鬼の居る世界で 【雲柱】八雲結   作:sirius

6 / 24
第06話 決着

 

 

 蝶屋敷。此処に来てもうすぐ一月になる。

 

 当初この世界に来てから直ぐの入院に心を重くしたが与えられた力の影響なのか数ヶ月と言われていた傷は瞬く間に治り一週間で日常生活を送る事が出来る様になった。

 

 今は病室から離れ蝶屋敷の一室を貸りて生活させて頂いている。金銭面で心配したが鬼の被害者という事で鬼殺隊の予算から賄って貰えるらしい。鬼を刈る事で今まで助けた者、多くの地主からの協力の上現在の基盤があるとの事。

 

 鬼殺隊。鍛えた技術を持って作られた鬼を滅ぼす刀「日輪刀」を振るい、生身で鬼と渡り合う者達。総勢数百名。

 

 以前の世界で無かったそれは鬼と闘う為、この世界の人が結束した結果と言える。鬼の数は未知数でこの鬼の殲滅を鬼殺隊は目標とする。

 

 自分を助けてくれたカナエさんも鬼殺隊でしかもその中でも柱という重要な役職を任命されているらしい。聞いた話、何でも鬼の被害者の為にその権力を使いこの屋敷を建てたとか。優しい、綺麗、人徳もある完璧超人だ。

 

 だから事後処理として件の件を聴かれた時には本当に焦ったし嘘を吐くのは辛かった。「天使から力を貰って」とか「実は中の人は二人」何て事は口が裂けても言えなかった。言ったら確実にヤバい人だと思われる。

 

 「鬼の動きが鈍くて何とか回避に専念してたら鬼の空振りが木を倒して自らその下敷きになった」なんて今考えても苦し過ぎる言い訳だ。

 

 おまけに傷の治りが予想以上に早くてそれに関してもカナエさんの疑心を深める事になった。「昔からの体質で」と言ったけど絶対良く思われて無い。寧ろ疑われてる気すらする。

 

 なので今現在命の恩人で尊敬している彼女に関わりたくもその境遇故、距離を開かなくてはならないと言う状況になっていた。

 

 身体の変化に関しては入院してから二週間程で大体自分達がどうなっているか確かめることが出来た。

 

 まず精神に関しては二人、前の世界から来た男の自分と元からこの世界にいた彼女がこの身体に宿っている。記憶に関しては干渉した結果か互いの事を何となく理解してる状態。身体を動かす、話すと言った肉体の主導権はどちらでも握る事ができ二人で話し合いその都度決めている。

 

 感情とかの表面的なものは相方に伝わるらしいが詳しい意志疎通は頭の中の会話で行う必要がある。大体こんな感じ。生理的に必要な行動や風呂等は彼女が主体で行っているが意識的に男の自分が切れないと間接的に見る羽目になるので最早意味無い、少なからず自分も行っていてもう慣れてきた。彼女は「プライバシーが!わー!!」とか散々頭の中で喚いていたがここ最近は悟ったらしく乾いた笑いを浮かべ大人しくなっていた。

 

 肉体に関してはまだまだ不明な点が多い。視力は高い。夜目が効く、傷の治りは早く、力は強い。分かると言えばこれくらいで力に関しても人目に着くのであからさまな事は出来ないでいいる、日常生活で箸とかは普通に持てるので加減の程度は問題無さそうではある。

 

 後考えるべき事は今後の事だろうか。

 

 二週間経った日、外出を許された自分達は彼女の家へと足を運んだ。家の中は事後処理により血痕は落ちていたが以前の生活跡がそのまま残っていた。しかし、此処で生活を送っていた家族の姿は何処にも無い。

 

 彼女は家に火を放ち、嘗ての生活に別れを告げた。燃える家を見つめ涙を流した後、鬼殺隊が作った両親の墓に花を添え、祈りを捧げる。実際墓の中に両親は埋まっていない、しかしその深い祈りは確実に両親届いていると自分は思った。

 

 その後何も話す事無く向かえた朝。彼女は自分に対し、鬼殺隊の道に進みたい旨を伝えた。

 

 その考えは以前からあった。聞いた所、蝶屋敷に来た孤児は幾つか選択支があり、独り立ちするまでお世話になる場合、此処で看護婦として鬼殺隊の援助をする場合。そして鬼殺隊士を目指す道がある。天使と交わした約束と人に害をなす鬼を滅する為に自分は入隊を考えたがこれは彼女の問題でもある為話題を切り出せずにいた。

