鬼の居る世界で 【雲柱】八雲結   作:sirius

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多くのUAありがとうございます。もうすく2万!嬉しい。

人様の作品を読んでばかりの自分でしたが書くのもなかなか面白い。文才は無いですがきっと後から付いて来るでしょう。

今後も皆様よろしくお願い致します!



第20話 欠月

 

 血鬼術 黒衣影装

 

 自身の身体を影が包み、弱所を甲冑の部位が保護する。

 

 正真正銘これが下弦の壱の鬼である【朱里】の至高にして最強の奥義であった。今までの図体だけの物とは違う。鬼としての身体能力を損なう事なく血鬼術の力の上乗せ、防御力の向上を図っている。

 

 柱から得た二刀を保持し、朱里は目の前の未知と対峙する。

 

 先程のやり取りで奴との間合いは無いに等しい事は理解した。狙うは接近戦による頸の切断。心臓を止めても動くのであればその身体を細切れにし再起不能にするしかない。

 

 一息で奴へと接近。足と影を用いての移動は今までの比では無く瞬く間に懐へ潜り込んだ。

 

 一撃、二撃と刀を振るう。

 

 「ッッ!?」

 

 重く鋭い斬撃を奴は羽でも撫でるかの様に防いでいく。銀に光るその瞳を合わせる事もなく右手だけの動作で磨きあげた我の剣技その全てを無効化している。

 

 「馬鹿なッ!!」

 

 ならば力と、影を地へと固定し、刀を影で覆う。己が用いる最高威力を与えよう。重さを用いれば体重が軽い人間、ましては小娘など一溜りもない筈。

 

 ズザンッ!

 

 上段からの斬撃。正真正銘全力の一撃を奴は正面から受け止めた。体重差を感じないその事実に朱里は冷静な目で敵を観察する。

 

 (…奴の背後の景色が歪んでいる?この妙な力場が原因なのか。)

 

 この間にも蜃気楼の様に奴の背後は歪み続け、やがてそれは一つの形を現す。

 

 光の環。丁度後頭部にあたる付近に長さ一尺程の光のそれが現れ淡い光が奴の全身を照らしていた。

 

 「おぉぉぉ!!」

 

 鍔迫り合う刀に加える力を強めても奴に効果は無く。逆に力を入れるほど此方がジリジリと後方へ下がって行く。

 

 ここまで来て奴はちらりと視線を向ける。無機質な瞳、まるで初めから自分等相手にしてなかったかのように。

 

 キンッ

 

 奴が右手を振るう。たったそれだけの動作で我の二刀は半ばから両断され、傾く視界により頸が斬られた事を理解した。

 

 敗北。自身の脳裏にその二文字がよぎる。

 

 これが百年間闘争を求めて日々を過ごし、力の探求を目指した道の末路。その終着点…。

 

 「まだだッ!」

 

 (こんな所で終われぬ。我は何も得ていない。家を捨て、家族を捨て、人を捨てて今此処にいる。一体何の為に外道の道へ落ちたと思っている!理不尽への抵抗、己が欲望の開放。全てはこの時の為だろう!! )

 

 左手で切断された頸を支え、折れた刀を奴に向ける。末端から身体が崩れている中、目の前の敵に一矢報いる為にも刀を振るった。それはまるで抗う様に、祈る様に。

 

 最後に見た斬撃は最早己の目で終えぬ程の剣技。

 

 「……見事。」

 

 瞬間身体に幾数の斬撃を受け、今度こそその身体を地へ着ける。切断面に痛みは無く、脱力にも似た浮遊感が身体を支配し、だかそれが不思議と心地良くも感じた。

 

 (完敗か。ここまでの差なら寧ろ清々しい。あれだけ感じていた未練や焦燥感が嘘の様に消えていく。)

 

 私は何処で間違えたのであろう。女である事を悔い、この道を進んでるなお、頭を過るのはあの幼少期の思い出ばかり。

 

