ストライクウィッチーズ~約束の空~   作:カメクリオ

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やりたいやり取りが多くてなかなか先に進まないジェットストライカー回


第五十六輪 レッツ・トライ・トゥギャザー 前編

「聞いたぞ。ソーマにジェットストライカーの資料を渡したそうだな。いいのか?いくら私たちの元に送られてきたとはいえ一応カールスラントの機密扱いのものだろう」

 

書類と格闘するミーナに坂本が言った。

統合戦闘航空団の一員といえどソーマはロマーニャの軍人だ。カールスラントの最新技術の搭載されたジェットストライカーを簡単に見せてもよかったのだろうか。

坂本の指摘にミーナは書類から目を離さずに涼しい顔で答えた。

 

「ソーマさんもここにいる皆もそういうことはしないわよ。それにカールスラントにとっても改善点が見つかれば次の研究に活かすことができるし問題ないんじゃないかしら」

 

彼はそう簡単に情報を漏らしたり売るようなことはしない。

この部隊に属する全員の人柄を信じていたからこそミーナはジェットストライカーの資料をソーマに託した。

そして坂本もあえて忠告じみたことは言ったもののミーナと同じく部隊の隊員たちの良心は熟知していた。

だからミーナの言葉に余計な言及はしなかった。

 

「上手くいくと思うか?」

 

「そうであることを祈るしかないわね。こればかりは」

 

自分たちが目を通した限りではジェットストライカーの改善点を見つけ出すことはできなかった。

ストライカーの知識に関しては部隊随一のシャーリーと豊富な魔法の持ち主たるソーマでトライしても駄目だったのならその時は大人しくジェットストライカーをカールスラントに返還して、いつも通りの戦力で今後もやりくりするしかない。

 

 

自身が修理を施したカールスラント製のストライカーを履いたシャーリーが空から帰還した。

基地周辺を軽く飛んできた彼女に宮藤が近づいた。

 

「どうですか?シャーリーさん」

 

「う~ん、こいつも速いっちゃ速い。けどジェットストライカーに比べたら全然だな」

 

ストライカーから足を外しながらシャーリーは言う。

このストライカーの全力は引き出せている。しかしやはりカールスラントの誇る最新技術の塊であるジェットストライカーの壁は越えられるものではなかった。

 

それも致し方のないことと思考を切り替えたシャーリーの視線は椅子に座って意見を交わし合うペリーヌとソーマを視界に収めた。

 

「ここの部分ってさ、どれ使うのが一番だと思う?」

 

「スオムス製のこちらなんてどうです?このままですとジェットストライカーには少々大きくて入るか微妙ですがソーマさんの物を小さくする魔法なら組み付けはできると思います」

 

「でもそれも一時的でしかないんだよな。魔法の効力が切れて元の大きさに戻った時のことを考えたら」

 

「できませんわね」

 

いくら便利な魔法でもソーマの魔法はずっと効果が続くわけではない。

仮にペリーヌの案を実行したとしていずれ魔法が切れた瞬間に部品の大きさが元に戻ってしまい、結局その部品を組み込んだストライカーに余計な悪影響を及ぼす恐れがある。

 

「シャーリーさんの魔法じゃ駄目なんですか?」

 

「私の魔法?」

 

並行して行われていた二つの作業を邪魔にならないように静かに見守っていたリーネが言った。

 

「あ、ソーマさんが使うシャーリーさんの魔法の方です。シャーリーさんと同じ加速の魔法でジェットって名前も一緒だから上手くいくかなって」

 

「それさっきペリーヌが思いついて試してみたんだけどさ、上手くいかなかった」

 

「効果が出ないどころかソーマさんのベルトが反応すらしませんでしたわ」

 

実を言うとリーネたちが食事を作っている間ペリーヌが全く同じ提案をしていた。

物は試しとハリケーンリンクスとなったソーマが加速魔法を持たないペリーヌの指にジェットの指輪を嵌めて自身のベルトに翳したのだがベルトから音声が鳴らなかった。

発動しないことに三人揃って首を傾げて再度同じ動作を行ってみても結果は変わらず。

 

しかしソーマが自分の指に嵌めてやってみるとベルトから音声が鳴り、魔法は問題なく発動した。

つまりこのことから導き出される結論は

 

「ハリケーンリンクスの時に使えるウィッチの指輪はその魔法の元になった仲間しか使えないってことなんだろうな…」

 

