ストライクウィッチーズ~約束の空~   作:カメクリオ

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第二十七輪 空に再会を誓って

カーテンの隙間から漏れた木漏れ日の光がベッドで眠っているソーマの顔を照らす。

 

「ぅ…ん……」

 

声を発し、目を開く。

目を覚ましてすぐ見慣れた天井と窓から見える外の景色を見て自分のいる場所が自室の中なのだと気付く。

 

(俺の部屋?俺、なんでここにいるんだ…?)

 

ぼんやりと考えながら首を横に動かしてみる。するとソーマは自分の体を避けるようにしてベッドに頭を置き、椅子に座っている少女を見つけた。

 

「宮藤?そうか、俺はあの後…」

 

時間が経つにつれて徐々に記憶が鮮明に蘇っていく。

新たに得た力で宮藤たちと協力してウォーロックを無事撃破した。しかしその直後腹部に痛みと熱を感じ、心配する仲間たちの顔を最後に意識を失った光景が

 

(撃たれたんだよな。たぶん…でも)

 

ソーマは宮藤を起こさぬよう注意を払って体を起こし、痛みを感じた腹を確認する。

衣服の下にある素肌はビックリする程綺麗で傷跡すら残っていなかった。

宮藤の必死な治療のおかげだろう。

 

「いつも助けられてばっかりだな。大変だったろ、お疲れ様」

 

傷の手当に尽力してくれた眠る彼女の頭に手を置く。

手を離して、視線を部屋に移すとタンスの上に複数の指輪が置かれていた。

ウォーターリング、全ての使い魔の指輪、いずれも紆余曲折あってソーマの手元を離れていたリングたちだ。

 

「ん…」

 

それらを取ろうとベッドから離れようとした時宮藤の口元から声が漏れ、顔を上げた。

彼女は視点の定まっていない瞳でソーマを見つめる。

 

「あれ…?ソーマさん?」

 

「おはよう。たっぷり寝れたか?」

 

「あっはい……目が覚めたんですねソーマさん!」

 

空返事から数秒を要して声を上げる宮藤。眠気に飲み込まれていた瞳が一瞬にして気遣いの眼差しに切り替わる。

 

「三日間ずっと意識がなくて心配だったんです。痛みは感じませんか?」

 

「今のところ大丈夫そうだ。さっきも言ったけど本当にありがとうな」

 

「いえ…あっ、目が覚めたことミーナ中佐たちに報告してきますね」

 

「ああ」

 

さっき、という部分に首を傾げながらも椅子から立ち上がって宮藤は部屋を後にしようとする。

 

「待って、俺もいくよ」

 

その声に宮藤が振り返ってみればソーマはベッドを抜け出して歩み寄っていた。

 

「まだ安静にしていた方がいいですよ」

 

「もう大丈夫だって。皆の顔も見たいしさ」

 

「分かりました。じゃあ一緒に行きましょうか」

 

そう言って宮藤とソーマは隣り合って廊下を歩く。

 

「中佐は執務室?」

 

「そうだと思います。手続きとか色々大変みたいですから」

 

「手続き?」

 

「ソーマーー!」

 

「うぉ!?」

 

「きゃあ!」

 

何の手続きなのか、と聞き返そうとするソーマを喜びの叫びを上げた何者かが後ろから衝撃が襲った。

前のめりになって倒れるソーマを宮藤が数歩離れた位置で見て、彼を後ろから襲った少女の名を呼んだ。

 

「ルッキーニちゃん!」

 

「元気になったんだね!もう動いて平気なの?」

 

「…あーうん、そう言ってくれるのは嬉しいんだけど降りてくれたらもっと嬉しいかなーなんて思うなー」

 

「そんなに急いでいくなってルッキーニ。別に逃げやしないんだから」

 

ソーマが自身の背中に馬乗りになっているルッキーニに言うと、そこに彼女が駆けて来た方角からはシャーリーが歩いてくる。

 

「その感じだと傷は平気そうだな。安心したよ、大事なさそうで」

 

「心配かけて悪かったな」

 

どいたルッキーニの重みから解放されたソーマは立ち上がりながら答える。

 

「どこに行こうとしてたの?」

 

「ミーナ中佐のところだよ。ソーマさんが起きたら報告するように言われてたから」

 

「なら私らもいくよ。私たちの配属がどうなったのか知りたいし」

 

「配属?」

 