 剣を持ち、剣士としての腕を磨いていけば満たされると思っていた。しかし、力を着け、成果を積み上げていても欲望は終ぞ満たされる事は無かった。

 

 あぁ…そうか。

 

 私は認めて貰いたかったのだ。父に母に、あの栄華の品より目の前の私の方が大切なのだと。

 

 幼い頃の間違いを何時まで棄てきれず子供の様に反抗し維持を張り。本当に大切な物は常に側にあった筈なのに…。

 

 もう手に入る事が無い事実に思いを焦がし下弦の壱【朱里】は静かに消滅した。後に残されたのは闘争に明け暮れた歴史を物語る刀の数々と長きに渡る戦闘で傷付き補修する事さえ叶わない朱の甲冑、その一部だけであった。

 

 

 

 

 間もなくして柱率いる援軍が駆け付け下弦の壱討伐の報は鬼殺隊中に流れる。

 

 討伐者である八雲結は意識が無く疲弊していたがこれといった外傷も無く。実質単独で十二鬼月と交戦し成果を挙げたものの中では最高とも言われ鬼殺隊当主より甲の階級が授けられた。

 

 多くの者は下弦の月を欠けさせたその成果に喜び。既存の柱達は新たな実力者の誕生に期待を寄せた。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 そこは人里離れた名家の家。有名では無いものの無名では無い。当主の趣味か家の作りは端正なものであり庭に至っては植木一つ、塀一片に渡っても整備が行き届いている。

 

 小さな池にはこれまた選別したのであろう立派な鯉が泳いでいた。こんな辺境に家を構えたのも自然を好み人と関わる事を煩いと感じる当主の色がより濃く出た結果なのであろう。

 

 しかし、今現在この家の当主、家族、使用人に至る全ての人間は消えその痕跡まで残されては居なかった。

 

 昼間にも関わらず全ての戸が閉められている異常。効く人が効けばその屋敷周囲の全てが濃密な死の匂いで包まれている事を嫌でも感じる事になる。

 

 「朱里が死んだ。下弦の月がまた欠けた。」

 

 鬼の首魁である鬼舞辻無惨はそんな屋敷の一室に構え、己が見た結末を淡々と答えた。  

 

 「誠に御座いますか!…しかし、朱里…。誰で御座いましたかな?」 

 「…下弦の…壱。剣士の女だ。」

 「あぁ!そういえば!申し訳無い、下弦の鬼はいまいち記憶が薄いもので。」

 

 上弦の弐童磨の疑問に対し同じくである十二月鬼上弦の壱 黒死牟が答える。

 

 「別に良い。百年も十二鬼月でありながら上弦に上る事の出来ぬ奴の事など。人間を喰らう事もせず人の時の記憶を何時までも引きずりおって。くだらん、やはり人間の部分を多く残した者から負けていくのだ。」

 

 然もどうでも良いと言った様子で鬼舞辻は答える。

 

 「だが、少々興味深いものを見つけた。」

 

 珍しく主の上機嫌な様子にその場に居た上弦の鬼の一部が反応する。

 

 「今回の朱里を倒した鬼狩りだ。少し気になる事がある。童磨、お前の目で見極めて来い。何も無ければ喰って構わん。」

 

 真紅に染まった双眸を見開き、笑みを浮かべた。

 

 

 

 




コソコソ話的な何か

十二鬼月 下弦の壱 朱里

近距離において豊富な攻撃手段を持ち。刀を用いた剣術は一級品、中距離においてもある程度をカバー出来る。

甲冑と血鬼術により防御力は高く、血鬼術で生まれた影は応用の幅が広く、作中では主に甲冑と刀の操作に用いたがその気になれば死にかけの鬼殺隊士等も操る事が出来る。

八雲と闘ってなければ特例として入れ替わりの決戦で上弦の壱と闘い敗れていた。

剣士としての誇りを捨て外道に傾けば上弦の陸、上弦の伍とも肩を並べる力量を持つ。

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