鬼の居る世界で 【雲柱】八雲結   作:sirius

24 / 24





第24話 柱合会議2

 

 

 

「少々早計かと思います。お館様の意見とはいえ私は賛同致しかねます。」

 

 否定の言葉を述べたのは以外にもカナエさんであった。周囲の口が開く前に答えた事からこの場が自分の事で開かれたこと、そしてそれを否定する意思も事前に持ち合わせていたのかも知れない。

 

「胡蝶。お前はお館様の意見を否定するというのか。」

 

 静かに話すのはこの場で一番体格に恵まれている男。大きな数珠を首から下げており、手に持つ数珠は己が持つ腕力で軋む程力を入れている様子。言葉は荒らげていないがその真意はお館様の意見を曲げた事に対しての怒りが籠もっていた。

 

「そうではありません悲鳴嶼さん。彼女は隊士になって二ヶ月程度です。まだ日が浅い。せめて半年様子を見てはいかがでしょうか?」

「ほぅ…二ヶ月で下弦の壱討伐とは派手な奴だな!となると今までの柱の中でも最短だ。派手だな!俺はこの娘を推すぜ!」

 

 カナエさんの言葉に反応して頭に装飾を施した男が応える。どうやら人目に立つ事を花としている人種の様でその声、身振り手振りとやたら大きい。

 

「義勇。彼女は君の育手である鱗滝左近次から教えを受けている。兄弟子としてどう思うかな?」

「俺は何も…。彼女が柱になると言うことは次の水柱になるといった事でしょうか?」

 

 どうやら兄弟子らしいその人は淡々と答える。半分で色が変わる稀有な着物を纏っている。感情は読みづらく自分が水柱の後釜になる事を気にしている様子であった。

 

「ならお前ぇはお役目御免だなぁ。」と白髪の身体に多くの傷を持つ男が声を荒らげ周囲もざわつきかけるが年長である男の咳払いで静かになる。どうやらこの最年長の男が実質的な柱のまとめ約らしい。

 

「いや、そうでは無いよ。彼女は元鳴柱である桑島慈悟郎の教えも受けている。それに報告では水と雷から新たな型を生みしそれを武器にしている。そうだね結?」

 

お館様に質問され再度周囲からの視線を受ける。鬼の殺気とも違うそれに調子を崩されそうにもなるがどうせなる様にしかならない。強くいこう。

 

「はい。私が生み出した雲の呼吸を軸に水と雷の呼吸を使い分け戦闘を行っています。」

 

呼吸を生み出す隊士は少ない様で柱達は再度ざわつく。それと同時に最も自分に対する殺気が強い白髪の男が直立した。

 

「下弦の壱を単身討伐した事に関しては文句は無ぇ。第一討伐に関しては嘘や欺騙は無理な話だ。事実お前はあの壱に勝ったんだろう。だが経験や人徳以前に俺達はお前の実力が知りたい、それも明確な形で。それで反対派の意見が出るようなら俺が出る。お館様、巨影さん失礼仕る。」

 

(ッッ…!)

 

白髪の男が距離を詰め拳を放ってくる。目や急所を狙う攻撃。その一撃、二撃、三撃目をいなして次いで迫る足払いを後方への跳躍で回避し戦闘体制をとる。この間にも周囲から静止の声が掛かるが正面の男は無視し攻撃の手を緩める事は無い。

 

「隠!木刀を二つだ。急げ!」

「不死川やめろ!!」

 

 どうやら模擬戦まで行うつもりらしい。不死川とは周囲の静止の声を聞くにこの男の名らしい。

 

「……やったなお前。階級が上だからと下手に出てれば好き勝手やりやがって。自分は二刀流だ。隠、木刀なら二本だ。」

 

 初めこそ新たな環境で周囲から目立つ事が無い様にしていた自分だがここまで来ると流石に気分を害してくる。急な呼び出し、本人そっちのけの会議に攻撃ときた。正直もう遠慮はしない。自分の好きにやらせて貰おう。

 

(私も思う所があるけどなるべく穏便にね。)

(大丈夫だ結。逆に考えると柱と戦う良い機会だ。現状技の精度には不満があるが彼等と自分達にどれだけの差があるか確かめて見ようじゃないか。)

 

「面白ぇ!やれるもんならやってみろよ!力無い物が柱に着いた所で直ぐ任務で死ぬのが落ちだ。そんなんで部隊の士気が下がる様なら俺が今ここでお前を殺してやる。」

 

 なるほど。正面に居るこの暴力が具現化した様な男は思いの他理性的だ。手段や方法はともかくその真意は的を射ている。命の駆け引きがある鬼殺隊にとって背中を預けるか否かを決めるして最も効率的なのはこれが一番だ。だがしかし、やり方が不器用過ぎるのではないだろうか相当歪んだ人生でも送ってきたのか。

 

 手物に来た二本の木刀を構え呼吸を行う。ここまでくると他の柱達も静観を決めた様で自分の力量を見定めようとしている様子だった。

 

 風の呼吸 弐の型 爪々・科戸風

 

 正面で振るう刀に合わせようと刀を構えると意外にも不死川は手前の虚空に木刀を振るう。一瞬疑問が沸くが迫る殺気に委ねて上に跳躍すると地面に三閃の斬撃が走った。

 

(風の呼吸を初めてみたが遠距離か!間合いが取りにくいな。)

 

「上空に跳んだって事は殺してくれと言ってる様なもんだぜ、おい!」

 

 風の呼吸 肆ノ型 昇上砂塵嵐

 