「ガリアが解放されてもう私たちの役目はひとまず終わっただろ。次の配属先がどこになるか確認してもらってるんだ」

 

そういえばそうか、とソーマは相槌を打つ。

501の役目であるガリアの解放が達成されたのであれば各国から招集されたエースたちを一か所に留めておく必要もない。

基地を離れて皆それぞれ本来いた場所に戻るのだ。

しかしそこまで考えたところで新しい疑問が生まれる。

 

「それはわかるけどでも二人は普通にリベリオンとロマーニャの原隊に戻るんじゃないのか?」

 

「違うよーだって私たち嫌われ者だもん」

 

「嫌われ者?どういうこと?」

 

ルッキーニの言を疑問に感じた宮藤が言う。

 

「私たち半ば厄介払いみたいな扱いで来たからね。元いたところに戻ったってでまともに取り扱ってもらえないんだよ。ま、私とルッキーニにはむしろ都合がいいから気にしないさ」

 

「そんなことあるんですか」

 

「だいぶレアケースだと思うぞ…まぁ人のこと言えないけどさ俺も」

 

二人がそんな扱いになった事情が気になるものの、そうなるに至った原因におおよそ見当が付いたソーマと宮藤はあえて深堀りはせずに話を切り替えることにした。

 

「宮藤はどうするんだ?」

 

「扶桑に帰るんだよね」

 

「そうだよ。実家の診療所の手伝いをするんだ」

 

先取りして述べたルッキーニに応じて宮藤が言う。

 

「仕方ないとはいえ少し寂しくなるな。まだ言うには早いけど本当に世話になったな。宮藤には感謝してもしきれないくらい恩ができたよ」

 

「そんな、私の方こそソーマさんにはたくさん助けてもらいました。もし扶桑に来ることがあったら是非家に来てください。その時は腕を振るって美味しいご飯用意させてもらいますね」

 

「そいつはいい話を聞いたな。だったらいっそのこと私たちもこのまま宮藤のとこに行くか?どうだ、ルッキーニ。毎日宮藤の作るご飯食べれるぞ」

 

「ええっ!?それはちょっと…」

 

「さんせー!芳佳のご飯、マッマの次くらいに美味しいから大好きだもん」

 

すっかりその気の二人に困り果てて助けを求めるようにソーマを見る宮藤。その視線の意味を感じたソーマは状況を一見した後、

 

「あ、じゃあ俺もお世話になろうかな」

 

「なんで乗っかるんですか!」

 

意地の悪い笑みを浮かべて右手を挙げた。

期待を裏切り自分にではなくシャーリー側に加担したソーマに思わず宮藤が叫ぶ。

 

「はっはっは!」

 

「にゃはっはっは!」

 

そんな宮藤の反応に声を上げて笑うシャーリーとルッキーニ。釣られてソーマもからかわれた宮藤でさえも顔に笑みが生まれる。

こんなやり取りももう少しで見納めになるのか…ソーマが寂しさを感じているとそこに新しい声が入ってきた。

 

「なら私も宮藤さんのお宅にお邪魔しようかしら。賑やかで楽しそうだわ」

 

その声は歩みを進めていた方向からミーナであった。彼女の両隣にはバルクホルンとハルトマンの姿もある。

 

「ミーナ中佐まで…」

 

「冗談はよせミーナ。見ろ、宮藤が困惑しているだろう」

 

「とか言って本当はトゥルーデが一番宮藤のところに行きたいんじゃないの」

 

「そんなことはない、馬鹿を言うな」

 

バルクホルンは軽やかに一蹴するが、ハルトマンの言葉が図星を付いていたのは返事の速さが物語っている。

そして何人かはそれに気付いていたが、本人への配慮として何も言わずにおこうと揃って自己完結した。

 

「色々心配かけて申し訳ありませんでしたミーナ中佐」

 

姿勢を正してソーマはミーナの正面に立つ。目線と言葉こそミーナに向けているが、彼が放った言葉はミーナのみならずそこにいた全ての者と場にいない他の者たちにも向けられていた。

 

和やかな場の空気が少し緊張感を含み張り詰めたものに変わった。

だが

 

「謝ることはないのよ。何事もなくて安心したわ…でもある意味ちょうどいいタイミングで目を覚ましてくれたわね」

 

それも一瞬にして終わった。ミーナはいつもと変わらぬ素振りで話かけた。

しかしその内容にソーマは疑問符を浮かべるように片眉を上げた。

 

