鬼の居る世界で 【雲柱】八雲結   作:sirius

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文字が少なくて申し訳無い。

土日にはしっかりした量を投稿出来ると思います。

ルビ等学んでしっかりとした文章を投稿出来るよう努力していきます。




第05話 前夜

 

 

 決闘は後日行われることになった。

 

 人の口に戸は建てられない。

 

 決闘は瞬く間に胡蝶屋敷全体に広まり、一時慌ただしい空気になったが館の主である姉の一言でぴたりと治まった。

 

 見物する事は勿論結果について詮索する事も禁止。不満をいう隊士は一人も居ない、此処の者はその辺りは弁えている。それに理解しているのだ、柱である姉の強さ、その偉大さを。若くして柱に昇り詰めたその力量は伊達じゃない。水の呼吸の流派である花の呼吸を極め、多くの鬼を討ってきた実績は他の柱にも負けておらず、こうして鬼の被害者、怪我人を受け持つ胡蝶敷を築いた功績は歴代の柱の中でも上位に位置するだろう。

 

 私はそんな姉を誇りに思うと同時に心配でもあった。

 

 姉は人一倍お人好しで心優しい。憎むべき鬼を哀れみ、殉職した隊士一人一人に対して涙を流す。人としては魅力的だが鬼殺隊としては致命的だ。

 

 だから私はそんな姉を補助する為にも同様の力を付けなくてはならなかった。無理を言って柱である姉の継子となり、私もまた花の呼吸を極める為修練に勤しんでいる。まだ鬼の頚を断つまでには至っていないがそれは練度が足りないから。

 

 もっと鍛えなければ…。

 

 姉は私の憧れであり目標だ。いつか肩を並べれるべく今宵も鍛練を行う。

 

 そんな時姉から呼び出しが掛かった。

 

 あの時姉は最後まで彼女と私の決闘に難色を示した。

 

 珍しく意思を曲げない姉に私は思う所もあったが機会を得たかった彼女もこれに賛成した為、なし崩し的に決まった。姉は同じ境遇である彼女に同情して止めたかったのだろうか、私が加減を知らず彼女を傷つけてしまうと思ったのだろうか。

 

 確かに呼吸を使う者と一般人には天と地程の差がある。だが決闘で彼女に呼吸を使うつもりは毛頭無い、第一今まで刀を振るってきた経験が、覚悟がまず違う。ある程度打ち合えばどんなに刀の素人だろうと理解する。自分では勝てないと。だから私は彼女にある程度刀を振るわせ技量で分からせるつもりでいた。

 

 自分は鬼と闘うべく決意したが力が無かったと。

 

 鬼殺隊の世界は別格だと。

 

 それを突き付ければ彼女は諦める。そしてそれは免罪符になる。彼女は自分を責める事も後悔する事も無く、地獄を見る事は無い。

 

 「胡蝶しのぶ入ります。」

 

 許可を得て姉の部屋に入室する。

 

 どうやら書き物をしていたらしい姉は筆を止め私に座る様に促した。

 

 薄暗い部屋の中を蝋燭の小さな灯りが照らしてる。部屋は蝋燭の炎に合わせゆらゆらとその形を変えていた。

 

 「鬼殺隊胡蝶しのぶ。此度は貴方に話があり、この場に来て頂きました。」

 

 普段は聞かない姉の自分に対しての口調に一瞬どきりとする。

 

姉 は私生活において私を呼ぶ時は名前で呼ぶ、それは決して今の様な冷淡な口調では無いし、正規の手続きも使わない。こうして改め、名の全てを呼ぶ時は特別な場合しかない。

 

 つまり、花柱胡蝶カナエとして一鬼殺隊士である胡蝶しのぶへ話す場合だ。

 

 返事をして頭を垂れる。こちらも一隊士として柱への畏敬を忘れる事はない。

 

 やはり、昼間の事で問題があったのであろうか。そう考える私に柱である姉はゆっくりと語り出した。

 

 「八雲結。彼女が一体どういう経緯で来たか知っていますか?」

 

 内容は予想通り彼女に関してのもの。だが少し様子が変だ。顔を上げると蝋燭に照らされる姉の顔が視界に入る。その顔色には幾つもの感情が隠れている様な気がした。

 

