節はまだ冬から春にかけてだから、少々寒さに応えるこの時期はまだふかふかの羊毛でいっぱいだ。気が早い羊は今か今かと毛狩りシーズンを待ち望んでいる。

 その、大量に羊が集まっている場所に、宇宙服のようなものを来た人が横たわっていた。

 ふかふかの羊達をまるでベットとでも扱うような、ごく自然な、違和感しかない光景でしかないが羊達はまったく違和感を感じていないかのように、それがまるで自分達の宿命とでも言うように宇宙服のようなものを着た人物のベットになっていた。

 ショコーシュコーという音と共に、かすかに呼吸音が聞こえる。宇宙服のようなものによる人工呼吸の音だ。

 

 彼は、寝ている。

 

「ここか」

 

 そんなメェメェと響く鳴き声が響き、謎の人が横たわる地に来訪者が現れた。八枚の翼を生やした男、金髪ツインテールのエビフライな女性、ダサいヘルメットを被ったこれまたダサい格好の男、背中に鋏のようなものを生やした男、その背中に乗る少年――姿形は様々だ。だが中でも一際異彩を放つまるで情熱というものを閉じ込めた焔のような男は、羊の上に眠るものを捉えて目を細めた。

 

「……既に治療は済み、嫌々ながら人間界の道教塾へ行ったと普賢から聞いてはいたが…サボリ癖は改善されていないようだな」

「まったく…世話のかかる奴よねホント! ホラ奕杜(えきと)、起きなさい」

 

 金髪ツインテの女性が羊を掻き分けてずんずん進み宇宙服のようなもの――名称『安眠スーツ』を着込んだ、奕杜と呼ばれた少年の丁度襟部分を鷲掴みしガクガク揺さぶる。だが当然起きる気配は無くシュコーシュコーと規則的な呼吸音のみが響いていた。

 

「あと1秒で起きなかったら、アンタをまた日本に放り出すからね」

【シュコー】

「はい起きなかったぁ! ねぇいいでしょコイツこの格好のまま日本に強制送還させちゃいましょうよブロンドムカつくー」

「コイツ俺っちといいレベルでダラけてんなー、弟子入りしたらダラけ師弟結成だな」

「あの男の『怠惰スーツ』ほどではない。壊すことなら簡単だ」

「でも力加減しなきゃ死んじゃうからダメだよ!」

 

 木の枝のようにぐるぐる回しながら苛立ちを感じている金髪ツインテ少女こと蝉玉(せんぎょく)の傍らではダサい男――韋護(いご)と鋏を生やした男――哪吒、そしてその背中に乗った少年こと黄天祥(こうてんしょう)が冷静に観察している。既に熱血漢こと燃燈道人は羊の日除けに植えられた樹木に背を預け目を瞑っている。特に手出しをするつもりは無いようだ。

 

「俺っちに任せろ、宝貝降魔杵!」

 

 ダサいヘルメットを被った韋護の手元で、両端が膨らんだハンマーが膨れ上がる。同時に走り出した韋護は蝉玉に目で合図し奕杜の『安眠スーツ』を空中で手放した。そして、振りかぶる。

 

「ホォ――ムランッ!!」

 

 まるで監督の守備練習時の打ち込みの如き一打が叩き込まれた。

 がぅいん、とおおよそ見た目から判断される素材同士が鳴らすとは思えないような殴打音が響き渡るが、肝心の『安眠スーツ』には傷一つ付くことなく打たれた衝撃でふわふわと宙を舞っていた。

 

「ちっ、俺っちじゃダメかー」

「アタシに任せなさい!」

「ぶへぇ!?」

 

 ファールを打ったバッターよろしく肩を落としてた韋護の背後を、容赦無い蝉玉の跳び蹴りが襲う!

 既に振りかぶった時点で破壊は不可能と見込んでいたことに加えて早い内に手を出さなければこのまま出番がなくなってしまうと危惧しての行動だ。蝉玉ちゃんあざとい。

 韋護の背中を踏み台にして跳躍した蝉玉は丁度浮遊する『安眠スーツ』と同じくらいの高さに到達するなりピッチャーよろしく足を垂直に高々と上げて振りかぶる。

 

「いくわよ宝貝五光石、蝉玉ちゃん特製黄金の回転ヴァージョン投げ!」

 

 蝉玉の瞳が手元の五光石、そして破壊対象である『安眠スーツ』に黄金長方形の形を捉えた。複雑な手首の捻りによって投げ出された五光石は無数の玉に分裂すると共に無限に続く渦巻きが形成され数多の横殴りの竜巻となって『安眠スーツ』に突き刺さる。

 だが、

 

【シュコー】

 

 土煙に揉まれて出てきたのは、無傷の『安眠スーツ』だった。

 

「キーッ! 折角起き抜けの濃ゆい顔激写してばらまいてやろうと思ったのにこん畜生がぁ!」

「おい、このままだと逃げられるぞ。物理的に」

「あ、ホントだ衝撃を吸収しつつ安全な場所に逃げようとしてる!」

「俺に任せろ!」

 

