鬼の居る世界で 【雲柱】八雲結   作:sirius

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誤字修正の報告ありがとうございます。

今後も気を付け頑張ります。



第11話 刀の色

 

 

 「今回は十五人も生き残ったのかい。うん、予想以上だ。中間報告でもしやとは思ったけど彼女はとても優秀な様だね。八雲結、君はどんな剣士になるのかな。」

 

 産屋敷耀哉は屋敷にて鎹鴉からの返答を受け、その内容に柔らかく微笑んだ。

 

 その試験内容から毎年合格人数は少数にまで絞られるが中間報告にて例年と比べて多くの候補者が残っている事実を知り、事情を聞けば其処には一人の少女が関わっていた。

 

 彼女が最後まで残り、それに似合った成果を出せれば相応の階級を授ける。そう考えた彼だがその判断は正しかったと思えた。

 

 彼女は恐らく人角の人物で埋もれる人材では無い。

 

 選別試験後に隊士に与えられる階級は最も下の癸だ。下の階級では色々と不都合も出るだろう。

 

 だからある程度の立場がある階級で伸び伸びと動いた方が彼女にとって都合が良い筈だ。

 

 現在の主力となる柱達も入隊当初から突出した物を持っていたが、その階級故に踏み止まる時期もあった。今後はその様な事が無い様に新人育成も考える必要がある。

 

 もしかしたら彼女も彼等に準ずる活躍をするかも知れない。

 

 予想では今後、鬼との戦いはより一層熾烈を極める。

 その為にも有望な隊士の力は一人でも手を借りておきたい。

 

 「彼女の成長が楽しみだね。」

 

 連絡を寄越した鎹鴉を優しく撫でると肯定するようにその鴉は喉を鳴らした。

 

 次第に見えなくなる視界。寿命も後何年も無いだろう。

 今己の出来る最善策を最短で行わなくてはならない。

 

 そして何としても私の代でこの連鎖を終わらせるのだ。

 

 彼はこれからの戦いに思考を巡らす。

 全ては鬼舞辻無惨を倒す為に。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 着物は戦闘の際の破れや汚れで泣く泣く捨てる事になった。

 

 服が無いので仕方無く試験終了時に貰った隊服を着て帰路に着く。

 

 採寸もぴったりで通気性も素晴らしく大変着心地が良いのだがこの様な服を着た事が無い事と、鬼殺隊に入った実感が混ざり少々恥ずかしい。

 

 「八雲結、無事に戻りました。」

 

 照れながらも合格を伝えると鱗滝さんに私は泣きながら抱き締められた。

 

 「…よく生きて戻った!!」

 

 十三人。腕鬼が言った事を思い出す。

 

 試験から家に戻ってくる筈の教え子達を待ち続け、少なくともその内十三人は戻って来なかった。

 

 選別試験の間の鱗滝さんの心境は私には分からない。

 

 帰る予定の日を過ぎても帰らない子達。

 遅れて来る事を願いながらも内心諦めざるをえない現状。

 それはきっと想像以上に辛い。

 

 私は帰れなかった子達の分まで抱き合い。

 「ただいま戻りました。」とその言葉を繰り返した。

 

 その後鱗滝さんは約束通り素顔を見せてくれた。

 素顔の下は私達の思い通りの優しい顔立ちだった。

 鱗滝さんが言うには鬼殺隊の時に鬼にからかわれた名残だと。

 

 もう外しても良いのではと思ったが断固として外すつもりはないらしい。

 

 私達に見せた後はまた直ぐに面をつけ直してしまった。

 

 その後何故隊服で帰って来たか理由を聞かれ「着る服が無い。」と素直に答えると鱗滝さんは何とも言えない声色で 「お前と言う奴は…。」と苦笑いを浮かべていた。

 

 鱗滝さんの刀を折った事に関しては「お前が生きて帰って来たのだからそれで十分だ。」と怒られる事は無かった。

 

 選別試験も乗り越えた事で師弟の関係が厳格な物では無くなった私達は鬼殺隊の刀が届くまでの日々を穏やかに過ごした。

 

 何時までもそんな格好でいるわけにはいかない。と言う理由で鱗滝さんから新たな着物を頂いた。私の好きな藍色で鱗滝さん力作の粋な刺繍が入っている。

 

 私は物心着いた時には祖父、祖母が居なかったので鱗滝さんと居るとこんな感じなのかな、と思う。

 失った家族の悲しみも鱗滝さんと居れば安らいだ。

 この数日は本当に幸せだった。

 まるで私達が本当の家族の様にも感じた。

 

 この生活は長くは続かない。分かってる。

 私は鬼殺隊として覚悟を決め踏み出した。私の様な鬼の被害者を少しでも減らすために培った力で刀を振るうのだ。

 

 鱗滝さんも育手としての仕事がある。私が巣立つのを届けたらまた次の教え子を受け持つかも知れない。

 

 仮初めだとしてもこの生活は幸せだった。

 鱗滝さんと共にした日々は本物でかけがえの無いものだ。

 たがら戦える。今後の私の力になる。

 これからの日々がどれだけ辛かろうと帰る場所が在ることはそれだけで私に安心感を与えてくれた。

 

 十五日の日々は覚悟を固めるには丁度良い期間だった。

 そして最後の日の今日は門出を飾るには実に良い天気だ。

 

 十五日後。風鈴の音と共に一人の男性が訪ねて来た。

 

 「俺は鋼鐵塚という者だ。八雲結の刀を打ったせて貰った。」

 

 無数の風鈴を付けた唐笠を被り、ひょっとこの面を着けた姿は何とも風変わりだった。

 

 「八雲結です、よろしければ中へ。」

 

