本当です!本当にその気があるんです信じてください!
…少々前置きが長くなってしまいましたが、本年もよろしくお願いいたします。
ミーナが去った後の医務室
「エクスチェンジの指輪もない…あの時に壊れたのか。結構使い勝手のいい指輪だったんだけどな」
窓から差し込む陽光に照らされたベッドの上で胡坐をかいているソーマが残念そうに呟く。
彼の見下ろす視線の先にはウィザードの各スタイルへの変身するための指輪と戦闘やそれ以外の状況で使用する指輪と彼が持っている全ての指輪が置かれている。
「ん?」
ドアをノックする音に反応してソーマが顔を上げる。
「起きてますか?ソーマさん。私です、宮藤です。入ってもいいですか?」
「宮藤か。いいぞ、入ってきて」
ソーマがそう言うと宮藤が中に入ってくる。中に入ったドアノブを手放しドアを閉まったのを背中越しに音で確認すると、ベッドの側まで歩み寄る。
心配・不安・罪悪感…複数の混濁した感情がありありと顔に出ていた。
「ソーマさん、あの、具合はどうですか?」
「平気だよ。さっきまでぐっすり寝れたし気分もばっちりいい感じだ。宮藤が治療してくれたんだよな、ありがとう」
心配するも宮藤に対しソーマは笑顔で受け答える。安堵させるように向けられたその笑顔を前に宮藤は勢いよく頭を下げた。
「ごめんなさい!」
「どうした?」
「私がしっかりしてなかったせいでソーマさんに怪我を」
「頭上げろよ。俺のことは気にしなくていいから」
「でも」
宮藤が顔を上げる。今にも泣きそうな顔をしている。
「俺が負傷したのが宮藤のせいだったとしても俺の体がここまで回復したのも宮藤のおかげだ。それでもうこの話は終わり、俺のことで気に病むな。これ以上気に病まれたらかえってそっちの方が辛いからさ」
「はい、わかりました」
「ただ一つだけ聞かせてくれ。なんであの時あのネウロイを攻撃しなかったんだ?」
坂本を庇った直前の光景を思い出してソーマが問いかける。宮藤は恐る恐るといった様子で答えを出し絞る。
「わかりあえる気がしたんですネウロイと。あのネウロイは私に近づいても攻撃してこなくて、何か伝えたいことがあったように思えて、いつものネウロイとはどこか違って」
「それで銃を向けなかったってわけか」
確かにソーマの目から見ても人型ネウロイは今まで相対してきたネウロイとは異様な存在に思えた。
坂本に攻撃をしかけたと言っても先に手を出したのは坂本の方であり、それまでは坂本に対しても宮藤に対しても危害を加えるような素振りは見られなかった。
「ネウロイと分かり合う、か」
「やっぱりおかしいですよね。さっきバルクホルンさんにも言われちゃいました。ネウロイと分かり合えるはずがない、お前は違いがわかるほど戦ったのかって」
「それでお前は納得したのか?」
「えっ?」
思いがけないソーマの言葉に宮藤は驚いた顔をする。
「他人の意見も大事だけどどうしても納得できないなら自分の感じたことを正しいと信じて進んだ方がいい。そうした方が案外それが正しいって時もあるからな。たぶん…お前自身はどうなんだ?今何がしたい?」
「私は…」
ソーマに問われて宮藤は俯き、膝の上に置いた両手を見る。
「もう一度確かめたいです。あのネウロイのこと」
「そっか」
顔を上げてはっきりそう口にした宮藤。部屋に入ってきた時とは打って変わって揺るぎない力強さを宿した顔つきにソーマは満足気に微笑んで、ベッドの上からクラーケンの指輪を手に取る。
『クラーケン、プリーズ!』
「うわぁ!?」
指輪から変形し自分の頬の真横に寄って来た黄色いイカに戸惑いの声を上げる宮藤。
「なんですかこれ」
