ストライクウィッチーズ~約束の空~   作:カメクリオ

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第十六輪 マジックタイム、ショータイム

ソーマ…いや風の魔法使いウィザードへと長槍を持った小鬼型ネウロイが大挙して押し寄せる。

ウィザードは蹴りやウィザーソードガンで襲いかかる攻撃を払い、逆に斬撃を浴びせていく。

 

「はぁ!」

 

剣戟の最中砂を蹴って、飛び蹴りを決めるウィザード。背中から倒れた一体のネウロイを尻目に風の力で浮遊し、滑空し、ウィザーソードガンを振り回しながらネウロイの集団に突っ込む。

すれ違いざまに切り刻まれるネウロイ。

空に浮かび上がったウィザードは空中で指輪を付け替える。

 

『ランド、プリーズ!ドッドッド、ドッドドン!』

 

「はっ、いやぁ!」

 

土を操る黄色の姿ランドスタイルへと変化し、着地したウィザードは近場のネウロイに肘打ちを決め、後頭部に手刀を叩き付ける。

別方向から突き出された長槍を蹴り上げると、身体を捻って跳躍。上げた蹴りをそのネウロイの横っ面に食らわせ昏倒させた彼は土砂を転がって立ち上がり、近場のネウロイをウィザーソードガンで斬りつける。

 

「すごい、ソーマさん。一人であれだけのネウロイを相手にしてるのに一回も攻撃を受けてない」

 

「まるで踊ってるみたい」

 

敵の攻撃をかわしたと思えば次の瞬間には攻撃に転じ、また攻撃をかわす。

動きを止めず、時に緩急をつけ、あらゆる不可思議の力を使うその様はまさに演舞のよう。

宮藤とリーネにはその戦いぶりが鮮やかに映った。

一方でケンタウロスネウロイに銃撃を仕掛けながらウィザードの戦いに目を配っていたミーナは目を細めた

 

(この反応、ネウロイじゃない。でも何かいる…)

 

 

自身の空間把握能力の索敵範囲内に一つの反応があることに気付いた。

敵かと一瞬、緊張が走ったがしたがいつも感じるネウロイの反応とは違う。

 

(あれは…鳥?でもあれは)

 

反応のある方角見ればそこには赤と銀の鳥。大きさは掌に収まるようなほど

それだけなら何も気にすることはなかっただろうが、その鳥は少々普通の鳥とは違っていた。

羽根を手の代わりにして、羽根と脚でカメラを持っており、しかもそのレンズの先はウィザードに向けられていた。

 

『バインド、プリーズ!』

 

そんな彼女が視線を外したウィザードの状況はというと…土の鎖で残るネウロイを拘束し、赤い指輪を取り出していた。

 

「せっかくだ。どうせなら派手に決めるか」

 

『フレイム、プリーズ!ヒーヒー、ヒーヒーヒー!』

 

『コピー、プリーズ!』

 

続けて変身するは赤き火の姿、フレイムスタイル。変身と同時にウィザーソードガンをガンモードに変形させた彼は更にコピーの魔法を連続使用。四人にまで分身し、魔力の蓄積された銃の先を土の鎖に縛られた集団に向ける。

 

『『フレイム!シューティングストライク!』』

 

重複する陽気な機械音声。一秒も狂いなく全く同じタイミングで銃から飛び出した四つの火の塊がネウロイを覆い、その身体を一片残らず燃やし尽くす。

 

「よし、これで後は」

 

取り巻きを掃討したことで残るはケンタウロスネウロイのみ。このまま波に乗りたいウィザードはフレイムウィザードリングを外し青い指輪を付けながら後ろを、ケンタウロスネウロイのいる方向へと振り返る。

 

『ウォーター、プリーズ!スィースィー、スィースィースィー!』

 

風・土・火、と来て最後の一つ…あらゆる生命の源とされる水の力を宿したウォータースタイルに変身するとウィザードはバルクホルンやハルトマン、ペリーヌが戦っているケンタウロスネウロイ目掛けて走り出す。

 

「後は俺に任せてくれ!」

 

「任せろって、えっ、ちょっと!?」

 

『ウォーター!スラッシュ、ストライク!』

 

ペリーヌの戸惑いに構わずウィザードは味方の銃弾が駆け巡る中、水を纏わせたウィザーソードガンを手に高く飛びあがり、ケンタウロスネウロイの胴を切り裂く。

切れ味鋭い水流の刃がネウロイの体を削るが、致命傷には至らず欠けた部位はすぐ再生されてしまう。

それどころかウィザードの背中に向けてケンタウロスネウロイは弓を射ろうとしていた。

 

「攻撃が来るよ!よけて!」

 

「いかん、あのままでは!」

 

ハルトマンが警告として叫ぶ。

空中で身動きの取れないウォータースタイルでは回避行動はできず、攻撃をまともに受けてしまう。

そう危惧したバルクホルンはハルトマンが声を上げて間もなく、ストライカーを吹かしてウィザードに手を伸ばそうとするが、全速のストライカーでも手を掴めそうにない。

だがウィザードはそれを予測していたのか迷いなく腰のホルダーから一つに手を伸ばして、ベルトに翳す。

 

『リキッド、プリーズ!』

 

その魔法が発動した瞬間ウィザードの身体は液状へと変質する。矢の形を為したビームに貫かれるが、液体は何事もなかったかのように元の状態へと戻る。

思いがけぬ手段で攻撃をすり抜けたウィザードにハルトマンを始め誰もが度肝を抜かれる。

 

「あんな避け方あるんだ…」

 

しかしそれに構うことなくハリケーンスタイルに再度変身するウィザードは空高く上昇。決着をつけようとする。

 