まだ確かめていない憶測の段階であるが『プラズマ』の指輪だったとしても同じ結果になることだろう。

シャーリーがペリーヌのトネール由来の雷の魔法を使うことはできない。

 

「ねーねー、ご飯食べないの?温かいうちに食べないともったいないよ」

 

「悪い悪い、区切りもついたところだし休憩するか。皆もいいだろ?」

 

時刻は夕方の17時半近く、そろそろ何か口にしてもいい頃だろう。

机の上にはハンバーガー、ピザ、シーザーサラダ。

宮藤とルッキーニが主導で作った料理が並んでいた。

作った二人と手伝ったリーネと服部はもちろん、作業をしていた三人も一時手を止めて椅子に座る。

 

「「いただきます」」

 

「「いっただきまーす!」」

 

全員が同時に両手と声量の異なる礼を合わせて料理に向き合い手に取る。

 

「このピッツァ、色んな味に分かれてるのか?」

 

「そうだよ。私と芳佳と後服部で決めた味だよ」

 

ピッツァの種類は三つ。

トマトとキノコの乗ったもの、海老や貝の乗ったもの、サラミのトッピングがされていて焦げ目にしては妙に薄く見える茶色で全体が染まっているもの、それらがまとめて一枚の大きな皿の上に乗っていた。

シャーリーはその中から一枚、海鮮類のものを手に取って食す。

具材からしてそれがルッキーニの作ったものであることはすぐに見抜けた。

 

「上手に作れたなルッキーニ」

 

「でしょでしょ、えへへ」

 

「これをルッキーニさんが…?美味しい、美味しいですけどなんだか腑に落ちませんわね」

 

普段料理を作らないルッキーニだがピッツァの本場育ちなだけあってピッツァに関しては味は絶品らしい。

シャーリーだけでなくペリーヌも味を褒めたたえている。ただペリーヌはやや納得のいかないとも取れる顔をしていたが

 

「リーネがそれか。じゃあ俺は、これいくか」

 

「あ…ソーマさんそれ」

 

リーネがキノコとトマトのピッツァを手にしたのを確認してソーマはまだ誰も手に取っていない見た目に茶色の成分が強いピッツァを一切れ摘まんで口に入れる。

宮藤が何か言いたそうにしていたが彼女が言い切る前にソーマはゆっくりと口の中で噛んでいく。

 

(まっず!?なんだこの味…いやこれ、あれだ。あの味だ)

 

ところがどういうことだろう。最初の一噛みで強烈な味が口内を満たした。肉の味でもチーズの味でもない。一言で言えば不気味、しかし何の味であるかの特定はできた。

 

「どうですか?先輩、美味しいですか?」

 

「やっぱお前か…これ、醤油」

 

「わかりますか?入れさせて頂きました!」

 

顔を歪めるソーマが食べたピッツァを作ったのは服部。彼が入れたのは彼が愛してやまない醤油。『自分が美味しく感じるなら他の人も美味しいと感じるに違いない』独自の理論の元生地の上からかけられた調味料だ。

そんな考えで入れたものだから服部はソーマが喜んでくれると思っていたし、彼の口から喜びを表す言葉が出てくるのを期待して待った。

 

「…美味しくはない」

 

「ええ!?」

 

服部は新鮮に驚くが彼を除いた多くの者たちはソーマに同感と言わんばかりに首を縦にしていたり、苦笑いを浮かべていた。

特に調理工程を間近で目撃していた宮藤からしてみれば服部の反応の方に驚きを禁じ得ない。

実のところ美味しくないを通り越して不味いと言っても差し支えないのない味であったがその表現を口にするのは踏み留まった。

ソーマとしては率直に感想言ってしまえば服部が露骨に落ち込むだろうと考えが働いたからだ。

 

「うえ、なにこれまずーい」

 

「ええっ!?」

 

(ルッキーニー!!?)