「ウィッチで言うところの使い魔みたいなもんだ。あのネウロイを探すならこいつも一緒に連れてってくれ。ミーナ中佐から聞いた話を考えるにネウロイが俺の指輪、水属性の力を秘めた指輪を持っていった可能性は高い。だったらそいつが役に立つ」
「水の指輪…じゃあもしかしてネウロイは」
「水中を移動できるようになっているはずだ。水中の探索はこいつ、宮藤は空、分担して探すのがいいと思う」
積極的に協力してくれる姿勢を見せてくれるソーマ。
宮藤は宙に漂うクラーケンを花びらを包むように合わせた両手の掌に向かい入れると
「ありがとうございますソーマさん」
礼を告げて医務室を飛び出して行く。
ソーマは宮藤のいた空間に目を向けていた。その姿が見えなくなっても、ドタドタと鳴っていた足音が聞こえなくなっても
「…頼んだぞ宮藤」
★
医務室を出たその足で一直線に格納庫へ赴いた宮藤は迷わずストライカーユニットに足を通した。
一点の曇りのない眼差しで滑走路を見据え、飛び立とうとした時
「芳佳ちゃん!」
他に誰もいないはずの格納庫に響いた声に行動を中断させられた。宮藤がそちらを見るとリーネが不安そうな目で見つめていた。
「リーネちゃん」
「芳佳ちゃん、今度は本当に謹慎だけじゃすまないよ」
「うん、でもそれでも行きたいの。知りたいことがあるから」
謹慎を命じられている中での出撃。しかも仲間が被弾する原因を作った敵との接触のための行動となれば今度こそ只では終わらない。坂本やバルクホルン辺りは言わずもがな、平静さを保っていたミーナもおそらく怒りを見せるに違いない
リーネの心配が杞憂にならないことは軍歴の浅い宮藤でも想像するのは難くなかった。
だが宮藤は引き下がらない。
「どうしても行くんだね」
宮藤の言葉にリーネも覚悟を決めた。
「だったら私も行く!」
「ダメ!…ダメだよリーネちゃん」
「どうして?私じゃ頼りない?」
「そうじゃないの。これは私が決めたことだから私一人でやらないといけないの」
ついていこうとするリーネの申し出を拒む宮藤。彼女と見つめ合うことしばらく、リーネは彼女の意志を尊重することを決めた。
「ごめんね」
「ううん、芳佳ちゃんがそう言うなら私はもう止めないよ。私待ってるから、ちゃんと帰ってきてね」
「リーネちゃん、ありがとう」
罪悪感を込めた笑顔でリーネに言うと宮藤は振り返ってストライカーに魔力を注ぐ。
格納庫の床に浮かぶ魔法陣。
クラーケンを掌に包み込んで宮藤はストライカーで漆黒の空に飛び立つ。
「気を付けてね」
どうかせめて無事であって欲しい。リーネはそう願った。
☆
「宮藤が脱走だと!?」
空に暗がりが満ちて数時間経った夜。宮藤のストライカーがなくなっていることに気づいた整備士の報告を受けたミーナは凛々しい顔つきを強張らせ、坂本を除いたウィッチたちの前で告げた。
「おそらく宮藤さんはネウロイとの接触に向かったのだと思われます。貴方たちにはただちに出撃。宮藤さんの後を追って彼女をつれ戻してもらいます」
「あっちゃ~やってくれたな宮藤の奴」
「謹慎の身であるというのに、なんという真似を」
気楽な調子のシャーリーを余所に愚かなことをと、バルクホルンが呟く。しかし言葉に反して表情から不安と心配が見て取れる。
「連れ戻してその後はどうするんだ?さすがに今度という今度はお咎めなしってわけにはいかないだろ」
「もしかしてウィッチーズ隊を外されちゃうんじゃ」
エイラとサーニャも宮藤の今後を案じてミーナに問う。
謹慎処分を下されている中での無断出撃。しかもその動機が仲間を負傷させた敵とのコンタクトとなればミーナの寛大さと立場をもってしても限界がある。
よくて除隊、最悪は…
「司令部からは宮藤さんの撃墜許可が降りています」
「撃墜!?」
想像よりもはるかに深刻な命令にバルクホルンは思わず椅子から腰を上げる。
