ストライクウィッチーズ~約束の空~   作:カメクリオ

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第五十三輪 魔法使いの協力者

「ふぅ~気持ちいいね」

 

「一生懸命水を運んできた甲斐があったね」

 

宮藤とリーネ、ペリーヌは星々の浮かぶ夜空を見上げながら各々清らかな裸身を温かな水の中で癒していた。

彼女たちの浸かっている風呂はロマーニャ基地のものではない。ある老ウィッチの所有する島の敷地内にある風呂だ。

ではなぜ彼女たちがその風呂にいるのかというとそれは三人に原因があった。

 

三人は訓練についていけていなかった。宮藤は軍を抜けて実家の診療所を手伝っていたから、リーネとペリーヌはガリア復興に勤しんでいたからといったように真っ当な理由によるものではあるのだが、それではいけないと判断した坂本によって彼女に所縁のある老ウィッチアンナ・フェレーラの元でウィッチとしての勘を取り戻す特訓をすることになった。

 

「でも明日は基地に戻るんだよね」

 

ストライカーユニットの支援を受けずに魔力のコントロールし、箒で空を飛ぶ。

数日に渡って訓練も今日で終わりを迎える。

そのことに名残惜しさを若干感じながらリーネは指先を絡めて両腕を頭上に伸ばす。本人としては何の気のなしに行ったその動作はある人物にとっては密に顰蹙を買っていた。

 

(年は同じなのにどうしてリーネさんの胸はあんなにも大きいのかしら…私だってあれくらいあってもいいはずなのに)

 

ペリーヌには強調されたリーネの胸に納得いかなかった。

性格は大人しくて決して目立ちたがり屋というわけではないのにどういうわけか性格に反して肉体の主張は激しい。

ペリーヌにとってはシャーリーに追随する程のリーネの女性的なボディは羨ましくもあり、時に自分にはないものを持っている彼女を恨めしく思った。

 

(リーネちゃん、いつ見てもすごいなぁ。前よりも大きくなったんじゃないかな)

 

そしてリーネの胸部に視線を注ぐ者はもう一人、宮藤だ。彼女はペリーヌのように恨めしさはなかったが彼女よりも危ない思想を持っていると言えるかもしれない。

もしも彼女に客観性と理性が備わっていなければ今ここで飛びついて自分の手で欲望のままにリーネの胸を揉みしだき、谷間へ獣のように飛びついて顔をうずめたていたかもしれない。

 

 

お風呂も終わり、食事も先ほど済んで後はベッドで眠るだけ。そうすれば勝手に朝日が戻って訓練を終えた自分たちは基地に戻れる。

 

「あそこ、灯りがついてるね」

 

宮藤が寝食を行った建物ともストライカーユニットを収納している建物とも違う建物の窓から灯りが漏れている。

アンナが何かをしているのだろうか。

気になって三人が音を立てないように扉を開けて中を見てみるとアンナがいた。

 

「やっぱりアンナさんだ…あの石」

 

宮藤たちはアンナの姿よりも、彼女が道具を使って削っている青い石に注目した。

作業をしていたアンナは自らに注がれている視線を肌で感じたのか作業の手を止めて扉の近くにいる三人に声をかけた。

 

「まだ起きてたのかいあんたたち」

 

「アンナさん、それって」

 

肌寒い風が入ってこないように扉を閉めてから宮藤たちはアンナの側に近付く。

三人の興味が自分にではなく手元の石にあることにアンナは気付いた。

 

「ああ、そういえばあんたたちはウィザードの坊やと一緒の部隊にいるんだったね。そうさ、これはあんたたちの仲間が使ってる魔法石だよ」

 

「魔法石?」

 

「なんだい、初めて知ったみたいな反応だね。まさか何も知らないのかい?」

 

その反応に意外そうな表情をしたアンナ。彼女は手で作業を再開しながら宮藤たちに席に着くよう促す。

 

「まぁいいさ。訓練頑張ったご褒美に教えてあげるとしようかね。座りな、説明するとなるとちょっとばかし長い話になるからね」

 

言われた通り宮藤たち三人は各自椅子を用意して座った。動作の完了を見届けたアンナは石を削りながら口を開く。

 

「いいかい、あんたたちのよく知ってるウィザードやメイジの使う指輪は魔法石っていう石が元になってる。私の役目は魔法石の中に秘められている力を完全に発揮できるように指輪にして、魔法使いが使えるようにしているんだよ」

 

「そもそも魔法石ってなんなんですか?」

 

「名前の通り魔力が込められた石さ。世界中のあちこちで発見されてる。山の壁やら地面の中やら、海の底なんかで見つかったこともある。中に魔力が入っているのは遠い昔にいたウィッチが自分たちの魔力を石に込めたことで生まれたからなんて説もあるけどそれが真実かどうかは定かじゃない…本当に何も聞いてないんだねえ」

 

アンナからすれば今話した内容は自分からすれば初歩的な情報。ウィザードやメイジのような自分の完成させた魔法石の指輪を扱う者たちに囲まれているはずの宮藤たちがそんなことすら知らないことには驚いた。

 