 

ところがルッキーニによって彼の配慮は儚く散った。

どれくらい酷いものかと好奇心で一口かじってみた幼く純粋な少女は感想をオブラートに包むという慈愛を知らないがために思ったことをそのまま声に出してしまった。

 

「まずかったか?」

 

「ちっとも美味しくない。0点だよこんなの」

 

「そ、そっかぁ」

 

自信満々だった料理を酷評され落ち込む服部。ただそこから先がソーマの予想と少し違った。

 

「じゃあもうピザに醤油はやめるか」

 

あっさりと服部が立ち直ったからだ。醤油への入れ込み具合からしててっきりもっと落ち込むと思っていただけにソーマにはこの結果は意外だった。

 

「それがいいよ。今度私が作り方教えてあげるね」

 

「教えてくれるならお願いしていいか?次はこんなことないように名誉挽回したいからさ」

 

「いーよ」

 

そんなやり取りを交わしながらの食事を終えて小休止。シャーリーとルッキーニはひとまず自分たちの部屋に戻り、ソーマは椅子に座って腕を組んだままじっとしていた。

 

「私これをバルクホルンさんやエイラさんたちにも届けてきますね」

 

「あ、芳佳。ユーティライネンさんとリトヴャクさんには俺が持って行っていいか?」

 

食器の片付けをリーネとペリーヌに頼んでまだ食事を摂っていないここにいない仲間たちに料理を運ぼうとする服部が呼び止めた。

どうしてエイラとサーニャに絞った言い方をしたのか宮藤にはわからなかったがきっと大事なことがあるのだろうと解釈して二人の分を任せた。

 

「いいよ。ならエイラさんとサーニャちゃんのところは幸助くんにお願いするね」

 

「気遣ってもらってありがとな芳佳。こいつは責任を持って運んでいくから安心してくれ」

 

 

トントン。

ぐっすりと安眠を貪っていたエイラをドアを叩く音が目覚めさせる。

 

「んん、なんだぁ?誰が何の用だ?」

 

夜間哨戒に備えて眠っているのは他の皆は知っているはず。なのに夜を迎える前に誰かが来たということは差し迫った事態でもあったのだろうか。

起きたばかりで上手く機能しない頭で色々考えながらエイラは体を起こして横を見る。

そこにはサーニャの顔。おとぎ話に出てくる姫君のように清く美しい寝顔。

彼女との幸せな一時を邪魔されたような気がしてエイラはほんのちょっとだけむかむかする気持ちが芽生えたが、非常事態の場合もありえるためにそれを心に留めるように努めて扉に足を運ぶ。

 

「なんだお前かよ」

 

ドアを開けたエイラの視界に飛び込んできたのは服部の顔。エイラがあまり得意ではない相手の顔だった。

 

「はい俺です。今大丈夫ですか?…あ、もしかして寝てました?」

 

「もしかしても何もそうだったよ。しかもよりにもよってなんでお前なんだよ」

 

他の者ならまだしもどうして服部なのかとエイラは不満気に言った。

別に彼のことが嫌いなわけではない。だってエイラには彼に何かされた覚えはないから。

ではなぜすんなりと受け入れずらいのかというとそれにはある理由がある。

 

「それ今日のご飯か?」

 

だがそれを決して言いたくないし悟られたくもないエイラはふと服部の手に持っているトレイの存在に気付いた。三種のピッツァにハンバーガー、シーザーサラダが二人分載せられていた。

 

「そうです。お二人の分持ってきました。リトヴャクさんもいるんですよね?」

 

サーニャの名を出しながら背伸びしてエイラを避けるように部屋の中を覗こうとする服部。

何を目的としての動作なのか即座に看破したエイラは素早くトレイを服部の手から奪うように取った。

 

「あ!」

 

「用が済んだらとっとと出てイケ。これを届けに来ただけなんだろ!」

 

突然のことに驚く服部に構わずエイラは扉を閉めようとする。下着姿の自分を見られたくないからではない。

サーニャの姿を服部の視界に収めておきたくなかったからだ。

しかしそんなエイラの気持ちを服部が理解できるわけもなくドアに手をかけてエイラとは真逆の動作、扉を開けようとする。

 

「待ってください!そうなんですけどリトヴャクさんと話をしたいんです!話が駄目ならせめて顔だけでも見させてください!」

 

「やなこった!お前みたいな悪い虫、サーニャに近付かせるわけにはいかないんだナ!」

 

ギシギシと両者の間で音が鳴る。閉めようとするエイラ、開けようとする服部のせめぎ合いによってドアが振り回されているせいだ。

 

「虫?虫ってなんですか?俺のどこが虫みたいだって言うんですか」

 

「そういうところだよ…!いいから。出て、イケ!」

 

エイラにとっては服部の質問に答える気はなかった。

服部の指を外して反発の力が弱まった瞬間に間髪入れずにドアを閉める。

それ自体は成功した。ところが思いっ切り閉めてしまったために服部の指がドアに挟まってしまう。

 

「あ”っだあああああ!!い”ってえええええ!!」

 

「あ」

 

