ストライクウィッチーズ~約束の空~   作:カメクリオ

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色々立て込んでたので先月一話しか投稿できませんでした。大変申し訳ありません…

それはそれとしてルミナスウィッチーズが始まりましたね。ナイトウィッチな主人公というのが宮藤やひかりちゃんとはまた違った味があっいぇこれからしばらくまた今までにはないウィッチーズの世界が堪能できると思うと毎週の放送が楽しみでなりませんね

…そ、その楽しみを糧に投稿もが、頑張ります。ええ、頑張りますとも…


第五十四輪 新型ストライカーを巡って

嫌いではないがかといって好きでもない喧嘩の絶えない仲、というのは人間関係において珍しくない。

 

一日を同じ屋根の下で過ごし寝食を共にする間柄であっても必ずしも親しい関係と言えるのかというとそうではなく、それは武器を持たない民間人の間にも、武器を持つ軍人、そして魔力を持つウィッチにすら存在する非常によくあるどこでもありふれた人間関係の模様の一つだ。

 

「シャーロット・E・イェーガー大尉!そんな恰好で何をしている!この基地には男性職員もいるんだぞ!」

 

そう、バルクホルンにとってはシャーリーがまさにそんな相手だった。

ロマーニャの炎天下の気候の下、人目を意識しているとは思えない肌を晒した下着姿の彼女にバルクホルンが抗議を申し立てたのだ。

ところが格納庫の中に響き渡る彼女の声を一身に受けているシャーリーは全くもって意に介していない清々しい笑顔を保ったままストライカーの起こす風とエンジン音に心地良さそうにしている。

 

「しょうがないだろ暑いんだから。カールスラント人は着てる服にすら文句つけるのが作法なのかー」

 

「ふわぁ」

 

「なっ!?」

 

シャーリーの挑発的な顔色と言葉、そして何よりも背中から聞こえてきた欠伸。

それだけでバルクホルンは今自分の後ろで誰がどういう恰好をしているのか想像が付いてしまった。

けれでも直にその目で確かめなければならない生真面目さを持っていたがために彼女は振り返り、絶望した。

 

「ハルトマン!お前もか!」

 

「へぇ?何のこと?」

 

自分の相方とも呼べる存在がシャーリーと鉄骨の上で眠るルッキーニとまるっきり同じ恰好をしていた。

しかも悲しいことに当人には自分の恰好に対する抵抗や恥じらいは微塵もないようだった。

ハルトマンはそれでいいのかもしれないがしかし結果としてシャーリーに苦情を訴えていたバルクホルンが恥じらう思いを味わうこととなった。

 

「ははは!」

 

そんな彼女の姿に同情しながらもついどうしても面白さの方が勝っていたシャーリーの口から笑いが飛び、それも益々バルクホルンの羞恥を増大させる。

 

「だ、だがな!」

 

それでもバルクホルンが見過ごすまいと二の句を告げようとした時シャーリーの横から発生した魔法陣の中から衣服を持った手が出現した。

 

「お、今日も来たのか」

 

突然自分とシャーリーの間に現れたことに目を大きく開いて驚くバルクホルン。だが彼女と違ってシャーリーは手慣れた動作で衣服を受け取り、それを羽織る。

 

「終わったぞー」

 

一体誰に向けて言っているのかと、バルクホルンが首を傾げて後ろを振り向くと入口の方からソーマが格納庫に入って来た。

先日連合軍上層部から戦いでの功績を改めて評価され大尉に復帰した彼は上着を着たとはいえまだバルクホルンからしたら看過できないほど露出の多いシャーリーの姿に動じることなく歩み寄ってくる。

 

「ソーマ?」

 

「バルクホルン大尉がここにいるなんて珍しいな。どうした?」

 

「お前は何をしに?」

 

「俺は洗車。最近全然やれてなかったからさ」

 

ソーマは格納庫に隅に置いている愛用バイクマシンウィンガーを指で指し、その汚れを落とすためホースを引く準備をする。

 

「聞いてくれよソーマ。バルクホルンの奴私の服装に文句つけてくるんだぜ?」

 

「な!?」

 

まるで先生に言いつけるような、あるいは自分の方に非があるような言い方にバルクホルンは不服そうな顔をする。

 

