こりゃあ新作アニメとユナフロで執筆欲を高めてブーストするしかねぇ!と考えていますが果たして上手くいくだろうか
(どうしてこんなことになっちゃったんだろう…)
晴れ渡るブリタニアの青空の下、ストライカーユニットを身に着け飛ぶ宮藤。
彼女はその手に握られた実弾銃と少し先を行くペリーヌに目を配りながら、ここに至るまでの経緯を思い起こした。
事の始まりは浴場の更衣室でのこと。リーネやシャーリーたちよりも先に浴場を出て軍服に着替えようとした宮藤にペリーヌはこんなことを言いだした。
「宮藤さん、さっきのはなんですの?」
「へ?」
「さっきの左捻り込みですわ!あれは坂本少佐の技ですわ。あんな大技一体どこで身につけたんですの?」
ペリーヌが言及してきたのはシャーリーとルッキーニとの模擬戦で宮藤がルッキーニに背後を取られた時、彼女が魅せた動きだった。
ルッキーニに背中を取られた宮藤は左捻り込みであっという間に逆に背後を取り、ルッキーニとシャーリーのストライカーにペイント弾を直撃させ、勝利したのだ。
だがその際宮藤の行った行動は坂本の得意とする動きであり、それをまんまこなしてみせた宮藤にペリーヌは腑に落ちない思いを抱いていた。
故に二人きりとなったタイミングで問いつめたのだ。
「あれは坂本さんの動きを見ていたから…」
「嘘おっしゃい!見よう見まねでできるはずありませんわ!そもそも貴方は坂本少佐に対して馴れ馴れしくし過ぎですわ。なんてうらやま…じゃなくて」
「そんなこと言われても坂本さんとは同郷だし、色々お世話になってるし」
「坂本少佐と呼びなさい!」
といってもペリーヌのそんな思いなど知らぬ宮藤は困惑しながらも言葉を返す。
宮藤としては何気なく悪意のない返答であったがそれすらもペリーヌの気に障った。
「宮藤さん、貴方に決闘を申し込みますわ」
「決闘?えっ、ええええっ!?」
そんな背景があって宮藤はペリーヌと模擬戦を行うことになったのだが、今となっては気迫に押されるがまま断り切れなかったその時の自分を後悔していた。
握り締めた銃の触感が尚更その後悔を強くさせる。
まさか実弾を用いるとは思わなかった。
恰好だけとペリーヌから言われたが、人を傷つけるを危険伴う道具を持っているとなるとどうしても宮藤は緊張が収まらない。
(安全装置は大丈夫…だけど)
もし万が一のことがあったら、そう思うと宮藤は不安でたまらなかった。
『宮藤さん聞こえていますの?十秒以上後ろを取った方の勝ち、それならいいでしょう?』
そんな宮藤の思考をかき消すようにしてインカムからペリーヌの声が聞こえてくる。
インカムを通じて届く彼女の声に乱れはない。あちらは完全にやる気のようだ。
(こんなことに何の意味があるんだろう)
★
そんな私闘が別の場所で行われているなどとはこれっぽちも思いもしないバルクホルンとソーマは病院から帰ってくるなり、執務室を訊ねた。
要件はもちろん手紙のことだ。
「悪いが勝手に中身を見せてもらった。『深入りは禁物。これ以上知り過ぎるな』これは一体どういうことだ」
バルクホルンが執務室の机に問題の手紙を置いて坂本とミーナの二人に問う。
「やましいことは何もしていない」
「私たちはネウロイについて調べているだけよ」
「それで何故こんなものが届く?」
「これを送ってきた人間に心当たりはないのか?」
バルクホルンとソーマが立て続けに質問を投げる。
「ありすぎて困るぐらいだ」
「私たちウィッチを疎ましく思う人間は多いもの」
ウィッチの存在はネウロイと戦う上でなくてはならない貴重な存在。しかしそれ故に彼女たちへ好ましくない感情を向ける者も決して少ないとは言えない。
この件もそういった輩によるものだろうと、坂本とミーナは睨んでいた。
「だがこんな品のないことをする人間に一人覚えがある」
「誰?」
「トレヴァー・マロニー、空軍大師さ」
ソーマの問いかけに坂本はほとんど確信しているかのように力強く呟いた。
「おそらく奴はこの戦い何かを既に握っている。私たちはそれに触れたんだろう」
