ジェットストライカー性能テストは二日目に突入。
昨日の『高度』『搭載量』に続いて今日最初に行う項目は『スピード』、単純な速さを競う対決だ。
「頑張れシャーリー!」
「ああ、スピードでは必ず勝ってみせるさ」
となればシャーリーが俄然やる気になるのは当然の理だった。
他の二つならばまだしもさすがにスピードでまで負けてなるものかと闘志を燃やす彼女にルッキーニが精一杯の声援を送る。
なんとも微笑ましく思える光景を尻目にソーマもベルトを出現させる。
「それやめてくれないかソーマ」
そのままハリケーンリンクスの指輪を指に通そうとするが待ったがかかる。
その言葉にソーマは動作を止めて首を向けるとシャーリーは真っ直ぐな瞳で見返していた。
「私とP-51だけの力だけであれに挑戦したいんだよ」
「わかった」
「悪いな、わがまま言って」
シャーリーとももうそれなりに長い付き合いだから彼女が速さにかけるこだわりは知っている。
ソーマは不機嫌な様子を見せずすんなりと要求を飲んだ。ハリケーンリンクスの指輪を戻してハリケーンの指輪に変え、シャーリーもそんな彼の配慮に礼を告げる。
ソーマがウィザード・ハリケーンスタイルに変身したところでジェットストライカーを身に着けたバルクホルンもやって来る。
ただやはりというべきか昨日に引き続いて表情に濃く疲れが表れているように思える。
「お前大丈夫かよ」
「余計な心配は無用だ。お前こそそれで負けても言い訳は受け付けないぞ」
「んだと!」
愛用するストライカーと自分だけの力のみではジェットストライカーに勝てるわけがない。遠まわしにそんな挑発を言われてる気になってシャーリーの心からバルクホルンへの気遣いは消し飛んだ。
バチバチと、視線が火花を散らしているようにも思える対抗心剥き出しの二人をウィザードは交互に見やった。
三人は空中に並び、旗を持ったルッキーニの合図を待つ。
彼女が旗を降ろしたと同時にスタートとなる。
(何事もなければいいけど)
何でもない風を装っているのはソーマにもわかっている。
この後起こりうるかもしれない事態に備えてバルクホルンを心配しながらソーマは足に魔力を集めて開始の合図を待つ。
「よーい、ドン!」
ルッキーニが降ろした旗を合図に一斉に飛行を始めた。
ただし前に進んだのは二人だけであり、バルクホルンは体を動かすこともしなかった。
「あれ?ドーンだよ、ドーン。ねぇ!」
「バルクホルン先輩?始まってますよ!」
「ねぇってばー!」
一向に微動だにしないバルクホルン。彼女を不審に思ってビーストが声をかけ、ルッキーニに至っては旗を大きく何度も振っているがそれでも動きに変化はない。
「まだ動いてない?何をしてるんだバルクホルン大尉は」
これには前を行くシャーリーを全力で追っていたウィザードも後ろに首を向けざるを得なかった。
動きが鈍かったり、思った以上の速度が出ないのならわかるがてんで動こうとしない姿にはウィザードも理解が追い付かなかった。
(来ない…あいつ、勝負を諦めたのか?)