「それは言われても仕方なくないか?一応ここ男もいる場所だし」

 

「ほら見たことか。ソーマもこう言ってるんだ」

 

「なんだよ、ソーマはそっちの味方するのか」

 

「味方、っていうか。いや前も言ったけど俺しかいない時だったらいいんだけどさ」

 

「なに!?」

 

理性的で心強い味方を得たと喜んでいた矢先その味方から飛び出た発言はバルクホルンを大層驚かせた。

 

「今の言葉は聞き捨てならんぞ。誰がいる、いないに関わらずこんなだらしない恰好は慎むべきだ」

 

「でも本人がそうしたいって言うならそこまで強制することもないと思うんだよ。服部とかがいる前だったらさすがに止めるけれど俺だけだったら俺が意識しないようにすれば済む話だし。そりゃあさっきのままだったら俺だってもちろん抵抗あるよ?」

 

「いいやダメだ。この際だから言わせてもらうがお前はリベリアンにしてもハルトマンにしても甘やかしがすぎる。優しいのと甘いのはわけが違うぞ」

 

「面倒くさいなーこれだからバルクホルンは駄目なんだよ」

 

「なんだと!?」

 

どこまでも全体の規律と調和を重んじるバルクホルン、強烈な束縛を嫌い一個人の自由を尊重するシャーリー、そして規律も自由もどちらも大事と理解して最終的な判断は本人の意思に委ねるソーマ。

そんな三つの思想が織りなす会話は一向に妥協点に行き着くことができず、平行線を辿るばかり。

 

 

三人から離れた同じハンガーの中にはまた別の組み合わせがいた。ミーナと坂本だ。

二人は赤いストライカーユニットの前で何やら話し合いをしているようだった。

 

「これがカールスラントの最新型か」

 

「正確には試作機ね。Me262V1ジェットストライカー」

 

「ジェット?」

 

「こらハルトマン!服を着ろ!服を!これは?」

 

そこに二人の姿と見慣れない新しいストライカーに気付いたハルトマンと露出の多い恰好のままで上官らに近付く彼女に気付いて終わりの見えない戦いを一時中断したバルクホルンもやって来て、新型ユニットの存在に興味を持つ。

 

「前に本国で開発されたというあれか」

 

「そう、最高速度は時速九百五十キロに到達するみたい。今までのストライカーとは桁違いね」

 

「九百五十キロ!?すごいじゃないか」

 

速度の話題で彼女が食い付かないはずがなかった。

スピードに関わる単語がミーナの口から出た瞬間シャーリーはすぐさまジェットストライカーのところへと行き、ギラギラと赤く輝く装甲に触れている。

 

「シャーリー、お前もなんて恰好だ」

 

ハルトマンよりも目線を反らしたくなる姿に苦言を呈す坂本。

それが普通の反応だよな、と思いながらソーマもやって来てミーナの横に立つ。

 

「新型なんだ。誰が使うか決まってるのか?」

 

ソーマの問いかけにミーナは首を振る。

正式な使用者が決まっていない。つまりは席が空いているということだ。

 

「中佐!私が使っていいか!」

 

「私が使おう」

 

そこで二人の人物が名乗り出た。言わずもがなシャーリーとバルクホルンの大尉両名だ。

 

「なんでお前なんだよ。スピードの世界を知る私が使うべきだろ」

 

「お前の頭には速度のことしかないのか!」

 

「またか」

 

今日という一日が始まってまだそう時間が流れていないのに本日二回目のカールスラント・リベリオン口論が始まった。

スピードに秀でた性能を持つカールスラントのストライカー…シャーリーが関心を示しだした辺りから薄々目の前の光景が現実に起こりうるだろうと考えたし、なんならさっきのやり取りも若干聞こえていた坂本は頭を抱えたくなる気分になる。

自分というものを強く持っているのはいいがもう少し落ち着いた話し合いというものができないのだろうか

 

「二人共そんなんじゃ一向に決まらないぞ。一旦落ち着いたらどうだ?」

 

坂本の心情を見透かしたようにソーマが仲介役を買って出ようとする。

ところが二人から返ってきた反応はソーマの期待を大きく裏切った。

 

「ソーマは私がこのストライカーを使うべきって思うよな!?ソーマの使う時の私の魔法ジェットで一緒だしさ、私にピッタリだろ?な?」

 

