ストライクウィッチーズ~約束の空~   作:カメクリオ

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ストライクウィッチーズ2編開幕!



第三章 ストライクウィッチーズ2編 1945
第四十四輪 人類、進展の兆し


扶桑の長野県の山中のとある遺跡。

数週間前に発生した地震により崩れた山肌の中から遺跡らしき建造物が発見されたという知らせを受けて、上層部の命により考古学者数名を中心に結成された扶桑軍技術部の研究チームが調査に乗り出していた。

 

遺跡の中はこの上なく暗く静かで慎重に辺りを見ながら歩を進める自分たちの足音が反響する音が鮮明に響き渡たる。

 

「どのくらい前にできた遺跡なんでしょうね。古い遺跡にしては全体的にかなり形保ってません?」

 

研究チームの中で最も若く経験の浅い研究員が壁に興味を示す。

白髪の研究所所長は奥へと進みながら、それでいて手がかりを逃さぬように壁の細部にまで注目して周囲を見ながら言葉を返す。

 

「今の段階では何も言えんよ。ただざっと見た限りではあるが数百年程前、魔女がありふれていたとされる太古の時代にまで遡るかもしれない」

 

「もしかしたらネウロイ打倒のヒントがあるかもしれませんね。運が良ければ魔法石も出てくるかも」

 

「その辺りも含めて確かめるのが我々の調査だ。何があるかわからないから注意は常にしておいてくれ」

 

何が出てくるのか。期待と不安を胸に抱えながら遺跡の中を進み続けると左右に二つずつ並ぶ石柱の奥に棺が一つ置かれている空間と遭遇した。

 

「棺でしょうかねこれ。何が入っているんでしょうか」

 

「不用心に開けようとするな。侵入者への罠として呪いの類が仕込まれているかもしれんぞ」

 

「の、呪い!?」

 

呪いと聞いて恐れた若い軍人が素早く手を引く。

いちいち大袈裟なと研究所所長はそれを尻目に棺の側面に彫られている奇妙な模様に目を近付ける。

 

「古代文字がある…『力を求める者は力に選ばれることで初めて力を手にするに値する。力に選ばれた者が願い叶わず、その身を食われぬことをここに望む』か」

 

「どういう、意味ですかね?」

 

「やっぱり呪いかもねー。この棺を開けたお前を生気を食ってやるー!とか」

 

女性研究員が背後から新人研究員の肩を掴んで耳元で大きな声を出して脅かす。

 

「うわぁぁ!?もう、怖がらせないでくださいよ。そんなことありませんよね。ね!」

 

「ないとは言い切れんな」

 

「そんなぁ…」

 

反応を面白がっていちいち怖がらせる女性研究員と新人研究員の仲睦まじいやり取りはさておいて研究所所長は文面の意味について考える。

 

「力にも意志があるような言い回しだな。こんな警告文を残す程の力ということなのか……こうしていても埒が明かない。一か八か、開けて確かめるしかなさそうだな」

 

危険を覚悟で年配研究員が棺の蓋に手を添える。

鬼が出るか、仏が出るか。

棺の蓋を押して数センチばかり空気が棺の中を通る隙間が生まれる。

 

「ぎゃああああああ!!出たあああああ!!」

 

この上なく最高に情けない悲鳴が狭い遺跡内に反響する。

若い研究員は脱兎のごとき速さで女性研究員の衣服から出た生足にしがみつく。

 

「怖がりすぎ」

 

まだ何も出て来ていない段階で絶叫を上げた若い研究員を女性研究員が白い目で見る。

もっとも年配の研究員も彼ほどではないとはいえ不安はあったので窘めることはなく、蓋を押す力を強め蓋は完全に取り除かれた。

地響きとともに蓋が地面に触れる。

 

「あ、あれ?何も出てきませんね」

 

「残念ね。呪いちょっと期待してたのに」

 

安堵と落胆、相反する二つの感情を二人の研究員が声に出す。

 

「これは!」

 

中から呪いの邪気は溢れてこなかった。

代わりにそこにあったのは閉じた扉を模したような黒と黄金の二色のベルトが一つと色とりどりの複数の指輪であった。

 

 

 

 

 

 

連合軍上層部が一同に会する会議室には深刻な空気が蔓延していた。

扶桑・リベリオン・カールスラントなどの世界各国から出席している将官が皆一様に表情を険しくさせている。

 

「ネウロイだけでも手を焼いている有様だというのに、更に人型の怪物とは…おまけに人語を理解して話すなどと」

 

カールスラントの年老いた将官が頭を抱え、悩まし気な声色で呟く。

彼を始めとした将官らの手元には同じ内容の資料があった。

その内容というのは世界初のウィザードことソーマ・スペランツァ中尉と第504統合戦闘航空団アルダーウィッチーズがまとめ上げ提出したネウロイとは別の怪物ウロボロスの情報。

 

「でっち上げた作り話ではないかね。この報告書を提出してきたのはマロニーの子飼いの犬だったウィザードだろう?とてもではないが信用するに値するか疑わしい情報元だな」

 

「報告書の内容は504統合戦闘航空団隊長であるドッリオ中佐も書いている。加えて副隊長である扶桑海軍の竹井大尉も両者の報告書にサインをしている。そして何よりヴェネツィアの街が荒らされ我がロマーニャ軍から多数の戦死者が出ている事実がある。貴方がでっち上げだという怪物の手によって」

 