「知りませんでした。そんな話ソーマさんから聞いたことがなくて」

 

「ソーマ…ああ、ウィザードの坊やか。そういやそんな名前だったような覚えがあるね」

 

「アンナさんはスペランツァ中尉とは会ったことがありませんの?」

 

まるで初耳であるような話し方にペリーヌが疑問に思ったのと同時に質問をした。

 

「会ったどころか話したことすらないね。電話でだってやり取りはないね」

 

「でもアンナさんが作った指輪をソーマさんが使ってるんですよね。どうやって指輪を?」

 

「私が仕上げた指輪はいつも別の奴が取りに来てるんだよ。そいつがそのソーマってのに渡してるのかあるいはまた別の奴を介して渡してるのかは知らないがね」

 

質問に答えている間にアンナの作業は終わりを迎えており、彼女は宮藤の前に青い石から出来上がった指輪と既に出来ていた指輪を置く。

 

「ほら、できたよ。持っていきな」

 

「いいんですか?誰か他の人が取りに来るってさっき」

 

「どうせ魔法使いの坊やのところに渡るんだからあんたたちに渡したって一緒だろう」

 

「ありがとうございます…」

 

取りに来る人への罪悪感を感じて控えめながらも礼を言うと宮藤は二つの指輪を手に取り、横から顔を出すリーネやペリーヌと一緒になってそれらを見つめる。

 

(青い色、ってことはこの指輪の中にあるのは水の力…ってことになるのかな)

 

色はいずれも青、一つは竜と氷の絵が描かれている。もう一つは色は違えど形状はソーマがハリケーンリンクスに変身する際に使う物と同じであった。

となればソーマがこの指輪を使って発揮するのは水属性の力が強化されたウィザードであることは何となく想像が付いた。

 

「アンナさんはどうして指輪を作ることになったんですか?」

 

仕事を片付けて肩が凝ったのか自分の手で肩を揉むアンナ。彼女にペリーヌが率直な疑問をぶつける。

 

「暇つぶしさ」

 

「暇つぶし?」

 

「現役を引退して年を取って動けなくなるとやることがなくて時間を無駄にすることが多くてね」

 

「それが理由?」

 

思わぬ返答にリーネもペリーヌも首を傾げて聞き返す。

思ったよりも軽い動機だな、と思ったが続くアンナの言葉によってそれは誤解だと知ることとなった。

 

「それに戦えないこんな年老いた女でもまだ戦ってる若い者の力になるってんなら引き受けようと思ったのさ」

 

「アンナさん…」

 

暇潰しと聞いた先ほどとは違ってペリーヌはアンナに尊敬の眼差しを向けた。

ご高齢の身であっても自分なりの戦い方で人類の平和のために戦っている。

そんな彼女の姿に刺激を受けたのは宮藤もだった。

 

「アンナさん、私頑張ります!アンナさんのような人たちの分までネウロイを倒して世界を救って皆を守ってみせます!」

 

「だったらここで学んだこと、忘れるんじゃないよ。すぐまた戻ってきたら次はもっと大きな風呂に水を入れてもらうことになるよ」

 

「はい!」

 

意気のいい返しにアンナは口元に軽く微笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

「あの家で間違いないんだな」

 

「本国諜報部からの情報通りです。老婆のウィッチが一人、それとその家族を思われる人物が数名」

 

それは宮藤たちが去って数日が過ぎた夜に起きた。

アンナとその娘たちの住む家に三つの影が迫っていた。

 

「その程度であれば出直す必要はないだろう。彼女を他の軍が狙っているという情報もある。その前に我がリベリオン軍の管轄で保護する」

 

「保護ですか?保護にこれがいるんですかね?」

 

肩から下げた銃を叩いてある兵士が言う。銃を携行しているのは他の二人もだった。

 

「なにもしもの時の備えだ。もしも彼女が保護をしようとする我々の邪魔をするなどした場合などには必要になるかもな」

 

「それはつまり、もしそうなった時には多少手荒な真似をしても構わないということでしょうか」

 

「保護対象に危害を加えさえしなければな」

 

隊長の言葉に他の二人の兵士も小さく笑う。

この場合の保護、というのが言葉通りの意味を持たないことは全員が理解していた。

彼らがリベリオン本国より課せられた作戦命令、それは『ウィザードとメイジの指輪の製作に関わっているとされる者』の確保。

マロニー騒動の後、既にウィザードを有しているロマーニャを除いたどの主要国にもメイジのベルトは均等な数を保有することが連合軍の間で決定された。

しかしリベリオンとしてはその決定では満足しなかった。他国と全く同じパワーバランスをこの先も維持し続けるなどご免だからだ。

他国よりも、特にロマーニャよりも優位に立つためにウィザードやメイジの扱う指輪を製作しているという人物を自国に引き入れ、ウィッチのように消費期限のない戦力を手に入れる。

 

「指輪を作る技術を持つ彼女の協力を得ることができればリベリオンの戦力が各国を遥かに上回る。いくらロマーニャのウィザード、他国のウィッチやメイジであろうと優れた質を得た数の前には歯が立たんだろう」

 