 ばさり、と羽ばたく音と共に八枚羽を生やした青年――雷震子が宙を舞った。羽ばたきと共に超神速のスピードと黒羽の羽毛が舞い上がる。凄まじいスピードで空を舞う雷震子はあっという間に宙を漂う『安眠スーツ』を見つけ出して獰猛に目を輝かせた。

 

「行くぜ、八枚羽でパワーも八倍! 発雷!」

 

 晴天の青空に空間を切り裂く青い稲妻が走った。天変地異かと疑うそれは紛れも無く雷震子が発生させた膨大な電気エネルギーを宿す雷だ。それらが『安眠スーツ』を直撃する。いくら頑丈な『安眠スーツ』といえども所詮機械か何かによって構成されたスーツであることに変わりない。ならば膨大な電気エネルギーを叩き込めばあるいは――。

 

「オイオイ、あれ喰らって無傷とかそりゃあ無ぇだろ」

「ボ、ボクだったらステーキみたいにこんがり焼けそうだよ……」

 

 天祥の背に担がれた意思を持った大剣『飛刀』が恐れおののく。何だ、何なんだアレは。だらける為だけに作られたスーツとは思えないほど頑丈だ。

 顔を真っ青にして見上げる天祥を一瞥した哪吒は浅く呼吸を吸い、天を舞う。未だ帯電している影響か周囲に直撃した雷を放電している『安眠スーツ』の姿を捉えた哪吒はぴ、と指差して狙いを定める。

 

「行け、九竜神火罩(きゅうりゅうしんかとう)(フォー)

 

 懐から拳台の大きさの丸いベアリングのようなものが二機射出された。それは飛距離を増すごとにどんどん大きくなり、『安眠スーツ』の上下に配置される頃には既に直径が50mを超えていた。哪吒は合図と共に『安眠スーツ』と己を九竜神火罩の中に閉じ込めると、己の身に宿る宝貝を起動させる。

 

「殺れ、金蛟剪」

 

 スーパー宝貝。

 数多在る宝貝の中でも頭出して優れた機能と破壊力を併せ持つ、一般の仙人でも操るどころか持った途端干乾びてしまうほどの力を持った宝貝だ。かつて地球という星を守るべく決戦を繰り広げてから2000年経過した今でも残されている七つのスーパー宝貝の内の一つ、金蛟剪は破壊力だけならば第二位の力を備えている。

 それは、龍。

 

「行け、黄金の龍」

 

 黄金色の龍が巨大な体躯と共に狭い九竜神火罩内部で姿を顕した。複雑な鳴き声と共に暴れまわる龍は巨大な顎を開くと九竜神火罩内部で無防備に漂っていた『安眠スーツ』に喰らい付いた。同時に、顎を閉じると共に膨大なエネルギーが爆散るし九竜神火罩が瞬く間に砕け散る。

 

「ゲホッゲホ――ッ!! オイ哪吒なんちゅうことしとるんじゃぁ! こちとら剣なんだぞ動けないんだぞ手加減しろよ!」

「剣如きが五月蠅い」

「ンだとゴルァ!?」

「やだぁ折角ハニーの為にしてきた化粧が台無しじゃなーい!」

「あ、見てみて哪吒! あれ奕杜じゃない?」

 

 あまりの威力の余波を喰らった被害者達と火花を散らしていると天祥が哪吒の背中で煙を吐き出しながら天を指した。一同は口論を中断させて振り返ると、空中で千切れ千切れになった『安眠スーツ』のメット部分が割れて、瞼を閉じた緑髪の少年がゆっくりと落下していた。

 燃燈が、目を開く。 

 

 

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 

 

 お尻に激痛が走り暗闇の視界がぼんやりと明るくなって、周囲の様子が肉眼で確認される。

 変わらない蓬莱島の桃源郷。

 晴れた空。

 青い雲。

 若々しい草木。

 メェメェ言ってる羊達。

 ところどころ戦闘痕で荒れた牧場。

 

「…………んんー」

 

 大きく欠伸をして視界を確認。なんせ三ヶ月ぶりに瞼を開けるんだ、しっかり涙で洗浄して視界をクリアさせなければならない。目尻に溜まった塵を擦り取ると、僕の安眠を妨げた者達が視界に収まった。 

 

「……おはよう、みんな」

「あはは、奕杜おそよー」

「…おそよー天祥、また寝たいんだけど」

「それはダメだ、(きょう) 奕杜」

 

 いててて、と落下した際に打った際に痛めたらしい腰に顔をしかめてると、お偉いさんが目の前にやってきた。

 熱血漢。道教界で最も偉い三人の内の一人。道教界でももほとんど残っていない数少ない〝妖術〟を数多く操れる道士。

 名を、燃燈道人。

 こう見えても、かなりのじじいだ。

 