「そんなこじつけがまかり通るか!カールスラントのストライカーならば私が扱うのが理にかなっている。お前ならばわかるだろうソーマ!」

 

「…なんで俺に聞いてくるの」

 

まさかこの流れで揃って自分に意見を求められると想定しておらずソーマは大した返事もできずにたじろいでしまう。

もちろんこの間にジェットストライカーに意識を向ける者はいない。

そうしてできた隙に上から飛び降りたルッキーニが誰よりも早くジェットストライカーに足を通した。

 

「いっちばーん!」

 

「あ」

 

「こら!」

 

「ずるいぞルッキーニ!」

 

「へっへーん。早い者勝ちだもんね!」

 

意気揚々とジェットストライカーを装備したルッキーニは魔法力を発現させて起動しようとする。

ストライカーの起動音が大きくなり、連動して展開する魔法陣も大きくなっていく、ことはなくルッキーニの全身を奇妙な感覚が駆け巡った。

 

「びゃああああ!?」

 

ルッキーニは尻尾を踏まれた猫を彷彿とさせる動きで飛び上がりジェットストライカーから離れると逃れるようにシャーリーの背中へと移る。

 

「どうしたルッキーニ?」

 

「シャーリー、あれ使わないで。変な感じする」

 

今の短時間で何が起こったのかシャーリーには理解できない。でもルッキーニの怯えようはただ事ではないのはわかる。

となれば彼女が取る選択肢は一つだった。

 

「やっぱやめた。私はパス。考えてみたらレシプロでやり残したことがあるからさ」

 

「ふん、怖気づいたか」

 

「言ってろ」

 

「ではミーナ、性能の確認をしよう。早くこのストライカーの実力を試したい」

 

シャーリーとの口喧嘩に見切りを付けてバルクホルンはミーナに進言する。

成り行きを見守っていたソーマも彼女に続いてミーナに話しかけた。

 

「俺も参加していいかな?比較になる対象は多いに越したことはないだろ?」

 

「ええ、是非お願いしようかしら」

 

メイジも前線に積極的に投入されるようになった現状を踏まえると魔法使いの始祖たるウィザードとの比較検証はしておくのも必要だろう。

ミーナには彼の参加をわざわざ拒む理由は思いつかなかった。

 

そうして始まったバルクホルン、シャーリー、ウィザードによるジェットストライカーの性能テスト。

最初の項目は上昇、いかに高高度まで飛翔できるかの測定だ。

 

バルクホルンのジェットストライカー、シャーリーのレシプロストライカー、ハリケーンスタイルのウィザードが一斉に空へと飛び立った。

 

「くっ!」

 

離陸して最初に三人の中で異変が起きたのはシャーリーだった。高度の限界を迎えたレシプロストライカーのプロペラが黒煙を上げ、上昇が止まった。

そのために彼女は自分の横を斜め下から通り過ぎていったウィザードを目で追うことしかできなかった。

そしてもう一人、遥か高みを行くバルクホルンとジェットストライカーも。

 

「シャーリーさん一万二千メートルで止まりました。バルクホルンさん、尚も上昇中…すごい」

 

「ソーマも頑張ってるけどバルクホルン大尉のあれの前じゃ霞んで見えるな」

 

魔導針を使って位置情報を把握するサーニャと隣で空気に寝っ転がるような体勢のエイラは縦に伸びる三つの飛行機雲を見てそう呟く。

時間がかかっても上昇を続けるウィザードもすごいが、バルクホルンのジェットストライカーはその数段先を行く凄さなのが一目見ただけでもわかる。

 

(こっちもそろそろ高度の限界が来てるな。なのにまだ上がり続けてる。上昇速度もさっきから落ちてないじゃないか)

 

自身も上昇を続けながらウィザードはまるで衰える気配を見せないジェットストライカーを見上げていた。

 

 

「次はなんなんですの?」

 

「搭載量勝負だって。どれだけ武装を積んで飛行できるか」

 

ペリーヌとリーネの目の前には戦闘用の装備の装着を行っているバルクホルンとシャーリー。

だが何故か準備を行わずに椅子に座り込んでいるソーマに宮藤と服部は声をかけた。

 

「ソーマさんは参加しなくていいんですか?」

 