 雲の呼吸 肆ノ型 浮雲

 

 着地までの隙に乗じて下から広範囲の攻撃を攻撃を放つ不死川。状況判断能力も高く上空に飛んでから攻撃までのタイムラグは零に等しい。その時に最適な一手を打つ事が出来る経験を詰んでいてそしてそれを可能にする鍛錬を重ねている。この数手でも彼が柱と呼ばれる存在で有ることを認識させられる。

 

 だが自分もこの程度では無い。下弦の壱に遅れをとったものの自身もそれなりの鍛錬を重ねている。人の枠を大きく越えた脚力を呼吸で更に強化する。何も無い虚空を蹴ること数回。空を裂く音を残し何も無い空地で方向変換を行う。これが雲の呼吸の肆ノ型だ。

 

「ッ!?何だと!!」

 

 再度虚空を蹴り二刀を構える。浮雲は空中での移動を可能にしているがそれは一度に数回程度。つまり空中を移動し続ける事は出来ない。そんな人外な機動をするつもりも無いがこの数回空を走れる事は戦闘をより立体的に複雑なものにする事が出来る。技を外したと見るや直ぐ様こちらを迎撃しようと構える判断は良いが意表を突いた分技の速さにはこちらに分がある。

 

 雲の呼吸 雨の型 時雨

 

 風の呼吸 参ノ型 晴嵐風樹

 

 上から下へと連撃を行う雨の型を風の呼吸でも手数が多いのであろう参の型で向かい打ってくる。だが二刀による連撃を一刀で捌ききれず。僅かながら不死川に攻撃が通る。

 

 「ッは!やるじゃねぇかそうこなくっちゃな!」

 

 風の呼吸 壱の型 塵旋風・削ぎ 

 

 雷の呼吸 漆ノ型 紫電一閃

 

 構えから直接的な威力ある技と判断し、こちらも同系統の技を繰り出す。互いに衝突し地面には夥しい斬撃の跡が残ったが不死川は自身に迫る致命的なものを獣の様な感性で避けており身体の裂傷は最低限に留めている。こちらも僅かに掠るものを幾つか受けたが持ち前の頑丈さ故血を流すまでには至っていない。

 

「そこまでだな双方武器を収めよ。」

 

 年長者の柱の一声で数珠を持つ柱と派手好きな柱が自分達二人の間に挟まる形で現れ中止となる。不死川もこれ以上は無理と悟ったのか素直に木刀を投げ捨てお館様へ「申し訳ございませんでした。」と謝罪する。

 

「もう満足しただろう不死川よ。お前のその考えは間違って無いが少し度が過ぎる。我ら一同の疑惑を払拭してくれようと行動してくれた事には感謝するが私の立場上今のを全て見逃す事は出来ん。まずはその若人に言うことがあるのでは無いか?」

「…試す様な真似をして申し訳無い。」

 

 年長者の柱に諭され不死川から謝罪を受ける。こんな獣の様な男を御する事が出来るなんてお館様とこの男はなかなかの器なのだろう。それ以前に不死川は謝罪という行動に比例して目が殺意剥き出しのままだ。異様に怖い。

 

 たが手段も兎も角、不死川は本人なりの理を通した結果なのだろう。確かに彼の言い分は終始一貫しており頭では一応理解出来ている。だが散々言うが手段が最悪だ。学も考えるだけの頭もあるのに実行する為の方法が武闘派過ぎる。

 

 そして現在の自分の力量が柱に対し何処まで通じるのかも朧げながら実感出来た。力量の差は圧倒的では無い。そして経験という面ではまだまだ成長の見込みがあると言うこと。今回の様な新たな技、増しては遠距離もこなせる風の呼吸と手合わせ出来た事は確かな経験として力になると感じる。

 

「ありがとうございました。」

 

 素直に礼を言うと思わなかったのか不死川は「ハッ!」と一笑した後、元の場所へ戻る。周囲の柱からネチネチと言われている様だが比較的新しい柱だからか先程の件もあり大人しくしている様子であった。 

 

「不死川が申し訳なかったな。彼奴なりに考えあっての行動だ。どうか許して欲しい。」

 

 燃える様な髪色をした男が優しげに話しかける。

 

「お館様。私は彼女の柱入りを煉獄の名において賛成致します。若いのに対した実力者だ。うちの杏寿郎が後任した際は良き友となる事だろう。」

 

 元気潑剌と話すその姿は髪色、服装もあって炎そのものだ。歴代の炎の呼吸の継承者は煉獄家から出ると言う話を聞いた事があるが彼がそれなのであろう。これ程炎という言葉が似合う人も他には無い。

 

「それは良かった。後は巨影だね。鬼殺隊の歴史上最も長く柱を歴任し、未来を予見するとも言われたその眼で彼女が柱として相応しいか見てもらいたい。」

「過分なお言葉でありますお館様。数百年鬼殺隊を支えた貴方方一族の前には私程度の存在大した物でもありません。」

 

 最年長である彼の見た目は他の柱と比べて肉体的に優れている訳でも無く年相応だ。薄茶色の着物を羽織っており袖から覗く腕は年老いてなお修練を重ねている事が窺える。衣服を纒わぬ部位、顔や首、腕に至るまで大小様々な傷跡が今までの鬼との戦いの歴史を物語っている。

 

「さて我ら一同彼女に挨拶もおらん。これから話す上で改めて紹介をしておきたい。柱云々はそれからでも良かろう。私は小鳥遊巨影。少々柱を長く勤めてるだけの老いぼれだよ。」

 

 






  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。