鬼の居る世界で 【雲柱】八雲結   作:sirius

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何とかここまで書けました。

感想評価ありがとうございます。

今後も頑張っていけそうです。



第16話 雲の呼吸

 

 (来る…!!)

 

 狙いは斜め後方の夫婦。刀を両手で構え、合間に割り込む形で上段からの攻撃に備えた。   

 

 ガギンッ!!

 

 「……ぐッ」

 

 (受け流す事が出来なかった…!)

 

 有無を言わせない力と技量により両足が地面にめり込む程の衝撃を全身に受ける。人並み越える力を持つ自分だがこの攻撃はそう何度も受けられるものでは無い。それに…

 

 刀に目をやると先程刃を交えた部分が一部欠けているのが分かる。本来刀は力と力で拮抗する様には作られておらず、先程のやり取りをもう二、三度もすれば先に刀自体が駄目になる。

 

 (結ィ! 水の呼吸だ!肆ノ型でいくぞ!!)

 (うん!)

 

 水の呼吸 肆ノ型 打ち潮

 

 追撃を行おうとする鬼の胴体を下から斬り上げ後方へと押し下げる。斬撃を受けた鬼はその身体を僅かに浮かせた後己の身体と刀に視線を向けていた。

 

 「早く逃げて下さい!お子さんの犠牲を無駄にしないで!」

 

 私が叫ぶと夫婦は泣きながらも街の方へと駆けて行く。

 

 (結。下弦の壱だ!今までの鬼の中で最強だ。手加減無しでいくぞ!)

 

 (わかってるよッ!)

 

 十二鬼月の中でも上弦の鬼は数百年討伐した記録が無いと聞く。相手は下弦だが数字は壱。現段階で鬼殺隊が打倒しえる最強の敵に他ならない。負けは即ち死を意味するのだ、正真正銘全力で挑む必要がある。

 

 (相手は人型。全身の甲冑は血鬼術?甲冑の隙間は黒い靄で良く見えない。鬼を斬った事から手に持つのは日輪刀?さっきの男達の物? それとも… うん。…試してみよう。)

 

 水の呼吸 参ノ型 流流舞い

 

 私は流れる様な斬撃と足運びにより回避と攻撃を同時に行う。身長差により下からでは頸までの距離があるので姿勢を下げるべく攻撃が届く関節部位を中心的に攻撃を与えていく。

 

 ぐわん、と鬼の全体が揺らいだ。

 

 (いけるッ!)

 

 水の呼吸 弐ノ型 水車

 

 隙に乗じ私は技を繰り出す。攻撃は見事に決まり、鬼の左手腕を斬り飛ばした。

 

 このままいけば鬼の頸を斬れる位置まで届く、誰か見てもそうだ。このままいければ…。

 

 たが私は攻撃の瞬間身体を翻し、後方へと下がる。

 

 ザンッ!!!

 

 そして、それと同時に先程まで私の胴があった場所を刀が通過した。

 

 「それが貴方の血鬼術ね…?」

 

 鬼の斬った筈の左手は靄の結合と共に繋がり元通りとなっていた。二本目の日輪刀は胴体部分の靄が一瞬濃くなった際に出現した様だ。

 

 

 「ククク…」

 

 鎧がカタカタと動き、声は何処から出しているのが分からない程甲冑の中で低く反響していた。

 

 「クク…フハハ!!見事だ小娘。全くもって見事!!攻撃を避けるどころか我の血鬼術を見破るとは大したものよ。先程の男達とは比較にならない。良い感と腕を持っておるな。」

 

 「敵に言われても嬉しくないよ。それよりも何故日輪刀を持ってるの?先程の子供を斬った理由は何故?」

 

 「おかしな事を聞くな小娘。鬼だからと言って仲間意識など無い。弱い鬼なら尚更だ。我はただ強さを求めて闘争に走る。その為なら相手が人だろうが鬼だろうが些細なもの。日輪刀は我の趣味に他ならぬ。こうして倒した者の刀を収集し、用いる事で闘争無き日も使い手を思い出し暇を潰す事が出来る。それにしてもこれは面白い刀だな。鬼の命を経つ事ができ、使い手により色を変えるとは実に興味深い。」