 「お茶でも…」と言う私の声は聞こえないのか鋼鐵塚さんはその場で刀の入った木箱を下ろし説明を始める。

 

 (…駄目だこの人。お前の話全く聞いて無いぞ。)

 

 彼でさえ流石にこの人の前では引き気味な様子だった。

 

 鋼鐵塚さんは私の返答も気にせず刀の説明を続ける。

 曰く、刀の原料の砂鉄と鉱石は太陽に近い山で取れる物で日の光を吸収する鉄を使っているらしい。

 

 「さぁさぁ刀を抜いてみな。日輪刀は別名色変わりの刀と言ってな。持ち主によって色が変わりのさ。」

 

 へぇ、知らなかった。鱗滝さんから借りた刀が青色だったのもそういう理由があったのかな。

 

 「色によって何か違いでもあるんですか?」

 

 鱗滝さんが答える。

 

 「日輪刀の色はその者の資質を表している。基本五流派にはそれぞれの色があり、染まる色でその者がどの呼吸に適しているか判断する目安となる。それぞれの色は

 

 炎の呼吸 赤色

 

 水の呼吸 青色

 

 風の呼吸 緑色

 

 岩の呼吸 灰色

 

 雷の呼吸 黄色

 

 という具合だ。

 純粋な単色以外にも他の色が出る事もある。

 その場合はこの五色に似通った色が資質となる。

 資質と違う呼吸を扱う場合はその型は極める事が出来ないと言われておる。」

 

 「成る程、ありがとうございます。」

 

 始めに聞けて良かった。二つの呼吸を使う私達はそれぞれ違う発色をするかも知れない。

 

 「刀は注文通り出来ていますか?」

 

 「当たり前よ。注文通り《二本》お前さんが以前使っていた物より少し長めと短めのを打たせて貰ったぜ。」

 

 そう、私は最終選別の鋼選びの時に二つを選ばせて貰い、長さの調節もお願いした。

 

 短めのは私の水の呼吸用、取り回しがしやすく小回りが訊くように短めに。

 

 長いのは彼の雷の呼吸用、威力と範囲を求めて長めに。

 

 以前と比べ長さが急に変わると苦労するので僅かな変化に止めたが使い心地を確かめてゆくゆくは再度調節するつもりだ。

 

 「では…。」

 

 短めの刀を握る。

 柄を持った刀は下の方から刀身が鮮やかな藍色に染まる。

 

 「…綺麗な藍色。」

 

 「そうだろう、そうだろう!何せ俺が打った刀だ。綺麗じゃない筈がない!! 」

 

 高笑いする鋼鐵塚さんに背中をバシバシと叩かれる。痛い。

 

 「良かったな鱗滝。こりゃあ見事な藍色だ、水の呼吸の適正ありだぜ。」

 

 「そうだな。」と静かに答える鱗滝さん。面で顔は見えないが何処と無く嬉しそうに見える。

 

 (それじゃ次は自分の番だな…。)

 

 入れ代わり長めの刀を持つ。刀身は柄から目映い程の白銀に変わり、遅れて金の輪の模様が連なる様に複数現れた。

 

 (…凄い綺麗。)

 

 「ッッ……!!」

 「……。」

 

 色の変化に二人は言葉を失い、完全に変わるまで見続ける。

 

 「…驚いた。一人で複数の色が出た事にもびっくりだが、こんな色俺は見たことが無い。鱗滝こいつは一体何者だ?」

 

 「自慢の教え子じゃ。類い希なる才を有しておる、少々特別な事情もあってな。色はその辺りから来ているのであろう。」

 

 鋼鐵塚さんはまじまじと自分の刀を見て納得した後、刀の取り扱い、整備要領について丁寧に教えてくれた。

 

 「大事に扱い、腕も上がれば刃こぼれ一つ無く、鬼を刈り続ける事が出来る。だが…」

 

 彼の纏う空気が変わる。今までの子供じみた態度は消えて、殺気にも似た異様なものが漂う。

 

 「決して!決して!!俺の刀の刀を折るな、良いな?」

 

 「…分かりました。」

 

 素直に従っておこう。何か色々ヤバいかもこの人。

 格好といい、態度といい、鬼殺隊の鍛治士は皆こうなのか?

 それとも自分の担当だけなのか…。

 

「帰っタ、帰っタヨ」

 

 庭から羽音と共に一羽の鴉が窓枠に止まる。

 鴉にしては大きめの体躯で鎹鴉としての教育がされており大変賢く人の言葉を話す。

 

 (…カー助だ。)

 

 「カー助か。」

 

 カーカー鳴くからカー助。

 珍しく二人の意見が合い、名付けで戦いは起きなかった 。

 

 「命令ガキマシタ。東ノ方角、町二向カウ。鬼の目撃情報。」

 

 どうやらこれが初任務の様だ。

 

 刀二つを腰に構え、旅支度を整える。

 

 「それでは行ってきます。鱗滝さん、鋼鐵塚さん本当にありがとうございました。」

 

 「刀を大事にしてくれよ。くれぐれも…」

 「体を大事にな。初任務、くれぐれも気を付けるのだぞ。」

 

 正反対の二人を背にカー助の差す東へと向かう。

 

 これが自分達の初任務だ。

 

 既に現地では嘗ての自分達の様に鬼の脅威に苦しむ人が居るかも知れない。

 

 あの時カナエさんやしのぶさん達に救われた様に今度は自分達が人を救う番だ。

 

 出来る事はまだ少ないが確実に一つ一つ階段を登り強くなろう。

 それはきっとこの国だけで無く世界そのものを救う事にも繋がる。

 

 (…ようやくだね。)

 

「ああ、これからだ。」

 

 太陽が差す中、東へと進む。

 

 鬼殺隊士としての道のりが漸く始まった。

 

 

 

 

 

 

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