『ちょうどいいタイミング』

その意味を訊ねようとした時、偶然にもルッキーニが先行して疑問を呈した。

 

「ちょうどいいって何が?」

 

「ガリア解放のお祝いを兼ねたちょっとしたお食事会、といったところかしら。早い人はもう明日にはここを発つことになるからその前に501全員で集まる機会を作ろうって話を昨日したはずだけど」

 

「あれ?そうだったけ?」

 

「大方話半分に聞いてたんだろう…まったくいい加減さは最後まで変わらんな。その調子で余所でやっていけるのか」

 

「シャーリーがいるから大丈夫だもーん」

 

「そういう問題ではない。第一いつもお前はそうだ。才能は認めるが軍人たるもの行動に責任を持つべきであって-」

 

「まぁまぁ、その辺で勘弁してくれって」

 

相変わらず真剣さに欠けるルッキーニの態度に呆れて小言を言うバルクホルン。

このままでは長くなりそうな説教の空気を感じたシャーリーが彼女の言葉を打ち切ろうとした時、宮藤が何かを思い出したように声を上げた。

 

「あっ、そうだ…食事会の準備しなきゃ!」

 

「どうした宮藤?」

 

「リーネちゃんと食事会の料理を作る約束してたの思い出して。急いで作らなきゃ」

 

「今からじゃさすがに厳しいだろ。俺も手伝うよ。じゃあ中佐たち、また後で」

 

「すいませんお願いします。お先に失礼します皆さん」

 

時刻はもう夕方になりかけている。そんな時間からパーティー用の料理をたった二人だけで作るとなるとソーマの言う通りとてもではないが間に合わいそうにない。

断りを入れて宮藤とソーマは揃って食堂へ足早に向かう。

 

「まだ夜には時間があるから焦らないでいいわよ」

 

ミーナは快く快諾し慈母のような微笑みで送り出した。のだが、二人が見えなくなってからこんなことを言いだした。

 

「私も手伝おうかしら」

 

「それはまた別の機会でいいんじゃないかミーナ」

 

「そうそう、ミーナにはやることあるんだし宮藤たちに任せようよ」

 

ミーナと料理、その組み合わせがもたらす末路をよく知っているカールスラントの二人はなんとかそれを避けようとした。

苦い顔をしながら必死に

 

 

 

 

以前歓迎会を行ったテラス。そこが食事会の場所になっていた。

ビュッフェテーブルには宮藤とリーネとソーマが作った料理が並び、各テーブルにはミーナを除いた501隊員が座っている。

ただ一人、ミーナはというとグラスを手に皆の視線を集める形で星に照らされた夜空の下に立っていた。

 

「ここにいる皆のおかげでガリアは解放され、私たち人類は平和へ一歩前進することができました。皆が気持ちを一つにして互いに助け合ったからこそ成し遂げられたことだと私は思います。

解散した後も私たちは皆それぞれ違う新しい場所でまた戦うことになるでしょう。けれどたとえ離れていようとも私たちは家族で強い絆で繋がっている。それだけは覚えておいて。最後になるけれどこんなに頼りない隊長に今日までついてきてありがとう。とても感謝しているわ」

 

ミーナが言い終えると各席から拍手が沸き上がる。拍手が止んだのを確認するとミーナは咳払いして一呼吸置く。

 

「とまぁ、形式的な挨拶はこのくらいにして…早く始めましょうか。せっかく宮藤さんたちが作ってくれた料理が冷めてしまうものね。では、皆グラスを取って……乾杯」

 

「「乾杯!」」

 

グラスを合わせる音と全員の声、それがパーティーの始まりを告げる。

各々料理を取って食べながらそれぞれ話したい相手と話したい会話で盛り上がっていた。

 

 

「話したい相手はいないのか?」

 

開始から一時間弱が経った頃

誰とも話さず一人欄干に寄りかかってティラミスケーキを食べていたソーマに坂本が声をかけてきた。

その隣にはミーナもいる。

 

「もう結構話した後だよ。さっきまで宮藤やハルトマンと」

 

そう言って首を向けるソーマの目線を追ってみると、宮藤はリーネとハルトマンはバルクホルンと一緒にサーニャ・エイラと話している。

他にもペリーヌはシャーリーとルッキーニの相手をしているようだった。

 