シャーリーもバルクホルンがいつまで経っても自分の前後に現れないことに疑問を思っていた。
開始前、あれだけ挑発を吹っ掛けておきながら舞台を降りたのかと
しかしそんな彼らの僅かな不安は徒労に終わった。
バルクホルンがやっとジェットストライカーを吹かしその強風でルッキーニとビーストを吹き飛ばしたかと思えば、瞬く間にウィザードを追い抜きその際に発生した風は彼に目を腕で守らせた。
「な!?もうあんなところに…」
一瞬にして横を通り過ぎてシャーリーに迫りつつバルクホルンにウィザードは面喰ってしまう。
「速い、これじゃ追い抜かれる…くそ!」
ストライカーユニットに魔力を送ってシャーリーの速度が少しだけ上がる。
だが努力も虚しくジェットストライカーを操るバルクホルンは軽々と彼女の横を経由して前方へと躍り出た。
(そんな…私がスピードで負けるなんて)
全力を出してもてんで太刀打ちできなかった事実を目の当たりにしてシャーリーは衝撃を受ける。
(まるで天使に後押しされているようななんて心地良い感覚…)
当のバルクホルンは今までに感じたことのない速さと気持ちよさに高揚していた。
そしてその高揚を保ったまま彼女は脱力感と共に意識を失った。
「なんだ?」
上から下へ、下から弧を作るように右上へ
いきなり不規則な軌道を描き出したバルクホルンの生み出す飛行機雲にウィザードは良からぬ予感がした。
彼の目の前で飛行機雲は上から下へと真っ直ぐな線となっていく。
「まずい!シャーリー!」
『ハリケーンリンクス!プリーズ!』
ソーマがハリケーンリンクスに変身した。
自身の体の発光と内側からこみ上げてくる力の上昇によってそのことに気付いたシャーリーは迷わずバルクホルンの元にフルスピードで飛ぶ。
だが元より大きく引き離された距離は強化された彼女の全力を持ってしても簡単には埋められず、このままいっても手が届くよりも先にバルクホルンの体は海に沈んでしまう。
(ダメだ…間に合わない。手も届かない…)
飛行を継続しながらも諦めたシャーリー。
バルクホルンが海面に激突する。その間際、バルクホルンの体の近くに出現した魔法陣から伸びた手が彼女の腕を掴んで落下運動を止めた。
「海に落ちるのだけは避けられたか」
バルクホルンの腕を握っているそれはウィザードの手。ジェットの魔法でコネクトの有効範囲まで近づいてなんとか間に合った彼のものであった。
彼が止めてくれたおかげでシャーリーは遅れてバルクホルンの元に到着することができた。
シャーリーはバルクホルンの腰に手を回して体を支える。
「バルクホルン大尉の様子は?」
「気を失って寝てるだけだ」
「そうか、ならよかった。基地に戻って休ませてあげよう。俺も運ぶの手伝うよ」
「ああ、頼む」
シャーリーは右腕を、ウィザードは左腕を自分の肩に回してバルクホルンを基地まで移送する。
バルクホルンに負担をかけないようにゆっくりと帰投するその道中シャーリーの瞳はバルクホルンではなく、緑の仮面の横顔から反れることはなかった。
(さっきまで私よりずっと後ろにいたのにもうここまで…)
バルクホルンが目を開くと自分の周りに仲間たちがいた。
見慣れたハルトマンとミーナ、宮藤やリーネ、服部にエイラ…バルクホルンは気付いていないがシャーリーとソーマ以外の皆がベッドを囲うように立って心配そうな眼差しを向けている。
「皆どうした…こんなに揃って」
目が覚めたばかりでこの状況に至った理由がわからない様子の彼女にミーナが告げる。
「ジェットストライカーのテスト飛行中に魔法力を使い切って意識を失ったのよ。ソーマさんが間に合ってくれたからそれだけで済んだけど、一歩間違えたら貴方は海に落ちていたところだったわ」
「魔法力を?馬鹿な、そんな初歩的なミスをするはずがない!」
意識を手放す程の魔法力の消費に気付かないなど歴の長い自分がするなどと、いくらミーナの言葉とはいえ信じきれなかった。
「バルクホルンの問題じゃない。ジェットストライカーの方に欠陥があるんだ」
坂本がバルクホルンの実力を正当に評価しながらミーナの発言を肯定した。
実際彼女の言う通りなのだろうと宮藤たちも思った。
バルクホルン程のベテランすらもし振り回し、意識を奪い取る危険性をジェットストライカーは持っていると
「今を持ってジェットストライカーの使用を禁じます。誰もあのユニットに近寄らないようにしてください」
「いや、テストを続けさせてくれ」
ミーナが皆に下した命令にバルクホルンが即座に異議を申し立てた。
思いがけない発言に彼女以外の全員が声に出さずとも表情で驚きを語った。