 「家族共々鬼に襲われ瀕死の所を花柱様の部隊が助けたと存じております。」

 

 話は彼女の入院当初に隊士の間で広まっていた。この認識で間違いないはず。姉はその言葉を聞いた後数秒考え、歯切れ悪く話し始めた。

 

 「これは私の部下のごく一部しか知らない事です。最早貴方も無関係では無い。伝えるべきだと判断しました。」

 

 疑問が深まる。一介の柱である姉が箝口令を敷く程の問題を彼女は抱えているとでも言うのだろか。胸がざわりとする。

 

 「貴方は勘違いをしている。実際には彼女の…八雲結の救出に私達は間に合わなかったのです。報告を受け私達がその家族の元に駆けつけた時には既に多くの時間が流れていました。」

 

 良くある話だ。鬼殺隊になってからそんな気の滅入る話を散々と耳にしてきた。

 

 「家には夥しい量の血痕のみが残されていてその血の乾き具合から誰もが生存は絶望的だと感じました。そんな時、隊士の一人が森から何者かが争う音を聞いたのです。日が差し始める中私達が見たものは闘いの痕が残る地で大木の下動く事もできず、日の光で消滅していく鬼と決して軽く無い傷を負い倒れている彼女の姿でした。」

 

 一瞬姉が何を言ってるのか分からなかった。

 

 「ッ…ありえない!!まさか呼吸を?いえ、他に鬼殺隊が居たとか。それにしても一体何故?」

 

 姉に制され、自分が興奮していた事に気付く。だがそれも仕方が無い事だ。強靭な肉体を持つ男性ならいざ知らず、自分と同年齢…しかも何の闘いの心得も無い娘が鬼と対峙して生き残った等到底信じれる話では無い。それに…

 

 「呼吸を使う者なら普段の呼吸にもその片鱗が見られます。この入院期間の間彼女にそれは確認出来なかった。掌も見ましたが刀を振るう者の手ではありませんでした。鬼が日の出前に行動する事はあり得ない、彼らはいつの時も夜の闇が深い丑三つ時での行動が主となる。それはつまり…」

 

 「…その時間から夜明けまでの間、彼女は鬼と闘う手段も武器も無い中一人で渡り合い、勝利したとでも?」

 

 姉は私に目線を合わせ、こくりと頷いた。

 

 「それだけでは無いのです。彼女は入院当初一週間の絶対安静、完治まで数ヶ月の傷を負っていました。彼女が何日で動ける様になったか知っていますか?五日ですよ。一週間で傷は無くなりました。それはもう傷痕も無く綺麗な肌でしたよ。」

 

 …まさか鬼では?という意見を引っ込める。あり得ない。彼女は日の元で普通に歩いている。

 

 だが彼女に関してあり得ない事が立て続けに起こっている。どうみても普通じゃない。

 

 「こうして御館様へ報告の為、書をしたためているのですが如何せん事が事ですのでどうすれば良いか悩んでいるのです。」

 

 姉の悩みは最もだろう。そう考えると昼間の姉の判断も納得がいった。計り兼ねていたのだ、彼女の力量、その得体知れなさを。

 

 「貴方が嫌われ役を買って出て、彼女に引導を渡そうとしてくれた事には感謝しています。しかし、明日の決闘は何が起こるか分かりません。くれぐれも気を抜く事が無いように、場合によっては呼吸を使う事を柱として許可をします。逆に言えばこれは彼女の正体を知る良い機会。少しでも彼女を喰らい尽かせその全てを晒して欲しい。」

 

 「分かりました…。気をつけます。」

 

 それから少しの話を交え私は部屋を後にした。縁側を自室に向けて歩いていると空に月が見える。それは下弦の月を越えて二十六夜へと近付いていた。月の面積は小さく夜は深い、それは凡そ一月前のあの日の同じだったのだろう。

 

 話の内容は私の想像を大きく越えていた。八雲結、彼女は何者なのだろうか?

 

 明日になれば分かる事。その秘密白日の元に晒してくれよう。私の力、技量を持ってして。

 

 全ては明日、決闘の場にて明かされる…

 

 

 握った拳は自分でも気付かない程固く。力強いものだった。

 

 

 

 

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