なるほど、ちょうどタイミング悪く話し相手がいなかったのか。

状況を見て坂本が納得するとソーマが気まずそうに表情を一変させて質問してきた。

 

「あのさ。マロニー大将たちはあの後どうなった?」

 

「マロニーはウォーロックとの戦いの翌日基地に来た上層部の者たちに拘束された。奴の指揮下にいたメイジたちも一緒だ。もっとも彼らは特に問題行動を起こしたわけでもないから事情を聞かれることはあってもマロニーのように身柄を拘束されるような扱いを受けることはないだろうがな」

 

「エリック、俺を撃ったメイジも?」

 

「マロニーと同じく拘束されたわ」

 

「そっか…」

 

消え入りそうな声で呟くソーマ。

 

「気にしているのか?彼らのことを」

 

「元はと言えば俺のせいだから。俺が裏切らなきゃあいつがあんな真似しなかったはずなんだ」

 

負い目を感じている。そう坂本とミーナは感じていた。

マロニーが正しかったとは言わないが、自分の取った行いもまた正しかったとは言えない。

そのせいでエリックが軍人としてあるまじき行動に出てしまったことを踏まえれば尚更…そう考えているように思えた。

 

「でもそのおかげでこうしてガリアは解放されたわ。確かに貴方も彼も軍という組織に属する人間としてあるまじき行動をしたという点においては同じだけれど人としては大きく違う。貴方は彼のように簡単に人に引き金を引くような人じゃない…貴方の裏切りがなくてもああいう人はいずれ問題を起こしていたでしょうね」

 

「気にするなとは言わんが気に病むのはもうよせ。お前の思いは充分皆に伝わっている」

 

二人はそれぞれ率直な言葉をソーマへと口にする。

 

「けれど上層部にも理解してもらえるかは難しいところね」

 

整った顔に深刻そうに皺を寄せるミーナに二人の視線が集まる。

 

「司令部から意識が目覚めたら出頭するようにと通達を託されたの。おそらく今回の貴方の行動について議論するつもりね」

 

ミーナとしてもせっかくの空気に水を差すようなことを言いたくなかったが伝えなくてはならなかった。

幸いにもソーマはそれを理解してくれたようで嫌悪感も困惑も示さず、平然とした態度だ。

 

「当然そうなるだろうな」

 

「軍も功績も考慮して判断してくれると思うしよっぽど酷いことにはならないでしょうけど、最悪な方向にはならないように私もできる限り手を尽くしてみるわ」

 

「何から何まで申し訳ないな」

 

「仲間のためだ。これくらいどうということはない」

 

「そうね、この程度ならいくらでもするわ」

 

助けられてばかりな自分に嫌気が刺してつい呟いたソーマの言葉に坂本もミーナも気持ちのいいくらいの善意を込めて返してくれた。

するとそこにタイミングを伺っていたのかのように宮藤が歩いて来る。

 

「宮藤さんどうしたの?」

 

「あの、リーネちゃんのカメラで皆の写真を撮ろうってことになったんですけど今いいですか?」

 

「ええ、大丈夫よ。ちょうど話の区切りもついたし」

 

顔を見合わせて三人は宮藤を先頭に移動する。その際ソーマは食したケーキの皿とフォークをテーブルに置いて、口元に付いた残りかすを手の甲で拭う。

 

カメラを持っているリーネの周りに集う輪の中に入ったところで三人を加えての話合いが始まった。

 

「誰がシャッターを押すんですの?」

 

「カメラ、私のですし私が撮りましょうか?」

 

「それじゃリーネが映れないじゃん。皆で撮る写真なんだからリーネもいなきゃダメだよ」

 

「でも誰かが外れないといけないですよね」

 

「俺が撮ろうか。コネクト使えば俺も映って撮れるし」

 

「却下だ。せっかくの記念の写真を心霊写真にでもするつもりか」

 

「心霊写真かーそれはそれで味があって面白そうだけどな」

 

誰がカメラを持って写真を撮るかで論争が勃発。

全員が写真に納まって撮りたいのだがそのためには誰かが割りを食わないといけないというジレンマに悩み苦しんでいるとソーマのホルダーからゴーレムが勝手に起動して飛び出す。

変形しながら着地すると、自分の胸を何度も打つ。

 

「うぉ、どうしたんだ急に?」

 

「任せろ、って言ってるんじゃない?ほら」

 

動作から心情を読み取ったルッキーニの言葉にゴーレムは正解というかのようにうんうんと頷いている。

 