やってしまったと思うエイラであったがつい反射的にドアを閉める。

完全に隔たったドアの向こうから苦しそうな絶叫が聞こえる。姿こそ見えないがよっぽど痛かったのは声だけでも伝わってくる。

さすがに申し訳ないと自分の行いに罪悪感を覚えるエイラだが反面『最初から私の言うことを聞いていればこういうことにはならなかったわけだからあいつが悪いのであって私は悪くない』と言い聞かせる気持ちもあった。

 

「どうかしたのエイラ」

 

そんな気持ちのせめぎ合いがあって動けずにいるエイラの耳が声を拾った。

反応して目を向けるとこの騒ぎで目を覚ましたサーニャがいた。

 

「サ、サーニャ。起きてたのか。い、いやなんでもないんだ。ちょっとその…」

 

「いったぁ…かっ、たぁぁ…」

 

咄嗟にエイラは誤魔化そうとするがそれではドアの向こうから聞こえる悲痛な声はかき消せない。

 

「服部さんがいるの?」

 

「い、いや…いるっちゃいるけど…」

 

どう説明したものかと迷っている間に下着姿の上に軍服を羽織ったサーニャはドアを開けてしまう。

ドアに妨げられていたそこには蹲って負傷した手を無事な方の手で抑えて悶絶する服部という光景があった。

 

「いてぇ、いてぇよぉ…」

 

「大丈夫ですか?服部さん」

 

「あ、サーニャ…」

 

「はい。まぁなんとか…ぁ」

 

顔を上げて服部はようやく気付く。

あれだけ話をしたいと思っていた念願の人物の顔がすぐ目の前にあるのだと。

しかもその上彼女は服部の負傷した方の手を取って自分の目に近付ける。

 

服部の指を見つめるサーニャとそのサーニャの顔を見つめる服部。その構図にエイラはわなわなと震える。

 

「少し赤く腫れてますね。痛いですよね?」

 

「あ、いえ…」

 

「医務室の方に救急箱があったはずですから持ってきますね。冷やしたタオルも用意しないと」

 

「い、いえこれくらいどうってことないです。大丈夫です」

 

医務室に向かおうとサーニャが手を離して身を翻す。服部は未だに痛みが静まらない指を抑えたまま立ち上がり、サーニャとは真逆の方向に行こうとする。

 

「え、でも…」

 

「本当に、本当に大丈夫です!失礼します!」

 

サーニャの声が届いていないのか早口でそう言って服部は駆け足でサーニャの前から離れていく。

 

「あ!」

 

だが何か忘れたことがあったのかまた廊下の角から姿を現す。

 

「ご飯持って来たので食べてくださいね!」

 

顔を廊下の角から出して言ってはまた引っ込んで去っていく。

 

「なんだったんだよあいつ…騒ぐだけ騒いで」

 

エイラは奇異の目で、サーニャは不思議そうな目を服部がいた場所に送った。

 

 

ミーナと坂本に夕食を届けた宮藤。最後に残ったバルクホルンとハルトマンの分を渡そうと彼女は二人の部屋に目指して歩いていた。

その道すがら進行方向からやって来たハルトマンが宮藤の手にしている料理に気付いて彼女の前で立ち止まった。

 

「あっれどったの宮藤ー?」

 

「今日の夕食です。さっき坂本さんとミーナ中佐たちに渡しに行ってハルトマンさんとバルクホルンさんのところに行く途中なんです」

 

宮藤も丁寧に立ち止まり説明する。

 

「今日は食堂で食べるんじゃないんだ」

 

「ソーマさんとシャーリーさんがジェットストライカーの研究をしててペリーヌさんとかもそれを手伝ってたりで、なので今日は申し訳ないですけどこういう形になっちゃいました」

 

「へぇ、私の知らない内にそんなことになってたんだね…」

 

ハルトマンのその言葉でやり取りが止まる。

 

(えっと、どうしよう。ハルトマンさんはここにいるけど、バルクホルンさんの分も今渡しちゃった方がいいのかな)

 

ハルトマンは宮藤の向かっていた方角からやって来たから自室に戻る可能性は低い。

ならば彼女の分もまとめて二人の部屋に置きに行くのが正解だろうか。

 

宮藤が手元の料理の行方に悩んでいるとハルトマンが救いの言をかけてきた。

 

「それ私が持っていっとくよ。トゥルーデのもあるんだよね?私同じ部屋だしさ」

 

「いいんですか?どこかに行こうとしてたんじゃ」

 

