ストライクウィッチーズの攻撃が暴走するウォーロックに注がれる。
数で上回り、多方面から射撃してくるウィッチとウィザードにウォーロックはネウロイの自己修復機能と魔法使いのデータを活かし対抗する。
緑色のウォーロックはハリケーンスタイル顔負けの速さをもって空中をあちこち飛び回り、銃撃を回避してはビームを打ち出す。
その赤い光を避けてサーニャはエイラの未来予知で予測した進路上にロケット弾を置く。
自身が突っ込んでいく形になったウォーロックは複数のロケット弾を横凪にビームを放つ。
「右へ動くぞシャーリー!」
ロケット弾を潰して猛スピードで動くウォーロックの移動先をエイラは未来予知で読み取り、それにただ一人対処できるシャーリーに伝える。
「オーケー、任せろ!」
最速を自負する彼女は先も緑色状態のウォーロックのスピードに勝っていた。当然ウォーロックの移動先に先回りし、銃弾を浴びせる。
「こいつを使ってみるか。ペリーヌ同時に!」
「ええ、いつでも構いませんわ!」
ペリーヌの横に近付いたウィザードは新しく手に入れたペリーヌのパーソナルマークの指輪を使用する。
固有魔法で全員の位置を把握していたミーナがそちらを見ると二人が一緒に魔法で攻撃しようとしていることに気づく。
「リーネさん、バルクホルン大尉、ウォーロックを足止めして!」
「了解!」
「了解した!」
ミーナの指示にリーネとバルクホルンは即座に行動に移す。装甲を黄色に変えてシャーリーとハルトマンからの攻撃にウォーロックが耐えていたところにボーイズライフルの弾丸が飛来。
それは展開した魔法陣で受けきるが、別方向から撃ち込まれた連続射撃には防御の手が追い付かず直撃をくらう。
「いきますわよ!トネール!」
『チョーイイネ!プラズマ、サイコー!』
ウィザードからは緑の、ペリーヌからは青の雷が放たれた。
二つの雷は一つに交わる。展開された魔法陣を真正面から打ち破りウォーロックの全身に二色のスパークが走る。
「ソーマさんが私の魔法を?それにトネールの威力もいつもと違う?…ソーマさんだけじゃなく私も強くなっているということですの?」
ソーマが自身と同じ魔法を使ったこと、いつにも増してトネールの出力が上がったことに驚きを隠せないペリーヌ。
そしてそれは魔法を使用した本人もだった。
「俺がペリーヌの魔法を…ってことはもしかして、他の二人の魔法も」
ペリーヌのパーソナルマークの指輪を使ってトネールに似た雷の魔法が使えた。
つまりは他の指輪もパーソナルマークの本人の固有魔法に由来した能力が秘められているのでは…そうウィザードが考えていた時、一足先に同じ結論に至っていたのかハルトマンが横に来ていた。
「ソーマ、次は私とやろうよ!できるでしょ?」
「やってみなきゃわかんないけどな。いいぜ、一緒にいくぞ!」
言葉を返しながらウィザードは指輪を付け替え、ハルトマンのパーソナルマークの指輪を装備する。
「準備はいい?いっくよー!」
『チョーイイネ!サイクロン、サイコー!』
「シュトルム!」
雷に続いてウィザードが魔法陣から発生させたのは竜巻。竜巻はウィザードとハルトマンを標的にビームを発射しようとしていたウォーロックを包み込み、暴風の中に閉じ込める。
そこへ次いでハルトマンのシュトルムが炸裂する。風を纏った突撃でウォーロックの装甲を削り取り、竜巻が収まった瞬間を狙って固有魔法を発動させたルッキーニの魔法陣を張っての突撃がより一層のダメージを与えていく。
「あんだけ食らってまだ動くのかよ…もう充分だろ」
呆れかえるエイラ。その視線の先には損傷部位から電流を漏らしながらも攻撃を続けるウォーロックがいる。
しかもダメージの蓄積によって修復速度は目に見えてわかる程に低下してはいるが、損傷機能も健在だ。
「最後は私だな。ちゃんと遅れずについてこいよ!」
「そっちこそ、置いてけぼりにしないで合わせてくれよ!」
『チョーイイネ!ジェット、サイコー!』
ウィザードは残る最後、シャーリーのパーソナルマークの指輪を使用。
シャーリーは自身の超加速を超えた速さでウィザードはその彼女に僅かに劣る速さで共にウォーロックへと接近。
数多に向かってくる風の鎖を避けていき、更にウィザードはコピーでウィザーソードガンを二刀流にして斬り込む。
「コアは胴の中心部だ!」