「おーけー、それじゃ頼んでいいか。ただ高さが足りないから助手を」

 

困惑していたソーマだったがその説明を聞いて納得するとゴーレムの要望に応えるべくガルーダを呼び出す。

ガルーダはリーネからカメラを受け取ったゴーレムを脚で掴んで空中に滞空する。

これで撮影準備は整った。

 

しかし列を組むにあたってまた別の問題が発生した。並びの編成だ。

 

「真ん中どうする?誰がいいかな?」

 

「はい!はい!サーニャの隣は私だかんナ!」

 

「で、でしたら私も坂本少佐の隣を所望しますわ!」

 

「そんな強調して言うことか」

 

「背の高い者を後ろにそれ以外の者を前にするとして中央か。ミーナでいいんじゃないか」

 

「いいわよ。じゃあ私の前、前列の中央は宮藤さんでいいかしら」

 

「えっ、わ、私でいいんですか!?」

 

幾多に及ぶ言葉を重ねた結果まず後列の中央がミーナ、前列の中央が宮藤となりそこから残りが決まるのは早かった。

前列に左からハルトマン・リーネ・宮藤・サーニャ・エイラ・ルッキーニ

後列は左からバルクホルン・ペリーヌ・坂本・ミーナ・シャーリー・ソーマ。

 

皆その通りに並び後はガルーダに持ち上げられているゴーレムがシャッターを切るだけなのだが何を思ってかソーマは静かに数歩右へとズレ、距離を取ろうとする。

 

「ほら、もっとこれぐらい寄れって」

 

「うおっ!?」

 

しかしその動きに気付いたシャーリーがその腕を掴んで引っ張ると、自分の腕を彼の肩に回して引き寄せる。

完全に不意を疲れたソーマの顔が彼女の横顔とピッタリ密着し、そのタイミングでシャッターが切られた。

 

 

そして写真も無事に撮れ、料理もなくなりいよいよパーティーにお開きの時が近づいてきた。

そんな時だった。ふとソーマが声を上げたのは。

 

「そうだ。俺からも一つサプライズするよ」

 

前触れもなく発せられた言葉は多くの視線を集める。

 

「サプライズ?なんだそれ」

 

「うーん、なんていうかちょっとしたアートかな。今思いついた」

 

『フレイム、プリーズ!ヒーヒー、ヒーヒーヒー!』

 

疑問に思うエイラにそう言うとソーマはウィザード・フレイムスタイルに変身。そして

 

『フラワー、プリーズ!』

 

フラワーリングを付けた右腕を空に向けて魔法力を送りこむ。

すると夜空に魔法陣が浮かび、直後花の形をした光となって弾けた。

 

「うわぁ花火だ!」

 

「花火?」

 

光の花の正体を呟く宮藤に隣にいたリーネが訊ねる。

その問いかけはリーネ以外の者たちも抱いていた。

 

「扶桑だとお祭りとかの時によく職人さんたちがこうやって打ち上げるの」

 

「鎮魂や悪霊を払う目的でも打ち上げられる物でもあるな。まさか扶桑から遠く離れた異国の地で花火を見れるとは粋な計らいをしてくれたものだ」

 

扶桑で見たことがある宮藤と坂本は懐かしい目で、それ以外の者たちはまるで珍しい美術品を見るかのような目で空を見上げる。

魔力を注ぎ終えたために変身を解くソーマ。その隣に宮藤が立ち、声をかけた。

 

「ソーマさん、私たちきっとまた会えますよね」

 

それは優しい声だった。けれど花火の音に打ち消されずはっきりと鮮明にソーマに届いた。

 

「必ずまた会おう。そのためにも俺はこの空を、希望を守るよ。約束する」

 

「私も頑張ります。自分にできることを精一杯」

 

この先どうなるかはわからない。またここにいる面々で集まれるのか、もうこれで最後となってしまうのか。

次に会うのは戦いの場か、落ち着いた平穏の中か。

 

でもこの瞬間、二人だけでなく全員が等しく胸の内で願い信じていた。

 

いつかの未来で誰一人欠けることなく再び会えると

そんな祈りを彼と彼女たちは空を見つめる瞳に宿していた。

 




というわけで無事なんとか第一部完結になりました!

そして次回からは前々から言っていたようにオリジナルストーリーの章に入る予定です。
あの部隊にソーマが参入します。

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