「あれは素晴らしい機体だ。あれがあれば前線の負担は一層軽くなるだろう」
「バルクホルンさん…」
「バルクホルン大尉…」
一番酷い目に遭ったとまで言ってもよいのにその原因たるジェットストライカーを擁護するバルクホルン。
宮藤とリーネは肯定も否定することはできなかったがミーナは違った。
「バルクホルン大尉、貴方には当分の間謹慎を命じます。許可が出るまで生活に必要な行為以外での自室からの外出は認めません」
「ミーナ中佐、いくらなんでもそれは!」
そう言い放ち脇目もふらず誰よりも先に部屋を出たミーナ。そんな彼女の振る舞いに呼びかけたリーネを始めとした全員は何も言葉をかけることができずにただ見送った。
「中佐、ちょっとお願いいいかな」
部屋を出たミーナはすぐ横の壁際に立っていたソーマに呼び止められた。
何故部屋の中に入らなかったのかの追求はせず、彼の雰囲気から大事な話があるのだと察したミーナは黙って先を歩き出した彼の後についていく。
そうしてバルクホルンたちのいる部屋から距離を置いた廊下に場所を変えるとソーマは振り返った。
「ジェットストライカーの資料貸してくれないか?できたらでいいんだ」
「一応理由を教えてもらえるかしら」
「俺の魔法で問題が解決できるか試してみたいんだ。ダメかな?」
「わかったわ。私の部屋に取りにいきましょう」
即答だった。
そのことに要求した身でありながら少し驚きつつもソーマは「ありがとう」と感謝を告げた。
その頃シャーリーは屋外で風を浴びていた。
基本ほとんど毎日が真夏日なロマーニャの温かな風が猛烈な暑さを運んでくるがそれでも構わなかった。
今は無性に風に当たりたい気分だった。
「あの時…」
バルクホルンを抱えて基地に戻った時ハリケーンリンクスの変身を解いたソーマの掌にはジェットの指輪が握られていた。
自分とバルクホルンとの距離もさることながら自分とソーマとの距離はもっと離れていた。
なのにああも早く合流できたのはハリケーンリンクスに変身した直後にジェットの魔法を使い、コネクトの有効範囲まで接近したのだ。
それをシャーリーはその時理解した。
「ソーマは諦めてなかった…なのに私は、最後まであいつを助けることをしなかった。スピードで負けたからって途中で諦めて」
あの僅かな間にソーマはどうすればバルクホルンを助けられるか考えて、最善を尽くしてバルクホルンを救った。
それに引き換え自分はどうだろう。
彼よりもバルクホルンの近くにいて、彼よりも早いスピードを持っていたのに最後まで足掻こうとしなかった。
心のどこかで間に合わないと諦めていた。
スピードで負けた自分よりもそんな自分にシャーリーはこれまでに感じたことのない程激しい嫌悪を覚えていた。
だから当然機械弄りなどできる心の状態ではない。バルクホルンのこともあっては余計に。
なのに足は何故か格納庫への道を進んでいた。
その足取りが行き着いた終着点で彼女を待っていたのは異様な光景。
ソーマがバインダーで止められた資料を手にジェットストライカーの近くにいた。
(ソーマ?なんでソーマがストライカーの近くに?)
ウィザードである彼がストライカーユニットに触れることなんて珍しい光景だ。
違和感を感じて自然とシャーリーは彼に近付いていた。
彼女の作る足音が聞こえたのかソーマは顔を上げて、ジェットストライカーに向けていた目をそちらに向けた。
「何してるんだ?」
「ちょっと、勉強をさ」
「勉強…」
ソーマの持つ資料にはストライカーの内部構造と部品の名称を記した図があり、シャーリーは少し見づらかったがそれがジェットストライカーに関するものであることに気付いた。
(ジェットストライカーの、バルクホルンのためか)
その言葉と今日起こった出来事を踏まえてシャーリーには彼がそれを持ってここにいる背景がすぐ予想できた。
だがあえて彼に質問をぶつけてみることにした。
「なんでまた?」
「こいつが抱えてるらしい欠点を魔法でどうにかできないかなって思ってさ。でもいざ手つけてみたら難しいな。そもそもどのパーツがどんな役割をしてるのか設計図見てもよくわからない」
シャーリーはもっと顔を近付けて資料を覗き見る。
設計図に各部に使わている情報が紙面に載せられている。
ソーマにはわからなくてもシャーリーにはパッと一目見て情報を飲み込めた。
「…これが魔力の伝達速度を速くしてて…へぇ、少し待ってな」
「え?」
言うなりシャーリーはソーマの返事を待つことなく格納庫を離れる。
執務室のドアがノックもなしに開けられた。
書類と格闘していたミーナがドアの開いた音と人の気配に顔を上げるとその時にはもうシャーリーが目の前まで歩いてきていた。
