鬼の居る世界で 【雲柱】八雲結   作:sirius

4 / 24
第04話 決闘

 

 

 私胡蝶しのぶは最近彼女の話題が尽きない事を疎ましく思っていた。

 

 【八雲結】

 

 療養の為、1ヶ月程前に姉に連れられて来た子である。

 

 歳は私と同じ13らしい。髪は綺麗な黒髪で肩まで伸びている。

 

 背丈は私より少し高いくらいで見た目は可愛らしく、廊下ですれ違った際はきちんとした挨拶を返すしっかりとした子に思えた。

 

 此処では一般の人は療養しない。

 

 来るとすれば鬼の被害にあった者だ。彼女も例に漏れずそうなのであろう、私と姉の様に。

 

 事実それは正しく誰かが話していた会話を聞くに彼女の家族は鬼の被害に遭い、彼女はその若さで独り身となってしまったらしい。

 

 話をしていた隊士に守秘義務について注意すると共に私達同様彼女の家族を襲った鬼達に対し憎悪を募らせた。

 

 姉は「鬼とは仲良くできる」と言うけれどもやはり無理に思える。鬼は人を喰らう、私も鬼の中にはきっと善良な者もいると信じ会話を試みた事もあったが結果は変わらなかった。理性を失い、本能のまま人を喰らう鬼共。話し合い等通用しないのだ。

 

 だから当初は私達と同じような境遇の彼女には深く同情した。早く立ち直って欲しいと。

 

 ここに来た子は幾つかの選択がある。成長し、独り立ちするまで面倒をみてもらう場合。鬼と闘える者達の力になりたいと、この胡蝶屋敷で看護師として働く場合だ。

 

 前者は至極無難な選択で、後者は鬼に向かう強い意思を持つ者が就く場合が多かった。

 

 最初彼女は後者を選ぶと思っていた。瞳からは強い意思を感じたし、要領も良いと思える。看護師として働くのに問題は無いだろう。

 

 しかし現実は違った。あの強い意思は人の為に向けているものでは無かったのだ。彼女は第三の選択を選んだ。

 

 つまり、私と姉の様に鬼殺隊として鬼を殺す道である。

 

 だがそれは大変険しく、辛い道のりでもある。事実鬼殺隊の最終選別は困難を極め、目指す者の半分以上が鬼殺隊として隊服に袖を通す事無く戦死する。鬼殺隊になってからも任務は熾烈で常に多くの者が殉職している。昨日まで元気だった者が後日死体で戻ってくる。そんな場面を私は散々見てきた。

 

 同世代である彼女にはそんな道を選ぶ事無く、鬼とは無縁の生活を過ごして欲しいと感じた。普通に生きて、結婚し、家族で幸せに暮らす。そんな生活を、私達の分まで。

 

 胡蝶屋敷の主である姉は柱だ。

 

 彼女の選択については姉が判断する。即ち隊士として闘わせるか否かをだ。私は大いに反対した。自分達も選んだ道であるがこれは悲しい選択だ。鬼殺隊は常に鬼と対峙し、命の保証は無い。復讐であれは憎悪の炎は消える事無く永遠に失った家族を思い、鬼に対する怒りで心を焦がし続ける事になる。同じ境遇を増やさない為と刀を振るう者も居るが鬼の被害全てが無くなる訳ではない。救えない者を見るたび後悔と己の力不足に嘆く事になる。

 

 全く…救えない。

 

 

 一部の鬼殺隊は何処か病んでいる場合が多い。

 

 そうでなければやっていけないのだろう。それは私達も同じ。鬼を狩るということはそういう事だ。だから私は彼女が鬼殺隊を目指す事に賛成出来なかった。

 

 やんわりと反対し、違う道を進める姉の言葉を彼女は一切受け入れなかった。

 

 一体何処からその覚悟は沸いてくるのだろう。両親を殺され一月も経つ事無くその決断に至ることは私や姉でも不可能だった。

 

 だから狂ってしまった事さえ考えた。両親を殺された直後で鬼に対する怒りで身体を蝕まれてしまったのかと。しかし、私達を見る瞳はいつもの優しくも強い意思を感じるもので変わりは無い。彼女は本心で言っている。

 

 だから彼女にそんな発言をした私は何処か変だったのかもしれない。私達よりいち早く立ち直り崇高な意思を掲げる彼女を曲げたかったのか、その道はそんな安易に選んではならないと忠告し、現実を突き付けたいと思ったのか今では分からない事だ。

 

 

 

 姉と彼女の間に割り込んだ私が提案したのは鬼殺の隊士としての素質を見るという建前の木刀を用いての一対一の決闘であった。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。