「もうすぐ始まっちゃいますよ」

 

「俺は今回は見学。物を小さくしたり大きくできる奴が参加したって大して意味ないだろ?」

 

「そっか、確かにそうですね」

 

ソーマの放った言葉に宮藤たちは納得したような顔になった。

スモールやビッグで大きさを好き勝手に変えられるある意味インチキじみた手段が使えるウィザードにとっては搭載量を競う勝負は無縁の項目だろう。

 

だからソーマはわざわざミーナに見学の許可を貰ってバルクホルンとシャーリーの対決に神経を注ぐことにした。

 

「待たせたな」

 

準備が終わったバルクホルンの声につられてその方を向いた皆が一様に目を見開いた。

 

「おいおいそんな装備で飛べるわけないだろ」

 

彼女は背中に人間の体を易々と上回る長さの砲塔、両手に銃火器、加えて予備の弾薬を携行している。

バルクホルン自身の魔法があることを考慮してもとても満足な飛行ができるとは思えず、シャーリーの口にした心配はまさに全員の共通の見解であった。

 

「ふん、問題ない」

 

しかしバルクホルンは彼女の言葉を一蹴した。彼女には確かな自信があった。そして結論から言ってその自信は間違いでなかったと自身の手で証明した。

 

重装備を抱えながらも衰えないスピードで仮想敵として浮かべたバルーンを無駄撃ちなしの数発で落としてみせたのだ。

 

「マジかよ…」

 

予想を大きく裏切るジェットストライカーの力にシャーリーは唖然とする。

当然地上で見ていた仲間たちも彼女と遜色ない反応であり

 

「あれで問題がないなんて…」

 

「とんでもないパワーだな。あのジェットストライカーって奴は」

 

ペリーヌも服部もジェットストライカーの成果に驚嘆を露わにする。

そして何より一番驚いていたのはそれを履いているバルクホルンだった。

 

(すごい、すごいぞ。このジェットストライカー…これがあればカールスラントの奪還も夢じゃない)

 

新型の性能は自他の評価に厳しい彼女からしても実に素晴らしいと手放しで褒められる。

二つの勝負でシャーリーを上回り、高度ではウィザードすらも凌駕してみせた。

これを身に着けて故郷を奪還する自分の姿は今のバルクホルンには容易に思い浮かぶ光景であった。

 

シャーリーとバルクホルン、そしてソーマの三人を応援したいという宮藤の思いから今日は格納庫でご飯を取ることになった。

彼女の作ったカツオを使った料理に対する感想は様々で

 

「今日もうんまいなー。私は料理のことはわからないけど宮藤の作る料理はさいっこうだな」

 

「ほんとにそうですよ。芳佳の料理、俺の母さんの料理の味に近くてもうたまらないぜ」

 

「そう言って頂けると嬉しいです」

 

シャーリーと服部は舌鼓を打ち、絶賛の声を上げる。

皮肉を一切言わない二人とあって宮藤も疑いなく言葉を受け止めた。

 

「なんでこんなところで食べないといけませんの」

 

「文句言いながら食うな」

 

料理の味にはおおむね満足しているが場所に不満があるペリーヌ。エイラは彼女を注意しながらも胃袋に料理を運んでいる。

 

「とっても美味しいよ芳佳ちゃん」

 

「ありがとうサーニャちゃん」

 

もちろんサーニャもその例に漏れず宮藤に褒め称える。

その彼女に食事の手を止めて、意識を向ける者がいた。

 

(この前はできなかったからリトヴャクさんと話しをしたいけど何をどう話したらいいんだ…ご飯美味しいですねとか、か?けどそれ言うならリトヴャクさんだけに言うのも変だしな)

 

その者というのは服部であった。未だに唯一ちゃんと話しをできていないサーニャと会話したいと思っているのだがこの状況で彼女に何と言葉を切り出したらいいのか上手く思いつけずにいた。

 

「あの…」

 

(でもここで何か言っとかないと次いつ話せる時が来るかわからないしなぁ。何か、何かいい切り出し方は…)

 

「おい、おいってば!」

 

「-はい?」

 

思考を中断して服部は自分に声をかけてきた二人、サーニャとエイラの方に顔を向ける。

サーニャは当惑を、エイラは奇妙な物を見るような目で服部を見ていた。

 