彼女が自分からこの部屋を訪れるなんて珍しい、というか初めてではないだろうか。
そんな感想を持ちながらミーナは彼女の顔に視線を固定した。
「中佐ーこの前使えなくなったって言ってたカールスラント製のストライカーあったよな。あれ、私にくれないかな?その分のお金は私の給料から引いてくれていいから」
「それは構わないけどどうしたの?」
「たまには別のユニットも弄ってみたくなってさ。他の国のストライカーを好き勝手できる機会なんてそうそうないし」
自身が投げかけた問いに対しての答えを聞いてミーナはつい口元から笑みを溢してしまう。
「あれなら確か倉庫に置いてあったと思うわ。もう誰も使わない物だから好きに使ってくれていいわよ」
「おっけー。ありがとう中佐」
許可を貰うとシャーリーは上機嫌でそそくさと部屋を出る。
その前にミーナが声をかけた。
「さっき私のところに来た人とは共犯なのかしら」
「いんや、私はそいつとは関係ないよ」
シャーリーは足を止め、体を向けてから言った。
「そうなの、でも誰のことを言っているのかはわかるのね」
「まぁね」
両者がほとんど同時に笑みを浮かべ、シャーリーは今度こそ扉を閉めて部屋を去っていった。
「今戻ったぞー」
再び耳に聞こえた先ほど聞いたばかりの声に振り向いたソーマは口を半開きにして凝固する。
シャーリーの姿はさっきまでと大きく違っていた。
カールスラント製のストライカーと工具箱を乗せた台車が近くにあり、服装は軍服ではなく整備士と同じような作業着を着ていた。
「何それ…?」
変化が色々とありすぎて何から聞いたものだろうかと悩んだソーマの口から出た一声がそれだった。
「ミーナ中佐に貰ったんだ。ジェットストライカー使うのは禁止されてるんだろ?だったら規格は違っても基本は同じカールスラント製のストライカーで実験した方がいいだろ。で、こいつは私のもう一つの勝負服だ」
ストライカーと服装の二つの律儀に指差してシャーリーは応える。
「それはその通りだろうけど、いいのか?」
「いいのかって?」
「手伝ってもらったりして」
「あのなぁ、魔法使うにしたってストライカーの知識もないのに一人で問題の解決からユニットの改良までできるのか?」
「あ……お願いしていいですか?」
この上ない正論を突き付けられソーマの中にあった抵抗が消え失せた。
自分がやろう、やろうという気持ちで頭がいっぱいでシャーリーが指摘したことなど全然考慮していなかった。
目的を成功に導くためにもストライカーに精通した彼女の協力を得るのが利口な選択肢だろう。
「それでいいんだよ。後ほら、これ私の使ってるノートな。そこに色んな国で使われてるストライカーの部品の情報書いてあるから貸すよ。わからないところあったら聞いて」
「わかった」
「そっちがそうしてる間はこれを使えるように直しとくからさ」
ノートを渡すとシャーリーは台車からストライカーユニットを降ろして、工具箱から工具を出す。
ソーマは彼女から拝借したノートをパラパラと捲り、中身に目を通す。
(すごいなこれ)
ストライカーユニットや部品の名称・特徴が事細かにまとめられていた。しかも丁寧に手書きの図まで書かれている。
彼女の性格からは少しかけ離れた几帳面さが伺えた。
「さぁ、俺も頑張らないとな」
彼女に付き合ってもらっているのだから必ずやジェットストライカーを使える物にしてみせる。
そう意気込みを内に秘めたソーマは椅子に座ってノートを読む。
「バルクホルンさん、大丈夫かな」
「大丈夫だよ。ちょっと休むことができたらきっと明日には元のバルクホルンさんになってるはずだよ」
「そうだね。今日の夕飯は元気が出る物にしてみるよ」
基地内を歩きながら呟いた服部と同様に宮藤とリーネもバルクホルンを心配していた。
「そんな単純に済めばそれに越したことはありませんけどね」
ペリーヌもジェットストライカーの性能を危惧する者の一人だったが他の三人とは少しだけ違いバルクホルンに理解を示していた。
(ジェットストライカーの性能がいかに優れていてもバルクホルン大尉のあの様子を見る限り実用化には程遠い代物…それでもバルクホルン大尉はジェットストライカーの使用を諦めることもなさそうですわね。大尉だって故郷を自分の手で取り戻したいはずですもの)
仲間たちの協力もあってのことだか自分はこの手でガリアを取り戻した。しかしバルクホルンの故郷カールスラントは未だネウロイの支配下、加えてバルクホルンが抱えるウィッチの宿命の時期を考えると、その焦りは大きいはずだ。