魔眼でコアの位置を特定した坂本の声を聞いて、二人はそこを重点的に攻め込む。
ウォーロックにも捉えられない速さで四方八方、あらゆる方位から叩き込まれる銃撃と斬撃は鋼鉄の鎧を崩していき、その合間にも遠方から銃弾をお見舞いされる。
しかしウォーロックも足掻く。
眩い光を放って、攻撃手の目を潰す。
「うっ、眩しっ!」
「光で前が、見えない…!」
「またこの光!」
高速移動していたシャーリーとウィザードはおろかウォーロックに目を向けていた多くの者が視界を潰される。
銃撃が止み、ウォーロックは赤色に変化し高出力ビームを宮藤たちに放つ。
しかしそのために必要なエネルギーを貯めるより早くウォーロックに銃弾が放たれ、ビームの充填を中断させる。
「悪いな、お前がそうするのは全部お見通しなんだよ」
ウォーロックを狙撃したのは優越感に浸る笑みを浮かべるエイラと目を閉じたままのミーナ。
エイラは未来予知で目潰しを回避し、ミーナは視界を使えなくなったものの空間把握で正確な位置を掴み射撃に成功したのだ。
「そこ!」
「今だ!一気に畳みかけるぞ!」
他のウィッチたちの視力も回復しもうひと押しを加えるべくサーニャとリーネが銃器を向け、坂本も烈風斬の体勢に移行する。
ウォーロックは青色にチェンジし、水の鎖を飛ばして三人の動きを止める
『バインド、プリーズ!』
ことはなかった。三人の体に巻き付くはずだった水の鎖は軒並み全て風の鎖に絡み取られ、それはウォーロック自身にも巻き付いた。
「偽物に本物が負けっぱなしでいられるかっての」
一矢報いてやったりと言わんばかりに勝気な笑みを浮かべているように思える声色のウィザード。
偽物だの本物だの拘りや張り合う気は本人の中ではないが、だからといってやられっぱなしなのは癪に障る。
火力の高い二種の銃撃と烈風斬が炸裂し、次の対応策を計算して実行しようとしていたウォーロックは爆発に飲み込まれる。
「コアが見えた!」
猛攻の末、ウォーロックの装甲の合間から弱点の位置を露わにする赤い光が漏れる。
「フィナーレだ!」
『チョーイイネ!スペシャル、サイコー!』
ウィザードは息を吹きかけている瞬間のドラゴンが描かれた指輪を使うと風を帯びた魔法陣が体をくぐり抜け、背中から羽根が宿る。
その羽根は鳥や蝶のような美しい見映えではなく、ウィッチのように使い魔の一部を象ったようなものでもなく、この世に存在するどの生物とも取れない禍々しく触れる物全てを傷つけるようなものだ。
「ソーマからなんか生えたあ!?あれ羽根か?」
「かっこいいー!いっけー、決めちゃえ!」
戸惑うエイラと興奮し好奇の眼差しを向けるルッキーニ。
羽根…翼をはためかせるとウィザードは高速でウォーロックの周りを旋回。
雷を照射しながら上昇する彼の飛行した後には風が生まれ、ウォーロックが彼を射抜こうとしていた時には既に雷を迸らせた暴風の中に閉じ込められていた。
「っ私も!」
竜巻の頂点に行き着いたウィザードを見上げて宮藤もそこへ飛翔する。
「いやあああああ!!」
持てる魔力の全てを解放し、ウィザードは雷と風を纏った右脚を突き出して高速で降下する。
ウォータースタイルの力でリキッドで回避しようとするウォーロックだがその高度な情報処理能力はその行動を取らせなかった。
無駄だと判断したからだ。雷を常に浴びせ続けられている状況では液体となったところで結果は変わらない。
そして
-テンペストエンド
ウィザードのキックはウォーロックを貫き、機体を真っ二つに分断するがコアは生きていた。
キックが叩き込まれる寸前でウォーロックはコアを上半身へとずらしたのだ。
暴風が消え、ウィザードも遠く離れてしまったが誰も狼狽えることはなかった。
(後は任せたぞ)
既に至近距離でコアを捉えている者がいたからだ。
「いけ宮藤!お前が決めろ!」
「お願い芳佳ちゃん!」
坂本とリーネがその者の名を呼ぶ。
キックを放っていたウィザードの後ろに追従していた宮藤は銃口を光り輝くコアに定める。
微かに働く自己修復機能で失った下半身を復元させようとしているが、それよりも宮藤が引き金を引く方が圧倒的に早かった。
銃口から飛んだ弾丸が真っ直ぐコアを撃ち抜く。
青だった装甲は色落ちた白になっていき、全身が白に染まった時ウォーロックは粒子となって飛び散る。
「ふぅ~」
肩を撫で下ろし一息ついて状況を確認するウィザード。背中の翼は消えていた。