 

 「私の様な犠牲者が僅かでも少なくなれば良い。」

 

 幸いにもその為の力やサポートしてくれる人はいるしね。と彼女ははにかみながら言った。

 

 蝶屋敷に来て一ヶ月後、鬼殺隊を目指したいと言う自分の話をカナエさんに止められる。事件での自分に対しての疑問もあるだろうがカナエさんからは純粋に心配の色が勝っている様に思えた。

 

 「私と妹のしのぶも幼い時両親を殺された身なのです。」

 

 カナエさんからは先に進む為には間違っていてもこの道を選ばずを得なかった経緯、その苦労、辛さ。鬼殺隊の実情、その死亡率の高さ等柱としての経験を踏まえ言い聞かせる様に話してくれた。

 

 彼女は本当に優しい人だ。自分の事を親身になって考え、彼女の様な後悔ある道を歩ませない様としてくれる。

 

 だが自分は、自分達は一歩も引くわけにはいかない。

 

 気付いてしまったからだ。この世界での鬼と言う存在、その危険性、沢山の人々を殺め、運良く生き残った人も一生をその悲しみを抱えて歩く現実。そしてその為の力を、宿命を自分達は持っている。

 

 柱である彼女の許可を得なければ鬼殺隊への道は無いだろう。自分で用いるあらゆる手段を講じ言葉で、目で、態度で彼女に訴えかける。

 

 そんな時彼女の妹であるしのぶさんから示された条件、素質を見定める為と言う名目の決闘は渡りに船だった。二人からの頼みを受けカナエさんはし一呼吸着いた後、渋々と言った様子で承諾してくれた。

 

 決闘は明日行われる。

 

 

 決闘内容はその場でカナエさんから示された。場所は蝶屋敷の中庭、双方が木刀を持って立ち会い、人体の急所や、過度な怪我を与える行為の禁止と言ったものを伝えられた。

 

 (決闘なんてどうしたら…。私刀なんて握った事無い。)

 

 それはこちらも同じだ。第一自分の世界だって昔ならまだしも現代に刀なんてそうそうある物じゃない。良くて竹刀くらいだ。

 

 力は問題無いと思うが剣技に関してこっちは素人に過ぎない。相手は鬼殺隊の柱であるカナエさんの妹である胡蝶しのぶさん、聞いた所によると継子と言って柱の弟子で直々に指導を受けているらしい。

 

 だから確実に技能は相手が上だ。見様見真似でどうにかなるとは思えない。だがしのぶさんが居なければこうして試される機会すら貰えなかったのだ。何か策を練って認められる必要がある。素質を見る試験だ、必ずしも勝つ必要は無い。自分の有用性、将来の可能性を見せれば良い。その為にも自分も持つ全ての手札を切る。

 

 (とりあえずまだ時間はある。素振りでもしながら考えるか…。)

 

 中庭にて精神を入れ替え、互いに素振りを行う。いまいち刀を扱うのでは無く振り回してる感は否めないが二時間程行えばそれなりにマシになっている気がした。

 

 (こう横なぎで振ればこうくるから…こう返して)

 

 (いや、違うんじゃね?意外と鍔迫り合いながらも…)

 

 ……。

 

 (走りながら振るうってのはどうかな?脚力もそれなりにあるだろうし早いかも…?)

 

 (正面から?鬼相手にしてるしのぶさんからすれば良い的かも知れないんじゃね?)

 

 だー!分からん!!

 

 そもそも刀を扱う人の動きを予想するのが間違ってるんだ。読み合いに持ち込んで勝てる訳無い。自分の事で精一杯だ。

 

 (自分の事で…。あー。確かに。うん、良い事思いついたかも知れない。)

 

 (え、こんなので?…本当か?)

 

 彼女の発言は単純明解。確かに相手の事は考えず自分の事だけ考えれば良いものだった。

 

 それは数手ほど自分の中で考えた効果的な技を相手のタイミングを無視し、できる最速の早さで突き付ける至極単純なもの。

 

 (あー。確かに相手の事をあれこれ考えるよりこの方が効果的だと思うな。自分らしいし)

 

 (はっはっはー。そうでしょ?)