-なにか彼女のためにできないだろうか。
考えるペリーヌと他の三人は何気なく赴いたのは格納庫。そこから聞こえてくる音が彼女たちの会話を一時中断させた。
「ここのこれで魔法力の消費を抑えることってできないのか?」
「んーどれどれ。それだとなぁ、こういうストライカーなら使ってもいいんだろうけどジェットストライカーみたいな最新型だと大して役に立たないと思うんだよな。そこに書いたのはもう最新のじゃないし、最新のは最新ので確かもっと小型化されてるから今度は組み込められないって問題が出てくる」
「そっか、他の部品との兼ね合いだったりも考えないといけないのか」
「先輩とイェーガーさん、だよな?」
「そうだね。何してるんだろう」
音…いや声を聞いて服部とリーネが顔を合わせて確認し合う。
二つの声がシャーリーとソーマの物であることはわかった。しかし肝心の内容は断片的にしか聞こえず、一体何をしているのかまではわからない。
「難しいな」
「全部理解する必要はないよ。なんかこれ使えばよさそうだなくらいの感じで聞いてくれれば私が判断するからさ。その代わりこっちも魔法のことに関しては聞くからその時は頼むな」
近付くにつれて声が大きくなり、会話の内容も聞き取りやすくなった。
そして格納庫に辿り着いた宮藤たちの目には作業服を着て工具でストライカーユニットを分解しスプレーで塗装したりしていているシャーリーと、椅子に座って机の上に置いているノートを熱心に読み込んでいるソーマの姿が映り込んだ。
「二人共何をされてるんですか?」
「見ての通りストライカーの修理、私はね。あっちは勉強で絶賛苦戦中」
作業服と白い顔を塗料で汚してしまっているシャーリーが言う。
「なんでそのようなことを…もしかしてジェットストライカーの?」
「そう、あの問題児をどうにか更生できないかって方法を探してるんだ」
シャーリーは日常のことではあるがどうしてソーマまでストライカーの学習をしているのかというペリーヌの疑問はすぐさま自身とシャーリーによって解消された。
「上手くいきそうなんですか?」
「いや今のところは全然。まだ何も試してないし、部品もどれがいいのかとかまるでわからない」
シャーリーの言葉通りソーマは苦戦を余儀なくされた。
元々ストライカーの知識に乏しい彼にとっていくらシャーリーのまとめたノートがあったところで短時間で膨大な情報を分析して最適解を導き出すのは困難を極めた。
「だからソーマは一から全部わかる必要はないんだって」
「でもさ、俺こういうのちゃんと理解しないとなんか落ち着かないっていうか」
口を動かしつつも作業を行う手も動かす二人。
そんな二人に刺激されて宮藤は何事かを決心したような強い意思を瞳に宿した。
「シャーリーさん、ソーマさん、私にも手伝わせてください」
「宮藤はストライカー弄ったことないだろ?そう言ってくれる気持ちは嬉しいけどさ」
「はい。ですから何か食べたい物とかありますか?私にはそれくらいしかできませんから」
「そういうことならありがたく、じゃあハンバーガーお願いしようかな。ハンバーガーわかるだろ?」
「前にシャーリーさんが作って食べてた奴ですよね。はい、作り方もなんとなくですけど作れると思います。ソーマさんはどうですか?」
「俺?俺は、なんでも…」
「そういうのが一番困るものですのよ。ちゃんと希望を伝えてください」
要望を聞かれてのソーマの解答にピシッとペリーヌが言い放つ。
「えっと…それならピッツァで」
「わかりました!ご飯の時間になったらここに持ってきますね」
「私も手伝うよ芳佳ちゃん」
「うん、二人で一緒に作ろうかリーネちゃん」
元気よく宣言した宮藤は同じくやる気満々のリーネと共に仕事を果たすための
「俺はどうしよう…えっと、よし、俺もあっちに行ってきますね!先輩たち、頑張ってください!」
ここにいても邪魔になるだけと自分に客観的評価を下した服部も宮藤たちに続いて厨房へと向かう。
さてその彼の行動によってペリーヌが残されたわけなのだが
「では私はソーマさんのお手伝いを致しますわ」
彼女はそんな結果に機嫌を損ねる様子もなくソーマの前に椅子を用意して座り込んだ。
「わかるのか?」
「これでもウィッチとしてそれなりには学んでいるつもりですわ。シャーリーさん程とまではさすがにいきませんがソーマさんに教えられることは多いと思います」
「悪いな。助かるよ」
正直なところ完全に行き詰っていたと言っていい状況だっただけにペリーヌの申し出はありがたかった。
ソーマとしては申し訳ない気持ちもあったものの彼女の善意に甘えることにした。