指輪の製作技術を持つアンナを有すればリベリオンはやがて戦力が大幅に向上し、それをもって一気に世界の頂点に君臨することができる。

リベリオン一強時代を築くその野望への一歩を彼らが踏み出し、アンナの住居に迫ろうとした時だった。

彼らの前に白い魔法陣と共にその中から一人の白色のメイジが現れた。

 

「なっ、にっ!?」

 

いきなり目の前に出てきたメイジに動揺しながらもリベリオンの兵士たちは銃を起こし、三つの銃口を向ける。

そのメイジは彼らの知るメイジとは異なる点が外見に見受けられた。

リベリオンを含めた各国のメイジはウィザードの基本形態ハリケーンスタイルと同じ緑だが目の前にいる相手の色は白。夜空に浮かぶ月と似たような白色であった。

どこのメイジかは知らないが、その一点だけでも彼らに警戒心を抱かせるには充分な理由となった。

 

「た、隊長!?」

 

「貴様、何者だ!?国旗の腕章がないようだがどこの所属だ!いや、どこの所属だろうとどうでもいい。とにかくそこをどけ!命が欲しくばな」

 

外見の装備や色が全て共通しているメイジにはどこの国の所属が誰にでもす遠目でもすぐに識別できるように腕に国旗を付けることが連合軍の間で取り決めがされている。

ところが目の前のメイジには国を識別できるような物が一切ない。それも三人の兵士たちの警戒感を強める要因となった。

 

「…魔力のないに等しい兵士風情が。お前たちに用はない。命が惜しければ早々にここから去れ」

 

「ふざけたことを!」

 

警告に対して警告で返され、なんならこの状況下でありながら高圧的で見下されたような言葉にリベリオンの隊長は一層引き金に添える指に力を入れる。

一歩間違えれば発砲しかねないところだが彼はそれでもいいと思った。

どこの馬の骨とも知らぬメイジの一人を殺したところで自分たちには何も問題ないからだ。

 

「警告はした」

 

『エクスプロージョン、ナウ』

 

メイジの身に着けたベルトが指輪を認証した瞬間、リベリオンの兵士三人は音もなく爆炎に飲まれ、彼らには悲鳴が上がる暇さえ与えられなかった。

銃口から弾丸が飛び出すよりも魔法の発動が遥かに早かった。

 

「愚かは最期まで治らなかったようだな」

 

軽い一仕事を終えたメイジはさっきまで兵士たちがいた地面を一瞥してアンナの家のある方角に顔を動かした。

 

メイジの変身を解いた男は工房に向かって歩き出す。

目的の部屋の明かりが付いているのを確かめて扉を数回ノック。相手の返事を丁寧に待つ。

 

「いるよ」

 

中からアンナの声を聞いてからドアを開けて足を踏み入れる。

 

「こんな時間に何のようだい」

 

「前に預けた物を取りに来た。そろそろ出来上がってもいい頃合いだ」

 

「あれならもう渡してしまったよ」

 

「なんだと?」

 

男は眉を吊り上げる。

いささか不機嫌な様子、とも取れる目をする男をアンナは怯みもせずに見つめ続けている。

 

「この間偶然来た501のウィッチにね。ウィザードに渡すつもりの物だったんならそう目くじらを立てることでもないだろ?」

 

アンナの言葉に嘘はない。でも一つだけ誤魔化している点があるとすればその行為に男への嫌がらせが含まれていたことだろう。

 

「…ならば問題ない。しかし、以後は勝手にこのような真似をしないでもらおうか。こちらにも都合というものがある」

 

「色々注文をつけてくれるねぇ。人の都合は無視するくせに」

 

「…その点に関しては申し訳ないと思っている。貴方からすれば私を信用できないのも無理のないことだろう。だがこれは人類のため、ネウロイという脅威から世界を守るために仕方のないことなのだ。それだけはわかって欲しい」

 

男はアンナの視線を受け止め、また彼女に誠意を示すように深く頷く。

 

「わかったよ。次からは前と同じようにやるよ。あんたの提示する物をあんたの求めるやり方であんたの言う通りにね」

 

「感謝する」

 

これ以上居座る必要性がなくなった男は扉を閉めて外へと出て行く。

 

草木を踏みしめる音が完全に途絶えたのを待ってからアンナもまた部屋を出て別の家屋へ、そしてその中にある寝室へと移動する。

寝室の中にあるベッドには先客がいた。

ネウロイに陥落されたヴェネツィアからアンナの娘や孫二人だ。

すやすやと心地よさそうに眠るかけがえのない愛する娘たちの姿にアンナから笑みが零れる。

 

(…もしもこの先あの男がこの子たちに危害を加えるようなことがあったら)

 

あの男がどこまで自分の情報を握っているかわからないがあの男を自分の要望を叶えさせるために娘たちを傷つけるような事態がこの先ないとはいえない。

明確な理由こそないが、男にはその懸念が現実になってもおかしくないような不気味さがあった。

 

(そうなる前に何か考えておく必要がありそうだね)




リーネちゃんは二期では一期よりも成長してるはず。そうに決まってる。そうに違いない。
そうでなくてはおかしい
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