 

 

 

 

 答えは簡単。身体能力に任せた力押しである。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 「それでは始めます。双方、礼。」

 

 姉の合図にて相互に礼を行う。

 

 昨日の姉との会話が頭を過る。八雲結、鬼を素手で一晩相手にし続け勝利した少女。修練用の袴を身に纏い、髪を後に束ねる今の姿からは想像もつかない。その境遇には同情するものがあるがそれは私胡蝶しのぶが手を抜く理由にはならなかった。

 

 彼女は得体が知れない。その秘密を晒さねば、そして一定以上の実力を示させなければいけない。いくら両親を殺されたとしてもそんな不確定要素を鬼殺隊は受け入れない。

 

 (さて、どう出るのかしら?)

 

 姉の手が挙がる。これが下がる事が決闘の始まりの合図だった。

 

 手を抜くか、それとも上手く技量を調整するのか、はたまた生き残ったのは偶然で只の気持ちだけの少女か。どれも先は無い。打ち合う私が、見届ける姉がそんな真似を許さない。

 

 一合打ち合えば直ぐに決闘は止められ、彼女の鬼殺隊への道は閉ざされる。当分は監視下に置かれるだろうがそれも数年だ。その後はどうにでもすれば良い。

 

 緊張を解き、木刀を構える。身体の無駄な力を抜き、一見脱力とも見えるそれはどんな状況でも反応出来る様にする為の手段。

 

 油断は無い、筈だった。

 

 (疾いッ!!!!!)

 

 「始め!」と同時に振り下ろされた手。その瞬間見えたものは鋭い踏み込みと共に正面に構えた木刀に向かって横薙ぎに振るう彼女の姿。背後には砂埃を残し、足元は急激な踏み込みにより地面が捲れ上がっていた。

 

 直ぐ様木刀の剣筋を見極め、受け流そうと木刀を構える。瞬間、木刀を構えていた腕全体に強烈な衝撃が走った。

 

 (ッッ痛!!)

 

 次の瞬間自分の足が宙を浮いている事に気付き愕然とする。確かに私は受け流し易い角度で受けた筈だ。まさかそれ程までの力だと言うのか。横目で見たのは驚く姉の姿。

 

 「くぅッッ!!」

 

 姉に恥ずかしい姿を見せられない。直ぐに宙で身体を立て直す。両手は先程の衝撃で痺れているが辛うじて構える事が出来ていた。勝負はまだ続いている。見ると追撃をかけようと自身に向かって木刀を振るう彼女があった。

 

 花の呼吸 陸の型 渦桃

 

 咄嗟に呼吸を使い、空中で斬撃を放つ。飛び退き、追撃を止めた彼女だがまた直ぐに斬かかってくる。しのぶはそれを少々早計に感じた。

 

 自身に振るわれる三撃、もはや木刀で受ける事は無理と判断し回避に専念する。刀を後に携え回避、彼女の攻撃が空を斬る。

 

 (先程よりも遅い?なら…)

 

 反撃に出ようと木刀を正面に構え直す。瞬間、勢いを取り戻した剣筋が振るわれ、しのぶは焦るが何とかこれをしゃがむ事で避ける。

 

 (随分粗がある…。刀は早く重いけど剣筋は素人、勝負を焦ろうとした理由はこれかしら。)

 

 回避しながらも彼女の攻撃の調子を読む、それは修練にて体得した自身の得意分野であった。一撃、二撃と躱すつれその精度は上がっていく。

 

 「くそッッ!!」

 

 今度は彼女が呻く。見ると息は切らしてないものの、表情を苦くした彼女の姿があった。

 

 (…これならば勝てる!)

 

 しかし、その瞬間踏み出した彼女の斬撃の調子が変わる。今までものとは違う構え、早さで放たれた一撃は肩を掠め私に少なく無い痛みを与えた。

 

 「ッッ!!」

 「あ…!ごめんなさい!!」

 

 彼女が一瞬たじろぎ謝る。まさか謝ると思って無かった私はその言葉に意表を付かれ気が抜けてしまう。

 

 「そこまで!両者後へ!!」

 

 

 そこに姉の終了の号令がかかり決闘は終了した。

 

 

 決闘は私の思っても無かった結果で進み、予想だにしない結末で終わったのであった。

 

 

 

 




コソコソ話的な何か

結の身体能力は通常時で禰豆子+αくらい

回復力は鬼よりも人間に近め。欠損の回復は無し


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。