「俺ですか?」

 

「お前しかいないだろ。さっきから何サーニャのことジロジロ見てんだよ」

 

「-え!?見てました俺?」

 

「とぼけてんなよ。思いっきり見てただろ」

 

「私の顔…何か変ですか?」

 

「あ!いや、変だなんてとんでもない。全然そうじゃくてその…えっと…なんでもないです、すみません」

 

歯切れの悪い返事をしながらこの時服部は後悔した。何故反射的とはいえ誤魔化さず本当のことを言わなかったのかと。

しかし後悔しても時既に遅し。エイラには益々珍獣を見るような目を向けられてしまった。

 

「はあ?なんだそれ。変な奴だな」

 

(やっちまった…完全にリトヴャクさんに変な奴だって思われたよ)

 

エイラの言葉通りサーニャにはそう思われてもおかしくない印象を持たれてしまったことだろう。

服部は視界の端にサーニャを入れてはいても彼女の表情をよく見えない。知るのが怖くて見れなかった。

 

 

ソーマもまた宮藤の料理の美味しさを確かめながらも感想を口に出さず、ある一点を見つめていた。

その先にいたのはバルクホルン。

彼女は宮藤の置いた食事に一口も手を付けず、木箱の上に座って項垂れていた。

 

 

 

 

屋外に設置された二つのドラム缶、に入る三人の姿があった。

一つのドラム缶には宮藤とルッキーニが、もう一つのシャーリーが入っており、焚火で沸かしたお湯に身を浸かっている。

 

「くぁ~こんな形の風呂を思いつくなんて扶桑ってのはつくづく変わってるよな」

 

食品を敢えて腐らせて美味しい味を生み出す食事といい、つくづく扶桑の奇想天外な発想には驚かされる。

シャワーや大きな浴槽に浸かっての入浴とは違った味わい深さがあってシャーリーとルッキーニは大層お気に召したようだ。

 

「芳佳、もっとそっちいってー」

 

「あ、ごめん」

 

ただルッキーニと芳佳は二人で同じドラム缶を使っているのでお互いが窮屈な思いをしない位置取りをするのに手こずっている。

 

「こっちは私一人でいっぱいだからな」

 

そんな小柄な二人がスペースの確保に悪戦苦闘する様を見物するシャーリーの居心地は快適だ。

何しろ高身長と大きく実った胸のおかげで彼女のドラム缶には他者が入るこむだけの間が存在しないからだ。

いくら小柄なルッキーニといえども不可能なほどに。

 

「バルクホルンさん今日はなんだか様子が変でしたね」

 

「きっとあれのせいだよ!」

 

「あれって、ジェットストライカーのこと?」

 

「そう、それ!ビビビッってきたし」

 

どんなに不調の時でも食事だけは欠かさずにとっていたバルクホルンが録に手をつけなかった。

その異常の原因を宮藤は推測から、ルッキーニは実際に一度履いた体験からジェットストライカーにあるのだと言った。

 

(明日もやる気なのかなあいつ)

 

紅の空を見上げてシャーリーはふと考えた。

 

 

そして同じ可能性を考える人物が彼女たち以外にももう一人いた。

 

夜、誰もいない格納庫をソーマは訪れた。

周りに人の姿や気配はないとはいえもしものことを考えて大きな音を立てないように足を忍ばせてジェットストライカーの手前まで足を進める。

 

「バルクホルン大尉のあの様子はどう考えてもこれが原因だよな」

 

彼の頭には憔悴しきったバルクホルンの顔が残っていた。

あんなバルクホルンを見たのは初めてだし、歴戦のエースたる彼女がいくら新型とはいえたかだか性能テストであそこまで疲弊するほど自分を追い詰めるなど考えにくい。

今日あの顔を見れる機会が訪れることになったのはこのジェットストライカーを置いて他に考えられない。

 

「でも一体何をどうすればいいのか…」

 

原因ははっきりしていても、何かしたいと思う気持ちがあっても、整備士でもなければ技術者でもない自分に何ができるのか。

その答えが出ないままソーマは暫しの間ジェットストライカーの前から離られずにいた。




実は個人的に二期の中で一番好きな回がこのジェットストライカー回またの名をシャーゲル回。この回でシャーゲルが一気に好きな組み合わせになりました。
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