 

 鬼はくぐもった声で嬉々として話す。その鬼としては実に人臭い理由に顔を歪めながら私は構えを解く事なく隙を伺い続ける。

 

 「フム…。久々の強者につい無駄口を効いてしまった。主を殺した後でその刀も我の貯蔵に加えておこう。小娘、何か言い残す事はあるか?」

 

 「生憎死ぬつもりは毛頭無いよ。貴方は此処で『私』に斬られる、絶対に。」

 

 「その心意気や良し…。では行くぞ!」

 

 

 水の呼吸 玖の型 水流飛沫

 

 無駄が無い素早い足運びにより、鬼の両腕による攻撃を掻い潜りながらもその身体に攻撃を加えていく。だが先程と同じ様に攻撃された箇所は靄と共に有耶無耶となり効果が出てるのかさえ分からない。

 

 

 (やはり頸を斬らないと駄目か…。)

 

 「小癪な。…ならこれならどうだ!!」

 

 

 ズザンッ!!!

 

 鬼がその巨体を生かし全力で刀を振るう。周囲の墓を幾つもなぎ倒す程の衝撃が生まれ、私は回避の為にある程度下がる羽目となった。

 

 (…なんて力、受けたらひとたまりもない。)

 

 「使い手がなまくらなら刀もか。我の攻撃に十も耐えれぬとは…。」

 

 パキり、と攻撃と同時に折れた刀を見て鬼が呟く。そして新たな日輪刀を手にして鬼は構え直した。

 

 

 (アイツ…一体幾つの刀を所持してるんだ?)

 

 (分からない。もしかしたら私達の技の手の内もバレてるのかも知れない。気をつけて闘おう。)

 

 

 「水の呼吸といったか。無駄の無い良い動きだ。同じ流派の者の中でもお前の動きは別格だな。」

 

 「そんなのッ…嬉しく無いよ!」

 

 

 水の呼吸 捌ノ型 滝壷

 

 滝壺は隙も多いけど威力の高い技だ。高い勁力により繰り出されたそれは鬼の図体を揺らがせ足元を危うくさせる。

 

 「…ヌッ!?」

 

 「今だッ!!」

 

 鬼の片脚を全力で払い。顎を下ろさせる。刀を持たない手で拳を握り私はそこを全力で振り抜いた。鉄と鉄をぶつけ合う様な鈍い音が響き、それは鎧を通して反響する。

 

 (これで脳が揺れた筈。今が好機!)

 

 刀を構え、頸を斬るべく腕を振るう。彼と精神を入れ替え、技を放つ。

 

 「ッ!疾い!!」

 

 雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃

 

 ザンッ!!

 

 確かな手応えと共に鬼の頸が甲冑ごと斬られた事を確認する。頭部は重い音立てながら地面を転がった。

 

 「ふぅー。結構やばい敵だったな。」

 

 胸元をパタパタさせながら周囲を確認する。胴体は数歩歩いて立ち止まり、全身が黒い靄に覆われていた。

 

 (あれ…おかしいな。)

 

 (ん、どうした?)

 

 (鬼の身体の消滅が始まらない…。身体もそのまま。どうして?)

 

 (確かに…。こんな事は今まで無かったな。…あれ、頸は?)

 

 先程の場所に転がったいた頸が消えている…。嫌な汗がつぅ、と額を流れるのを感じた。

 

 

 「…体術も使えるのか。ますます興味深い。だが、これまでだ。」

 

 (いつの間に後ろに。間に合わな…ッ!!)

 

 

 ザンッ!!

 

 刀を構えようとしたその刹那。凄まじい激痛を脇腹に感じながら全身が強く打ち付けられる。視界と意識が揺れ、受け身すらままならない。

 

 「グ…。ウゥ…。」

 

 勢いのままにいたる所に身体を打ち付けながら転がり。遅れて自身が斬られ、墓石へと叩き付けられた事を痛みで霞む視界で認識した。

 

 

 「鎖帷子か。装備に救われたな小娘。たがお主本当に人間か?」

 

 (ぐぅ…。大丈夫か結!!起きろッ!)