「一体何を…」
「さぁな、しかしこちらに知られては困るものであると見て間違いない。この手紙の文言を見る限りな」
坂本の見解を聞き、送り主の目的を考えるバルクホルン。
そしてソーマは部隊の意向を取り決める中心人物たる二人に意見を求める。
「それで501としてはどうするつもりなんだ?」
「無論ネウロイの調査は続ける。それでまたこのような下品な行いが続くようであればこちらとしても黙って見過ごしておくわけにはいかない。だろ?ミーナ」
「ええ、本来人類同士でいがみ合うなんて馬鹿げたことしたくないのだけど…仕方ないわ、内部にいつ牙を向けてくるかもしれない相手を無視して外からの襲撃に対応する程の余裕も時間もないもの」
いかに上官といえども仲間に危害を加えるようであれば、対抗することも辞さない。
そんな覚悟を坂本とミーナが口にした時、基地内に警報が鳴った。
「この件は一旦後回しだ。いくぞ」
「了解」
坂本とバルクホルンが真っ先に部屋を出る。
ソーマも続こうと扉の前に向かった時、ミーナがその背中に声をかけた。
「スペランツァ大尉…お願いね」
「わかってる。そっちも頼む」
視線だけ向けてミーナの言葉に頷いてそう言うとソーマは先に出た二人の後を追いかけた。
(なんなんだろう…このネウロイ。何がしたいんだろう)
宮藤は困惑の中にいた。
ペリーヌとの模擬戦の最中ネウロイ襲来の報を受けた彼女はペリーヌの制止を振り切って単身先行し、ネウロイと遭遇した。
数は一機、それも小型
これなら自分一人でも問題なく倒せる、目標を捉えた時宮藤はそう思っていたのだが狙いを定めた瞬間に異変は起きた。
なんと宮藤の横に浮遊してきたかと思えばネウロイが動物の耳を頭に生やした人間の少女、ウィッチのような姿に変化したのだ。
この変化は宮藤に衝撃を与え、彼女から一切の動きを暫しの間奪ったが隙だらけとなった瞬間にもネウロイは攻撃を放つことはなかった。
ただ宮藤の横に浮いているだけ、一緒に空を飛んでいるだけの時間が続いていた。
「ねぇ、貴方は何なの?何がしたいの?」
会話が成立するかどうかもわからない相手だが、せめて何か意志表示くらいはしてくれれば…そんな期待を持って宮藤は問いを投げかけた。
「えっ、えっ?」
するとどうだろう、それが通じたのかわからないがネウロイは宮藤の周りを旋回するような飛行行動を取り始めた。
一向にコアから赤い光が放たれることはなく、むしろ宮藤の気を引こうとしようとしているのかネウロイは緩慢な速度で周っている。
「ふふ、あはは」
それがあまりにおかしくて宮藤の口から笑いがこぼれる。そしてすぐそんな自分に気付いて宮藤は驚いた。
(私何で今…相手はネウロイなのに)
敵を前にして笑うなど致命的だ。だがそれでも宮藤から見て目の前のネウロイからは敵意を感じない。
むしろ行動から友愛の感情を感じてさえいた。
自分自身の反応に戸惑う宮藤。戸惑い、疑問を持ちながらも彼女はネウロイと並んで空を飛び続けた。
「宮藤が一人で先に向かっただと!」
「すみません、私も止めたのですが」
ペリーヌからの報告を聞いて坂本が声を上げた。
『宮藤さんがネウロイと接触したのは間違いないわ。でもそこからはサーニャさんにもわからないみたい』
管制塔にいるミーナからの通信が宮藤の元に急行している者たち全員の耳に入る。
「単身で向かうとは無茶を」
「離れるようには言えないのか!?」
宮藤の行動を無茶と評するバルクホルン、坂本はそれに内心同意しつつ、通信を通じてミーナに呼びかける。
「こちらからも通じないわ。ネウロイがジャミングのようなものを仕掛けているのかも」
「無事を祈るしかないか」
「芳佳ちゃん…」
共に宮藤の安否を思うシャーリーとリーネ。
それ以降誰かが言葉を発することのない時間が続いた。そして
「いた!あそこ!」
「隣にいるのは、あれはネウロイか!何故攻撃しない!」
ネウロイと並んで飛行する宮藤を捕捉した。無事でいてくれた事に安堵する一方ですぐ目の前の敵を排除しない宮藤をバルクホルンは不審に思った。