澄み切った青空と雲が広がっていて、海は静かに優雅な波を立てている。
「終わったな」
「ネウロイの反応、完全に消滅しました」
坂本の呟きを周囲の反応を探っていたサーニャが補強する。
ウォーロックは破壊され、ネウロイがいなくなった。
それはつまり
「ガリアが解放された…私の故郷が戻った…?」
ペリーヌにとってこれ以上ない結果が現実になったことを意味する。
徐々にその事実を認識し始め、目から透明な涙が流れている彼女を見てウィッチもウィザードも温かな目を向けていた。
水平線に近づいた夕陽が波を橙に染め上げる。
ブリタニア基地の滑走路上で変身を解除したソーマはウィッチたち一人一人の顔を見つめていく…右から左へ一人一人視線を交差させていく中で何をどう言葉を発するべきか考えているとバルクホルンが自分に向かって進み出ていた。
「すまなかったな」
「何が?」
「その顔の傷、私が殴ったせいだろう」
「…ああ、結構効いたよ。強烈だった」
申し訳なさそうな彼女の視線の先にある頬の湿布をソーマは片手で触れる。
「でもいいんだ。むしろ思いっきりやってくれて嬉しかった」
元を辿れば自分の方がよっぽど非があるというのにそれを引き合いに出さず真っ先に謝罪を口にする彼女の生真面目さにソーマは軽く微笑んで、言葉を返す。
それに影響されてかバルクホルンも笑い、後ろで見守っていた宮藤たちも同じく微笑んでいた。
その時だった。
パァンと音がしたと思えば、ソーマが倒れた。
それはほんの数秒の出来事だったのに宮藤たちには何が起きたのかわからなかった。
ただソーマが腹部から赤い血を流して倒れていくのを茫然と眺めていた。
しかしそれも無理のないことだった。
撃たれた本人でさえも痛みを感じるより、困惑が勝っていたのか面食らった表情で天を見上げていたのだから。
「ソーマさん!」
「ソーマ!」
「スペランツァ大尉!」
ようやく事態を認識して宮藤を始め多くの者たちが口々に彼の名を叫び駆け寄る。腹部に空いた穴から流れる血を止めるべく宮藤は治療を始める。
「あの男はメイジの!」
坂本は弾丸の飛んできた方角を見るとそこには銃を構えているエリックがいた。
「俺を虚仮にしやがって裏切り者の分際で!許さんぞ!」
激情に駆られたエリックはソーマに銃を向ける。
始末しようとしているのは誰の目にも明らかだった。
「あいつ、まさか本気で!」
「させるか!」
添えられた指が引き金を引く瞬間、弾けたように動き出した者たちがいた。
坂本は射線上駆け込んで飛んできた銃弾を扶桑刀で切り払い、バルクホルンが地を蹴って走り出す。
「馬鹿な!?」
坂本の神業に驚くエリック。その間にも魔法力をバルクホルンが距離を詰める。
「貴様ぁ!」
「かっ、はッ…!」
腹に重たい一撃をもらったエリックは膝から崩れ落ちる。
瞳を閉じ、意識を失ったエリックを尻目にバルクホルンは振り返って、倒れるソーマの元へ走り出す。
「ごほっ!」
口から血を吹きだし次第に目から光が消え、顔色が悪くなっている。命の灯火が消えかかっていた。
「…やっちまったな…!」
「馬鹿!喋らなくていい!」
「ソーマ、嫌だよぉ!死なないでよ!」
「芳佳ちゃんお願い!頑張って!」
「必ず助けます…絶対、だから頑張ってください…!ソーマさん!」
顔を覗き込んで心配する仲間たちが暗闇の覆われつつある視界に見える。
離れていた坂本やバルクホルンもやって来て何かを叫んでいる。
もはや聞き取るのも困難で断片的にしか音を拾えないが、おそらく皆身を案じてくれているのだろうと思った。
そう思いたかった。
(死ぬのか俺…でもそれでもいいか、最後の最後で皆の場所を守ることができたなら…それで)
どこか独り言のように、そして満足そうに心中で呟いて彼は眠った。
坂本少佐を庇って死にかけ、ウォーロックに破れ死にかけ、そして今回と十話に満たない話数の中で三回もソーマが死にかけていると気付いた時には自分でも笑ってしまいました。
回復魔法持ちの芳佳ちゃんがいるからってやり過ぎた気がしないでもない。
でも大丈夫だ、福井警視でも焼かれたり、生身で高所から落ちても平気だったんだ。それを考えたらまだいける、全然いける
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