「それを避けるためにも宮藤さんを一刻早く連れ戻さなくてはならないわ。皆、すぐに出撃の準備を」
★
バルクホルンたちが宮藤の脱走を知らされている頃、ソーマのいる医務室を訪れる者が一人。
「私だ。入るぞ」
その客人、坂本はドアをノックしてソーマからの返事を待たずに部屋へと入ってくる。
入って来た坂本にソーマは目を向ける。
彼女の表情はいつも通りに見えるが、微かに違いがある。
どこがどう違うのか、それを言葉にして上手く言い表すことはできないが何故そんな顔をしているのかという理由に関してはすぐにわかった。
「本来であればまず謝罪をせねばばらないところだがそれよりも確認したいことがある」
「確認?」
何を?とソーマが訊ねようと口を開こうとする。が、それよりも早く坂本は二の句を告げた。
「宮藤が脱走した。焚き付けたのはお前だな」
咎めるように細められた坂本の目付きが突き刺さる。
それに対してソーマは目を反らす。
「その方が都合がよかったんだ」
「都合だと?」
「坂本少佐、少しの間俺に付き合ってくれないか」
★
日が昇り始めた。
水平線の向こうに上がり出した朝日の光を目と肌で感じつつ、宮藤はどこにいるかもわからない相手の姿を求めてストライカーを吹かしていた。
(どこにいるの…お願い、出てきて)
敵である存在との遭遇を心から祈る宮藤。
そうして空を飛行すること数分、水中を探索していたクラーケンが宮藤の顔に寄り添うように移動してきた。
「見つけたの?案内して」
言葉に従って宮藤を導くように先を行くクラーケン。
彼(?)の誘導の元ストライカーで移動しているとふとクラーケンが下降し、海の中に小さな身を沈めた。
「もしかして海の中にいるの?」
ソーマの言葉を思い出して呟く宮藤。
すると海面から上がってきた。黒い少女のような体格をし、胸に赤と青の混ざった輝きを放つ石を持ったネウロイが。
「間違いない、この間のネウロイ!」
その姿を捉えた宮藤は声を上げる。一方のネウロイは宮藤に反応を示すかのように体を向けると一転、背を向けて遠ざかってしまう。
「あ、待って!」
追いすがる宮藤。寄り添って来たクラーケンをポケットにしまいながら見失いようネウロイに注意を集中させる。
だがネウロイが彼女に攻撃することはなく、むしろ宮藤を案内するようなゆったりとした速さで飛行している。
(私をどこかに連れていこうとしてる?)
前回と同じように敵対する関係であるはずの存在の行動に戸惑う宮藤。
しかしそれでいながらもついていくとやがて青い空を埋め尽くすかのように広がっている城のような大きな黒い物体を目にする。
「何あれ?」
それはネウロイの巣。ガリアにネウロイが蔓延っている原因であり、これの撃墜は501部隊引いてはペリーヌの悲願でもある。
だが宮藤はこれまで巣を見たこともなければ聞いたこともない。故に今自分の目前にあるのがネウロイの巣であることに気付けなかった。
「いた!宮藤!」
そこへ宮藤を追って来たハルトマンたちが到着する。そして巨大な巣を見て顔色を変える。
「あのでっかいの何!?」
「あれはネウロイの巣だ。前に見たことがある。あそこから奴らが出てくるんだ」
初めて目撃したのであろうルッキーニにバルクホルンが説明する。
「おいあれ!宮藤が」
「中に入ってちゃった…」
エイラとハルトマンたちの前で宮藤はどういうことかネウロイに誘われるように巣の中へと姿を消してしまった。
「芳佳!」
「宮藤!」
「待って」
ルッキーニとバルクホルンが彼女の名を叫び、巣の中へ突入しようとするがそれを諫める声が一つ。
ミーナだ。
「ミーナ、何故止める!」
「様子を見ましょう」
「くっ、了解した」
下手に突っ込むのはまずいと判断してかミーナは静観に出る。