『何をしている宮藤!』
「この声、坂本さん!?」
怒号に近い声で坂本は宮藤に呼びかける。
通信機からいきなり聞こえてきた声に驚いた宮藤は後方を振り向いて彼女と他の隊員たちの存在に気付く。
彼女の驚きを余所に編隊の中から飛び出す坂本。
「坂本少佐!?」
「ソーマさん!?」
ペリーヌが声を上げ、それと同時にウィザードハリケーンスタイルも坂本の後を追うように隊列から抜け出る。
「違うんです坂本さん!このネウロイは!」
「惑わされるな!そいつは人じゃない!」
宮藤が必死な声で訴えるも坂本は聞き入れず、愛用の扶桑刀ではなく銃を手にネウロイへと接近する。
坂本が向ける気迫から彼女を自らに害をもたらす存在と判断したのか人型ネウロイは宮藤から離れると、ネウロイの攻撃手段である赤いビームを放つ。
「くっ!」
迫りくる赤い光を前に坂本はシールドを展開しようとする。
だがネウロイのビームがシールドに接触直前、坂本に追い付こうとしていたウィザードが魔法を発動させた。
「間に合え!」
『エクスチェンジ、プリーズ!』
使用者と使用者の選んだ対象の位置関係を逆転させる魔法。
その効力によって坂本の見ていた景色が瞬き一つの合間に一変した。
「これは!?」
自らを脅かそうとしていた赤い光が目前から消えた。驚愕する坂本。
「ソーマさん!」
「ソーマ!」
そして大きな爆音と悲痛な思いで名前を呼ぶ仲間たちの声が聞こえ、爆音の方を見ると黒い煙の中から落ち行くウィザードが…魔法陣が通過し、変身を解除したソーマの姿が見えた。
それで彼女は理解した。ネウロイの攻撃に晒されていたはずの自分に何が起こったのかを
「私を庇ったのか…なんというバカな真似を!」
困惑に声を震わせる坂本。
エクスチェンジの指輪だった破片と赤・青・黄の三色に輝くリングがソーマと共に重力に従って落ちていく。
「まずいよ!海に落ちちゃう!」
ルッキーニの声に呼応するかのように動きだしたのはシャーリーとハルトマン。
シャーリーは自慢のスピードをもってソーマを抱え、ハルトマンは空中に投げ出された指輪を回収する。
「よかった、呼吸はしてる」
服も体も至るところが傷だらけで焼けているが小さく型が動いている。抱きかかえているシャーリーはホッと胸を撫で下ろしすが、すぐに表情を強張らせる。
「シャーリーさん!ソーマさんは!」
「とりあえずは大丈夫そうだ。でもこのままじゃ危ない。地上に降りるぞ宮藤!」
「は、はい!」
心配と不安の混じった表情で駆け付けた宮藤とシャーリーは近くの島の砂浜に降りて傷の手当を始める。
「ネウロイは!?」
ソーマのことはあの二人に任せておけば平気だろう、とその様子を見ていたバルクホルンは敵前であることを思い出し、思考と視線を切り替える。
だが
「いない?どこに消えた!」
バルクホルンの視界に攻撃者であるネウロイはいなかった。さっきまで攻撃を加えた位置にも自分たちの周辺にも黒き影はなく、青と白が果てしなく広がっているだけだ。
ソーマの負傷に気を取られていた僅かな時間の間に姿を消してしまったのだ。
「逃げられたのか」
「そんな、この僅かな間にどうやって?」
バルクホルンだけでなくペリーヌも悲観の色を込めて呟く。
そこにミーナからの通信が入った。ネウロイの失踪によって妨害電波の影響を受け付けなくなったからだろう。
『皆無事なの?何があったの?』
「ミーナ…ソーマが少佐を庇ってネウロイに撃たれた」
『なんですって!?』
受け答えたバルクホルンは通信越しにミーナが息を飲んでいるように感じた。
『彼は無事なの!?』
「今宮藤が治療にあたっている…ネウロイには逃げられた」
『ネウロイのことはいいわ。すぐに帰還して。そこでは満足な治療はできないわ』
「了解した」
そう応じたバルクホルンは通信を切り、治療が続けられている砂浜に目を向ける。
「大丈夫かなソーマ」
そしてハルトマンも同じく心配そうな眼差しで見守っていた。固く握り締められた掌からは赤と黄の宝石が表面を僅かに覗かせていた。