「おはよう、奕杜。また道教塾をサボってこっちに来たな」

「いいじゃーん別に。人間界で塾行くよりこっちがいいよー別に塾通う義務無いしー」

「それはそれで困る。お前にはさっさと一人前の道士になって貰わなければな」

 

 いつもこれだ。奕杜はそんな呆れを含んだため息を漏らす。

 燃燈が言うには、僕は旧三大道師の一人の血を色濃く受け継いでいることから所謂『サイノウ』とやらはあるらしい。しかもかなり高い方で。

 小さい頃から遊んでいたがまさかそんな思惑があったとは…いや、流石に小さい頃は純粋に遊んでくれたか。ただ年をとるごとに謀ったかのように持ってくるお札とか呪術書とか見ると本気で萎える。止めて欲しい。

 

「おおかた、十天君(じゅってんくん)達の力でこっちに来たのだろう?」

「…あいつらは関係ないよ。自力で帰った」

「嘘だな、封神台の入界名簿に記載されてない」

 

 うげぇ、そこまで見破られているのかやだなぁ。封神塔のジジイの千里眼まだ健在なんだ。

 人間界からここ、中国中の道士が集う蓬莱島へは入界審査として封神台を通過する必要がある。そこで『魂の記帳』をすることで入界許可が下り、蓬莱島へ入れる。

 ただこれには例外があり、道士一級国家資格を持った者またはその者の呪術を使えば入れるのだ。

 

「通算30回目のサボりだ、分かっているのか」

「僕は道士になんかなんないぞー、一生羊達と眠…戯れてるんだ」

「うわ、露骨に言い換えなくてもバレバレなのに」

 

 蝉玉ちゃんうるさい。

 一応現代を生きる奕杜と蝉玉とでは20世紀ほど歳が離れているのだが、所詮それは魂に蓄積された年月であってほぼ同世代にしか見えない蝉玉達とはタメ口で話している。

 ただ、燃燈道人はある意味別だが。

 

「いつまでも甘えたことを言えると思うなよ。お前には明日から日本へ出立してもらう」

「は? また?」

「言っておくがこれは決定だ。元始天尊を中心に既に上層部ではお前を日本へ送ることが決定している」

「えーやだ」

「加えて」

 

 燃燈道人は一呼吸置き、観察するように目を細めた。

 

「お前を今日付けで空席だった〝太上老君(たいじょうろうくん)〟に任命する」

「「「「……え」」」」

「え」

 

 驚いた。僕だけじゃなくて爆弾発現してる燃燈道人以外のみんなが目を丸くしていた。

 いや、驚いたは驚いたけど……え?

 え?

 

「お前は中国道教界代表として日本に渡り、ある任務を遂行してもらう。これはお前にしか出来ないことだ」

「なんで」

「それはお前自身、分かっていることだろう」

「……嫌だ」

「もう一年前の東京での怪我は完治済みと報告がある。ならば問題ないだろう」

「嫌だっていってるでしょうがぁー!」

 

 半ばヤケになって呪術を展開しようとポケットにあったお札を投げつける。だがそれは発動する前に、

 

「盤古幡」

 

 燃燈道人の懐から丸い球体が顔を出す。それは一つ、また一つと泡のように分裂を繰り返しては無限に個数と体積が増殖していく。奕杜が投げた札が地に沈むと同時に、奕杜の周囲の重力負荷が増した。

 げ、ヤバい。

 ていうかそれスーパー宝貝だよね? あぁそこに哪吒がいるのは『安眠スーツ』を金蛟剪で壊したんだね、分かるよだって僕の『安眠スーツ』は並大抵の威力の宝貝程度じゃ壊れないから―――!

 

「重力百倍」

 

 みしり、という音と共に奕杜を中心地とした大地が抉れた。否、局地的に発生した重力場によって押し潰されたのだ。それは当然奕杜も例外ではなく、仰向けに倒れた奕杜の背に容赦無く重力が襲い掛かる。 

 おぅふ! せ、背中がぁ…! 背中と頭が重力倍増し現象で折れちゃう! 老人みたいに猫背になるのやだよ僕まだ若いんだから!

 倒れた視界の先でお札がぐしゃぐしゃの紙屑に成り果てたのが見えた。あぁー逃亡用の結界術式がぁー!

 

「いつまでも駄々こねられるお年頃ではないことくらい、わかっているだろう」

「そうだそうだ、潔く諦めろ!」

「いい加減悟れ」

「うるさいんだよ雷震子、哪吒ー…」

「早め身支度しないと、燃橙道人の拳骨が落ちちゃうわよ」

「ええぇー…」

 

 そんなわけで。

 姜 奕杜じゅうななさい、日本に行くことになりました。

 

 

 

 

 

 





 多分ちょっと続きます。いやぁアニメ面白いですねぇ
 キルラなんて続き書く気無かったのに書くことを強いられそうじゃないですかwww(使命感)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。