暗雲に浮かぶ巣の中で何が起こっているのか、それを知る術は彼女たちにはなかった。
外がそんな状況にあるとはこれっぽちも知らない宮藤はネウロイの巣の内部、コアの存在する空間の中で思いがけないものを目撃していた。
「これは…」
空間内の壁面にはネウロイの手によって様々な映像が映し出された。
燃える街の上をビームを放ちながら浮遊するネウロイ、崩れていく建物や爆風から逃れる人々、銃を手に微力ながらもネウロイに抗う兵士たち…人類とネウロイ、過去から現在に至るまでに繰り返されてきた戦いの光景を宮藤はネウロイの巣の中で見ていた否、見せられていた。
「人とネウロイの戦い?どうしてこれを私に」
その疑問に対して自分をここまで連れてきた人型ネウロイからは何の返事もない。
何かしらのメッセージをネウロイは自分に伝えたいのだろうか。そんなことを考えながら映像に注目していると映像が切り替わる。
今度は戦いの場面ではなく、人間の手によって建造されたどこかの建物内にある部屋、それも実験室と思われる設備がある空間が映っていた。
カプセルの中に収められたネウロイのコア、ケーブルに繋がれた機械、そして十個はあるであろう片手で持てる程度の大きさの道具。
その道具を見て宮藤は大きく目を見開いた。
「ソーマさんのベルト?いっぱいある」
表面にある人間の手を模した特徴的なデザイン。日々見慣れてきたのもあってか宮藤はすぐに見当が付いた。
だが何故ネウロイが見せる映像の中にソーマの身に着けているベルトがいくつもあるのか。
「…」
情報の洪水を一気に浴びせられて思考が止まり、どう反応すればいいのか宮藤は判断に困ってしまう。
助けを求めて思わず人型ネウロイを見ると、じっとこちらを見つめたまま佇んでいる。
宮藤は手を伸ばす。数泊遅れてネウロイも同じく手を上げる。
手を交わすまでほんの数センチ、もしかすると歴史的な和解の象徴となる一歩となるかもしれない。
そんな淡い期待を心のどこかで宮藤が抱いた時ネウロイが突然消えてしまった。
「えっ?どこに行ったの?ねぇ!ねぇってば!」
ネウロイへ呼びかけ、周りを探すが求める姿は影も形もなかった。虚しく一人となった空間に声が反響するだけだ。
「ネウロイが出てきた!」
「芳佳ちゃんは…まだ中にいる」
巣の中から出てきたネウロイを視認し、エイラとサーニャが反応する。
「やはり罠だったか」
「とっととやっつけて宮藤を助けないと」
バルクホルンとハルトマンが銃を手に接近しようとした時二人の間を大きな影が目にもとまらぬ速さで駆け抜けた。
「なんだ今のは!?」
バルクホルンたちを追い抜いたのは高速で大型の戦闘機のような物体。人型ネウロイに向かってしながら接近先頭部分から機銃を撃ち放つ。
銃弾の雨を受けた人型ネウロイは着弾によって生じた煙に隠れ、その横を旋回した物体は人型ネウロイとの距離を取ると脚を展開した形態に変形する。
「変形した…あれは一体なんなんですの」
ネウロイ以上の未知の存在に戸惑うたちペリーヌたち。その彼女たちを更なるサプライズが襲う。
『『アロー、ナウ』』
後十数の光の矢が飛来し、ネウロイの巣に着弾。接触箇所で立て続けに爆発が巻き起こる。
「また何か来た!」
「今の攻撃ってソーマ?」
低音の音声だったが魔法が発動する直前で音声が鳴るのは彼以外にありえない。ソーマが駆けつけてきたのだろうか。
そう思って振り向いたルッキーニの視線の先には箒に乗った十三人の人影。
翡翠色のゴツゴツとした宝石をモチーフにした顔面、ベージュのボディの肩部分から突き出した顔と同じ色の宝石、ウィザードに似ているがところどころ異なる魔法使いたちがそこにはいた。
「違う、ソーマじゃない!なんだあいつら!」