「宮藤も忙しいんじゃないの?ここは任せてよ。それにちょっといいことも思いついたしね」

 

「いいこと?」

 

「うん、ちょうどいいし宮藤にも協力してもらうよ」

 

ハルトマンのしたり顔を直視しながら宮藤は首を傾げた。

 

 

夕食を食べ終え、太陽が西の空に沈み辺りが暗くなり始めた。そんな時間になっても飛行実験は続いていた。

 

「スモールじゃ駄目だったか」

 

時にはストライカーの部品を色んな国の物に変え、時には指輪の魔法を変えて、時には魔法をかける対象をストライカーや部品そのもの、ウィッチに変えと色んな形で試行錯誤を繰り返してきたが一向にジェットストライカーの課題をクリアする方法を見つけることは敵わずにいる。

それどころかジェットストライカーのスピードに届いてすらもいない状況だ。

 

「ソーマさんの言っていた通りの結果になりましたわね。大きなパーツが組み込めるようになっても魔法の効力がなくなった途端に大きさが戻ってユニットそのものに悪い影響を与えてしまう」

 

「それに加えてジェットストライカー自体が魔力の消費が激しいのもあって普通に使うのよりも効果が長く続かないだろうしな」

 

ソーマとペリーヌは一つの机のすぐ近くに移動し、その上に置かれた指輪の数々と試行錯誤の結果をまとめたノートに視線を落とす。

同じ格納庫の少し距離を置いた場所ではスモールの魔法が解けて元の大きさに戻ってしまった部品のせいで他のパーツが歪んでしまったストライカーの修理にあたっているシャーリーと作業を眺めている服部とルッキーニがいる。

 

「次はどうするか。ビッグじゃ同じ結果だしな」

 

「ソーマさんが変身に使う風の指輪はいかがです?」

 

「どうなんだろうなぁ。自分にかけたことしかない奴だけど試しにやってみるか」

 

ハリケーンウィザードリング、普段はソーマがウィザードに変身する用途にしか使わず他の人や物にかけたことはない。そのためどんな事象が起こるかソーマ自身でさえも想像がつかない。

だがもうこの際やれることはやってみるべきだ。

シャーリーの手が止まるのを待ってからソーマはリーネに声をかけた。

 

「リーネ、頼めるか?」

 

「私はまだ大丈夫です」

 

「疲れたらいつでも休んでいいからな?さっきからずっと飛びっぱなしだから」

 

「そうですわ。慣れないユニットを長時間使用するのは思ったよりも体に負担がかかるものですから。もしもの時は私が代わりを務めますわ」

 

「ペリーヌがリーネの代わり?」

 

ルッキーニはペリーヌを、正しく言うならある彼女の一点にじ~っと視線を注ぐ。

 

「無理なんじゃないの?」

 

「誰のどこを見て言ってるんですの!」

 

ルッキーニが己の何に向けて言っているのか看破したペリーヌは声を大にして言う。

自分でも不足していると自覚していて、どれだけの小さな努力を重ねても実る気配のない場所なのだからそんな反応になるのもペリーヌとしては無理のない話であった。

一方で服部は意味がよくわからなかったようで指を水で冷やしたタオルで抑えながら近くにいるシャーリーに尋ねてみた。

 

「ペリーヌよりリーネの方が強いんですか?」

 

「そりゃあもちろん。見てすぐわからないか?」

 

「ええ…」

 

(俺にはわからないな。経験が足りないからかな?)

 

服部もルッキーニと同じく、いやそれ以上に目を凝らしてペリーヌとリーネを見比べてみるが違いがちっともつかめない。

死線をくぐり抜けてきたエースたちにしかわからない何かがあるのだろうか。

 

(言葉そのまんまに受け取ったなあいつ)

 

服部の仕草からソーマは彼の心境をそう解釈した。

あまりの素直さにもはや呆れを失くして賞賛を思うソーマは隅に置かれたジェットストライカーを視界に入れた。

 

チェーンが巻かれ、誰も使用できないようにされたストライカー。

もしもバルクホルンが何も不自由なく飛ぶことができたら…その時の情景を思い浮かべると尚更やる気がこみ上げてきた。




ルミナス前半戦終わりましたが面白いですね。シルヴィとエリーが今のところツートップで好きなキャラです。

最終回の展開次第にはなりますが何かしらの形でルミナスのキャラも出そうかなと考えています。
解散ENDになったとしてもロマーニャならとりあえずシルヴィは出せるでしょうし
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