揶揄するような言葉を放つリベリオンの将官に苛立ちを隠すよう務めながらロマーニャの将官が平坦な口調で返す。

仲良しこよしには程遠いやり取りはいつもと変わらないことではあるが今日は一段と酷い。

彼らが理性という人間の英知を持っていなければ手足も交えた争いなっていたとしても無理のない物々しい空気で空間が一杯になっている。

この空気を断ち切るためにカールスラント将官が咳払いをしてから将官一同に向けて言葉をかける。

 

「怪物の存在がネウロイの同種のものであるかの真偽は現段階では答えを出せない。だが今確実に言えることは我々人類もこのままではいられないということだ。人型のネウロイと謎の怪物、これら新たな脅威に対抗するためには各国のウィッチたちによる統合戦闘航空団の普及とメイジのベルトの量産による軍事力の強化が必要不可欠。そしてそのためにも我々人類は国という枠を越えて一丸となって化け共どもの根絶を目指さなければならない」

 

お世辞にも今日ここに集っている全員が全員と仲良くしているとは言い難い。だが人類が存亡の危機に瀕している以上は表面上は仲良くする努力を見せ、どんなに憎たらしく嫌いな相手であっても手を取らなければならない。

憎たらしい相手を叩き潰すのはネウロイの後いくらだってできるのだから。

 

 

 

 

 

ヴェネツィア南部沿岸の小島にはある年老いたウィッチが居を構えている。その名はアンナ・フェラーラ。

かつては空軍大尉としてヴェネツィア軍に席を置き、退役後も指導役という立場で長く軍に貢献した素晴らしいウィッチだ。

 

そんな彼女の家を一人の男が訪れていた。

黒いコートに身を包み、片手にジュラルミンケースを持った彼は家の扉を四度、一定の間隔を開けてノックすると扉の向こう側からの返事を待たずに中へと入る。

椅子に座っていたアンナは男の顔を見ると顔色一つ変えることなく慣れた様子で応対する。

 

「またかい」

 

「そうだ。また仕事を頼みたい」

 

そう言って男がジュラルミンケースのロックを外して中身を見せる。

そこには部屋の照明の光を反射して輝く美しい青色の宝石が収まっていた。

宝石の大きさは成人男性の握り拳くらいはある。

 

「この前の緑のと同じような奴だね」

 

「最低でも前と同じように変身用と攻撃用の二つは欲しいところだ」

 

「私に言われても困るね。そういう注文は石にしてくれ。私は石の声を聞いているだけ。ただ石がなりたい形になるように要望に応えているだけさ」

 

アンナは男からケースを受け取り机の上に置くと、男にではなく彼の持って来た魔法石に視線を注ぐ。

 

「本当にウィッチの役に立つんだろうね」

 

「もちろん。この魔法石はウィザードの魔力を高め強くする。彼が強くなることに伴いウィッチたちの戦いも楽になる。そしてこの魔法石を指輪として形して力を発揮させることが出来るのはこの世に貴女を置いて他にはいない。貴女もまたウィッチと人類にとっての希望だ。これまでの貴女の協力には大変感謝している」

 

「…できるだけすぐに仕上げるようにはするよ。早いに越したことはないだろう?」

 

「すまない。よろしく頼む」

 

渡す物を渡し終えた男は用は済んだとばかりに早々と家を出て行く。

 

「こんな年老いた女でも若い子らの役に立ってるってのはいいけどねぇ…どうにも」

 

まだ自分にもできることがあるというのは素直に嬉しい。

しかしアンナは男を信用できずにいる。

 

アンナと男の出会いは突然だった。退屈な隠居生活を送る中で趣味の一環として魔力を秘めた石『魔法石』を集めてはアクセサリーを製作していたアンナの元に男は連絡もなしに訪れ、持って来た四色の魔法石で指輪を作るように求めてきた。

軍人であることは明かしても名前すらも教えない、その上初めて会う男の要求を叶えてやる必要はないと思いアンナは最初は断った。

しかし

 

『人類を、そしてウィッチを守るために必要な物だ』

 

その言葉にアンナの関心は一気に引き寄せられた。ウィッチのあがりとされる年齢を越えても魔力は残っていたが、前線に出るほどの気力と体力は肉体にはなく自分の知識と経験も後進たちには粗方伝えきった。

そんな自分でもまだウィッチの助けになることができるのなら、という考えの元彼女は承諾しいつも男が持ってくる魔法石から指輪を作ってきた。

これまで要した時間は半年以上、完成させた指輪は数十にも及ぶ。

 

「どうにも好かないんだよねぇあの男は。聞こえのいい言葉を並べる割にそこに気持ちがこもってる気がしない…」

 

自分の作った指輪はウィザードやメイジの力に使われ、その力が人類に多大なる利益をもたらしていることはアンナも知っている。

特にウィザードとウィッチの十二人で成し遂げたガリア解放はこんな自分でも貢献できたのだととても喜んだものだ。

だから男の言い分が間違っているとは思えない。でもどこか好感は持てないというところが本音だ。

 

「自分がひねくれているだけなのか、年寄りの勘違いであることを祈りたいねぇ…」

 

そう言葉を零すとアンナはケースから魔法石を取り出して作業の準備に取りかかった。




ストライクウィッチーズ2編1話というより実質プロローグな件…長野県の遺跡が出てきましたが平成1号は出てきません。もしかしたらあの世界の太古の昔にはいたかもしれない程度のふわっとした裏設定くらいの存在感になります。

そしてアンケートご協力頂きありがとうございます。まだまだアンケートの方は継続する予定ですので引き続きそちらもよろしくお願いします。
今のところ自分の予想していなかった流れになっていて驚きました。
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