「各員散開!ウォーロックの支援をしつつ巣と人型ネウロイへの攻撃を実行せよ!」
「「了解!」」
ウィザードではないと断定するシャーリーの前で隊長格と思われる魔法使いが指示を出し、全ての魔法使いたちが左右にばらける。
『アロー、ナウ!』
『ブラスト、ナウ!』
魔法使いたちはウィザードと同じように手に填めた指輪をベルトにかざして魔法を発動させる。
各魔法使いたちの掌に展開された魔法陣から飛び出した光の矢と竜巻がネウロイの巣の表面で爆発し、回避を行っていた人型ネウロイにも何発か着弾する。
「すごい…」
「関心している場合ではない。私たちもいくぞ!」
ネウロイを追い立てる魔法使いたちの戦いに素直な感想をこぼすリーネの横でバルクホルンも戦いに加わろうとする。
だがそんな彼女たちへいつの間にか近づいていた隊長格と思われる魔法使いが制止の言葉をかけた。
「手を出さないでいただけますでしょうか。これは我々の戦いです、貴女方ウィッチの出る幕はありません」
「なんだって?いきなり出てきて急に何言ってんだよ」
「そもそもお前たちはどこの所属だ。誰の命令でここに来ている」
魔法使いの言葉にエイラとバルクホルンは反感を示す。だが魔法使いからの言葉は返ってこない。
「おい、こちらの質問に-」
「答える義理はありません。貴女方との会話に必要性を感じません」
「なんだと」
「落ち着きなってトゥルーデ」
魔法使いの態度に怒りを感じ、くってかかりかけたバルクホルンをハルトマンが窘める。
あわや一触即発の空気の両者を静観していたミーナは視線を戦いの方向へと変えた。
三人の魔法使いの人型ネウロイを光の矢で牽制し、よけた先を読んだ別の小隊が暴風の渦の中に封じ込め動きを止める。
魔法使いたちの尽力によって人型ネウロイと巣を同時に捉えられる射線を確保した物体は脚の先に赤い光を収束させ、極太のビームとして放つ。
「赤いビーム!?」
「あれもネウロイなの?」
ビームを発射した物体に戸惑うリーネとサーニャ。ビームは人型ネウロイの全身を飲み込み、巣を貫通。
そこから更に物体はビームを上方向に移動させ、巣の壁を削っていく。。
「とんでもないビームだぞ」
「芳佳ちゃん!」
「宮藤さん!」
ネウロイの巣の壁にできた隙間から爆風に乗って落下する宮藤。巣の中でビーム攻撃による衝撃を間近で受けたせいかストライカーの制御が上手く取れずにいるようだ。
リーネとペリーヌがすぐに彼女の元に下降し、二人で肩を貸す形で体を支える。
「ん?」
その一方でエイラはネウロイであった白い破片に混じって青い光を反射させて落ちる何かに気付いた。
「よっと」
降下し海に落ちかけたそれを寸でのところで回収。再度上昇してサーニャの隣に戻る。
「エイラ、何を見つけたの?」
「ああ、これ」
握っていた手を広げてエイラがサーニャに見せたのはウォーターウィザードリング。
人型ネウロイの手に渡っていたものだ。
「これってソーマさんの指輪よね」
「だよな。あのネウロイが持ってたってことか?とにかく後で返してやらないとな。これがなきゃあいつも困るだろうし」
言いながらエイラはウォーターウィザードリングを胸元のポケットに収める。
「副隊長。人型ネウロイの消滅を確認しました。このまま巣への攻撃を続行しますか?」
「いや、今回はあくまでもウォーロックの試運転にすぎない。基地に戻るぞ」
「待ってください。貴方方は一体」
「言ったでしょう。貴女たちとの会話に意味はないと。ウィッチなどという得体の知れない存在である貴女たちとはね」
ミーナは魔法使いたちに素性を聞き出そうとするが、案の定というべきか隊長格の魔法使いは聞く耳を持たず隊を引き連れて飛び去ってしまう。
「あの言い方腹立つー!なんなのあいつら!」