「こいつでフィナーレだ」

 

『チョーイイネ!キックストライク、サイコー!』

 

風を纏った魔力が右脚に一点集中する。ウィザードは右脚をつき出してケンタウロスネウロイへと向かっていった。

 

「いやあああああ!!」

 

風の流星となったウィザードは胴を、その奥深くに潜んでいたコアを穿つ。活動の根源となるコアを破壊されたケンタウロスネウロイは爆発した。

 

「今度こそやったようだな」

 

「ほとんど一人で倒しちゃったよ」

 

黒い個体が根こそぎ姿を見えなくなったのを確認してひとまず肩を降ろすバルクホルンだったが、ハルトマンの呟いた言葉に砂漠に立つウィザードに視線を移す。

 

「やりましたねソーマさん」

 

「お疲れさん宮藤リーネ、二人とも怪我はないか?」

 

「はい、どこにも怪我はありません。ソーマさんこそ大丈夫ですか?さっきの」

 

「平気だよ、この通り。それよりさっきは助けてくれてありがとうな宮藤」

 

彼女が視線を向ける先には宮藤とソーマ、そしてリーネ。三人はそれぞれ先の戦いにおける活躍を称え、身体を気遣い合っていた。

その様子はミーナも見ていた。

だが空から見下ろす形で見ていた彼女は地上へとふと目を配らせた時、その瞳が大きく見開いた

 

(この場所は…)

 

砂に埋もれた建物だったものの残骸、壊れ果てた車、その光景の正体を悟った時ミーナは引かれるように距離を縮めていった。

 

(そうか、ここはパ・ド・カレーか)

 

そんなミーナの行動を唯一目で追っていた坂本はその理由に気付いた。

地上に足を付けたミーナはある車の前で止まった

それは記憶に深く刻み込まれた車と瓜二つだった。

まさかと思い、微かな期待と不安の間で揺れ動きながらもミーナは車のドアを開け

 

「…これって!」

 

彼女は大きく目を見開いた。

 

 

茜色に染まるブリタニア基地に音が流れていた。その音の発生源、基地のある一室でストライクウィッチーズの面々は皆音に耳を傾け、心を癒されていた。

 

赤いドレスを着てマイクの前で立つはミーナ。彼女の発する美しい歌声は通信機を通じてこの基地の周辺に届いている。

 

(クルト…)

 

ミーナが身に纏っているドレス。これは昼間の発見した車の中に袋に包まれていたものだった。

それを見た時ミーナはすぐある可能性に気付いた。クルトが、亡き恋人が自分に残してくれたのだと

 

「ミーナ中佐の歌綺麗だね、芳佳ちゃん」

 

「うん、とても気持ちいいしなんだか心を綺麗な水で洗われてるみたい」

 

そんなミーナを尊敬の眼差しで見る宮藤にエイラは背後から両頬を摘まんで引っ張り、からかいの混ざった不満の声を上げる。

 

「おい、サーニャにはなんかないのかよ」

 

「もひろんしゃーにゃちゃんも」

 

音を出していたのはミーナだけではない。彼女の歌に合わせてサーニャがピアノを演奏し、音色を出しているのだ。

彼女の奏でる旋律とミーナの歌声に心地よさを感じながらソーマは一人壁にもたれかかっていた。

 

 

 

清らかなメロディーが広まった夕暮れ時から一点、基地は静寂に静まり返った。

そんな夜、月明かりの差し込む部屋にドアを開けて入り込む影があった。

 

後ろ手にドアを閉めた影は明かりもつけず月明かりだけを頼りに机の前まで移動する。その足に微塵も淀みはない。

机にカメラを置き、引き出しを開けると数枚の写真をその中に仕舞おうとした時独りでに部屋に明かりが灯った。

 

驚愕に表情を染め上げ、息が止まる影。素早く、しかし内心恐る恐る向けた視線が第一に捉えたのは流れるような赤い髪と灰色のオオカミの耳。

 

「こんな夜遅くにどこに行っていたのかしらスペランツァ大尉」

 

電源スイッチに手を添えたミーナが問いかける。どうして彼女がここに、という驚きをどうにか表情に出さぬよう抑えつつソーマは問いに答える。

 

「昼間の戦闘で張り切りすぎたせいかなかなか寝付けなくてね。ちょっと散歩がてら外の空気を吸いに」

 

「散歩…そう、それにしては随分遠くまで出かけたものね。パ・ド・カレーまで行くなんて」

 

ミーナが目を落とした先には彼の靴。その先には大量の真新しい砂が付着していた。

そのことを追求されたソーマは表情に大きな変化は出さなかったが、微かに眉が動いた。

 

「昼間の戦闘ので赤い鳥を見たわ。その鳥が持っていたカメラを貴方が持ってる。あの鳥は貴方のものね」

 

「鳥がカメラを?何かの間違いじゃないのか?」

 

「話してもらえるかしら。貴方は一体何をしようとしているの」

 

そんな話があるわけないと言うかのように苦笑するソーマの言葉をミーナは速攻で一蹴する。

 

ソーマを真っ直ぐ見据えるミーナの瞳。

今彼の前にいる彼女は年長者のお姉さんとしての顔ではなく、軍人として隊長としての側面が強く表れている。

 

「悪いけどミーナ中佐…」

 

緊迫した空気が漂う中で麗しいとさえ思えるその美貌を見つめ返しながらソーマは右手を机の裏側に伸ばす。そして

 

「あんたがそれを知ることはこの先ないよ」

 

彼は机の裏に張り付けていたロマーニャ製の銃をミーナに向けた。

 

 

 

 

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