 

 痛みで彼女の人格が沈み。意思疎通が出来ない。呼吸を続けようとしても吐血が邪魔をして空気の巡回を阻む。

 

 (両方意識が沈んだら終わっていた。俺は以前の生活で痛みに耐性があったから何とか意識を保てた。けど結の人格が無い以上水の呼吸に頼れない。雷の呼吸のみで戦うしかない。)

 

 血を少しでも吐き出し、攻撃の為の呼吸を始める。

 

 「先程のは上半身と下半身が泣き分かれる威力だった筈。鬼ならともかく人の身のお前に耐えれるとは思えんが…。」

 

 「だったら何だってんだよ!!」

 

 雷の呼吸 漆ノ型 紫電一閃

 

 「ッヌ!?」

 

 閃光が敵を切り刻み、甲冑は両手、両足を吹き飛ばしながらも後方へと仰け反った。

 

 「はぁ…はぁ…。」

 

 紫電一閃は壱ノ型を基礎に独自の改良を加えた型だ。霹靂一閃を超えた速度に複数の斬撃を加えて切り刻む。多少の消耗はするが最早形振り構っていられない。

 

 傷は思った以上に深い。全身が打撲、裂傷塗れの上に直撃を受けた脇腹は感覚が無い。額の血が左目を伝い視界は悪く、気分は最悪だ。

 

 「今のは『漆ノ型』か。前の鬼殺隊士とは違う型だな。」

 

 

 胴部分の甲冑が宙に浮き、それに引き寄せよせられる様に手足の甲冑が靄と共に元に戻っていく。

 

 

 (くそッ!!効いてる様子すら無しか。)

 

 

 「…他にも『漆ノ型』を使う者が居たってのか?」

 

 「ああ、『拾壱の型』を使う者もいたな。」

 

 「これはもう使えんな。」と言い。鬼は無造作に手元の二刀を投げ捨て、懐の靄から新たな刀を取り出した。

 

 

 鬼の手元にある二刀、一刀は青みががり、一刀は黄色に染まっている。

 

 「なかなかの手練だった。たが誇って良い、お前はこの二人より我に善戦しておる。」

 

 「…マジかよ。」

 

 鬼の持つ刀はその色、特徴こそ違うがその二刀にはある共通点があった。

 

 

 「柱と言うのだろう。この刀の持ち主は…。」

 

 刀に刻まれた文字は即ち『悪鬼滅殺』の四文字。

 

 

 (ぅう…。ごめん意識飛んでた。)

 

 (結!大丈夫か!?)

 

 (大丈夫じゃ無い。うぅ…そこら中痛いよ。)

 

 (俺もだから大丈夫だ。)

 

 (それ全然大丈夫じゃ無いよ!)

 

 (んな事はどうでも良い。大ピンチだ。結…『あれ』を使うぞ)

 

 (え!?…でも『あれ』はまだ完成して無いよ。)

 

 (使わなければ此処で死ぬだけだ。駄目で元々、可能性は五分五分と見た。…やってくれるよな?)

 

( …はぁ。分かった、やろう!何処まで貴方に着いてくよ!)

 

 

 ハァァァァァ!!  

 

 武道でも用いる息吹の呼吸により強制的に呼吸を通常に戻す。それはこれからの呼吸が少しでも長続きさせる為の苦肉の策だ。

 

 「…何かする様だがそれがお前の出す最後の技となるだろう。全力を出せ、そしてそれを我は叩き潰し、至上の贄としよう。」

 

 全身に力が巡る。だがこれは力を前借りしてるに過ぎない残された時間は体感で『五分』それ以上は闘えない。

 

 

 (この強敵を何としても五分で倒す。俺(私)達の編み出したこの呼吸法、この技で!!)

 

 「お前はこの先俺の姿を捉える事は出来ない。」

 

 「…ほぅ。」

 

 「……いくぞ!」

 

 

 

 

 

 『雲の呼吸』

 

 

 

 

 

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