「基地に戻るって言ってましたけどあの方向、もしかして私たちと同じ」
彼らの言動が気にくわなかったのかルッキーニはそんな言葉を水平線の彼方へ消えていく背中に投げつけ、リーネはその進路に眉を潜める。
「私たちも戻りましょう。確かめないといけないことがあるわ」
★
ミーナたちが基地に戻ると滑走路に多数の人影があった。ミーナたちの到着を待っていたようだ。
「誰かいるね」
「さっきの兵器と魔法使いと他にも誰かいるみたいだ」
人型に変形した兵器に魔法使いたちに兵士…彼らが道を譲るように空けた間から進み出てきた人物を見て整った顔を歪めたミーナは着陸し、その人物と相対する。
残る501部隊も順に滑走路に着地すると兵士たちは彼女たちに銃口を突き付ける。
味方であるはずの彼らが取った行動に皆驚くが、唯一ミーナだけは威圧を込めた目で相手を見た。
「まるでクーデターですね。マロニー大将」
「命令に基づく正式な配置転換だよミーナ中佐。この基地はこれより私の配下である第一特殊強襲部隊ウォーロックと彼らメイジ部隊が引き継ぐことになる」
「ウォーロック?」
「メイジ部隊だって?」
兵士の先頭、ミーナの正面に立つマロニーの発した単語にバルクホルンとハルトマンはそれぞれ視線を人型の機械と魔法使いたちへと移す。
二人の視線の動きに気付いたマロニーは得意げに口元を緩めると、宮藤の前へと歩み寄った。
「君が宮藤軍曹か」
「はい…」
「君は軍規に背いて脱走した。そうだな?」
「…軍規」
自らの犯した行いの意味を知らされた宮藤はそう呟く。何か返す言葉を探そうと視線を横に向けた時、視界に映ったウォーロックを見て声を上げた。
「あっ!その後ろの?」
「ウォーロックのことかね」
「私見ました。それがネウロイと同じ部屋で、実験室のような部屋で…それにソーマさんやあの人たちが付けてるベルトもそこにあって」
「何を言い出すんだね君は!」
誇らしげに満ちていたマロニーの表情が激しく変わって狼狽になった。あからさまのその変化に違和感を持つ者は多かった。
「質問に答えたまえ!君は脱走した。そうだな!?」
「はい…でも…」
「中佐、私は撃墜を命じたはずだ」
「はい、ですが…」
「隊員は脱走を企てる。それを追うべき上官も司令部からの命令を守らない。まったく残念だ」
宮藤の言葉もミーナの言葉も退けてマロニーは次の瞬間、ストライクウィッチーズの面々たちにとって衝撃の一言を投下する。
「本日、只今をもって第501統合戦闘航空団ストライクウィッチーズは解散とする!各隊員は速やかに原隊に戻り、現地での任務を全うせよ。以上だ」
「待ってくださいまし!そんないくらなんでも」
「上官といえでもこんな強引すぎる!」
ウィッチーズへの気遣いなど微塵も考えていないマロニーへペリーヌとバルクホルンが異を唱える。
そんな時だった。
『バインド、プリーズ!』
滑走路上に出現した魔法陣から鎖が飛び出し各ウィッチたちを腕ごと巻き込んで拘束したのは。
「きゃあ!」
「こんの、あの魔法使いたちの仕業か!」
「いや、さっきの音声…まさか!」
驚くリーネとメイジたちへ怒りの視線をぶつけるエイラ。
その中でバルクホルンはあることに気付いた。
先の戦闘の際メイジたちの魔法が発動する音声は低音の『ナウ』、しかし今聞こえてきたのは高音の『プリーズ』。
その音声で魔法を発動させる人物をバルクホルンは一人しか知らない。
どうか間違いであってほしいと願う彼女だったが、何度も聞いてきた音を間違えるはずもなかった。
そしてその願いを踏みにじるかのように
「よっ、おかえり」
メイジたちの奥からまさにバルクホルンが思い描いた人物-ソーマが右手を上げ、場違いな程の満面の笑みを浮かべて歩いて来た。